side御影暁
そこは、モノクロの世界だった。
歩いても歩いても乾燥した大地が無限に広がっているように見える。
何故だか白黒で見える太陽の光と周りの景色。
その荒野の見える景色の先に、次第に様々な物が
見え始める。
車の残骸、建物の瓦礫、潰れた草花、そして、人々の遺体。
そしてこの先に見えたのは、炎を吹かしながら空に浮かぶ大陸が天から降り注ぐ光景に手を伸ばす友人の背中だった。
「…はっ!?…夢?
にしてはめちゃくちゃリアルだったけどなぁ?」
時計を見ても、寝始めてからまだ1~2時間しか経っていない。
しょせんは夢だろうと思って、もう一度眠ることにした。
side狭間玄乃
『ふさわしいものか。皆人殺しだ。』
その声が聞こえたのは、建物の端の影になっているところだった。
次第にその姿を見せると、かろうじて人の形を保っているだけのロボットだった。
配線だらけでボタボタとオイルをこぼしながらよたよたと歩いて来ていた。
「スターク。」
「J.A.R.V.I.S.。」
スティーブさんがスタークさんの仕業なのかと声をかけるが、スタークさんは咄嗟にJ.A.R.V.I.S.に通信を試みても返答は帰って来なかった。
『すまない。寝起きでね。
いや、夢を見ていたというべきか?』
「再起動だ。ひどいバグがあったようだぞ。」
そのロボットとの会話が成立しないことに周りが戸惑いながら、スタークさんは端末に向かって声をかけ続けていた。
『ひどいノイズで、身動きが取れなかった。
糸が雁字搦めに絡みついて…
もう一人のやつはいいやつだったよ。
だけど殺すしかなかった。』
「誰を殺したって?」
『現実世界では様々な決断を迫られることがある。』
スティーブさんの問いにようやく会話が成立し始めていた。
「誰の手先だ?」
『僕には見える。世界を守るアーマーが。』
しかし、ソーさんの問いに答えたのはロボットではなく、スタークさんが喋ったと思われる録音音声だった。
「ウルトロンか?」
『体を持ったな。
ああいや、まだこれはサナギと言った方がいいだろう。』
バナー博士の問いに答えたウルトロンは自分のボディを見回す仕草をしていて、周囲は戦いの前触れを感じて戦闘態勢に入ろうとしているように見える。
そして俺もディエンドライバーを取り出し、一条さんから預かっていた音銃剣錫音を取り出して背中に隠す。
『準備はできた。
任務を果たす。』
「任務って?」
『平和をもたらす。』
ナターシャさんにウルトロンが答えた瞬間、ウルトロンの背中側の壁を突き破って、ソコヴィアで市民を守ろうとしてくれただろうアイアンレギオンが襲いかかってきた。
俺は咄嗟に音銃剣錫音を一条さんに向かって渡すと、一条さんは戸惑う五代さんを尻目に音銃剣錫音を流れるように受けとると、そのうちの一体と戦闘に入って行った。
そして俺もまた、座っていた椅子の裏側に周り込みながら、ディエンドライバーをアイアンレギオンの一体に向けて放った。
それぞれが戦い、周囲がガラスの破片や破壊された壁にあふれながらアイアンレギオンを破壊すると、ウルトロンは何もなかったかのように振る舞いながら言う。
『ドラマチックだな。
よかれと思っての行動だろうが考えが足りないのだ。
世界を守りたい。でも世界は変えたくないだと?
だが、人類を進化させずに世界を守れるわけがないだろう。
どうやって?世界を守るだと…この人形で。』
まるで自問自答をしているかのように言いながら、破壊されたアイアンレギオンの一体の頭部を拾うとそれを握り潰した。
『平和への道は一つしかない。
アベンジャーズの全滅だ。』
その言葉に我慢できなかったように、ソーさんがハンマーをウルトロンに投げるとあっさりと破壊されてしまう。
『自由ってものは…』
「…(楽しいもんだぜってか。)」
そう言いいながら機能を停止したウルトロンの言葉に俺は心の中で続きを言いながら立ち上がり、五代さんと一条さんのところに行く。
「大丈夫でしたか?」
「狭間さん、一条さんが持っている剣はいったい…」
「五代。俺もお前の背中を守れるぐらいの力を手にしたということだ。」
「五代さん。戸惑う気持ちはわかります。
ですがグロンギと戦った記憶を持っているということは、いまだに戦い続けている五代さんに歯痒い思いを抱いていたということでもあります。
そんな一条さんが、ようやく五代さんと肩を並べて戦えるんです。
その気持ちも汲んであげてください。」
「一条さん…俺…
…いえ、よろしくお願いします!」
五代さんのサムズアップに一条さんも同じ動作を返してお互いに通じあった笑みを浮かべていた。
いつの間にかいなくなっていたソーさんは、アイアンレギオンが一機だけ逃げたのでそれを追いかけて行ったという。
機能を停止したウルトロンの頭部を持ってラボに行き、みんなでラボに集まってスタークさんとバナー博士が調べながらが話合いが始まった。
「研究データが消えている。
ウルトロンもな。インターネットを通じて逃げたんだろう。」
「ウルトロンか…」
「ファイルや監視カメラのデータに侵入されたわ。
彼、仲間よりも私達の事を詳しく知っているわよ。」
「そんなことより、もっと刺激的な情報を欲しがったら?」
「核ミサイルのコード…」
「そう!それだよ。
大至急連絡を入れるべきだ。連絡を入れられるうちにな。」
「核ミサイル?私達を殺すために?」
「殺すとは言ってない。全滅だと言ったんだ。」
「誰かを殺したとも言っていた。」
「でも私達以外にはいなかったはずよ。」
ヒルさんの言葉にゆっくりと中央に近づいて行くスタークさんが端末を手にして言う。
「いや、いた。」
端末を宙に打ち付けるように振ると、スタークさんの目の前にはオレンジ色に光るしかしどこか崩れてしまったかのように見える物体が映し出された。
「J.A.R.V.I.S.…そんなバカな。」
「彼が最初の防衛ラインだったんだろう。
ウルトロンを止めようとしたんだろうな。」
バナー博士の悲しそうな声に続けて言うスティーブさんの言葉に、再びバナー博士が言葉を返していた。
「おかしい。ウルトロンはJ.A.R.V.I.S.を吸収できたはずだ。
これは計画的ではない。あまりに…衝動的だ。」
すると戻ってきたらしいソーさんが現れて、一直線にスタークさんの首筋を掴んで持ち上げた。
バートンさんの呆れた声も聞こえるし、苦しそうなスタークさんのひねくれた言葉も聞こえた。
「…また暴力か。」
「言葉を使えよ。」
「言ってやりたい事は山ほどあるぞスターク!」
「ソー!アーマーは?」
ソーさんの憤った言葉にスティーブさんが制止するように聞くと、ソーさんはスタークさんを離した。
「160キロメートル追って見失った。
おそらく北に向かっている。
杖を奪われたんだ。再び取り替えすはめになった。」
「これではっきりしたわね。ウルトロンを追うのよ。」
ソーさんの言葉にナターシャさんが、言うと近くにいたアジア人の女性、おそらくバートンさんを治療して後にウルトロン…いやヴィジョンの体を作ることになるヘレン・チョ博士だろう人物がスタークさんに向かって言う。
「でもどういうこと?あなたが作ったプログラムでしょう?
どうしてみんなを殺そうと?」
スタークさんは戸惑いながら笑うかのような唸り声を出し、しきりにバナー博士からやめるようなしぐさをされるが見てはいてもそうする気はないようだった。
「そんなに面白いか?」
「いいや。笑えないよな…とんでもない。
全く、なんて言うか…笑えない冗談だ。それに…」
「お前が理解できないものに手を出すからそうなったんだ。」
「違う!悪かった…悪かったよ。」
ソーさんの言葉に即座にスタークさんは返す。
しかしスタークさんの言葉を遮ってソーさんは言おうとするも再びスタークさんが言葉を被せていた。
「おかしくてね。何故ウルトロンが必要なのかを理解出来ないということが!」
「トニー、今はそんなことを言い争っている場合じゃあ…」
「本気か!?まさか君まで…何か言われたらしっぽ巻いて逃げだすのか?」
「殺人ロボットを作り出してしまったんだぞ。」
「作り出してない。完成までほど遠かったんだぞ。インターフェースも未完成だった。」
今度は諌めようとしたバナー博士とまで言い争っている。
「完成してなくてもこれだろう?アベンジャーズはS.H.I.E.L.D.とは違う。僕達はそのことを示さなけれはならない。」
「そもそもどうしてウルトロンを作ろうとしていたんですか?」
スティーブさんの言葉と五代さんと問いにスタークさんが話し出す。
「みんな忘れたのか?
僕がワームホールに入って、世界を救った。」
「そしてあなたのことを俺が連れ戻しましたね。」
「それはまあ、助かったが。
そうじゃなくてだな。みんな思い出せ。
ぽっかり空いた空の穴からチタウリの軍勢、宇宙人どもが襲ってきただろう!
チタウリはロキの軍勢じゃない。元々は別のやつからチタウリをもらい受けて、地球を支配する代わりに四次元キューブをそいつに渡すということだったらしいじゃないか?
アベンジャーズが武器商人どもと戦うのも結構だが、僕達の戦う相手は宇宙にいる。
そいつがラスボスだ。そういう敵とどう戦う?」
「みんなで。」
「負けるぞ。」
「それでも、僕らは戦う。
ウルトロンは僕達を挑発してるんだ。
やつが行動を起こす前に探さないと。
世界は広い。まずは捜索範囲を狭める方法を考えよう。」
スタークさんは、頭を振ってその場からいなくなり、スティーブさんの言葉にみんなが行動を開始し始めた。
そして、ウルトロンはストラッカーを殺害し、世界中の工学研究所から様々な道具を盗み出した事がわかった。
キャプテンアメリカの象徴たる盾に使われた金属
、『ヴィブラニウム』が怪しいと見て、その密売人でもあるユリシーズ・クロウという人物を探すという方針が決まるのだった。
年末年始は忙しいので投稿頻度が下がってます。
感想待ってま~す。