忘れ去られたもう一柱の神〜IF旅人〜   作:酒蒸

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野球見ながら書いてたらどちゃくそ時間かかりましたありがとうございます(?)

ちなみに追記のながーいあとがきがあります。


第14話 動き始める者達①

西風騎士団本部大団長室にて、ジンとウェンティは向かい合っていた。尚、その場には関係者であるアンバー、リサ、ガイアの三人もいて話を聞くようだった。

 

「それで…どこから話したものかな」

 

ウェンティは手始めにそう切り出すと、

 

「まず初めに…キミ達はアガレス───彼のことをどこまで知っているんだい?」

 

ジン達にそう問い掛けた。ジンは少しだけ考える素振りを見せたかと思うと口を開いて、アガレスが全元素を扱えること、そして真偽はどうあれ口伝に記述のある存在と同一である可能性がある、ということをウェンティに告げた。尚、前半を聞いたジンとウェンティを除く三人はかなり驚いた様子を見せていた。

 

そんな彼、彼女らにウェンティはふむ、と唸ってから首肯くと、

 

「うん、概ね間違いはないよ。ボクが保証する!」

 

そう言ってドヤ顔をした。そんなウェンティを見たガイアは苦笑いを浮かべ、

 

「まぁ、待てよ。俺はアンタが『モンド城で一番愛される吟遊詩人』を三年連続で受賞したことくらいしか知らないんだが…」

 

そう言った。勿論、吟遊詩人は歴史学者には劣るかも知れないが、様々な物事に精通している場合が多い。特に第一線で活躍する吟遊詩人なら尚更である。だが、その吟遊詩人に保証されても証拠がないのでガイア個人としても、騎士団としても簡単に信じるわけにはいかないのである。

 

その事情を知ってか知らずか、ウェンティはまだ言ってなかったね、と呟くと寂しげに微笑みながら口を開いた。

 

「彼とは…長い付き合いなんだ。それも数千年来のね」

 

そしてその言葉にガイアは肩を竦める。

 

「おいおい、まさか…そんなに人間が長く生きられるわけがないだろう?そうだな…」

 

ガイアはそのまま人を食ったような笑みを浮かべながらウェンティを指差すと、

 

「アンタがもし風神サマだったら…或いはそうかもな?」

 

そう言った。それに反応したのはリサだった。

 

「それはありえないんじゃないかしら?風神様はモンドにもう暫く姿を見せて下さっていないから…それに、『龍災』のこともわかっていたのならもうとっくになんとかしてくれていると思うのだけれど…」

 

リサのその言葉にウェンティがバツが悪そうに目を逸らす。ガイアはガイアでその言葉に面白そうに笑っていた。

 

「っはは、案外なんとかしようとしてできなかったりしてな?」

 

「皆、今はそこを議論しても仕方ないだろう。一先ず彼に知っていることを聞かせてもらうのが先だ。その後で真偽は確かめればいい」

 

リサとガイアの話し合いをジンがそう諌めるとウェンティを見て続けるように視線だけで言った。それを感じ取ったウェンティは口を開いて説明を始めた。

 

「…そうだね、一応アガレスのことはそれなりに知っているみたいだから細かいことは省くけど───」

 

かつて行われた魔神戦争やそれに付随する戦いの際、アガレスは現在生存している『七神』の背負うはずだった怨恨を全て引き受けている。彼と親しかった魔神は怨恨を向けることはなかったが、それ以外の魔神達は『元神アガレス』という名前そのものに怨恨を被せるようになった。

 

ウェンティは上記のことを説明すると神妙な顔つきで言った。

 

「───だから500年前、彼が一度死んだ時チャンスだと思ったんだ。彼に掛けられた複数の魔神達の怨恨による呪いを解けるかも知れない、ってね」

 

複雑に絡み合った呪いは通常の方法では最早解呪できなかった。だからこそ、アガレスを除いた『八神』───現『七神』はアガレスに関する公な記憶を、一部を除いて全て消去したのだ。彼が復活した時に自由に生きていけるようにするために決して彼を頼らないようにすることも『七神』の間で取り決められているのだ。

 

「彼の様子を見る限りだと…どうやらボク達の目論見は上手くいったみたいだった。一部を除いてね」

 

ウェンティのその言葉に違和感を覚えたジンがやはり、という表情を浮かべてウェンティを見た。

 

『七神』間の取り決めが裏目に出たことくらいウェンティ───バルバトスにもわかっていたのだ。最初にアガレスを見た時、彼は信じられないのと本物かどうかわからないのと、そして取り決めの事を思い出して一度去った。その後すぐに二種類の元素を扱っているのを見て本物であることを確信しすぐに会いに行こうとしたが、タイミングを逃し続けて気が付いた時には姿を消していた。

 

ウェンティはジンの表情に気が付いているのにも関わらずそのまま続けた。

 

「ボクは彼に生きていてほしいがために…彼自身の思いを蔑ろにしてしまった。そしてそれに気がつけなかったボク自身のミスでもあるからね」

 

ジンはウェンティの言葉を聞き終わると、

 

「それでは…どうやってアガレスを探すおつもりですか?」

 

敬語でウェンティにそう言った。これに驚いたのは今まで水を差さないようにしていたアンバーだった。

 

「じ、ジン団長?どうして突然敬語に…」

 

「風神バルバトス様」

 

ジンの口から紡がれた言葉がアンバーの問に対する答えだった。ジンを除く三人が驚いたような表情を浮かべてウェンティに視線を集中させた。見られたウェンティは、というと特に反応は示さず、顎に手を当て考えるような仕草をする。

 

ジンがウェンティをそう呼んでいるからか、アンバーもリサもガイアもウェンティが風神バルバトスと同一人物なのかに疑問は持てどそれを表に出すようなことはせず、ただウェンティが口を開くのを待っている。

 

そんな状況の中、ウェンティは遂に口を開くと、

 

「そうだね、現状ではどうしようもない、というのが本音だよ。彼に本気で隠れられたら…絶対に見つけられないんだ。敵対されたら…何もせずにボクらは消されるかも知れないね」

 

肩を竦めながらそう言った。その言葉に拍子抜けしたような表情を浮かべるリサは、少し考えると口を開いた。

 

「そう言えば風魔龍…いえ、トワリンはもう正気に戻っていると考えていいのよね?そしてトワリンがアガレスと共にいるのなら…彼に戻ってくるように命令できたりはしないのかしら?」

 

「う〜ん…多分無理だと思うな」

 

そしてウェンティはリサのその考えを即座に否定した。ウェンティは最早デフォルトとなった顎に手を当てる仕草を続けたまま言葉を紡いだ。

 

「確かにトワリンはかつて『東風の龍』ではあったけれど、明確な主従関係が今もあるわけじゃないんだ。アガレスに助けてもらった身ならきっと…彼の命令を優先するかもしれないね」

 

その言葉にリサは少しだけ落胆した様子を見せた。そんなリサとは対象的に、ガイアは危機感を顕にすると、

 

「だったらアイツがまたトワリンをモンドにけしかけてくる可能性だってあるんじゃないのか?俺としちゃそれが一番怖いんだが…」

 

そう言った。しかしウェンティは即座に首を横に振る───かと思えば思い悩んでいる様子を見せているように、ジンの目には映っていた。しかし、

 

「…いや、アガレスは絶対にそんなことはしないよ。断言できる」

 

ジンの気の所為だったのかウェンティは即座にそう言葉を発してガイアをジト目で見た。見られたガイアは、というと肩を竦めるだけでそれ以上なにも喋ることはなかった。ウェンティは反論がないことを確認すると、

 

「一先ず何があってもいいように備えることだけはしておかないといけないね。それと、アガレスと旅人の捜索もね…ボクの方でも探してみるから」

 

「感謝致します、バルバトス様」

 

バルバトス、と呼ばれたウェンティは照れ臭そうに笑うと、

 

「ボクのことはウェンティで構わないよ。今はまだ…ただの一吟遊詩人に過ぎないからね」

 

ジンにそう言った。ジンは首肯いて了承の意を示すと一旦会議を解散して改めてアガレスと蛍の捜索、そして備えを行っていくのだった。尚、混乱を避けるためにウェンティが風神バルバトスであることは会議に参加したジン、アンバー、リサ、ガイアの四人の機密としている。

 

 

 

次の日の夜、モンド城の南西にある国境付近の山頂にウェンティはやって来ていた。

 

丁度良い岩に腰掛け、ウェンティはライアーを気の赴くままに爪弾いている。

 

「───風情のある良い音色だ。聞いたことのある旋律だがお前に教えたことがあったか?」

 

そんなウェンティの背後から声が響き、足音が響いて来る。まるで来るのがわかっていたようにウェンティは狼狽せずライアーの音色を閉ざすことはなかった。

 

そのまま目を瞑って寂しげに笑うと、

 

「…アガレスが昔ボクに教えてくれた旋律だよ。キミが聞き覚えがあるのも無理はないんじゃないかな?」

 

そう言った。言われた長身の男性はある程度の距離まで近付いてくると足を止めてふむ、と一つ唸った。

 

「確かに…元々は歌塵浪市とアガレスが共に生み出した旋律だったな」

 

「あはは、ボクはそれを彼に教えてもらったんだよ。素敵な旋律だと思ってね」

 

ウェンティは最後まで弾き終えたのか、ライアーを仕舞うと自身の背後にいる男性を見る。男性は苦しそうな表情を浮かべているウェンティを見ると、溜息を少しだけ吐いた。

 

「…それで、わざわざ俺を呼び出すとは何の用だ?バルバトス」

 

「…手伝ってほしいことがあるんだ、じいさん」

 

ウェンティに『じいさん』と呼ばれた男性は、明らかに『じいさん』という容姿からかけ離れているのだが、それを全く気にも留めずに男性は口を開いた。

 

「アガレスのことか?」

 

ウェンティは首肯くと状況を一通り説明して男性の反応を待った。状況を理解したらしい男性は腕を組んで瞑目しつつ口を開く。

 

「諸行無常…だが、彼だけは変わらないものと勝手に決めつけていたな。良いだろうバルバトス」

 

男性は目を開くと、

 

「『契約』は成された」

 

とウェンティにそう告げるのだった。ウェンティはその言葉に少しだけ泣きそうになりつつもしっかり「ありがとう…じいさん」と返すのだった。




あとがき書き忘れてたってマジ??

さて、小話をここで一つ、『ウェンティのアガレスに対する考え』に関して。

昔→「アガレス世界の民やら友人やら絶対護るマンだし闇堕ちとかナイナイ!!」

今→「って思ってたけど全然元素攻撃されたな…もしかしてもしかする?そ、マ?」

的な感じになっています。結構軽い感じで書いてますが実際は滅茶苦茶重いです。アガレスは自分のやって来たことを友人に裏切られて溝に捨てられたと思ってるし、ウェンティはウェンティで心の何処かで『アガレスならわかってくれるんじゃないか』という決めつけがあり…というすれ違いです。

何が辛いってウェンティは折角再会できたのに遠回しに『友人じゃない』って言われてるし、攻撃されかけるし、モンドに攻撃を仕掛けてこないっていうのも断言できなくて信じてあげられない自分にも嫌気が差すし…という。

もうね、辛い。辛いけど書いちゃう。

というわけで酒蒸でした、長めのあとがきにわざわざ目を通して下さった方に感謝感謝…。
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