仮面ライダーになった男は戦いたくない   作:岩鋼玄武

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感想で自分も気になったので、少し追記しました。


これが本当の一般人

まず、こいつの名前は御影 暁(みかげ あかつき)。

俺の高校時代の悪友だった男である。

 

俺の高校時代の始まりはオタクよろしく、休み時間は自分の席で読者をして、昼食は母の作った弁当を食べ、それ以外は図書室で本を漁る毎日だった。

 

そんな時に本をめくって紙で指を切り、絆創膏をもらいに保健室に行くと、同じクラスのこの男が痛がりながら治療を受けていた。

 

その時は保険医の受け答えだけで部屋を出たが、翌日からのこの男の行動が目に付くようになっていった。

 

遅刻の常習者で、教師によく楯突き、ケンカに明け暮れているようで、よく怪我の治療の後よく見ていた。

 

俺は中学の時にバレーボール部だったこともあり、背が高く、ガタイも良かったためにクラスのパリピどもに目をつけられることもなかったが、この男はよくネタにされたりしてよく笑われていた。

 

そんな折、そのパリピどものことに腹を立てた暁は正面から文句を言いに行くとそれすらも笑われてしまい、パリピどもの一人を殴り飛ばしてしまった。

 

それに切れたパリピどもが集団暴行をはじめて、なんとか逃げ出したその男の隠れ場所を誤魔化してやった。

 

それからだ。この男、暁とつるむようになったのは。

 

オススメの漫画やゲームで盛り上がり、ゲームセンターに行っては、音ゲー、格ゲー、UFOキャッチャーに一喜一憂したり、俺はケンカに参加することはなかったが、作戦を立て、道具を用意してやり、逃げ道まで用意してやったこともあった。

 

うちの家は、おおらかな母が腹を空かせた俺たちを見かねて暁も一緒に晩飯をよく食べたりしたのを覚えている。

 

高校を卒業してすぐに俺は東京に出たために、暁のことをあまり考えたことはなかったが、こんな事になっているとは思わなかった。

 

「とりあえず、土下座はやめてくれ。」

 

「だけど、俺はお前に嘘をついていたし。」

 

「そのままだと話しにくいんだよ。

いいから、椅子に座ってくれ。」

 

暁はしずしずと椅子に座り直して、姿勢を正すと、俺も暁の目の前に座って言う。

 

「暁のことはわかった。

正直そんな事態だったのなら、あそこの喫茶店の時に話をして欲しかった。

俺とお前は友達だと思っていたからな。」

 

「友達だから、言えなかったんだよ!

でも、俺もこんなところにくるなんて予想もしてなかったし。

そうそう!ここはどこなんだ?どこかの芸能事務所か!?」

 

「騒ぐな。

…一応言っておくが、ここのことを言いふらせば、黄色い救急車を呼ばないといけなくなるからな。」

 

「黄色い救急車?あれってもう無いんじゃ…

いや、わかったから。そう睨むなって!

誰にも言わねぇよ!

…どうせ、言っても信じてもらえないぐらいの人望のない状態だしな。今の俺。」

 

「ならいい。

…この場所いや、この世界は、俺達の世界とは違う世界だ。」

 

「いや、それくらいわかる。

一般人の俺らと、芸能人達の住む世界は別だってことだろ?」

 

「はぁ…そういう意味じゃない。

例えるならそうだな…」

 

俺はクラインの壺から、スケッチブックとマジックを取り出した。

 

「ちょ、ちょっと待て、今どこから出した?」

 

「それも説明してやるから、今はちょっと黙ってろ。」

 

そして俺は一枚の画用紙に書きながら説明をはじめた。

 

「俺達が元々いた世界を『現実世界A』だとすると、この世界は『現実世界B』だ。

現実世界Aでは、俺達の家に家族が暮らしているが、現実世界Bでは同じ場所に全くの他人が暮らしている。」

 

「…はぁ?」

 

「だから俺とお前は、この世界には戸籍も国籍も、さらに言えば出生記録すら無い。

何せ俺達じゃない全くの別の人間がいるんだからな。」

 

「何だよそれ…親が俺を見捨てたってのか…」

 

「だからそうじゃない!

そうだな…最近映画を見たか?」

 

「えっ?何だよいきなり。

そっそういえば…元カノと一緒に見に行ったぐらいだな。」

 

「その映画の世界に入って、好き勝手できたら面白いなと思ったことはあるか?」

 

「スターウォーズの世界に入って俺もジェダイに。っていうやつ?

玄が好きな二次なんとかっていうやつだろ?

そういうネット小説とか好きだったもんなお前。」

 

「今の状況が、まさにそれだ。」

 

「…えぇ??え、何、もしかしてあの銀色のオーロラみたいなのを通り抜けるとマンガとか映画の世界に入れるってことか?

…まさかぁそんな、玄こそ黄色い救急車が必要なんじゃないのか?」

 

「しょうがない、証拠を見せる。」

 

俺がディエンドライバーを取り出してカードを装填する。

 

「何だよ、いきなりおもちゃなんて使い出して?」

 

KAMENRIDE

 

「変身!」

 

DI…END

 

シルエットが重なり、ライドプレートがつき差さり、ボディカラーがシアンブルーに変わって、ディエンドに変身した。

 

「暁、お前が知っている世界には、こんな風に変身できる技術があると思うか?」

 

「…え?何その早着替え。

CG?え?何かの撮影だったり、違うの?

うそーん。本当に変身したのか?」

 

いちいち小さく聞いてくるので、首を振ってやれば、開いた口がふさがらないようだった。

 

「信じられないなら、このアーマーを殴ってみろ。」

 

「いいのかよ?段ボールやプラスチックだったら俺の拳で壊しちまうぜ。」

 

「いいから。」

 

暁は椅子から立ち上がって右腕をブンブンと振り回し、勢いよくアーマーを殴りつけた。

 

「痛っって~!!!」

 

「これでわかったか?」

 

暁は右手首を握ってうずくまり、赤くなり開いた右手を見つめながら絞り出すような声で言ってくる。

 

「それって金属かよ…重くねぇのかよぉ…」

 

「以外とそれほど重さは感じないな。

…いい加減にわかっただろう?」

 

「この右手の痛みが、証拠だってのかトホホ…

ああ、わかったよ。この世界が俺達のいた世界とは別の世界だってな。」

 

俺は変身を解くと、再び椅子に座り直して説明を続けた。

 

「お前がこの施設に来て見たっていう有名人な、あの人達はこの世界の人たちで、お前が知ってる有名人の名前ではない。

分かりやすく言えば、そっくりさんだ。」

 

「オダ◯リジョーも、賀◯利樹も?」

 

「そっくりさんだ。」

 

「須◯元気も、天野◯成も?」

 

「そっくりさんだ。」

 

「細川◯樹も、水嶋◯ロも?」

 

「そっくりさんだ。」

 

「…マジか。」

 

「マジだ。

因みに言うと、菅田◯暉、渡◯秀、福士◯汰、吉◯亮、竹内◯真、ロバ◯ト・ダ◯ニーJr.、ク◯ス・エヴ◯ンスなどのそっくりさんもいる。

というよりも、お前が有名人だと思っている人物のほとんどがそっくりさんだ。」

 

「………………マジかぁ。

俺って、そっくりさんに慌ててたのかよ。」

 

 

「手は大丈夫か?説明を続けたいんだが。」

 

「だんだん痛みは引いてきた。ケンカ慣れで良かったことは、手の骨折なんかが起きないように無意識に衝撃を和らげることができるようになったことだな。」

 

暁は再び椅子に座りながら言ってくる。

 

「まずお前に聞くが、仮面ライダーはどれくらい知ってる?」

 

「仮面ライダー?

ほとんど知らないぜ。

若手俳優の登竜門ってことぐらいだな、なんとかレンジャーとかいうのを含めて。

ああ、幼稚園の頃に見てたブラックRXはちょっとは覚えているぐらいだな。」

 

「それじゃあ、アベンジャーズシリーズの映画はどれくらい見た?」

 

「アベンジャーズ?

何だよそれ?ああそういえば、あの体が小さくなるやつ。「アントマンか?」そうそれ。

あれ見て、あんまり面白くなかったからそれからは見てないな。

あれなら見たぜ。バットマンとかスーパーマンとかが出てくるやつ。」

 

「スパイダーマンや、デッドプールは見たか?」

 

「スパイダーマンは最初の三部作を見てからは見てない。

どうせ、あれも続けて見ないと意味ない系だろ?えっ、違うの?

デッドプールは見たぜ。あれは面白かった。

2も面白かった。

ところで、これって何の質問だよ?」

 

「よくわかった。

つまりお前は、この世界についての知識がほとんど無いってことだな。「お前がオタクなだけだろ」うるさいな。

いいか?俺がさっき変身したのも、仮面ライダーだ。」

 

「えっ、そうなの?

お前、いつの間にか改造人間にされてたのかよ。」

 

「ショッカーはいないし、俺も改造人間じゃない。」

 

「えっ?仮面ライダーって、改造人間なんだろ?」

 

「今の仮面ライダーは改造人間じゃないんだよ。

あの銀色のオーロラも、仮面ライダーとしての能力だ。」

 

「えー。いいなあ、俺も変身!とかしてみたいぜ。

なあ、玄はここじゃけっこう偉いんじゃないのか?仮面ライダーなんだし、俺も変身させてくれよ。」

 

「俺もただの、いち社員でしかないからな。

上司に聞いてみるよ。」

 

俺の頭には、この世界で唯一の正当な改造人間の顔が思い浮かべられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいんじゃないか?」

 

「えっ、いいんですか?」

 

俺は反省室から暁を連れて、総隊長室にやって来ていた。

本郷さんは最近ではリハビリも順調で、デスクワークをしながらパワーの調整を練習中である。

 

「はははは。狭間君には、随分と世話になっているからね。

たまには、狭間君の方から要望ぐらいは聞いてもいいと思っていたからな。

ふむ、御影 暁君だったね。」

 

「はっはい!」

 

「いい返事だ。

我々SPIRITSに入隊したいということだったね。

歓迎しよう。

共に、日本の未来を一緒に明るいものにしようではないか!」

 

「はっはい!」

 

「うむ。

彼の書類関係は、総務部である程度話を通しておこう。

当面は、狭間君の部下として扱うといい。彼のデスクも君の部屋に用意しよう。

後、生活の場は総務部に報告すれば、いろいろと融通できるだろう。

よろしく頼んだぞ。」

 

「ありがとうございました。」

 

実に嬉しそうな顔の本郷さんに、呆けた顔の暁を連れて、部屋を出た。

 

「なあ、あれって藤◯弘、…」

 

「そっくりさんだ。」

 

まあ、実際にはこの世界には◯岡弘はいるのだが、本郷さんの場合は本当にただのそっくりさんなので、嘘は言っていない。

 

「…マジかぁ。」

 

「因みに、改造人間で、仮面ライダー1号だ。」

 

「えっちょ…」

 

 

 

 




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