side狭間玄乃
12月、いよいよクリスマスシーズン感が一気に広まり、町のあちこちがサンタクロースやらトナカイやらの飾りが増えてきたこの頃、本郷さんの手術は無事に終わり、現在、強すぎるパワー、感覚を日常生活ができるようにリハビリ中。
警察機関の運営は副総監という人に任せてあるらしいので今のところは大丈夫だろう。
門矢士一行の滞在も続いていて、旅の目的がまだはっきりしないまま、この世界の月日が過ぎていく。
何で町並みの話ができるのか、それは俺を狙う輩、とある暴力団組織の摘発が行われたからだ。
正確には、警察組織の一部摘発の隠れ蓑で行われたもので、一般市民の目を反らすためらしい。
闇の手の連中は基本、日本中の暴力団組織を情報提供元として動いている。
中には、政界や警察官僚が元になっていた情報提供もあることがわかっているが。
その中でも、ヤのつく人たちの中には、義理人情や仁義の筋を通そうとする、まともな人たちもいる。
そういう人たち、特に組長さんは本郷さんと飲み仲間だったりするので、暴力団の摘発の援助に回ったり、一般市民に被害がないように自主的にパトロールをしたりしてくれている。
見知らぬ外国人がうろうろしていたら、彼らがエスコートしてくれるようになっていた。
見た目は怖いけれど、幼稚園のお散歩中の元気なあいさつに、きちんと答えてくれる気持ちのいい人もいるのだ。
そういうことがあった結果、今では普通に出歩けるし、俺の生身の顔写真が広まっているわけじゃないので、有名人みたいな反応もない。
実に有意義な時間を過ごせていた。
駄菓子菓子、もとい、だがしかし、アベンジャーズの後のクリスマスシーズンには、アイアンマン3が始まり、マイティソー・ダークワールド、キャプテンアメリカ・ウィンターソルジャーと続いてゆく。
マイティソー・ダークワールドに関わりが持てるとは思えないから、一応除外するにしても、アイアンマン3と、キャプテンアメリカ・ウィンターソルジャーにはある程度関わって、ストーリーの改善をはかりたいところだ。
実際、アベンジャーズに関わった事で、フィル・コールソンの命が助かり、ニューヨークの市民の被害を減らすことができた。
エージェントオブシールドのT.A.H.I.T.I.(タヒチ)計画への影響は心配だが、キャプテンアメリカ・ウィンターソルジャーの流れが始まれば、どっちにしろヒドラの連中に巻き込まれていくだろう。
現在の問題はアイアンマン3、特にトニー・スタークである。
あの人は、俺の事をいまだに五代さんの付き人扱いをしてくる。
したがって、決まって俺に連絡がくる時は五代さんと話がしたいという連絡だった。
俺から五代さんの端末に、トニー・スタークの連絡先を登録してからは、途端に俺に連絡が入って来なくなり、トニー・スターク経由から、キャプテンや、ホークアイ、バナー博士やSHIELD の関係者から連絡が入ってくるようだった。
相変わらず、俺に連絡が入って来るのは仕事の連絡だけなので、ちょっと寂しい思いをしていたりしている。
そんな時に連絡が入ってきたのは意外な人からだった。
SPIRITS本部 応接室
「どうも、お久しぶりです。
呉島貴虎さん。」
「久しぶりだな、狭間。」
「弟さんの様子はどうですか?」
「あいつには、記憶を戻らさせてはいない。
あいつが選んだ事とはいえ、兄弟で殺し合うなどあってはならないことだからな。
この世界では、ダンスにかまけている様ではないのでな、わが社を共に育てていく社員にするべく、教育を施している。」
「…ほどほどに。
それで、今回はどういったお話ですか?」
「まずは、ドライバーだ。」
貴虎さんは、アタッシュケースを机の上に置くと、その中身、戦極ドライバーが入っているのを見せてくれた。
俺のクラインの坪の中には、元々、量産タイプの戦極ドライバーとゲネシスドライバーが一つずつと、レジェンドライダーを含んだロックシードが大量に置かれていて、ユグドラシルコーポレーション、正確には呉島貴虎さんに、戦極ドライバーとロックシードをいくつか送っており、記憶が戻っているのもこの人だけのはずなのだ。
あの旅館での話の後に、弟さんの記憶が戻るロックシード入りの箱を渡したが、まだ保管中らしいので、いまだに、なぜ戦極凌馬があの旅館に来ていたのかがよくわからないでいた。
そして、目の前のアタッシュケースの中には、戦極ドライバーが3つ入っているのが見える。
「戦極ドライバーの解析が完了した。
この3つは、先行量産品になる。」
「ありがとうございます。
これで、SPIRITS内の無茶をする人を減らす事ができます。」
「それで、この先もこのドライバーは、ユグドラシルコーポレーションの主力製品として量産し、SPIRITSに卸していく事になる。
だが、このドライバーの解析をしていた凌馬が、最近様子がおかしくてな。」
「あの人なら、たまに、SPIRITS内でみてましたよ。」
「そこだ。
凌馬は、私がドライバーの解析を頼み、ただの会議と称してあの旅館に行った。
だが、興味が湧いたとあの旅館についてきていた。
そして、SPIRITSが設立されると、真っ先に参加している。
最近は、ドライバーの解析が終わるやいなや、やけに精力的だ。」
「研究者としては、正しい姿勢なのでは?」
「見てもらいたい物がある。」
そう言って、貴虎さんは、自分の懐から戦極ドライバーを取り出すと、それをテーブルの上に置き、ノートパソコンと接続コードを取り出すと、戦極ドライバーとつないで、パソコンの画面を開いた。
「このドライバーは、狭間から送られてきたオリジナルだ。
そして、画面を見比べればわかるだろうが、オリジナルと、解析されて量産されたドライバーには、明らかにデータ量に差があった。
凌馬に言われたのは、専用化できるか、それがオミットされたかの差だと言われたが、私はどうにも違和感を感じて、自ら解析を行った。」
画面には、良くわからない数字や文字、図形が乱雑になった物が写し出されていたが、貴虎さんが、操作をすると、それらがパズルのように移動して整えられていく。
「これは…」
「私の記憶にあるように、別の世界の凌馬の研究資料だ。
ヘルヘイムの森の研究や、インベス、クラック、オーバーロード、そして黄金の果実。
あの世界の凌馬は、全てのドライバーに、バックアップを仕込んでいた事になる。
凌馬は解析をはじめて、真っ先にこのバックアップに気づいたんだろう。
だから、あの旅館に参加していた。」
「そんな…
では、今の彼は。」
「別のドライバーを造るために動いているんだろう。」
「ゲネシスドライバーですね。
俺は一つ現物を持っています。」
俺は、クラインの壺からゲネシスドライバーを引っ張り出した。
「私の記憶を呼び覚ますような男だ。
やはり持っていたか。」
「欲しいですか?」
「…もしもこの世界の凌馬がゲネシスドライバーを作り出せば、私も必要になるかもしれないとは思っていた。」
「迷っていると?」
「正直、この戦極ドライバーでさえ、私は怖い。
本来これは、ヘルヘイムの森の果実の栄養を取り込むために開発された物だ。
この戦極ドライバーを使用する度に、この世界にヘルヘイムの森が影響していくのではないかと考えてしまう。
ゲネシスドライバーならばなおさらだ。
しかし、凌馬の暴走を考えれば、奴を倒すのは私の役目なのではないかと、その結論に至る。」
「…では、貴虎さんには、こちらを差し上げましょう。」
俺は、再び、クラインの壺を開くと、一つの角ばった、緑色のロックシードを取り出した。
「そうか、これも持っていたのか…わかった。
もしも、この世界の凌馬が暴走し、ゲネシスドライバーで悪事を働くようなことがあれば、このロックシードを使わせてもらおう。」
貴虎さんは、オリジナルの戦極ドライバーと一緒にその『S.K.L.S』と書かれたロックシードを懐に仕舞いこんだ。
side乾巧
「だから言ってるだろうが。
俺はSPIRITSとか言うのには、関わるつもりはないって。」
「でも、その割には、あの旅館に参加したし、私とも再会した。
それに、この間は、黒い和装の変な奴らから人を守って、ケガしてたじゃない。
ファイズになれなくても、これがあれば、巧は戦えるんだし、貰っといてもいいんじゃないの?」
「ぐっ…」
正直、あの旅館に行ったことは人生で一番の選択の誤りだと思っている。
俺がファイズであり、オルフェノクだった記憶をファイズフォンが送られてきた時に思い出した。
あの手紙が意味深だったから思わず行ってしまったが、今思えば、無視していた方がよかったと思っている。
口うるさい真理も記憶を取り戻してるし、今では、暇なのかと思うぐらい、会いにくるし、さらには、仮面ライダーとか言うやつらの組織から、この狭間という男が会いにくる始末。
あの旅館での必死さと、映像には驚いたが、だからと言って、オルフェノクのいない今の生活を乱されるのには、うんざりしてる。
まあ、確かに、闇の手とかいうやつらがオルフェノクの変わりにこの世界にはいて、実際に人が襲われていた現場に居合わせて、思わず体が動き、見ず知らずの奴を助けて、俺がケガをした事もある。
あの時に、ファイズギアがあればと思った事もある。
「大丈夫ですよ。この戦極ドライバーがあれば、ファイズギアのように副作用もなく、変身することができます。
それに、あなたがこれを受けとったからといって、SPIRITSに入って欲しいなんてことは言いませんよ。」
「俺は、あんたの言い方が、強引なセールスマンみたいで気に入らない。」
「たーくーみー!
もう!…狭間さん。それは私が受けとっておきます。
ひねくれてる巧には、よーく、言い聞かせておきますから。」
「おい!真理、余計な…」
「ありがとうございます!
では、取り扱い説明書も入れておきますので、お使いください。
それでは、失礼します。」
そう言って、帰っていってしまった。