side御影暁
「日本を平和を守るため!」
「「「日本を平和を守るため!」」」
「わーるいやつらをぶっ飛ばせ!」
「「「わーるいやつらをぶっ飛ばせ!」」」
「市民の平和を守るため!」
「「「市民の平和を守るため!」」」
「無敵の力を見せつけろ!」
「「「無敵の力を見せつけろ!」」」
『ボウヤ達!声が小さいわよ!
そんなんじゃ小鳥のさえずりと一緒!
もっとお腹から声を出しなさい!』
「「「サー!イエッサー!」」」
「日本の平和を守るため!」
「「「日本の平和を守るため!」」」
この世界に来てから早1カ月。
玄の部署に来てからは、事務仕事をさせてもらえてない状況だ。俺が初日に発した言葉が原因なので後悔しかない。俺の精神は既に折れかけている。
毎日20キログラム以上はある重りを身に付けて、朝から晩まで1日中を走らされるのだ。
教官殿の凰蓮さんや、京水さんが後ろから声をかけてくるが、少しでも勝手に休んだり文句を口に出そうとすれば、いつの間にか近くにいて下半身を眺めながら舌なめずりをしてくる。
そう。俺の貞操が狙われているようだった。
その度に俺は恐怖で走り出し、なんとか1日を終えて本部のめちゃくちゃうまい飯を食べて、部屋のシャワーを浴びてマッサージをしてから寝るのだ。
マッサージをしないで寝て、ひどい筋肉痛になったことがあったが、『筋肉痛は蜜の味よ~♡』という訳のわからない言葉を言われて連れ出されて、走らされる時もあった。
俺と同じメニューをこなす御同輩先輩達は、俺を励ましてくれる人もいるから、なんとかやれている。
たまに玄も参加してる時もあるんだが、走っている途中で教官殿に電話だと言う理由で時々呼び出されていたから、もう気にしないことにしていた。じゃないと途中で倒れたり嘔吐したりで脱落していった人たちは、復帰してきたかと思ったら教官殿達に対して体をくねくねさせながら熱い視線を送っていたのを見てしまって、ああなるのは俺はごめんだと思ったからだ。
玄との約束を守るため、俺の貞操を守るため、2週間を走りきると、急に走る時間が短くなり、朝と夕方の10キロメートルに変更された。
まあ、それでもめちゃくちゃきついんだが。
御同輩達は泣いて喜んでいたが、待っていたのはハードな筋トレの日々だった。
休んだりすればそれだけ増やされる。
だけど本部の食堂ならめちゃくちゃうまい3食腹一杯食えるから誰も文句はない。
そしてそれも2週間が過ぎると、大ハードから小ハードぐらいになった。
本部ビルの近くにある銭湯では、俺も含めて鏡の前でマッスルポーズをする人が増えてお互いに笑いあったりしていた。
そして玄の部屋の一室につくられた俺のプライベートスペースの布団の上で、日課になったストレッチをすると玄が帰ってきた音がする。
出迎えてやると、なんかやつれた顔をしていたから話を聞くといろんな企業の偉い人との打ち合わせや橋渡し、技術交流のプレゼンや新隊員のスカウトにと玄は玄で忙しいようだった。
「ああそういえば、暁はそろそろ入隊してから1カ月だろ?」
「ああ、そうだな。」
「最初の一月は基本的な体力づくりだが、それを過ぎると戦闘のための座学や対人戦、連携の訓練に登山とか量産品の仮面ライダーに変身できるかどうかの適正テストなんかもある。
それにそろそろデスクワークもしてもらいたいぐらいなんだが、まあもう一月はそれどころじゃないだろ。」
「マジか、座学とかあんの?」
「あるぞ。部隊長に昇格したい隊員もいるからな。
座学テストや実技テストなんかをクリアすれば、部下もつくし、給料も増える。
その分、仕事は増えるがな。」
「玄には部下っているのか?」
「いるぞ。
4人だな。暁を含めて。
耀子さんと凰蓮さん、あと一人は受け入れ準備中だ。」
「教官殿が玄の部下なのか!?
…もしかして部署のメンバーか?」
「そうだな。うちの『交渉部』は人手は少ない分、仕事も多岐に渡る。
まあ、ほとんど俺の仕事みたいなもんだな。
凰蓮さんは俺のボディーガードみたいなもんだし、耀子さんは少しずつ仕事を覚えてくれるけどスケジュール管理や雑事がほとんどだ。
暁や後の一人も俺のボディーガードみたいな扱いらしいから、早いところ暁が仮面ライダーになってくれれば俺の負担も減るかもな。」
えっ、玄ってそんなに重要人物だったのかよと心の中で思ってしまう。
「俺ってそんなにモブに見えるか?」
「あれ?声に出てたか?」
「お前の顔がわかりやすいんだよ。
俺のことを『え~?こいつって重要人物なのかよ?』っていう顔だったからな。
昔っからうちのお袋にも腹が減ってそうな顔だなって言われて飯を食わせてもらってただろ。
もう少しポーカーフェイスの練習ぐらいしたほうがいいんじゃないか?」
「ポーカーフェイスって、練習するものなのかよ?
まあやってみるけどよ。」
洗面所の鏡の前に行って、百面相になってみたりしたけれど、途中でからかわれたって気づいてから文句を言おうと玄のところに行くと
「ようやく、暁の顔の眉間のシワが消えたな。
やっぱりきついよな?
俺の時はもう少し優しい訓練量だったからな。
でも凰蓮さんも考えて内容を決めているだろうし、やっぱり指導するには教え子に死んで欲しくない気持ちがあるだろうからその気持ちを汲んでやれとまでは言わんが、少しは考えてやれよ。」
いつの間にか、毎日の肉体改造に嫌気が差していたらしく、玄に言われなければどこかで爆発していたかもしれないと思うと、少しゾッとした。
そうだったよな。この世界は元の世界よりも死にやすい世界だった。
先週、励ましの言葉をかけてくれた先輩が、自分の同僚がニンジャの自爆に巻き込まれて亡くなったって俺に教えてくれたのも、俺を死なせたくないからなんだよな。
苦手な座学も死なないため、仲間を死なせないためにも努力する必要があるってことだな。
明日のためにも、俺は早めに就寝することにした。
side狭間玄乃
2014年の1月に突入した。
暁はみるみるうちに隊内で成長を果たし、黒影トルーパーとして日々研鑽を積んでいるようだった。
新年の挨拶を済ませると、俺は本郷さんから呼ばれて総隊長室の前に行き、ノックをする。
「入りたまえ。」
「失礼します!」
そこには本郷さんともう一人の真新しい制服を着た人物が立っていた。
「…あんたは。」
「お久しぶりになるね。
ようやくSPIRITSに入隊できるようになったのか。
よろしく、朔田 流星君。
改めて狭間玄乃だ。」
そう彼は仮面ライダーメテオの朔田流星だ。
暁に説明したように、◯沢亮のそっくりさんである(笑)
俺が送ったメテオドライバーとメテオスイッチによって記憶を取り戻した彼は、昴星高等学校から天ノ川学園高等学校に特別交換編入生として半年の期間、如月弦太朗がいる2年B組に行き、再び友情を育んだ。
彼は昴星高等学校を卒業後、インターポールではなく恋人の野座間友子と一緒に普通の大学生となっていた。
ジークンドーの使い手でもあり、仮面ライダーメテオでもある彼をスカウトしに行ったのだが、恋人との大学生活も大切だから待って欲しいというお願いを受けていた。
「うむ。彼もまた最近の闇の手の襲撃にあった場所にたまたま居合わせたらしくてな。
それに憤慨して、SPIRITSの入隊を決心してくれた。
それと、彼の恋人君もSPIRITSの総務部に就職したという報告も受けている。
今後は、交渉部の狭間君の部下として動いてもらうことになるだろう。」
「狭間さん、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしく。」
「うむ。
では朔田流星君は退室したまえ。
ああそれと狭間君には引き続き話があるから残ってくれ。」
「失礼しました。」
「朔田君、また後で。」
「はい。ああそれと流星で構いませんよ。」
そう言って彼が出て行くと、俺と本郷さんだけになった。
「実は、S.H.I.E.L.D.から会談の申し込みが入った。」
「S.H.I.E.L.D.、ニック・フューリー長官がですか?」
「うむ。アメリカに私直々に来て欲しいそうだ。
そこで、狭間君達交渉部を護衛として連れて行きたいと考えている。
ああ、向こうで何かあった場合は、私はよっぽどのことがない限りは動くことはないからそのつもりでいて欲しい。」
「護衛の必要性を聞こうとして被せてきましたか。
ですが、我々交渉部は暁は半人前、先ほどの彼にいたっては入隊したてですよ。」
「そのあたりの裁量は君に任せるが、朔田流星君は入隊したてとは言え、英語も堪能で立派な仮面ライダーだと聞く。
戦力は多いほうがいいと思うがね。」
「何かあると?」
「SPIRITSができて間もない頃、S.H.I.E.L.D.のフューリー長官は自ら足を運んで協力をお願いしに来た。
そんなフットワークの軽い彼がわざわざアメリカの本部に呼ぶのだ。
何か手伝って欲しいことがあるのかもしれん。」
「わかりました。調べておきます。」
「うむ。頼むぞ。」
「それでは失礼しました。」
俺は総隊長室を出て、交渉部に着くと、その中ではでは既に流星君はあいさつを済ませたのだろう、耀子さんの隣に用意されたデスクで私物の整頓をしていた。
「お疲れ様です。」
「お疲れ様です。」
耀子さんの声かけに返答して、自分のデスクに向かいながら眺めると、耀子さんはデスクに置かれたノートパソコンを開いて忙しそうにしているし、凰蓮さんは書類に四苦八苦している隣の暁にいろいろと教えている様子だった。
「みんな聞いてくれ。
もう挨拶は済んだだろうが、我が交渉部に新しく朔田流星君が入ってくれた。
彼もまた英語が堪能で、仮面ライダーでもある。
協力して任務に励んでくれ。」
「「「「はい!」」」」
「それと、総隊長からの依頼だ。
近々、アメリカのワシントンD.C.にある戦略国土調停補強配備局、通称S.H.I.E.L.D.の本部に会談のため総隊長の護衛として同行することになった。
そこで、みんなにも同行してもらうことになる。」
「あら、面白そうじゃない。」
「腕がなるわね。」
耀子さんと凰蓮さんは楽しみな様子だった。
「あの、俺もいいんでしょうか?」
「部長が一緒に同行するように言ってるんだぜ。
もちろん朔田もだろうさ。」
この数ヶ月で私公を分けるようになった暁が流星君の近くに来て言う。
「流星君にももちろん同行してもらう。
良かったな、初任務が海外なんてなかなかないぞ。
それと残念だが、暁は留守番だ。」
「えー!?なんで!」
「この数ヶ月で地力を伸ばしたとはいえ、この中ではお前が一番弱い。
それに、聖剣を前にしてもまだうんともすんとも言わないじゃないか。」
「あの?何の話でしょうか?」
「彼は私みたいに、こういう剣を使う仮面ライダーになるために修練中なのよ。」
困惑する流星君に答えたのは、耀子さんだ。
その手には、煙とともに『煙叡剣狼煙』が現れて流星君に見せていた。
そう土豪剣激土に続き、煙叡剣狼煙もまた新たな主人を選んでいて、スカウト後の入隊の時に彼女の元にオーロラを煙が通って姿を現したのだ。
最初は困惑していたが、今では既に使いこなしていた。
落胆する暁に活を入れている凰蓮さんを横目に、次の任務に向けて取り組み始めるのだった。