仮面ライダーになった男は戦いたくない   作:岩鋼玄武

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仮面ライダーの歴史

「これは?」

 

不思議そうに聞いてくるフューリーさんに、中身を開いて見てもらった。

 

そこに入っていたのは一つの大容量のメモリーチップである。

 

それを手に取ったフューリーさんは、接続口にそのメモリーチップを挿入口に差し込み、その中身を見始めた。

 

「何だこれは…報告書?

それに映像ファイルのようだが。」

 

正面の大画面に現れたそれらをお互いに共有しながら俺が解説をはじめる。

この一つ芝居は本郷さんにも、この世界の仮面ライダー原作者にとっての理想でも、賭けになるものだ。

あの時、本郷さんと原作者、撮影陣で開かれた酒の席で懇願されて行った昭和ライダーの上映会、原作者さんと撮影陣が語ったあの会話から始まり、SPIRITSの本部があの場所に設立されたあの瞬間に、この俺と、この世界の原作者と特撮の撮影陣、本郷さんの間で形作られたこの計画はいつか行われることになっていた。

念のために本郷さんの部屋の隠し金庫に入っていた『これ』を、頼まれて取って来たのである。

 

この、あり得ないことをあるということにできる計画を実行できるのはこの瞬間しかないのかもしれない。

 

開幕は、本郷さんによる一言だ。

 

「S.H.I.E.L.D.は地球の守護者のように振舞っているが、その実、この世界を守ってきた実績はとても浅い。」

 

「何だと?」

 

「この世界はいくつもの要因によって崩壊し、破壊され、しかしその度に英雄達の決断によって歴史が逆行し、作り直されてきた。

世界の平和の為になるのならばと、幾人もの英雄達は、人々の記憶から消え失せ、その歴史は無かったことにされてきました。

人類が我々を悪だと攻めて来た歴史もありました。

人類が僅かしか残らなかった歴史もありました。

その度に、裏にいた諸悪の根源を叩き潰し、そして世界はやり直されました。

我々は守ってきたのです。何度も、何度も。

そして、英雄達と行動を共にしたある人物が動きました。この世界に人々に、英雄達のことを知って欲しいと、漫画を描き、特撮というジャンルによって再現しようとしました。」

 

「これは…」

 

「しかし、本来この世界を救った英雄達は見向きもされずに廃れ、人々に求められたのは新たなヒーローでした。

これは、英雄達の戦いの歴史が唯一残された証拠にして、歴史が逆行したという証拠でもあります。

そう、『仮面ライダーの歴史』です。

フューリー長官、これを見てあなたが行おうとしていることを、もう一度考えてみてはくれませんか?」

 

実際に仮面ライダー歴史は、いくつもの改変、やり直しが行われてきた。

 

劇場版仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVEにて天道総司によって行われた改変。

 

仮面ライダー電王に登場するイマジン達。

 

仮面ライダーディケイドと、大ショッカーの存在。

 

スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号の歴史改変ロボ

 

そして、仮面ライダージオウ…等々

 

このデータは、もちろん捏造・編集された物だ。

だが、俺の世界で、未来の日本で、この世界にはオリジナルが存在しない物だからこそできる芸当である。

詳しく精査されれば、加工や編集された物だとわかるだろう。

しかし、このままヒドラの蜂起が起こればこれは詳しく精査されないまま世界に広まることになる。

 

実際に仮面ライダーは戦っているのだ。

しかし、隠れ潜んでいた理由もあったのだと世界は知ることになるだろう。

 

ちなみに、変身者に関する情報は載せてはいない。

 

「フューリー長官、あなたは我々が何も知らない、わかっていないと御思いのようだ。しかし、このファイルの2006年の項目を開いてもらいたい。」

 

本郷さんの言葉を聞いたフューリー長官が、画面を操作してファイルを開く。

そこにはゼクター系列のライダー達と、市民を殺害してその人物に成り代わる緑の怪物の姿が写し出された。

 

「この怪物の名前は『ワーム』または『ネイティブ』と呼ばれています。この怪物は殺害した人間の姿形そしてその記憶さえもコピーしてその人物に成り代わりながら社会に溶け込みその数を増やしていました。

彼らの起源は、1971年及び1999年に日本に落ちた隕石から発生しました。

所謂、地球外生命体です。

ああ、現在の地球上には存在していません。

仮面ライダーカブトによって歴史の改変が行われ、地球には来なかった事になっていますから。

フューリー長官、あなたはこのワームと似た存在をよくご存じのはずだ。

1995年のロサンゼルスで起こった事は、我々も把握しています。

あなたが眼帯をしている理由もね。

破傷風は怖いですから。」

 

「…存在しない歴史が記されているのは何故だ。」

 

「2007年の項目には、ああこれです。

『特異点』と呼ばれる歴史の改変の影響を受けない特殊体質の人間もいるのですよ。」

 

フューリー長官は絞り出すように質問してくるが、画面を操作して猫の鳴き真似をしてからその疑問に答えた。

 

「『怪物と戦う時は自らも怪物にならぬよう、心せよ。深淵をのぞく時、深淵もまたお前を見返しているのだ。』

ニーチェの言葉です。

あの小型カメラで覗く映像を見るあなたはいったい何に見えるのでしょうかね?」

 

フューリー長官は、このデータを精査した後に再び会談を行いたいと、今日の会談はお開きになった。

 

俺の本郷さんは目配せをしてお互いに作戦がひとまず一段落したのだと頷きあった。

 

再びスタッフに連れられて部下達と合流しようと移動していると対面からスティーブ・ロジャースさんが眉間にシワを寄せて歩いて来ていた。

 

「ロジャースさん。」

 

「ハザマじゃないか、トリスケリオンに来ていたのか。」

 

「はい。こちらの方の付き添いですね。」

 

「初めましてになる。

SPIRITSの総隊長のタケシ・ホンゴウだ。」

 

「あなたが!初めましてスティーブ・ロジャースです。」

 

「君の話はよく聞いているよ。キャプテンアメリカ。

うむ。力強い握手だな。」

 

「貴方も。ただ者ではないようだ。」

 

「スティーブさんはどうしてこのフロアに?」

 

「フューリーに言いたい事があってね。あなた方は?」

 

「そのフューリー長官との会談ですよ。

我々としては、一泡吹かせられたと思いますがね。」

 

「それはいい事を聞いた。フューリーはよく隠し事をするからな。

あの男も少しは痛い目にあった方が、S.H.I.E.L.D.の為になるだろう。

そういえば、ハザマの部下に会ったぞ。」

 

「流星君ですね。

報告は受けています。

彼から聞きましたが、いろいろとメモを取っているとか。我々が滞在しているホテルを教えておきます。

この会談はまだ長引きそうなので来ていただければ部下達も喜びます。」

 

「ああ。行かせてもらう。」

 

そして、そこでロジャースさんとは別れて部下達と合流して再び飛電さんの運転する車でホテルに向かった。

 

 

ホテルに戻って数時間するとSPの人からそわそわと落ち着かない様子で来訪者があったという報告を受けた。

さっそく来たのかと思い、案内するように言うと、しばらくしてから部下達や本郷さん、飛電さんが集まった部屋にノック音が聞こえた。

 

そのまま通すように言うと、ロジャースさんに加えて黒人の男性、サム・ウィルソンも同行していた。

 

「まあ!?イケメン!」

 

最初に反応したのは凰蓮さんで、俺の方に向かって来ていたロジャースさんをじっと見ているようだった。

 

「ようこそいらっしゃいました。ロジャースさん。」

 

「友人も一緒に連れて来たがよかったかな?」

 

「かまいませんよ。

初めまして、俺はゲンナイ・ハザマ。」

 

「サム・ウィルソンだ。

いきなりで悪かったな。朝に会ったリュウセイに会いに行くと言うから一緒に来させてもらった。

ランニングの後の送り迎えの礼が言いたくてな。」

 

「その礼はそこの方、飛電さんに言ってください。

運転手は彼の部下なので。」

 

「わかった。そうさせてもらう。」

 

俺の紹介した飛電さんにウィルソンさんが向かい、そしてスティーブさんは部下達と挨拶を交わしていた。

 

「ハザマ。二人だけで話せるか?」

 

とスティーブさんがこっちに来るなり言ってくるので、本郷さんにことわって自分が寝泊まりする部屋に向かわせてもらった。

 

部屋に入り、お互いがソファーに座るとロジャースさんが話しはじめた。

 

「SPIRITSとS.H.I.E.L.D.の会談ではどういう事を話しあったんだ?」

 

「話しあったというよりも、S.H.I.E.L.D.の要求をSPIRITS側がそれに応えろという脅迫まがいの会談でしたがね。

ロジャースさんは『インサイト計画』というものをご存じですか?」

 

「ああ、フューリーに聞いてトリスケリオンの地下に行き、そこで3機のヘリキャリアを見た。

あれはあってはならないものだ。」

 

「…拠点というものはヘリキャリアの事だったのですか。

全人類に銃口を突きつけ、犯罪を犯す可能性のあるものは、それを行動する前に殺戮する。

あれによって将来の世界にあるものは、統治という名の恐怖でしかありません。

いずれ破綻し、必ずそれに抗うもの達によって駆逐されるでしょう。

歴史が繰り返されるだけでしかありません。」

 

「ハザマもそう思うか。

僕はあれをフューリーにやめさせたいと思っている。」

 

「我々SPIRITSもそれに賛成します。

…ちょっと待ってください。」

 

「どうした?」

 

俺はあらかじめ取り出していたものをロジャースさんに渡す。

 

「これは?」

 

「特殊な救難信号を発信するGPS装置です。

SPIRITSでは隊員の全てに渡される標準装備のものになります。

これは予備の物ですが、このスイッチを押すと我々の持つ端末画面に救難信号として表示されます。

緊急の際はこれを使ってください。

我々SPIRITSはロジャースさん、あなた個人の味方として動きます。」

 

「…しかし、それでは。」

 

「かまいませんよ。

フューリーさんとの会談に本郷さんは憤っちゃいましてね。

あんなかつてのヒドラまがいの事を平然としようとする組織の協力など、こっちから願い下げだそうです。

俺の方からはもう少し冷静になって欲しいとお願いしたんですが、次の会談が荒れそうで心配ですよ。

ロジャースさん、あなたがS.H.I.E.L.D.に対して何をしたいのかは知りませんが、俺だってあなたと一緒にニューヨークでチタウリの軍勢と戦った戦友だと思っています。

少しは頼ってください。」

 

「…すまない。」

 

「そこは、ありがとうと言って欲しいですね。」

 

「そうだな。

ありがとう。頼りにさせてもらう。」

 

 

ロジャースさんとウィルソンさんは帰るというので、ロビーまで見送りに行くと凰蓮さんがもう二人にメロメロで、流星君と一緒になって凰蓮さんを抑えるのに苦労して、それに苦笑されながら別れるのだった。

 

 




こんな風に言われたフューリーは、キャプテンに向かって仲間(宇宙猫)に裏切られて目を失ったとか言うのを考えてみると爆笑ものですよね。


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