アメリカ アベンジャーズ施設
side五代雄介
「パプリカをひとつまみ?」
「ああ?!ヴィジョンさん横からいろいろ足さないでください。
いいですから、料理は俺に任せてください!」
「…書物の表現は難しいですね。
ひとつ言い訳をさせてもらえるのならば、私は食べるという習慣がないもので。」
スタークさんにドイツに行かない人員の面倒を見てほしいって頼まれたのはいいけれど、ヴィジョンさんは生まれて間もないからか、時折びっくりするようなことをするし、ピエトロさんはよくいたずらをしてくる。
そんな中で落ち着いていたワンダさんとは、以前よりも打ち解けたように思う。
もちろん彼女の能力で暴走してしまった事はいまだにしこりのように心のどこかに違和感があるけれど、ヴィジョンさんを新しい家族ができたかのように接しているのを見ているとなんとなくホッコリとした気分になっていて、ついつい鼻歌が
出ながら料理をしていると
「まるで恋人ができたかのようなイチャイチャっぷりだよな。」
いつの間にかピエトロさんが近くの壁にもたれかかりながら、小ぶりな青リンゴをかじっていた。
「うわ!?
料理中にびっくりさせないでくださいよ。」
「…いい加減慣れてほしいぜ。」
ピエトロさんはそう言って瞬く間に移動すると、どこから持ってきたのかその手にはゴムボールが握られていて、さっきのりんごはどうしたのかと思って周りを見渡すと、俺の料理するまな板の端にひとかじりしたものが置かれていた。
「あんたはどうなんだ?」
「…何がですか?」
「ソコヴィア協定とか言うのには賛成なのか?」
ピエトロさんのいつになく真面目そうな言葉に再びびっくりするも、俺は例の協定の事を考える。
「…正直言って、俺の中では明確な答えはまだ出でません。
でも、アベンジャーズの皆さんや狭間さんならば正しい選択が出来ると信じてますから、俺は心配はしてませんよ。」
さすがにもったいないと思って、そのりんごをどう料理に使おうかと考えながらりんごを手に取りながらそう答えたのだった。
ドイツ ベルリン 対テロ共同対策本部庁舎前 移動中の車内
side呉島貴虎
「猫が好きなのか?」
「…サム。」
装備を外したキャプテンアメリカであるスティーブ・ロジャース氏、ファルコンであるサム・ウィルソン氏、そして黒い猫科のスーツの正体だったワカンダの皇太子であるティ・チャラ皇子…いや、凌馬が起こした事件でお父上を亡くして王位を継承したのならば皇子ではなく王なのだろうその人物となぜか同席させられていて、重苦しい空気の中で発したのはウィルソン氏であり、それを止めようとしてロジャース氏が名前を言っていた。
「…だって猫みたいな格好をしてたんだから気になるだろ?」
「…あのスーツはヴィブラニウム製か?」
世界一の金属と呼ばれるヴィブラニウムの採掘国であるとされているワカンダ王国は世間から注目を浴びているが、その実、民族的な風習ぐらいしか世間には出回っておらず、技術的な観点からすればあの国は不透明な事で知られている。
スティーブ氏もまたその興味からだろう、結局ウィルソン氏を止める事なくそうティ・チャラ氏にそう聞いていた。
「…ブラックパンサーはこれまで何度もワカンダを守ってきた。
何世代にも渡って戦士から戦士へと受け継がれてきた。
…タカトラと言ったな。君の友人によって父を失ってからは、その鎧は私に引き継がれた。」
その顔をこちらに向ける事もなく、淡々とそう答え、さらに言葉を続けていた。
「…王位を継承したワカンダ王国の王として、そして戦士として君に言おう。
君の友人はブラックパンサーである私の獲物だ。
君は君の友人を止める間もなく私に狩られるだろう。」
俺は凌馬に対する様々な思いと、自分の中にある感情が入り交じる事で顔を少し歪めただけで答える事もできずに、車はとある建物に入って行った。
ドイツ ベルリン 対テロ共同対策本部庁舎内
no side
その場所は国内のあらゆる監視カメラの映像を写し出す画面がいくつも写し出されていた。
しかし、そこにいる人々はあわただしく動き周り、喧騒に満ちていた。
そんな光景をガラス越しの会議室で見ていたのは、この施設及び対テロ共同対本部の副司令官である、エヴェレット・K・ロスとその部下のシャロン・カーター。
この施設に足を急遽運んで会議室の椅子に座って頭を悩ませていた、アイアンマンことトニー・スタークとその近くに立っていたその友人でありアメリカ空軍大佐のジェームズ・ローディ・ローズ。
そしてピッチリとした作戦用の姿からキャリアウーマン然として見せているスーツ姿に着替えたブラックウィドウことナターシャ・ロマノフを先頭にスティーブ・ロジャース、サム・ウィルソン、ウィンターソルジャーことバッキー・バーンズ、そして仮面ライダー斬月として戦っていた呉島貴虎がこの部屋に入室してきた。
それぞれの簡潔な自己紹介を皮切りに、ガラス越しにいくつも画面を見ていたシャロン・カーターが他の誰しもに向きなおるように体を向けながら言い放つ。
「テロ行為の主犯格の戦極凌馬は現在、国際的に指名手配されているわ。
先ほどの戦闘から行方を眩ませてしまったことで国内外の情報網をフル稼働させているけれど、これといった情報はまだ入ってないのが現状ね。」
「…ハザマは?」
「いまだに連絡は無い。
僕も驚いたよ。あの銀色のワープゲートはハザマの能力のそれだ。
敵対勢力に使われるとあれ程厄介な能力は無いな。」
呟くようにスティーブ・ロジャースが言うと、それに答えたのはトニー・スタークだった。
「ハザマ氏にはその能力の重大性から各国が秘密裏に監視、護衛がされていたんだが、そのいずれもが何かによって無力化ないし殺害されているのが確認されている。」
「SPIRITSの目を掻い潜ってまで監視してても現状がこれではな。
…いや、身から出た錆びとして見れば俺も大概だが。」
エヴェレット・K・ロスの言葉に反応したのは呉島貴虎であり、そこにいるだれもがその場にいた唯一の日本人でもある彼に説明を求めていた。
「あらかじめ言っておくが、戦極凌馬はもう俺の部下ではない。
確かに、ユグドラシルコーポレーションの社員だったが既に解雇済みだ。
SPIRITSの関係者としても既に登録が抹消されているという確認がとれている。」
「元社員の処分として見れば順当だろうが、社会的制裁も無しではテロリスト相手には弱い対処だな。」
「そこが日本政府が世界からなめられている原因だろうがな。」
呉島貴虎の言葉にスティーブ・ロジャースとバッキー・バーンズが言う。
『日本政府のことについては私にも思うところはあるが、戦極凌馬への対応には現在進行中の作戦に影響するのでな。』
いつの間にか会議室に設置されていた展開式の画面が稼働しながら写し出されたSPIRITSの現総隊長である本郷猛が、リモートワークのように腕を組んで座っている姿が映し出されていた。
「日本のSPIRITS本部との傍聴対策済みのホットラインだ。
本来ならばソコヴィア協定について協議する為に用意したのだが、こんな時に使う事になるとは。」
エヴェレット・K・ロスの言葉に各々がその画面を見ると
『呉島くん。捕縛は失敗したようだね。』
「はい。出来れば俺の手で凌馬を捕まえたかったのですが。
逃走をさせてしまったうえに闇の手と手を組んでいる以上、猶予はもうないでしょう。」
「どういうこと?」
本郷猛の言葉に呉島貴虎が返し、それに疑問を持ったナターシャ・ロマノフが言う。
「俺が使っているドライバー、[戦極ドライバー]は仮面ライダーに変身する為の道具で、本来はこのドライバーととあるアイテムが必要なんだが。」
呉島貴虎はテーブルの上に懐から取り出した黒い大きなバックルを置いた。
「それは…ピエールが使っている物みたいね。」
「そうだ。現在、凰蓮・ピエール・アルフォンゾをはじめとしたSPIRITSの隊員の正式装備として配備されている物なんだが、その名前の通りにこのドライバーは凌馬が開発した物だ。」
「…ということは、敵対勢力に使われる可能性が高いということね。」
ナターシャ・ロマノフの呟きに呉島貴虎が答え、自分で納得するかのようにシャロン・カーターが言う。
「それだけではない。
凌馬はさらにドライバーを進化させた物[ゲネシスドライバー]を使っていた。」
『もう1つ必要なアイテム、[ロックシード]の複数の備品の紛失も確認されている。』
呉島貴虎と本郷猛の言葉に一同が驚いていると
「…ということは、僕達にとって一番の敵は時間ということになる。
その作戦とは?」
『…その前に、我々の現状を話をしておく必要があるだろう。
我々SPIRITSはこれまで、日本国内で闇の手の各地の支部の摘発と壊滅、政界のスパイをあぶり出しての情報収集、捕らえられた民間人の救助など、これまでに様々な作戦を行ってきた。
そしてようやく闇の手の本拠地らしき場所の特定をしたところだ。
いくつものダミーの施設や情報に振り回されて苦労したがね。
現在、その本拠地に向けて奇襲をかけようと戦力を準備していたのだが…』
「肝心要のハザマからの連絡がとれなくなった後に、あの騒動で闇の手側にあのオーロラゲートか。
遂に捕縛でもされたか?」
「トニー!」
「茶化して悪いけど、これまでハザマの事を利用しようとする組織はいくつもあった。
どこぞのテロリストやマフィア、大きなところだとS.H.I.E.L.D.、ヒドラもそうだったかもしれないし、ソコヴィア協定成立後の国連もそういう企みをしているだろう。
僕達アベンジャーズもその恩恵を受けてきた。
キャプテンだって、あてにしていただろう?」
本郷猛の説明に反応したトニー・スタークの言葉にナターシャ・ロマノフが注意すると続けてトニー・スタークは話をして、スティーブ・ロジャースに話を振っていた。
「…そうだな。ストラッカーの施設を襲撃する際にハザマの能力に期待していた。」
「つまり、いくつもの組織がハザマを狙い、そして今その能力は闇の手によって利用されてしまっているってことだろ?」
「…だが、あの場にはミスターハザマはいなかったんだろう?
言ってはなんだが、バーンズのように洗脳でもされたなら本人があの場所に現れてその能力を使うんじゃないのか?」
ローディ・ローズの言葉にバッキー・バーンズは顔を歪めるも何も言わず、そして再びトニー・スタークが話をはじめる。
「…つまり、闇の手はヒドラの使う洗脳方法ではなく、ハザマの洗脳は不完全の状態かもしれないということか。
まだ救出の余地があるということになるな。」
その言葉に一同は考えを巡らせるのだった。
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