忘れ去られたもう一柱の神〜IF旅人〜   作:酒蒸

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というわけでIFストーリーです。いやぁ最早完全新作的な感じですね。

とはいえこれ単体でも多分読めると思います。投稿頻度は相変わらず低めでしょうが…まぁ見てくれると喜びます作者が。


序章 果ての救済
第1話 復活後の出会い


「───なぁモラクス」

 

「…なんだ」

 

俺達の眼前には深き闇。溢れ出る闇は留まるところを知らず、永遠に続くとも思われた。

 

「この方角、カーンルイアか」

 

俺達は今、天衡山の頂上からカーンルイアという国がある方向を見据えていた。

 

「やっぱなー、だから俺はやめとけって言ったのによー」

 

「……」

 

俺の横に立つモラクスは非常に整った容姿をしているがその実、彼は数千年もの時を生きる岩神であり、璃月という国の神でもある。

 

「……モラクス。いつまでも意気消沈してちゃ璃月の民が不安がる」

 

「だが…」

 

モラクスは俺の言葉に対し、尚も抵抗しようとした。だが俺の答えなどシンプルだった。

 

「これは、俺達『八神』で話し合って決めたことだろ?」

 

表情が岩のように硬いモラクスにしては珍しく表情が悲しみにうち歪んでいた。『八神』とは、この世界に存在する七つの元素を司る神とその全てを扱える神の総称であり、テイワット大陸においてその名前は知らない者がないほどだった。

 

悲しみに打ち歪んでいる表情のモラクスとは対照的に俺はニッと笑顔を作る。

 

「心配すんな。500年もしたらきっと戻ってこれるだろうよ。そしたら、また皆で───」

 

話の途中で轟音が響き渡った。見れば先程の方角で大規模な爆発が起きているようで若干の衝撃波が俺達を襲っている。どうやら、うかうかしてられないらしい。

 

「っはは!全く、『終焉』は待っちゃくれねえのか!」

 

俺は若干ヤケクソ気味にそう言った。まぁ、自分自身を鼓舞するという目的も勿論あり、不安に思っているモラクスに対して安心させてやろうという気持ちもあった。

 

「っ…」

 

俺は歯噛みし俯くモラクスへ向け、至って真面目な表情で告げた。

 

「言ったろ?必ず戻ってくるってよ。そんときまでに『摩耗』で死んでなきゃまた逢おうや」

 

モラクスはギュッと握り拳を作ったかと思うと顔を上げ、俺の名を呼んだ。

 

「なんだ?」

 

俺は返事をしつつモラクスの顔をまっすぐ見た。彼の表情は決意に満ちており、これから話すことが察せられた。

 

ああ、良い顔だ。

 

「俺は…俺達は、お前の帰りを待ち続けよう。お前の守った璃月で、いや、このテイワットで」

 

その言葉を聞いて安心した俺は、返事をせず、ただニッと不敵な笑みを浮かべながら来たるべき『終焉』へ向け風元素で飛んでいくのだった。

 

〜〜〜〜

 

数刻後、『終焉』による闇は完全に消え去り、綺麗な夕陽が雲の間から顔を覗かせていた。もう一つの危機に関しても落ち着きを見せ始めており、まるで世界の危機は完全に過ぎ去っていったようだった。

 

モラクスはカーンルイアがあるはずの方向を見据え、

 

「……友よ。例え盤石が土へ還ろうと、俺はお前を待ち続けよう」

 

そう告げた。最早、彼にその言葉は届かない。世界の2つの危機を自らの身を犠牲にして止めた彼には。

 

「じいさん。もしかして…」

 

そして現れたのは小さめで童顔の少年だ。奇しくも彼の表情は数刻前にモラクスが浮かべた表情と似通っていた。

 

モラクスは腕を組み、彼の去った方角を見据える。

 

「ああ、彼は『終焉』を止めに───」

 

「なんで…なんで止めなかったの」

 

童顔の少年───バルバトスはモラクスの言葉に俯き、わなわなと身体と声を震わせながらそう言った。

 

「……バルバトス」

 

モラクスが諫めるような声を上げる。だが、バルバトスはその激情を止めるようなことはしなかった。

 

「だってそうじゃないか!彼は、彼はいつだって汚れ役を買って出てくれた…今回だって彼がいなきゃこの騒動は収まらなかったかもしれない…!でも、だからって…ッ」

 

「わかっている。わかっているとも…」

 

モラクスは再びギュッと拳を握り、悔しそうに目元を歪めた。

 

「これは、俺の弱さと甘さが招いた事態だ。俺達は彼に甘え、目を背けるべきでない現実から目を背け、そして彼に…彼に全て押し付けたのだ。その結果…彼は決して癒えることのない永劫の苦しみに晒されることとなった」

 

バルバトスは無言だったがモラクスの言っている意味を理解してる。モラクスは首肯くと、

 

「降魔大聖…いや、他の夜叉も庇ってな。本来彼らや俺が背負うべきだった怨恨は…彼が一身に背負っている」

 

そう続けた。バルバトスはモラクスの言葉に対して自分の無力さを実感せずにはいられず歯噛みした。

 

「だから、彼は自らの力が十全に発揮できるうちに『終焉』を止めに行った。この先生きていても『摩耗』からは逃れられないし、何より怨恨によって『摩耗』の速度は上がってしまうだろう」

 

「だから…自分の中の怨恨ごと、彼は『終焉』を止めたと…そういうことだね」

 

バルバトスは唇を噛み、改めて自分の無力さに打ちひしがれているようだった。

 

「彼のお陰で、俺達は今ここに立っている。残されたものの成すべきことを、せねばならないだろう」

 

「うん…彼の遺志…ボク達が絶対に守ってみせるよ」

 

モラクスとバルバトスは共に並び、自らの国へと帰ってゆくのだった。

 

〜〜〜〜

 

「稲光、即ち永遠なり!」

 

雷の化身とも呼べるほどの剣が胸の間から抜き放たれ、襲い来る魔物を真っ二つに両断した。

 

それを成した人物は、というと周囲を見回し危険がないことを確認すると刀を消した。

 

「ふぅ…これで最後でしょうか」

 

女性───雷電影が後ろを向くと、非常に似通った容姿の女性がもう一人歩いてきていた。

 

「お疲れ様、影」

 

「いえ、お気遣いありがとうございます、眞」

 

影と瓜二つの女性───雷電眞と影は一瞬見つめ合い、その後すぐに周囲を改めて見回した。

 

稲妻城内にまで魔物達は攻め込んできたものの、武士達に加え雷電影の猛攻によって食い止められていた。だが、犠牲はそれなりに出ておりようやくなんとかなりそうだと雷電影も雷電眞も考えていた。

 

「…闇が晴れましたね」

 

「ええ、これで此度の騒動も収まるはずよ」

 

稲妻城城内の至る所から勝鬨が聞こえてくる。しかし、二人の雷電将軍の表情は曇っていた。

 

「引き受けてくれたとはいえ、彼には申し訳ないことをしたわね」

 

「……はい」

 

「特にあなたは辛いわよね…彼とは懇意にしていたみたいだし…まぁ、私もだけど」

 

それきり、二人の間に会話はなかった。少しして重い口を開いたのは影だった。

 

「……前へ進めば、必ず何かを失ってしまいます」

 

「ええ」

 

「ですから…」

 

「それでは駄目なのよ、影」

 

フッと笑って眞は言う。

 

「彼は桜を見ながらこう言っていたわ」

 

───儚い景色であることを知っているからこそ、一層楽しむべきじゃないか?

 

眞が影に教えた言葉は、数千年前に彼が眞に対して言った言葉であり、奇しくも眞が影と似たような考えを彼に話した時に言われた言葉だった。

 

「桜は一時、綺麗な花を咲かせますが、その時間は儚くも短い。彼はきっと、彼自身の境遇に桜を重ね合わせていたのかもしれませんね。或いは…定命である私達にも」

 

「……」

 

「ですから、待ちましょう。彼はきっと、戻ってきますから」

 

眞は影へ向け、にこやかにそう告げた。影はアガレスが消えていった方角を見てただ無言でいることしかできなかった。

 

〜〜〜〜

 

昔はよかったな、なんて思うことが最近は絶えない。俺自身、今は肉体を持っていないのだから当然と言えば当然だが。

 

───皆のことを…この世界を、お願いします、アガレス。

 

いつだったか…世界がこの世界として定まる以前の話だったな。俺は一度全てを失った。今度こそは、と思っていたのだがな。

 

───盤石もいつかは…土に還る。お前に後は託す…友よ。

 

俺は今もまだ眠っている。いや、正確には500年間眠り続けているのだ。

 

───ボク達じゃ止められなかったこの『終焉』を…キミなら止めてくれるよね、アガレス。

 

俺は500年前、カーンルイアの神に頼らない国造りと、俗世の七国への侵攻が現実味を帯びてきたタイミングでとある危機をとある方法で止めた。

 

名を『終焉』という。世界…正確にはカーンルイアが力をつけすぎたことによって隣接する世界とのパワーバランスに差が生じ、結果として力の弱い世界がこちらへ引き寄せられて来たのだ。

 

世界と世界の衝突…まずもって衝突すれば世界は滅び去るだろう。衝突してきた世界と同様に。

 

カーンルイアの科学力は他のどの国どの世界よりも進んでいたために起きた事象。

 

例え数百数千の人間を虐殺しようと、地形を変えるほどの力を持つ人間をどれほど殺そうとも通常このようなことは起こり得ない。

 

───はずだったのだ。

 

「───い───かー?」

 

久し振りに俺以外の声が聞こえてきた。いや、幻聴だろう。俺は寝たきりのはずだ。

 

俺は試しに感覚すらなかった手足に意識を集中させる。そこには確かに先程までなかった手足の感覚を感じた。

 

ということはまさか幻聴ではなかったのだろうか。俺は次に耳に意識を集中させた。

 

「おーい、大丈夫かー?」

 

先程まではぼんやりと聞こえた声がはっきり聞こえるようになった。ただ、呼吸はできない。それと…少し寒いな。

 

どう起き上がろうか考えていると突如俺の唇辺りに柔らかい感触を感じた。それと同時に先程の声の主の動揺しているような声が聞こえてくる。

 

これは…人工呼吸か。声の主が驚いていることから察するに二人いるようだ。

 

少しして俺はようやく咳き込みながら起き上がりつつ水を吐き出す。どうやら溺れていたらしい。

 

「ふぃ〜…なんとか生き返ったみたいだな…」

 

俺は眩しいながらもなんとか目を開き声の主をまず確認した。したのだが…。

 

「…?」

 

声の主は宙に浮いてこちらを不思議そうに見ていた。うん、俺の知る限りこんな生物はいないし見たことがない。500年の間に生まれた新種の生物か?

 

俺はもう一人、恐らく俺に人工呼吸をしてくれたであろう少女を見やる。童顔だが意志の強さを感じる瞳をしている。

 

「あ、あの…?」

 

「ああ、すまない。癖だ」

 

癖…?と二人は一様に首を傾げているが俺は構わず頭を下げた。

 

「まずは助けてくれてありがとう。それで、俺は溺れていたのだろうか?」

 

「え、お前自分がどうしてたか覚えてないのか?」

 

宙に浮く謎の生命体の言葉に俺は首肯いた。周囲を見回すと浜辺…いや、この地形は望風海角と星拾いの崖の間にある浜辺か…。

 

ということは、しっかりテイワット大陸に復活できたらしい。俺は若干だが安堵の息を漏らした。

 

宙に浮く謎の生命体は人差し指をふりふりと動かしながら俺が溺れていたというより漂流していたということを話してくれた。呼吸が止まっていたため宙に浮く謎の生命体ではない方の少女が人工呼吸をしてくれたようだった。

 

「そうか…まさか溺れる日が来るなんて…」

 

「ん?なんか言ったか…?」

 

口に出ていたようだが、俺は生まれてこの方溺れたことなどなかった。俺は独り言を誤魔化すように口を開く。

 

「そうだ、名前を聞いていなかった。良ければ教えてくれないだろうか?」

 

いつまでも少女とか謎の生命体とかって呼ぶ訳にはいかないだろう、ということでしっかりと実益も兼ねている。

 

「そういえば名乗ってなかったぞ…」

 

そんな俺の言葉に対して宙に浮く謎の生命体は胸に手を当てて元気そうに笑った。

 

「オイラの名前はパイモンだぞ!よろしくな!」

 

宙に浮く謎の生命体改めパイモンが俺にそう自己紹介をしてくれた。続いて見たことのないデザインの白い衣服に金髪の少女が口を開いた。

 

「私は蛍。よろしくね」

 

少女改め蛍が俺にそう自己紹介をしてきた。俺は二人の名前を覚えつつ、自分の名前を告げるべく口を開いた。

 

「俺の名前を言っていなかったな。俺の名はアガレス。こちらこそよろしく頼む」

 

これがかつて『八神』の中で最も優れていると言われていた『元神』アガレスこと俺とこの世界に変革を齎すであろう旅人、そしてその相棒パイモンとの出会いだった。




最初のところがコピペだって…?し、知らんよ…?

本編アガレス・今回アガレス「………」

いや、そんな目で見ないで?神二人からの圧は作者と言えど…。

というわけで、投稿頻度低めなIFストーリーはまず旅人さんから始めます。見ていただけたら幸いですねー。
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