SIDE五十嵐純平
五十嵐家に婿入りして、長男の一輝、次男の大二、そして長女のさくらが生まれて、妻の幸美、家族5人で幸せに生活していたある日のことだった。
ご両親が営む銭湯の仕事の手伝いを終わらせて帰って来ると、子供達はすでに就寝中で、幸美の手料理を食べながら話を聞いた。
なんでも、俺宛に、贈り主不明の郵便物が送られてきていて、不気味だったから見てほしいということだった。
夕食を終えて、その郵便物を見ると、確かに贈り主の文字はかすれているのか、薄くなっているのか、よくわからなかったが、俺宛の郵便物であることに間違いなさそうだった。
思い切って、中身を見てみると、封筒がひとつと何やら布に包まれた物が入っていた。
その包みを開き、触れた瞬間だった。
政府軍に人体実験をされて、悪魔のベイルを宿し、戦いに明け暮れる日々、そして逃亡して、しあわせ湯で名を捨てながら家族と過ごし、ギフを打ち倒していったその光景が脳裏をよぎり、思わず、頭を押さえてうずくまった。
「パパさん?どうしたの!?」
「大丈夫だ。どうして、こんなところに、『デストリームドライバー』と、『ヘラクレスバイスタンプ』が…」
ベイルとの決着をつけるためのこれらが、この時代に、今ここにあることが、信じられなかった。
「え~と、封筒の中には、温泉旅館への招待ですって。
ご家族でどうぞって書いてあるわ。」
明らかに怪しいそれらに困惑していると、デストリームドライバーの正面が点滅しはじめ
「…久しぶりだな、純平。」
と声が聞こえた。
「え、しゃべった!?」
「ベイルなのか?」
それから、幸美と二人で、ベイルの話を聞いて、ある程度の事情を聞いて、封筒の旅館に行くことにした。
そして、某旅館の指定された部屋で、はしゃぐ子供達の面倒を見ながら、外の景色を見ていると、扉がノックされたので、廊下に出ると、見覚えがありすぎる人物がそこにはいた。
「狩崎、あんたもきていたのか…」
そこには、バイスタンプの第一任者といえる、狩崎真澄が、少年を連れて立っていた。
「はじめましてと、言うべきなんだろうか。まさか、私だけでなく、五十嵐家も呼ばれていたとはな。」
「今回は、あんたも被害者だろう。
ギフがいないこの世界でドライバーとバイスダンプが送られてきたんだ。
たとえ平行世界の未来のことでも、ベイルが話をしてくれた以上、ここに来ないという選択肢はなかった。」
「ベイルが!?そちらに送られてきたのはベイルが宿ったドライバーという訳だったのか。
…そうか、彼との和解は済んでいるようで何よりだ。
ああ、それと、息子のジョージだ。」
「狩崎ジョージです。
パピーと、はじめましてと言う割には、ずいぶん親しそうだし不思議な雰囲気ですね。」
俺達は、あの世界ではできなかった出会いを果たして家族に二人を紹介した。
SIDE狭間玄乃
園咲家への訪問した時にも、ずいぶん驚かれたが、事が決まれば、とんとん拍子に物事が進んだ。
最初は順を置いて郵便を出すつもりだったのだが、園咲琉兵衛さんに危険人物の疑いがなければ、いっぺんに送って、一カ所に集めてしまったほうがいいと言われて、作中から判断しながら、郵便を出した。
会場の場所は園咲家が関係のある場所を、スパイ活動を防止するために用意すると言われて、そのままお願いした。
料金はさすがにこちら側で支払うと言ったのだが、それも園咲家から出すと言われたので、初日の1泊分だけ出してもらって、参加者が、それ以上滞在するようであれば、こちらから出すという話で、落ち着いた。
先ほどから、旅館の宴会会場の設営を手伝いながら、従業員と打ち合わせを行っていて、なんとか緊張しすぎない状態を維持出来ていた。
「もうそろそろ、早い人であれば、集まりはじめる時間だな。」
俺の近くにいた鳴海荘吉さんがつぶやく。
「でも、よかったんですか?
今回のことは、鳴海さんが園咲さんを協力してくれているのは当然ありがたいことなんですけど。」
「平行世界で、敵だった存在に協力しているのが、おかしく見えるか?
お前にとって見れば、協力しているように見えるだろうが、これでも牽制のつもりだ。
何より、記憶を思い出させる為とはいえ、ガイアメモリを渡している。
ミュージアムもなく、ガイアメモリがひとつだけあったとしても、相手は海千山千の上流階級社会を生き抜いてきた男だ。
何をたくらんでいるかもわからんからな。」
「…なるほど。」
組織もないし、園咲琉兵衛さんが技術を持っている訳でもないし、ガイアメモリがひとつだけなら、大丈夫じゃないかなと渡してしまったけれど、鳴海荘吉さんは後々のこともちゃんと考えているんだなと感心した。
そして、次々に宴会会場に人たちが入ってくる。
難波重工総合学科技術研究所の葛城忍や、飛電インテリジェンスの飛電是之助に、人類基盤史研究所BOARDの研究員の烏丸啓と橘朔也、二人と一緒に入ってきた剣崎一真。
別の出入り口からは、国会議員の火野映司とその専門弁護士をしている北岡秀一と助手の由良五郎、何やら言い合っている乾巧と園田真理に、それを見ながら何やら複雑そうな顔で紅渡が入ってくる。
警察組はまとまって入ってきたようで、その中には氷川誠や、小沢澄子、加賀美新、照井竜、大門凛子に、泊進之介の姿も見えた。
そのほかにも、姉夫婦の横に座っている沢木哲也や、こけそうになっていた野上良太郎とそれを助ける日高仁志の姿もあれば、幻夢コーポレーションCEOの壇正宗と話をしている、ユグドラシルコーポレーションの呉島貴虎と、周囲を興味深く見回している招待した覚えのない戦極凌馬に、すでに酒を注文して、飲み合っている天空寺龍と自称仙人の男までいた。
今、この瞬間は、感動で胸がいっぱいだった。
思わず、スタッフの待機場所で、高鳴る胸の音を、深呼吸で押さえようと手を胸にあてる。
そして、ペットボトルの水を飲み、近くにいたスタッフの人に、園咲琉兵衛さんがきたことを告げられ、開始の合図を送った。
[マイクテスト、マイクテスト。
皆様、お静かにお願いいたします。
繰り返します。皆様、お静かにお願いいたします。
これより、当旅館のオーナー、園咲琉兵衛様より、ご挨拶がございます。]
「ここに集まった紳士淑女の諸君、私が、この旅館のオーナーであり、今回の会合を主催した者の一人でもある、園咲琉兵衛という者だ。
諸君らの元には、差し出し人不明の郵便物が届けられ、困惑している事だろう。
罵倒したい者もいれば、ただ理由を知りたがっているだけの者もいることだろう。
だが、それは、少々待ってほしい。
これから諸君らには、観てもらいたい映像がある。
これを観て、そして、それぞれの考えをまとめた後に、質問等を受け付ける事になるだろう。」
園咲さんが会場に設けられた上座の舞台の中心で、そう言うと、舞台の天井からホワイトスクリーンが降りてきて、さらに、宴会会場の天井からプロジェクターが現れて、会場がざわつきながらも会場がうす暗くなっていく。
園咲さんが舞台の中心から、舞台袖に移動すると、プロジェクターが作動して、1本の映画が上映され始めた。
それは、今回の上映用に、東映の文字と、スタッフロールの文字を消し、最後に少々細工をした
『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』
を上映しはじめたのだ。
クウガの人形を横に置いた赤ん坊の写真から始まり、仮面ライダーの玩具を持った少年の写真が連続して数枚映って2018年の文字が現れる。
会場からは、小さな声で驚いた声が複数聞こえくるが、上映の妨げになるようでもないようだった。
この上映のことは、あらかじめ園咲さんと鳴海さんには話をしていたが、内容までは言ってはいなかった。
この作品上映を見て、この場に集められた人達は、さまざまなことを考えるだろう。
拡大解釈をする者もいるかもしれない。
だが、この世界からしてみれば、全くあり得ない話でもないのだ。
実際、仮面ライダージオウに仮面ライダーの力が継承されると、仮面ライダーの歴史そのものが失われていく。
よって、この世界の現状は、『仮面ライダージオウに全ライダーの力が継承された結果の世界』の、可能性もあるからだ。
実際には、確認は行ってはいない。
むしろできないと言ったほうがいいだろう。
先代のディエンドが若い姿で、そこにいるかもしれない。
一度狙われれば、どうなるかわからないからだ。
もしかしたら、あちらの海東大樹の方のディエンドに力が集約されて、俺はただの一般人に戻り、元の世界に帰れなくなるかもしれないからだ。
だから、俺の世界はこの世界からしたら未来でも、この世界の現在の時間軸からは、移動しないと決めているのだ。
映像で、シンゴと名乗る少年の口からクウガの名前が出たことに、五代雄介の驚愕の顔が舞台袖の俺から見てとれた。
バスの中で、アタルという高校生の口からキバの音也の名前がで、紅渡が目を見開くのが見えるし、アタルの足元に砂がこぼれ落ちていくことに、野上良太郎が挙動不審になり出していた。
そして、アタルの家の中にある玩具の数々に、会場がざわつき始め、
『仮面ライダーは、現実の存在じゃない。
虚構の産物だ。』
『夢みたいなものなんだよ、覚めれば元の現実が待ってる。』
『現実じゃあ、ライダーは何もしてくれない。』
とそういう言葉に、何人かの顔が、悔しそうな顔をしているようだった。
そして、雨の中、桐生戦兎と、常磐ソウゴの会話内容に、会場の何人かの顔がはっと、何か納得したような顔つきをする。
元の世界から、アタルがいた世界に戻る時に、常磐ソウゴが通ってきた螺旋状に連なった地球、あれこそが平行世界の移動であり、あの中に俺の元の世界も、この今俺がいる世界もあるかもしれないのだ。