side戦極凌馬
木造で造られた数百メートル四方ほどの広さがあるその建物の中、コロッセオのような石材が敷き詰められた闘技場を見下ろして数万人は座れそうな観客席にほんの数人の我々だけが座っている。
『…ふん。人間などさっさと殺してしまえばいいものを。』
「…それじゃあ面白くねぇだろぉ?ウルトロンよぉ。
所詮はロボットだな。楽しくするためには余興も必要だぜぇ。」
『貴様も人間ではないだろう。
"デザスト"。』
闘技場の中央に置かれた鋼鉄製の檻の中には、次々に捕らえられた者達が拘束されて入れられていく。
その四方には四人の見張りが立っていて、耳にあたる部分が機械になっている。
「天津氏、彼らはどうだい?」
「戦極、君は…いや君達は知らないのだったな。
素体はこの世界製とはいえ、彼らは"滅亡迅雷ネット"という私の世界でも仮面ライダーだった者達だ。
私が持ち込んだデータで作られているのだからな
。
1000パーセント、この世界の奴らでは倒せんよ。」
「それは頼もしい。
さて、もう一つの仕込みはどうだい?」
「1000パーセント完璧だ。」
自信満々のこの男を尻目に、お互いにそれぞれを捨て駒としか思っていない事がありありとわかりながら、檻の中に入れられていく人々を冷めた目で見ていた。
side狭間玄乃
俺は本郷さんとの話し合いを終えて戻ると、アベンジャーズの面々は会議室から出てサロンで思い思いに討論しているようだった。
「もしこの協定に賛成すれば、政府は俺たちの事を監視する訳か。」
「117ヵ国が協定に賛成だ。117ヵ国だぞ!
ハイって言うほかないだろう?」
「…私の分析したところによれば。」
サムさんとローズ大佐が言い争っていたところにヴィジョンが口を挟んだために、その言葉にそれぞれが耳を傾ける。
「スターク氏が自分こそがアイアンマンだと宣言してから8年。
超人と呼ばれる者達の数は急激に増加しました。
仮面ライダーと呼ばれる者達もこれに含まれます。
そしてそれと平行して、世界を破滅に導きかねない出来事も同等に増えています。」
「我々のせいだと?」
「因果関係はあると考えられます。
…我々の力が敵を呼び寄せる。
敵がくればそこに争いが生じ、争えば、そこに悲劇が起きるでしょう。
結論として、国連の管理下に置かれることも検討するべきです。」
どことなく不機嫌そうなスティーブさんの一言に答えたヴィジョンに賛成するようにローズ大佐が言っていると、いつもなら茶化すようにまくし立てるスタークさんを疑わしくナターシャさんが問うと、言い訳をいろいろとしながらコーヒーを一口飲んで切り出した。
「去年、僕は世界の平和のためにとウルトロンを作ろうとした。
…結果、暴走して世界の破滅寸前までいった。」
「それはみんなで食い止めただろう?」
「だが!…失敗したのは事実だ。
方向性の間違いだと信じて今は未来ある学生達への支援に切り替えたがね。
…ここには意思決定のプロセスがあってもそれを重要視しないで行動してきた。
だから僕はそれを踏まえて監査を受け入れる覚悟がある。
…何も僕達が世界の平和を守る全ての責任を背負う必要はない。だろ?
組織同士が一つになればそれは大きな力となって今後の脅威とやらも対処できると僕は思うけどね。」
「…それは逃げなんじゃないのか?
僕達が今まで行ってきた責任を転化するだけだ!」
「スティーブ。それは傲慢すぎるぞ。」
「バッキー、君まで…」
「相手はヒドラでもS.H.I.E.L.D.でもない。少なくとも国連が決定するのであれば、信用してもいいんじゃないか?」
さすがのスティーブさんも、親友であるバーンズさんの説得には考えが変わりつつあるようだが、どことなく迷っているようにも見える。
するとスティーブさんは端末を取り出してどこかに行ってしまうと、バーンズさんはその後を追いかけていく。
そしてその後はお開きとなったのか、それぞれが別れて動きはじめた。
「ハザマ。どうだったんだ?」
その場に取り残される形となった俺に、スタークさんから声がかかる。
「うちの総隊長も概ね賛成の意を示しています。
…ですが、あの人もスティーブさんに似たところがありますからね。
この先、組織合併がなった時が心配になります。」
「そうね。フォローするのも大変そう。」
「おや?ロマノフ、君は賛成なんだな。」
「…前言撤回よ。」
「いやいや、遅いぞ。君は賛成側だ。
決まりだ。」
俺はスタークさんとナターシャさんとの話の後に一度本部に戻ってからウィーンに向かうと言って、アベンジャーズの拠点を離れた。
オーストリア 首都ウィーン
side飛電或人
じいちゃんや父さんが営む会社、飛電インテリジェンスの後継らしい自分が専用の秘書の指導を受けながらいたある日、じいちゃんの勧めでソコヴィア協定とやらの締結の見学ができるらしいということだったから、言われるがままにオーストリアに赴いていた。
「…或人様。ネクタイが曲がっていますよ。」
「…ありがと"イズ"。
それよりさ、俺ってまだ高校生なんだけど。
観光とかできそうだから、言われるがままにきたはいいけどさ。こういう政治的な事がじいちゃんの会社とどう関係があるのさ?」
本当によくわからないんだよな。
ちょくちょく出張に行ってる父さんに関係があるらしいんだけど、度々その質問をしては目の前の俺専属の秘書とかいうイズにはぐらかされるし。
そのイズは耳に機械的なヘッドフォンのような物を着けている。ように見える見た目若い女の人なんだけど、じいちゃんの会社で最近開発されたアンドロイド"ヒューマギア"なんだと。
アメリカのスタークインダストリーと共同開発されていて、現在はほんの数体しか製造されていないんだってさ。
これもなんか最近の出来事のせいで生産停止状態らしくて、作り出されたその数体を特定の人物の側に置く事で成長を促すとかなんとか。
金属探知機に反応するから、空港とかウィーンの会場とか大変だったけど、身分証を見せると会場まで通してくれて、端の方に座らせもらう事ができた。
周りではなんか時折テレビで見かける人たちがちらほらいて、なんだか居心地が悪くなってきていたところで会議がはじまったらしい。
いくつか外国のお偉いさんとかの話があって、この間犠牲者が出たとかいうワカンダの人が演説をはじめたところで、隣に座ったイズの様子がなんか変な動きを見せていた。
「…どうしたんだイズ?」
「或人様、周囲に妨害電波が発生しています。」
「…え。まずいんじゃ!?」
俺はとっさに立ち上がって壇上の人に対して避難するように大声を発すると、その人のすぐ近くの黒人男性が怪訝な顔をしながら周囲を警戒すると、周囲に避難するように言いながら壇上の人に近づいた瞬間に、壇上の人の背中のガラス側で大爆発がおきたのが見えた。
その瞬間に俺の上にイズが覆い被さるようにされてしまったので、混乱しながらも俺も騒ぎが収まるのを待つしかなかった。
しばらくすると会場にいた人たちと一緒に、会場から出されたので近くのベンチに座って、消防車が何台も止まった目の前の光景を見ながら何も考えられないでいると、傷だらけのワカンダの人の近くにいた人と、ものすごく美人な女の人が俺とイズのところに寄ってきた。
「…さっきはよく気付いてくれた。」
「でも、あの爆発で何人も亡くなったって…」
男の人の言葉に、思わず声を震わせながら答えるしかなかった。
聞けば、壇上でしゃべっていた人はこの人のお父さんだったみたいで、目の前で父親が亡くなったと聞いて、何も言えなくなってしまった。
「…でも、どうして危険だとわかったの?」
女の人の事に答えたのは俺ではなくイズだ。
「私のセンサーを妨害する電波が発生していたことで、何らかの異常事態が発生している事がわかりました。」
「センサー?」
「はい。私は日本の企業、飛電インテリジェンスによって開発された学習型AIを搭載した、アンドロイド、ヒューマギア"イズ"と申します。
"通信衛星アーク"によって制御されていますので、相互通信が阻害されれば主人に警戒を促すようになっています。」
「ロボットには良い思い出は無いんだけど、今回は助かったわ。
それで、そっちの坊やがあなたの主人?」
「はい。飛電インテリジェンス現社長、飛電是之助様のお孫様であり、時期社長、飛電其雄様の御曹司であられます。飛電或人様です。
今回は狭間玄乃様とアンソニー・エドワード・“トニー”・スターク様、是之助社長の勧めで会議の見学をさせて頂きました。」
「…ハザマとトニーが関係していたのね。
一企業が国連の会議に見学とはいえ参加できるなんておかしいと思ったわ。
それで、犯人はわかるのかしら?」
「…通信衛星アークより入電しました。
現在、複数のチャネルで公開されているようです。」
イズは時折こちらを振り向きながらそう女の人と会話していると、イズの言葉を聞いた女の人が端末を取り出してネットの動画を再生しはじめた。
『…付近に止められていた車に仕込まれていた爆弾により、ウィーンの会議場が爆破されました。
負傷者は70人以上、死者はワカンダのティ・チャカ国王を含む12人が現在確認されているようです。
警察当局は容疑者を公表しました。
国道の監視カメラにより、この車を運転していたと思われる人物は"リョウマ・センゴク"。
日本の企業、ユグドラシルコーポレーションに所属する科学者であり、日本のヒーロー組織であるSPIRITSにも所属している事が判明しています。
今回の組織合併に反対を示す強硬作と思われ、各国政府はソコヴィア協定の締結に対する内容の見直しが必要だと判断しているようです。』
聞くからに大変な事態になっているようで、男の人と女の人は顔を見合わせているようだった。