仮面ライダーになった男は戦いたくない   作:岩鋼玄武

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暴走

side五代雄介

 

 

南アフリカ沖の廃船場に置かれたいくつもの古びた貨物船にその密売人がいるらしいということがわかったので、アベンジャーズタワーから直接行動できる人員で行く事になった。

 

ローズ大佐はウォーマシンを持って来ていなかったこと後悔していて、次の任務には参加すると意気込んでいた。

 

どことなく緊迫した雰囲気の中、クインジェットに乗り込んで数時間の後に近場の木々にクインジェットを下ろして行くことになったけれど、俺と一条さんはバナー博士の護衛のために残って欲しいということだったので残る事になった。

 

強化人間の一人が精神攻撃を使ってくるらしいので、バナー博士がその攻撃を受けるとハルクになってしまう可能性があるということなのでそのために残っているのだとか。

 

そして狭間さんはその説明をスタークさんからされると、念のためという理由で一度本部に戻って助っ人を連れて来ると言って、一人オーロラでいなくなってしまった。

 

他の人達が廃船に向かってしばらく経つが何の連絡もないので、バナー博士がスタークさんに通信を入れるとJ.A.R.V.I.S.がいない分だけ通信状況が悪いのかノイズが入ったように、ジェットで待機するようにという返事が入った。

 

バナー博士は心配になってクインジェットの後部ハッチを開いて廃船場の方を伺っているようだった。

 

そのまま連絡もなくしばらくすると不意に一瞬目眩がして頭を一度振ると、目の前が別の景色と重なって見え始めた。

 

日本のビル街の中に楽しそうな笑い声が響いていて、視界の端に白い服装の青年がちらつき、腰のアークルが熱を帯びてきて何とかその場から離れようとするのに必死だった。

 

 

 

side一条薫

 

狭間君に相談に行ったことで俺も五代と一緒に戦うことができるようになって、うれしさについ休暇を即決で取得してしまった。

 

そして狭間君と一緒に五代が行っているというニューヨークにあるアベンジャーズタワーに行き、そこからの怒涛の成り行きでアベンジャーズの皆さんと行動を共にすることになった。

 

一見するとにわかには信じられないが、この眼鏡をかけた男性、バナー博士が感情の高ぶりによってハルクになってしまうらしく、その護衛として五代とそのままジェット機に残る事になった。

 

まあ彼らからしたら自分は仮面ライダーとはいっても新人とかわりないだろう。

それに俺は休暇で来ているのだからとあまり構えずにいることにした。

 

だが、そんな時に限って事態は大きくなるものだというのが警察官としての勘が言っている。

狭間君も念のためという理由で、一度本部に戻ると言っていなくなってしまったので、気を引き締めていると、急に目眩がして脳裏にバラのタトゥーの女と、雪が降る中で戦いに行く五代の姿がちらついた。

 

俺はこれが幻覚だと気づいて俺に向かって赤い光の波動を放っていた女を組み伏せて剣の刃を首筋に当てた。

 

一緒にいた男に咄嗟に動かないように言うと、その女が涙を流していることに気づいた。

 

「…命乞いか?」

 

「…え?」

 

「どうして泣いている?」

 

「…え。私…泣いて?

さっきの男とあなたの記憶が流れてきて、それで…ごめんなさい。

私…」

 

俺は剣をその女から離して、その場からも退いてやる。

一緒にいた男が女を心配そうに介抱していながら、その女が聞いてきた。

 

「…どうして?」

 

「…悪い事をしたという自覚があったから謝ってきたんだろう?

そんな相手をどうこうするつもりは無い。

それに君がやらかした後始末を着けなきゃならないからな。」

 

そう言うと、女はただ俯くだけで何も言うこともなく、寄り添った男の素早い動きによって瞬く間にいなくなってしまった。

 

俺はすぐ様、ジェット機の外に出ると五代の事を探すと、海岸線をふらふらと歩いていた五代を遠くの方にいるのを見かけて走り出した。

 

「五代!」

 

ようやく追い付くと、そこは砂浜に岩がゴロゴロ転がっていて陸の側は切り立った崖になっていて、その崖に手を着きながら俯いて立っていた。

 

「…五代?

どうした?」

 

よく見るとその腰にはアークルが出現していて、金の力を表す装飾とは少し違うように見えた。

そして五代の正面に周って見ると、その秘石の色が漆黒に染まっていた。

 

それに気づいた瞬間、その秘石からモヤのような黒い煙が現れはじめて五代の体に纏わりつき姿が見えなくなってしまった。

 

「…五代、まさか!」

 

その煙の中に見えるのは、秘石が不気味に輝きながらその光が四方に渡ったかと思うと、煙が晴れて漆黒の4本角のクウガ、『凄まじき戦士』になっていた。

その秘石の漆黒と同じく、複眼の色もまた漆黒となっていてあの時の雪山での変身とはまるで違っていた。

 

その動きに反応できたのには、これまでの経験と記憶があったからだろう。

 

予備動作もなく繰り出された拳に剣を差し込み、盾にできたのは、奇跡に近かった。

 

数十メートルをそれによって離されてしまったが、重症を負う事もなかった。

 

「…五代。まさかお前がここまで『侵食』が進んでいたなんて、思いもしなかった。

お前の事は、俺の命にかけて…止める!」

 

 

 ヘンゼルナッツとグレーテル

 

 とある森に迷い込んだ小さな兄弟のおかしな冒険のおはなし…

 

 

 ヘンゼルナッツとグレーテル!

 

 銃剣撃弾!

 銃でGOGO!否!剣で行くぞ!音銃剣錫音!

 錫音楽章!

 甘い魅惑の銃剣がおかしなリズムでビートを斬り刻む!

 

 

「仮面ライダースラッシュ。

行くぞ。五代!」

 

いつの間にか目の前にきていたクウガの拳を一度受け流すだけで吹き飛ばされそうになる。

 

これは一歩でも間違えれば、俺は死ぬかもしれないと思いながら、クウガの拳をさばいていく。

 

「…五代!目を覚ますんだ!」

 

クウガの拳の威力を利用して背後に回り込んで一撃を与えようとするも、たった一発の蹴りで吹き飛ばされてしまう。

 

砂浜にゴロゴロ転がっていた岩の一つを砕きながら体が岩にめり込んでいるのがわかる。

 

「…ぐぅ。うぅぅ…」

 

思い通りに動かせそうにない体をなんとか岩から抜け出そうとするも、いつの間にかクウガが目の前にいて俺に向かって拳を振り上げいた。

 

咄嗟に目を瞑ったが、いつまで経っても衝撃が来なかったので不思議に思い目を開けると、クウガの腕を別の腕が掴んで止めていた。

 

「…本郷、警視総監?」

 

「一条君、よく頑張ったな。

ここからは、私に任せてもらおう!」

 

俺ではどうしようもなかったクウガの体を本郷さんは投げ飛ばしてしまった。

 

そして本郷さんはその場で両手を前に突き出すとそのまま腰にベルトが現れる。

 

「ライダーー!変身!!」

 

そしてその身を仮面ライダーへと姿を変えたのだった。

 

 

 

side狭間玄乃

 

 KAMENRIDE

 

「変身!」

 

 DI!END!

 

「一条さん!大丈夫ですか!?」

 

俺はSPIRITS本部からどうにか説得して本郷さんを連れてくることができた。

 

ワンダ・マキシモフによる精神操作は強力なので、もしかしたらバナー博士だけではなくて五代さんも操られるのかもしれないと思い、必死に説得したのだ。

 

俺は岩からスラッシュに変身した一条さんを助け出すと、クウガと1号の戦いを見守る。

 

目の前では昭和仮面ライダーのはじまりのライダーである1号と、平成仮面ライダーのはじまりのライダーであるクウガのアルティメットフォームとの戦いが繰り広げられていた。

 

拳と拳の応酬の度に弾けるような空気音と、その余波だけでこちらが吹き飛ばされそうになる衝撃、そして崖側がどんどん震えだして崩れはじめる場所もあるようだった。

 

見た限り互角のように見えた。

ということは、本郷さんは見た目は新1号だがパワーはネオ1号に匹敵する性能だということが見てとれる。

 

五代さんは無意識に抑えているのか、発火能力や武器生成能力の使用はしていないようだったので、まだ五代さんを元に戻す可能性があるということがわかる。

 

「一条さん、聞いて下さい。

おそらく五代さんを元に戻せるのはこの場ではあなただけだ。」

 

「…しかし、俺では今の五代に手も足も出ないぞ。」

 

「戦いは本郷さんに任せましょう。

一条さんはこれを使ってあなたの声を五代さんに届けて下さい!」

 

俺はクラインの壺からワンダーライドブックを取り出して一条さんに渡した。

 

「おそらく、一条さんの声に混乱した五代さんはこちらにも攻撃を仕掛けてくるでしょう。

俺は可能性な限り、一条さんに攻撃がこないようにしますので。

…五代さんをお願いします。」

 

「わかった。使わせてもらう。」

 

 

 ブレーメンのロックバンド

 

 とある戦いを強いられた動物たちが奏でる勝利の四重奏…

 

 

 銃奏!ブレーメンのロックバンド!

 銃剣撃弾!

 剣でいくぜ!ノーノー!銃でGOGO!

 BANGBANG!音銃剣錫音!

 

 

膝をついていた一条さんが立ち上がり、仮面ライダースラッシュ、ヘンゼルブレーメンへと変化した。

 

「五代!俺の声が聞こえているか!?」

 

ブレーメンのロックバンドの追加アーマーに増設されたスピーカーから一条さんの声が響く。

 

すると、1号と激しい戦いを繰り広げていたクウガの動きが急に鈍くなりはじめる。

 

本郷さんは鈍くなったクウガには積極的に攻撃を加えずに少しずつ手数を少なくしながら相手をしているように見えた。

 

 ATTACKRIDE BARRIER

 

急に一条さんに向かって拳を振り上げてきていたクウガに向かってディエンドの紋章を型どったバリアを展開してその体に当てて攻撃をキャンセルする。

 

そしてさらに一条さんの言葉が響き渡り、ついにはクウガの動きが止まった。

 

立ち止まったクウガがうめき声を上げて、頭を抱えはじめるとその複眼が漆黒と真紅に明滅しだして、好機と見た一条さんはさらにクウガに近づきながら言葉をかけていた。

 

クウガが両膝をついて両手をだらりと力なくたらし、その顔を天に向けていたところに一条さんが目の前にきていて、クウガが正面を向くとその複眼が真紅に染まっていた。

 

「…一条さん。…俺。」

 

「…五代!意識を取り戻したのか!?」

 

「…俺、一条さんにひどい事を…」

 

「…いいんだ。五代を元に戻せるなら。」

 

いつの間にか、二人共に変身が解けていて、俯く五代さんを一条さんは母親のように抱きしめていた。

 

 




明けましておめでとうございます。

完結まで頑張っていきたいです

どうぞよろしくお願いします!
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