side狭間玄乃
道脇に車を止めて、運転席で毛布にくるまってまどろんでいると、声が聞こえてきた。
「なんかずいぶん早くないか?」
『ハザマ氏が、能力の使用によって、ルートを短縮しました。』
「…まあ、早いに越したことないか。
J.A.R.V.I.S.、ここはどの辺りだ?」
『テネシー州ローズヒルまで8キロの地点です。
』
「スーツを出すなら手伝いましょうか?」
「なんだ、起きてたのか?」
「今、起きたんです。今は真夜中、開いていたとしても酒場ぐらいだと思いますよ。」
「僕は死人だからな、それくらいがちょうどいい。ユウスケを起こせ。スーツを出すぞ。」
俺は奥のベッドルームで気持ちよさそうに寝ていた五代さんを起こし、来るまでに買っておいた厚手の服を着こんで、外にでる。
「寒いですね。」
「眠気覚ましにはちょうどいいです。
スタークさんのスーツを運びましょうか。」
俺と五代さんは、助手よろしく、バラバラのスーツを車の外に運び出す。
すると、スタークさんが手を伸ばすと、それぞれのパーツがスタークさんに向かって飛んで行き、あっという間にアイアンマンスーツになっていた。
「J.A.R.V.I.S.どうだ?」
『マーク42、チェックを開始します。
……各部との接続、チェック。
……飛行システム、チェック。
……戦闘システム、チェック。
システム、オールグリーン。
バッテリーは100%、内蔵武装の残量は97%です。』
「スタークさん!先に行くんですか?」
「いきなり、アイアンマンスーツで行けば驚かれるでしょうから、スーツだけ隠して潜入した方がいいでしょう。
スーツを脱いだ場合の厚手の服を渡しておきます。」
俺は、あらかじめ手に持っていたバッグをスタークさんに渡した。
『助手も板についてきたな。
ありがたくもらっておこう。
先に行く。』
スタークさんはそう言うと、バッグを持ったまま、飛んで行ってしまった。
「五代さん。乗って下さい。
急ぎましょう。」
俺達は、キャンピングカーに乗り込み、その後を追うのだった。
町の中に入ると、明かりは街灯ぐらいで家々の電気は消えていたが、酒場と思われる場所の電気はついていて、さらに、こちらからは見えないが、道脇が、淡い光を放っていた。
俺は、五代さんが降りるのを確認すると、キャンピングカーを再びクラインの壺の中に戻し、酒場ではなく、光を放っていた道脇を見に行くことにした。
「これは…」
そこは、地面が何かの原因でえぐれ、その周りの壁には、黒い人型の模様のようなものが5つ残っていて、近くには萎れた花束と、ろうそくの火が揺れていた。
道から見えた光は、このろうそくの火だったようだ。
そして、そこには何枚もの服を重ね着してフードを被った人、スタークさんがいた。
「ユウスケ達も来たな。僕も今来たところだ。
スーツを隠すのに手間取ってな。」
「スタークさん、これって。」
「ユウスケは、チャイニーズシアターの現場を見ていたんだったな。」
「はい。それと、同じように見えます。」
「僕もそう思う。J.A.R.V.I.S.。」
『自殺したと思われるのは、チャド・デイヴィス、アメリカ陸軍軍曹。
住民からは、従軍したことで精神を病み、爆弾を作って自殺したとのことです。
その時点での最高温度は、摂氏3000度、チャイニーズシアターの爆発現場と比較すると、比較率96.78%で、同様の爆弾だと思われます。』
「そのチャドという男に家族は?」
『母親が一人、この町に在住しています。
酒場に入り浸りのようです。』
「そうか。さっきの酒場だな。」
俺達3人は、この時間で唯一電気がついている酒場に向かって行く。
その酒場の近くには、車が止められていた。
「いらっしゃい。こんな時間に珍しいな。
なんにするんだ?」
「悪いが、チャド・デイヴィスの母親を探しているんだが。」
「なんだ、あの女の知り合いか?
そこで、酔いつぶれている女だ。
酒が飲みたくなったら呼んでくれ。」
指図されたテーブルに行くと、ブロンドで、長髪の女性がテーブルに顔をつけていた。
俺と五代さんは、近くの別のテーブル席に座り、様子を見ることにした。
「デイヴィスさん。」
「んん?なによ、まだ何かあるの?資料は渡したでしょう。」
「資料を渡した?誰に?」
「何?あんたあの女とは別口かい?」
「我々は息子さんの死は、自殺ではないと思っている。
利用されたんじゃないだろうか?その資料を渡した奴らに。」
「え?もしそうなら、私は息子の持っていた機密情報をみすみすそいつらに渡したっていうこと?」
「もしかしたら、奴らはあなたも殺すつもりかもしれない。
送って行きますよ。
ユウスケ。」
「え、俺ですか?
まあ確かに、ご婦人のエスコートは必要ですよね。こちらへどうぞ。」
五代さんは、その女性の手を取ると、まるで自分の母親のように介護をしながら、立ち上がった。
「スタークさん。外の車で、男が俺達を見張ってますよ。」
「ハザマも気づいてたか。その男を締め上げれば、資料を持っていったていう女のこともわかるだろ。」
俺は、五代さん達より先に酒場を出て、扉を開いて待ち、五代さん達を送り出す。
すると、近くに止めてあった車から男が降りて来て言う。
「やっと来たか。余計な奴らもいるが、不幸だったと思ってくれや。」
その男は、拳を振り上げながら、女性を支えながら歩く五代さんに向かうが、その目の前に、上空からアイアンマンが、降ってきた。
『ストーカー君は、女性のエスコートにふさわしくないな。』
とスタークさんが、その男を捕まえようとしたが、その男はなんでもないような顔で、アイアンマンスーツの腕を握った。
すると、男の手が赤く赤熱し始めて、スーツの腕を軋ませながら、握り潰そうとしてきた。
スタークさんは、もう片方の手を向けて、リパルサーを放とうとしたが、その腕も握られてしまい、腕を動かせなくなっていた。
「五代さん!早くご婦人の避難を!」
「わかりました!」
俺は、ディエンドライバーを取り出して、その男に向けるが、その男はお構い無しに、アイアンマンスーツを破壊しようとしたので、光弾を放つが、当たってえぐれたところが、赤く赤熱させながら、みるみる復元されていった。
スタークさんは、とっさに足のブースターを利用して、その男ごと体を振り回して男を投げ飛ばした。
するとその時、どこからともなく、スーツ姿の女性が現れて、俺に襲いかかろうとしたので、とっさに飛んで転がりながら躱し、ディエンドライバーの前部をスライドさせる。
KAMENRIDE
そして、いつの間にか俺の目の前にいたその女に向かってトリガーを引いた。
「くっ、変、身!」
DI!END!
3色に形成されたシルエットが、その女を吹き飛ばして、変身を完了させる。
「アッハ~!アイアンマンだけだと思ったら、ディエンドもいるなんて、楽しめそうね!」
赤熱させた顔をこちらに向けながら、人間とは思えない身体能力で向かってきた。
「こいつら、ニンジャ並か?
いや、再生力を含めればそれ以上か!」
俺の仮面ライダーとしての名前も、ニューヨークの戦いでクウガと一緒に広まっている。『仮面ライダー』は日本での呼び方で、他の国では固有名称だけが広まった。
ちなみに、ディエンドもクウガも、世間一般的には、アベンジャーズのメンバーと認識されているが、正確にはSPIRITSのメンバーである。
女は、予想以上に素早く、動きもテクニカルだ。
闇の手のニンジャのように武器ではなく、赤熱しているとはいえ、素手のためにこちらへのダメージはあまり感じなかったが、動きが変則的なために、こちらからも攻撃を当てにくく、カードを挿入する暇がなかった。
光弾を放つも、それを気にした風でもなく、女の腕や脚の骨も骨折してもすぐさま巻き戻しのように回復していく。
すると、スタークさんが男と戦っている最中に放ったリパルサーを、男が回避した射線上に女がいて、女が吹き飛ばされた。
俺は、チャンスだと思い、カードを挿入する。
FINALATTACKRIDE DI DI DI DIEND
ディエンドライバーを取り巻く、無数のカードが照準となり、渦を巻くように敵を捕捉して、そのカードを巨大なエネルギーに変え、渦の中を通すように発射する『ディメンションシュート』を放った。
手足が曲がった状態の女が立ち上がり、赤熱した不気味な笑みを向けていたところを光線が襲いかかり、跡形も残さず消滅させた。
「エレン!?」
男が叫び、注意がこちらに向いたことを見逃すはずもなく、スタークさんは両手のリパルサーを放って、男を遠くに吹き飛してしまった。
『ハザマ、男が乗っていた車に何か残ってないか?』
俺は変身を解くと、車からファイルを取り出してスタークさんに見せる。
スタークさんは顔のアーマーを開けると、そのファイルを受け取って、読みはじめた。
「スタークさん!ハザマさん!」
そのタイミングで、五代さんも戻ってきた。
「ご婦人は、大丈夫でしたか?」
「はい。だいぶお酒が入っていたようで、送りとどけたら、すぐに寝てしまいましたよ。
それより、敵は?」
「俺が相手をした女は、倒しました。
スタークさんの方の男はリパルサーで吹き飛ばしましたが、あの回復力なので、じきに戻ってくるかもしれません。」
「ファイルを受け取った後に、ご婦人を始末するために余裕をこいていたのが、こいつらの敗因だな。
ハザマ、車はどこにある?」
「ゲート能力で出せますよ。」
「犯人が、わかった。すぐに出発するぞ。」
そう言うスタークさんの手には、ファイルの紙が、行方不明兵士を意味するM.I.A.ではなく、A.I.M.という会社だという意味が示されていた。