side狭間玄乃
イマジン達にやいのやいの言われながら、門矢士一行を食堂に連れて行くと、そこには沢山の人達が集まっていた。
俺を心配してきてくれた鳴海壮吉さんと、娘を含めた鳴海探偵事務所の面々に、忙しいだろうに、わざわざ駆けつけてくれた火野映司さんとボディーガードの人達、本部で謹慎中なのをいいことに、食堂の厨房からこちらを覗く沢木哲也さんと、どんぶりを受けとっていた日高仁志さん、警察関係者と話をしている五代さん、研究所は休憩中なのかさまざまな研究機関の者達も座っている。
「お疲れ様です。」
「お疲れ様です。沢木さん、厨房でわざわざ手伝わなくても。」
「俺が好きでやってますから。
それに、ハロウィンの次はクリスマスシーズンですから、料理の練習をしておきたいんですよ。
あと、俺だけじゃあないですよ。」
カウンターから厨房を覗くと、天道総司と、矢車想が料理をしていた。
「何やってるんですか!?」
「破壊者とやらに興味が湧いてな。
そうしたら食堂で、沢木のやつが料理を出していたから、俺の料理の方がうまいとわからせるためだ。
お婆ちゃんは言っていた。食事の時間には天使が降りてくる。
そういう神聖な時間だ。とな。
つまり、俺の料理は神聖な料理ということだ。」
「俺の料理は天道よりもうまい。それを証明する。」
この二人は旅館には来なかった人たちだが、ゼクターとベルトは送ったから記憶は取り戻している。
二人の妹さんと両親と普通に生活していたはずなのだか、やっぱり天道総司は無職だった。
そしてなぜか矢車想と影山瞬は地獄兄弟になっていた。
カブト系のゼクターの装着者は自由人が多く、そういう意味では沢木哲也さんも自由人といえるだろうな。
天道語録の意味も良くわからないし、何か言うのも馬鹿馬鹿しくなってきたので、鳴海壮吉さんのところに行く。
「大丈夫だったみたいだな。
だから言っておいただろう、誠心誠意話をすれば認めてもらえるだろうと。
最初に会った頃から見ると、お前は気迫に満ちた一人前の男だ。」
「ありがとうございます。
俺もSPIRITSの一員になったという自覚がありますから、先代とはなんとか和解したかったんです。
アドバイス、ありがとうございました。」
門矢士一行は、イマジン達以外にもSPIRITSの人たちに声をかけられていて、打ち解けられそうだと思った。
「(保険はいつ使うかわからないから持っていよう。あとは…)」
俺は琉兵衛さんに向かってうなずくと、琉兵衛さんもうなずいてくれた。
栄次郎さんを連れて来てもらえるようにという合図だ。
「俺も行った方がいいか?」
鳴海壮吉さんの一言もうれしかったが、これは俺が背負わなければならない事だと、考えを固める。
「いえ、大丈夫です。
鳴海さんは、皆さんを見ていてください。」
と、俺はこっそりとその部屋から出て行く。
そして、行く先は科学技術研究室が併設された医務室である。
そして、リクライニング仕様の医療ベッドに横たわるのは、本郷猛に似ている男、警視総監である。
「琉ちゃん、私を会わせたい人っていうのはこの人なのかい?」
「ああそうだ。この人はこの組織のトップといえる人で、警視総監の本郷猛さんだ。」
「こんな姿で、申し訳ない。
はじめてお目にかかる。
現警視総監であり、SPIRITSの総隊長の本郷猛です。」
「驚かれましたか?
顔も似ている。名前も同じ。
仮面ライダー1号の本郷猛とそっくりに見えましたか?
光栄次郎さん。
いえ、死神博士と、お呼びした方がいいでしょうか?」
栄次郎さんは、本郷さんの顔を見て戸惑い、名前を聞いて何も言えなくなり、俺が聞くと、底冷えするような殺気を感じた。
「孫娘には言うんじゃないぞ。」
と、飄々としたおじいさんから、地の底から響くような声を発する歴戦の猛者に変わっていた。
俺はお腹に力を入れて、なんでもないように振る舞う。
「一つ、お願いを聞いてくれれば、言う必要もなくなるでしょう。」
「言ってみろ。」
「…本郷さんを改造人間にしていただきたい。」
「何?」
「狭間君、もういい。
自分から話そう。
あなた方がこの場所に来て、狭間君にこの世界の事を聞いたでしょう。
元々、この世界の仮面ライダーは、特撮映像作品のひとつで、流行はしませんでしたが、私の子供のころからのヒーローでした。
仮面ライダー1号の本郷猛と同じ読みで同じ文字の『猛』という名前だった事もあり、子供のころから仮面ライダーごっこを遊び、そして成長していくに連れて、正義の道である警察官の道を選びました。
裕福な妻に婿入りしたことで、『本郷』の名字になり、事件の捜査のおりに、犯人が仕掛けた爆発物に巻き込まれ、顔の治療後に、この顔になりました。
当時、これは運命だと思いました。
治療後のリハビリに加えて肉体改造を試み、柔道、空手、剣道など、さまざまな武道を学び、そして作中の本郷猛の頭脳を目指して学んでいるうちに、この地位にまで駆け上がりました。
しかし、仮面ライダーにはなれないのだと、私の憧れなのだと心に言い聞かせていた。」
「ふん、そこに、そこの小僧が現れたということか。」
「そうです。
本物の仮面ライダーが現れ、警察機関がその組織を運営できるのだとわかり歓喜した。
私の夢が目の前にあるのだと。
しかし、そんな事に目を向けている場合ではなかったのです。
闇の手という暴力団を束ねていると思われていたもの達による、民間人の集団誘拐。
これには警察官僚が援助してしたことが内々で発覚しました。
警察組織のトップにいながら、民間人の誘拐を援助するような者達がいることに気づけないほど、愚かになっていた。
私は、警察機関内の信頼できる部下とともに、警察組織を正しい道へと導くのだと、考えを改め、懸命に動いていたそんな時に、倒れてしまった。」
「病か…」
「はい。すい臓がんのステージⅣでした。
憧れだけを求め、回りを見なかった愚かな男の末路だと。
しかし、私がこのまま死ねば、警察は腐敗したままになってしまう。
SPIRITSの科学者達や、狭間君にお願いしてどうにか治療できないかと、試行錯誤するも治療は不可能でした。」
「なるほど、そんな時に私達がこの世界に来たことで、知識を持った小僧に、改造人間のスペシャリストである、私の事を聞いたのか。」
「お願いだ。仮面ライダーになりたいなどという夢のためではない、日本の未来を守る警察官として、私を改造人間にしてほしいのです。」
「…皮肉な物だ。
ショッカーで嫌がる者達を改造人間にしてきて正義に倒される側だった私が、正義のために改造人間を造る事になるとはな。」
「それでは!?」
「いいだろう。しかし!
孫娘を思い、二度と改造人間を造るまいと考えていた私を引っ張り出すのだ。
本郷猛への戒めとして、私の技術の全てを使って、貴様をライダーにしてやろう。」
「ありがとう…ございます!」
本郷さんがベッドの上で涙を流しながら頭を動かしていた。
俺もまた、腰を曲げて、無言で頭を下げる。
「ふん、孫娘達にしばらく留守にする言い訳をしてくる。
次に来た時に、私が必要な機材を手配できるようにしておけ。」
「栄ちゃん、悪かったね。」
「琉ちゃんの頼みだ。
その代わり、前に一緒におでんを食べた時のようなうまい酒が飲みたいよ。ショッカーのビールは味が若かったからね。」
「用意しよう。」
そういう会話が部屋の外から聞こえてきていた。
「狭間君。お願いできるだろうか?」
「わかりました。」
俺もまた、科学技術研究室の人たちに話をしに行くのだった。
side門矢士
「え!?おじいちゃん。数日帰って来ないんですか?」
「どうした夏ミカン?」
食堂で、結構うまい麻婆豆腐を食べていると、夏ミカンの声が上がった。
「おじいちゃんが、数日、写真館を留守にするって言ってます。」
「やあ、士君。実は友人の琉ちゃんが招待してくれてね。
美味しいお酒が飲めるっていうから、数日だけお世話になろうかと思うんだ。
ああ、私の世話は、メイドさんがやってくれるみたいだから大丈夫だよ。」
「良いんじゃないか?
こんな、固っ苦しい孫娘の世話を毎日してきたんだ。
たまには、羽目を外すのも必要だろうさ。」
「士君!光家秘伝、笑いのツボ!」
「ワハハ、こんな、ところで、ワハハ、使うなよ。
ワハハ、麻婆豆腐を食ってる、ワハハ、途中だろうが。ワハハ」
「誰が固っ苦しい孫娘ですか!?」
「ワハハ、お前しか、ワハハ、いないだろうが。ワハハ」
なんだなんだと、周りの連中が近づいてきていた。
全く、余計な事しやがって、これくらうと、毎回笑い過ぎてまともに動けなくなるんだっての。
side???
「それが、話にあったウイルスか?」
「ああそうだ。君たちが開発しているナノマシンを併用すれば、デメリットなく使う事ができる。
ただし、約束通り。」
「レアメタルの入手は手配しよう。
それより、これは君が作ったのか?」
「それは、私の友人が作った物でね。
私の目的のために役にたてるんだ。彼も本望だろう。」
そうだとも、私が造るドライバーはあんな量産品ではなく、私が最強になればそれでいいのだと、いまでは思う。
飛電インテリジェンスは私のプライドを傷つけた。
あんな凡人達が作った代物が、私よりも先に記録に残るなど、認められない。
もう手段を選んではいられない。
あらゆる手段を使って、最強のドライバーを作り出すのだ。
そう思いながら、ホログラム通信を切り、私は端末に映るライトブルーのライダーの画像を消した。