ローズ大佐の待つモーターボートが見えてきて、そのまま手を離して乗り込んだ。
そしてクウガゴウラムがクウガに戻りながら、同じく、小野寺クウガが船に乗り込んで、その衝撃で少し船が揺れた。
俺と小野寺さんが変身を解くと、ローズ大佐が近づいてくる。
「どうだった?」
「一人では無理そうだったので、助っ人を呼びました。小野寺さん、奥で休んでいてください。」
途中から日本語になったので、それを通訳してから状況を説明する。
「エクストリミス兵士によって飛行機を爆破されてしまいました。
幸い、乗組員13名は、彼のおかげで無事に救助しています。
ですが、残念なことに、大統領の護衛は全滅、大統領もアイアンパトリオットによってさらわれてしまいました。」
「そうか。大統領は殺害されていないならば、まだ救出のチャンスはあるか…
それで、奥の彼は?クウガに見えたが。」
「…責めないのですか?」
「…責めてほしいのか?
はぁ。君は志願した任務を失敗したと思っているんだろうが、そもそも君は軍人ではないし、私の部下でもない。
ニューヨークの戦いで、世間からヒーローと呼ばれようと、私から見れば、君は他国の要人と同等の存在なんだ。アメリカ空軍大佐としての立場からすればな。
だが、君はトニーに自分から志願した任務を任されている。
あの目立ちたがりやで自意識過剰のトニーにだ。
だから私も、君に行かせたという責任があって、責められるべきは他国の人間に、自国の大統領を救出させようとさせていた私にある。
軍人で、空軍大佐でありながら指を咥えて待っていることしかできないんだからな。」
「俺は、ローズ大佐がマンダリンの屋敷に捕らわれていた時も、大佐がアイアンパトリオットがから出て気絶させられ、キリアン達が出ていくまで、見ているしかできなかったような男です。
それでも…」
「君は、真面目過ぎるな。
現に、私はこの場にいるし、大統領も誘拐されはしたが、まだ救出の希望はある。
気負いすぎるなよ。」
「そうですね。ありがとうございます。
はは、胃が痛いですよ。」
「お互い大変だな。
ことが終わったら、愛用している胃薬を送ろう。
さて、話しを聞かせてくれ。」
「わかりました。移動しながら話しましょう。」
小野寺さんを見に行くと、椅子に座って眠っていた。
「彼も、クウガなのか?」
「彼の名前はユウスケ・オノデラ、二人目のクウガです。」
「ユウスケと同じ名前なのか。ややこしいな。」
「そうですね。
彼については、少々込み入った事情があるのですが、当の本人は日本との時差で眠たいでしょうから、合流するまでは寝させてあげてください。」
「わかった。」
ローズ大佐の操縦で合流地点に移動する間に、端末を取り出して連絡を入れた。
『ハザマか?J.A.R.V.I.S.との通信が途中で切れたって聞いたが。
何があった?』
「上空で乗り物を乗り換える必要があったので、一度ゲート移動を行いました。
それと、申し訳ありません。
大統領は、アルドリッチ・キリアンに連れ去られてしまいました。
大統領の護衛は、エクストリミス兵士によって全滅、添乗員の13名は、協力者のおかげで無事救出しましたが、エクストリミス兵士によって飛行機を爆破されています。」
『協力者?まあいい。
よくやった。あまり自分を責めるなよ。』
「…よく、わかりましたね。」
『お前の性格は、一緒に行動してだいたいわかったからな。
それに、僕のスーツが万全でも似たような結果になったかもしれない。
汚名挽回の機会はまだあるだろ。『トニー様、汚名は挽回するものではなく返上するものです。』うるさいぞJ.A.R.V.I.S.。
とにかく、合流地点を端末に送った。そこに来い。作戦会議をするぞ。』
「わかりました。」
俺は、連絡が切れた端末の画面を切り替えて、ローズ大佐に見せに行くのだった。
マイアミの海岸線の片隅に、そのキャンピングカーは止まっていた。
ローズ大佐の操縦で、波止場に止めてその場所まで歩いて向かう。
既に時刻は夕方にさしかかっていた。
小野寺さんは、普段は聞きなれない英語で起こされ、ムキムキな黒人が目の前にいたことで、小さく悲鳴を上げて笑われていた。
俺が顔を見せると、一気に安心したのか、こちらによってきた。
小野寺さんには、仲間がいるのでそちらに行ってから説明すると言って、キャンピングカーまでついてきてもらった。
その場所に着くと、どこから持ってきたのか五代さんがピンク色のエプロンをつけて料理をしていた。
スタークさんと、ミスハンセンは、決戦前だと感じさせない、キャンピングカーの前にテーブルと椅子を並べて、五代さんの料理を待っているらしかった。
「あれ?小野寺さんじゃないですか?」
「五代さん!お久しぶりです。
狭間さんに助っ人として呼ばれました。
夜には士や夏海ちゃんもくる予定です!」
「五代さん、あらかじめ言っておきますが、小野寺さん達はパスポートを取ることができませんし、彼らがやらなければならないことを終わらせれば、いなくなってしまうのですから、この間の電話のことを引き合いに出すのは無しですよ。」
「先に言われちゃったら何も言えませんね。
小野寺さんも、どうぞ食べて行ってください。」
「ありがとうございます!ごちになります!」
俺達がしゃべり終わるのを待っていたのか、スタークさんが話かけてくる。
「それで、そいつが協力者か?」
「はい。ユウスケ・オノデラといいます。
彼との会話は、通訳しますよ。」
「そいつもユウスケっていうのか、ややこしいな。
そいつは何ができるんだ。」
「詳しく説明するとややこしい話しになるんですが、小野寺さんは、五代さんのマルチバースの存在なんです。」
いきなりの俺の言葉に、スタークさん達が俺を沈黙して見てきた。
「ちょっと待て。
船の上ではそんな重大なことを言うような雰囲気じゃなかったよな。」
「いやいや、ハザマ、今はなかなかのジョークだった。
突拍子もなく言うあたりがな。95点をやろう。」
「本当のことですよ。俺も最初に会ったときは驚きました。」
「おいおい、ユウスケ。
ミスターハザマの言うことが本当だっていうのか?証拠は?」
「ローズ大佐は見ましたよね。小野寺さんがクウガだったところを。」
「待て。そいつがクウガだって?
僕はユウスケにクウガの話を聞いたぞ。
クウガがもう一人いるっていうのは、どう考えてもおかしい。」
スタークさんが精神的に参っていたところを、五代さんが屋敷に泊まり、クウガの歴史を聞いたのだろう。
「小野寺さん。」
「え?どうしましたか?」
「彼らが、小野寺さんをクウガだというのを信じようとしないので、少しだけでいいので、変身してもらえませんか?」
「わかりました。」
小野寺さんが立ち上がり、少し離れると、両手を腰に当ててアークルを出現させる。
それを見たスタークさんがぎょっとして驚いた。
「変身!」
小野寺さんがクウガマイティーフォームに変身すると、今度は、五代さんが、エプロンを脱いで、その隣に立った。
「変身!」
二人のクウガ、赤のクウガとクウガマイティーフォームが並び立った。
そして二人ともに、変身を解いて、小野寺さんはどや顔をしているのに対して、五代さんにはミスハンセンが抱きついていて、動きにくそうにしていた。
「そんなばかな。
マルチバースは本当に存在したのか…
どうしてそいつはこの次元にいるんだ?」
「重要なのは、彼ではなく、今日本にいる人物で、その人物は、ありとあらゆる次元・世界を巡り渡ることができる能力を持っています。
小野寺さんは、その人物が訪れた、クウガの世界の人で、その人物とともに次元渡航をしているんですよ。」
「今の日本はそんなことになっていたのか…
まさに魔境だな。
エクストリミス兵士並のニンジャがうようよいるんだろ?
それもユウスケから聞いたぞ。」
「ええ、闇の手と呼ばれている存在で、我々SPIRITSの敵になります。」
「闇の手か…今回の件が終わったら調べて見よう。」
「よろしくお願いします。その勢力は日本のみならず、世界中に広まっているらしいのです。
少しでも情報があれば助かります。」
「J.A.R.V.I.S.、情報を集めておけ。」
『承知しました。』
そして、五代さんの料理に舌鼓をうち、作戦会議が始まった。
「ユウスケのほかにもクウガがいるなら、心強いな。」
「ええ、それと予定では、作戦は闇夜に乗じて突入する形になるんですよね?」
ローズ大佐の言葉に、俺は相槌をうちながら、スタークさんに確認する。
「私は参加しないわよ。」
「ミスハンセンは、現場から少し離れた場所に、車で待機してろ。
ローディがスーツを取り返して大統領を救出したら大統領を受け取り次第、離れてもらえればそれだけでいい。
追加の助っ人は、どういうやつらなんだ?」
「食事前に説明しました例の人物は確実です。
その人は所謂何でもありです。
日本のヒーロー、仮面ライダーなら何にでも変身できます。
目的と敵味方の区別さえできていれば大丈夫でしょうから、遊撃手という形がいいと思います。
それと、来るかどうかはわかりませんが、女性の仮面ライダーとディエンドの先代ですね。」
「ディエンドの先代?
クウガだけじゃなくてディエンドも二人になるのか…」
「いえ、ディエンドは少し特殊でして、同じ次元に一人しか存在できないんですよ。
その代わり、保険として、別の姿に変身できるようにしますので、そちらでフォローします。
先代のディエンドは、俺とは違って、周りに気をつかうような戦い方をしませんので、注意をお願いします。」
俺は、門矢さんと海東さんのことを思い浮かべながら話をした。