side門矢士
連れてこられたのは、街中にある雑居ビルのうちの一つだった。
その地下駐車場にリムジンが止まって、車から降りると、ぞろぞろと歩き出す。
リムジンの中で珍しく治療を受けた海東も、興味深くまわりを見渡していた。
「何だ?『東洋特殊撮影技術研究株式会社』?
ここが目的地なのか?」
ビル内にかかげられていたのはその名前だけで、外の会社や、テナントが入ってはいないようだった。
しかし、件の壮年の男も執事もメイドも何も言わずに黙っていて、先に行くように促され、仕方なくよくわからないまま進む。
特殊撮影技術を名打っているように、撮影で使うのだろう、壁紙や小道具、セットの一部のようなものまで見えた。
「何なんでしょう?
撮影会社の社長さんということなんでしょうか?」
「さあな。いきなり撮影何てことはないだろうが、いいかげん、説明ぐらいはして欲しい。
…エレベーターか?」
何だ、重役よろしく上に行くのか、と思いきや
「どうやら、地下に向かっているみたいだね。」
海東が感覚的にわかるようで、言ってくる。
地下何階かはわからないがエレベーターを降りると、横の壁には『SPIRITS』というロゴ入りの社名のようなプレートが張り付けられていて、それを見た海東が、小さく
「…へぇ♪︎」
と言っているのが聞こえた。
また何か企んでいるのかと呆れていると、空港にあるような金属探知機のゲートのようなものがあった。
「何だか、ずいぶんものものしいな。」
「確かに。」
ユウスケの呟きに、夏ミカンがうなずいていると、ゲートの向こうから声がかかった。
「琉兵衛さん。案内ありがとうございました。」
「なんのなんの。久しぶりに栄ちゃんと話ができたんだ。
いい息抜きになったよ。」
「皆さんも、ようこそ『SPIRITS』へ。
このゲートは電源を切っているので、そのまま入って来てください。」
その男は、良くも悪くも、普通の男のように見えた。
背は高い方だろうが、日本人らしい黒髪黒目の丸刈り頭で眼鏡をかけた、よれよれのスーツに身を包んだサラリーマン然としているその男は、俺達がゲートを通ると、海東の方を向いて言う。
「ああ、こちらにある機材、道具等の持ち出し、窃盗は、消耗品以外は勘弁していただきたいです。」
「僕の事を知ってるみたいだね。」
「はい。人が行う事に対するイメージというものは、一度行うと、それが印象付けされてしまいますから。
あなたがそれを行った場合、我々SPIRITSはあなたを信用できなくなりますので。」
「別に僕は、信用を求めてないんだけど。
でも、SPIRITSという名前の組織には、とても興味が湧くよ。
特に僕達、仮面ライダーにとってはね。」
「おい海東。どういうことだ?」
「士は、知らないか。
かつて1号から始まった昭和仮面ライダー達がいた、とある世界があってね。
そこでは、10番目の仮面ライダー、
その世界では、9人の仮面ライダー達や、協力者達による戦闘組織があってね、それが『SPIRITS』という名前なのさ。」
「何?じゃあこの世界でもBADANとかいうのがいるのか?」
「いいえ。この世界にはBADANは居ません。
しかし、あの組織を理想としてつけさせてもらっていますので。
まずは、こちらへ。」
その男に連れられて、通路を進むと、会議室のような部屋に通された。
促されたままに俺達は座ると、男は俺達の正面に座り、琉兵衛とか言われた男も、その近くに座っていた。
すると、俺達の席の脇から青い制服を着た女性が、暖かいお茶と茶菓子を置いてまわる。
「士君。あの制服、うちの写真館に喫茶店と間違えて入って来た人達も着ていました。」
「そういえば、そうだな。
つまり、このSPIRITSとかいう組織の隊員だったということか。」
「そうなります。
彼女達の井戸端会議を俺が聞いていなければ、あなた方を早急にお連れすることができなかったでしょうね。
ですが、一人少々手遅れの方もいるようですが。」
男は、所々治療した後がある海東をチラリと見て言うと、姿勢を正して話を始めた。
「はじめまして。俺の名前は、狭間玄乃。
この世界の仮面ライダー相互支援及び、装備研究開発組織『SPIRITS』の交渉役兼アドバイザーです。
あなた方は、門矢士さん、海東大樹さん、小野寺ユウスケさん、光夏海さん、光栄次郎さん、そして、キバーラさんで、よろしいでしょうか?」
「ん?」
今、聞き捨てならない事が聞こえたような。
「キバーラちゃん。いつの間にいたんだい?」
「面白そうだったから栄ちゃんに隠れてたんだけど、すぐに見つかるとは思わなかったわ~」
本当にいつのまにかじいさんの肩に乗ったキバーラが、じいさんと話している。
「白い羽が見え隠れしていましたので。
話しを進めます。
単刀直入にお聞きします。今のあなた方はどの時系列のあなた方でしょうか?」
「時系列…ですか?」
「どういう意味だ。」
夏ミカンの呟きに、俺は狭間とかいう男に問い詰めた。
「あなた方への対応の仕方が変わりますので。
では、門矢士さん、あなたは、ジオウの世界には行きましたか?」
「なせお前がそれを知ってる?」
「知っている。としか答えようがないです。
あなたの作戦で、ジオウの世界を破壊し、そしてここに来た。そういう認識で構いませんか?」
「ああ、そうだ。
それがどうした?」
「安心しました。オーマジオウによってあなたが倒され、あなたの旅が終わった時間軸も知っていますのでそういう時系列でなくてよかったです。」
「ちょっと、士君!ジオウの世界を破壊したってどういうことですか!?
それに、旅が終わるって。」
「この世界に来たことでIFの世界になったってことだろ。
それで、どう対応が変わるっていうんだ?」
「この世界について、全てをお話することができる。
ということになります。
まず、海東大樹さん。あなたのケガは恐らく俺の責任です。すみませんでした。」
「なぜお前が謝る?
どうせ海東は、この世界のお宝とやらを狙って返り討ちになっただけだろうさ。」
「今回はお宝をまだ調べられてないから狙いようがないよ。
僕は、この世界に降り立った時に、狙い打ちされたように襲われたのさ、どうもそいつらは、オーロラの移動能力を欲しているみたいだったね。」
「俺もまた、オーロラの移動能力を使用できるのです。
俺が派手に暴れたせいでこの能力の便利性を認識した奴らが、探し回っているのでしょう。
あわよくば、手中に納めようとしています。」
「ちょっと待ってくれ、あんたもオーロラの移動能力が使えるだって?
俺達が知ってるのは、士や海東さん、それに鳴滝さんくらいで、…まさか。」
ユウスケは恐らく、光写真館で見た新聞を思い出しているのだろう。
「あんたが新聞に載っていた宇宙人と戦ったっていうディエンドか?」
「はい。正確に言えば二代目ディエンドです。」
「二代目?」
俺達は、海東に注目するが、海東は首をふった。
「僕はまだ、後継者を選んだ覚えはないよ。」
「俺が失業して公園で黄昏ている時に、50代ぐらいの海東大樹さんがオーロラとともに現れて、いきなり二代目を指名してきたんです。
ディエンドライバーが俺を選んだと言って。」
「50代?確かに、それくらいなら引退を考えなくはないけど、わざわざ君を選ぶ理由はわからないね。」
「それは今でも、俺自身でも答えを出しようがありません。
しかし、俺はようやく二代目として、ディエンドとして戦う覚悟をしました。
そのとたんに、あなた方がこの世界に現れたんです。」
「僕が、二代目からディエンドライバーを奪うと思っているのかい?
確かに君の実力を知る必要はあるだろうけど、未来の僕が選んだということはそれだけ君が期待されているということでもある。
頑張りたまえ。」
「ありがとう…ございます。」
海東の言葉に感動したのか、その男は頭を下げてきた。
「それで?この世界はどういう世界なんだい?」
「今さら、師匠面か海東。」
「この世界では、そうさせてもらうつもりさ。
何せこれだけの知識があって、この組織にも顔が利く。
しかし、僕も外を出歩くのは難しいなら、そうしたほうが面白そうだということさ。」
「よろしくお願いします。海東さん。
では、説明に戻ります。」
その狭間というディエンドの二代目はこの世界のことを話してくれる。
そしてしばらく情報をやり取りしていると、部屋の外が騒がしくなってきた。
というよりも、聞いたことがあるような声だった。
「ディケイドがいるってのはここか!」
足で蹴破って入ってきたのは、電王の世界にいたイマジン達だった。
「お前らまでこの世界にいるとはな。」
「俺の体を取り戻すのに協力してくれたのは、まあいい。だけどな、この世界を破壊される訳にはいかねぇんだよ!」
「落ち着いて、先輩。
お久しぶりだね。夏海さん。」
「ディケイド倒すけど、いいよね?
答えは、おっと、熊ちゃん押さないでよ!」
「泣けるで!」
「ちょっとみんな…狭間さんすみません。
モモタロス達を止めようとしたんですけど。」
「止められませんでしたか。
まあいいです。粗方話は終わりましたので。
ああ、そうだ、門矢さん!
あなた方がこの世界でやらなければならない事はわかりますか?」
「まだ、はっきりしない。
この世界をある程度滞在すればわかるかもな!」
モモタロス達にユウスケを盾にしながら、狭間に答えると、狭間の提案で食堂に移動することになった。