SPIRITS本部の上、つまり『東洋特殊撮影技術研究株式会社』のビルには、撮影スタジオやアクターさん達の訓練施設、小道具大道具制作場所等の施設があるがそれは下層の話。
上層は主にSPIRITS本部に勤める人員の住居エリアとなっていて、隊員の元々は警察組織のためにセキュリティも警備も万全であり、今では空き部屋待ちとなっていた。
俺達二人はそんな住居エリアにある、俺の部屋に来て小さなテーブルを囲み、今後のための話合いをしていた。
「感謝しろよ。俺の住居をそのままシェアハウスとして貸し出すんだからな。
家賃は給料が安定してもらえるようになってからでいいし、3食は地下本部で取ればただみたいなものだからな。
下着やらアメニティ関係は、俺が金を貸すから買ってくればいい。」
「本当にマジで感謝してるって、衣食住完備にセキュリティも万全とくれば文句なんて思いつかねぇよ。
元の世界の住居は元カノの蒸発やヤクザ、実家も追い出されてたから本当助かった。
基本的な衣服は支給された隊員の制服を着てりゃいいしな。」
「基本的な職場は、俺と同室だから事務作業はある程度教えてやれる。
それと予想はしているだろうが、この世界は俺達の元の世界とは違って、そこまで平和ってわけじゃない。
戦闘訓練があるぞ。」
「あー、まあ。
ヒーローがいれば、悪の秘密結社的なやつがいるってことだろ?
でもショッカーはいないのに、仮面ライダー1号はいるのな。」
「そこは複雑な事情がある。
総隊長のプライベートにも関係するから、聞きたいなら覚悟して聞けよ。
話をしておくが、俺達SPIRITSと敵対している組織は今のところ3つ。」
「3つもあんのか。」
「一つ目は『テンリングス』、具体的な規模もわからないし、直接的な戦いもないが俺の能力、銀色のオーロラによる転移能力を狙っているらしい組織だ。
少し前にテンリングスと思われるテロ集団と戦闘になったが、その名前を騙っていた別の組織だった。
だが、いまだに俺の能力を狙っているらしいという情報がSPIRITSに入ってくるからな。
今のところ直接的な敵対はしていないが、無視もできない。そんな組織だ。」
「戦闘って、オタクのお前が?
仮面ライダーってすげぇんだな。」
「変身する俺の心境の変化もあった。
だから戦えた。それだけだ。
二つ目だ。『ヒドラ』と呼ばれる連中だな。
こいつらは、元々ナチスドイツのいち組織が派生してナチスを裏切り、秘密結社になったのが元だと言われている。」
「うわ、ナチスとか一気にB級映画っぽくなったな。」
「ナチスとサメはB級映画に欠かせない要素だと言われているらしいからな。
それはともかく、ヒドラが最も活発だった時期は1940年代、この世界の第二次世界大戦中だ。
その時期にアメリカのヒーロー、キャプテンアメリカによって一度壊滅的な状態になっていた。」
「ああ、キャプテンアメリカは聞いたことあるぜ!」
「見たことは?」
「無い。」
「話を続けるぞ。
その時期にヒドラは壊滅はしたが、消滅はしなかった。
その思想、組織、技術を受け継ぐ者達がいて、それが現代では様々な組織の中に寄生虫のようにヒドラのメンバーがいる状態だ。
様々な国家、政治、軍部、企業に潜んでヒドラに都合の良い世界にしようとしている。」
「ちょっと待て、まさか。」
「安心しろ。SPIRITS内には、ヒドラはいない。」
「何でわかるんだ?」
「所謂、踏み絵をやった。
ヒドラのマークはドクロマークにタコの足が生えたような形をしているが、隊員の一人一人を呼び出し、そのマークが描かれた紙を渡して『破れ』と言い渡したんだ。
ほぼほぼの隊員は普通に破り捨てたが、中には激昂して殴りかかってきたやつもいた。
そういうやつらは今どうなっているかは俺は知らんが、まあ牢屋にでも入っているんじゃないかね。」
「えぇ…マジもんのスパイとかいんのか。」
「そういう意味ではこの世界は元の世界よりも、スパイ活動は活発だな。
俺の秘書扱いされている人も、元々は企業間の産業スパイだった人だしな。
ヒドラは表には出にくいから、戦闘というよりかは対情報戦や暗殺対策が必要な敵対組織ってことだな。
そして最後の三つ目だ。」
「もういいよ。俺はもうお腹いっぱいだっての。」
「通称『闇の手』と呼ばれるやつらだ。
こいつらが俺達SPIRITSの最も敵対している組織になる。
やつらの詳しい目的はわかっていないが、闇の手は一時期、日本の裏社会を牛耳っていたこともあるし、暴力団関係を手下にして表社会すら支配下にしようとしていたやつらだ。
主戦力は黒装束に身を包んだやつら、通称『ニンジャ』だ。」
「えっ?忍者が敵なのか。
忍者って、日本のダークヒーロー的なやつじゃねぇのかよ?」
「お前の思っている忍者像はバットマンとかそういう感じで考えているんだろうが、実際には外国人が考える日本かぶれのニンジャ像が近い。
一人一人の戦闘力はプロレスラーぐらいなら一捻りできるだろうぐらいの強さで、刀や槍、鎖鎌や手裏剣なんかも使ってくるぞ。
しかも負けそうになると、必ず自爆特攻してくる。」
「自爆って、もしかしてスプラッタ?」
「もう粉々になるぐらいの爆薬とか平気で使ってくるからな。
肉片はないが、爆発の煙に血の煙が混じっているような感じだ。
しかも足元から頭まで黒装束だから、性別も不明、正体を暴こうにも肉片も残らない始末だ。
SPIRITSの隊員の中には、あれは人間じゃなくて人工で作られた生物兵器なのだという説も出ている。
なんせ、あれはただの戦闘員でしかないんだからな。」
「はぁ?
えっ、そのニンジャっていうヤバいやつらより強いやつらがいるのか?」
「『ファントム』と呼ばれる怪人だ。
こいつらは元々普通の人間だったが、闇の手によって集団拉致されてとある儀式によって誕生してしまった存在で、本来は仮面ライダーウィザードっていう作品に登場する怪人で自己中心的なやつらなんだが、闇の手のやつらに洗脳かなんかされたらしくニンジャを手下にして闇の手の勢力を拡大するために動いている。
まあ本来なら普通には倒せないファントムが仮面ライダーの必殺技ぐらいなら倒せるようになっているっていうこっち側の利点もあるんだが。」
「ちょっと待て、情報量が多い多い。
つまり俺が所属することになるSPIRITSってのは、闇の手っていう日本を支配しようとしているやつらと戦っているってことだな。
んで、そいつらにはファントムっていう怪人とニンジャの手下がいて、普通の人間じゃ太刀打ちできないってことだろ?」
「よくまとめたな。」
「要領はいい方なんだぜ。こう見えても。」
「そうだったな。
それじゃ、確認することがあるから俺が呼んだら隣の部屋に来てくれ。」
と、俺は寝室に向かうと扉を締めてオーロラを開く。
するとベッドには、土豪剣激土、光剛剣最光、煙叡剣狼煙以外の聖剣が立て掛けられていた。
「暁、ちょっと来てくれ。」
リビングにいる暁を呼ぶと、不思議そうな顔をして入ってくる。
「なんだこれ?剣…か?
随分とカラフルだな。」
「ああ、一旦そこで止まってくれ。」
扉のところで暁を止めると、ちょっと不満そうに言ってくる。
「なんだただ自慢したいとかじゃないよな?」
「そういらつくな。
これらは、仮面ライダーセイバーという作品に登場する変身アイテムなんだが、アイテムそのものが意志を持っていて、自分が使うのにふさわしい人物が現れると、その手元に引き寄せられるようになっている。
その場所から、これらの剣に向かって『こっちに来い』と思って見ろ。」
「よくわからんがわかった。」
暁はその場所で手を伸ばすと、無言で何かを考えているようだった、そして目を瞑って眉間にシワを寄せていたが、ついには声に出してまで呼んでいた。
「こっちに来い!
…来ないぞ。それ、偽物なんじゃないのか?」
俺は再びオーロラを開いて剣をクラインの壺に移動させると、リビングに戻って座った。
「あれらは本物だ。
何せ実際に剣に選ばれた人もいるからな。
お前の現状と、これからやっていくことができたなら俺からは目標を用意してやる。」
俺の真剣さがわかったのか、黙って対面に座ると聞いてくる。
「何をやらせる気だ?」
「1年、伸ばせても1年半であの剣のどれかに選ばれるぐらいになってみせろ。
ただし、報酬は用意する。
1年から1年半までに剣に選ばれてセイバー系列の仮面ライダーに変身できれば、元の世界でのお前が背負わされた借金は俺が返済してやる。
それに、お前の両親の説得も協力してやる。
それでも不満なら、蒸発したっていう元カノの捜索の手伝いもしてやろう。」
「どうしたいきなり?」
「俺は正直、友人のお前が仲間に加わってくれたのはめちゃくちゃありがたいことだと思った。
だが、俺が今の地位にいるのにお前がいち戦闘員程度でしかないのはどうかとも思った。
だから、強さと覚悟を持って俺の背中を守れるぐらいになってもらいたいんだ。」
暁はしばらく考えを巡らせるようにして、うーんと目を瞑って考えているようだったが、目を見開いて言う。
「わかった。
仕事の斡旋をしてもらって、そこまでしてもらえるなら俺も覚悟決めてやらせてもらう。
1年半だな、お前も覚悟して待ってろよ。」
俺達は、同時に立ち上がるとハイタッチをした。
翌日、俺の仕事場には新しく暁用のデスクが用意されていた。
俺のデスクは出入り口の正面にデンと置いてあり、俺の席から向かって右手が凰蓮さん、左手に耀子さんが座っており、暁のデスクは凰蓮さんの隣に据えられていた。
暁は真新しい制服に身を包んで部屋に入ってくると、最初の言葉はあいさつではなかった。
「なんか玄の位置って、フリーザみたいだな。」
「だーれが、ドドリアですって!!」
俺よりも反応が早かったのは凰蓮さんで、立ち上がって暁に詰めよっていた。
「誰もそんなこと言ってないじゃないッスかぁ!」
暁は、大柄でスキンヘッドにオネェ言葉の凰蓮さんに詰めよられて、既に三下言葉に切り替わっていた。
「そうすると、私はザーボンってことよね。
…変身したら化け物になるって言いたいわけ!?」
ついには耀子さんにも詰めよられて、終いには踏まれていた。
「…そんな、ピンヒールで、ありがとうございます!」
暁ってこんなやつだったっけ?と今更ながらに困惑気味の俺は慌てて止めに入ったのだった。
後一話書いたら、キャプテンアメリカ編に入ります。