本編の投稿頻度なら、初期は一日一つペースだったぞ!!ちょーっと戻っただけだから!!
「───ここでいい」
一方、トワリンに乗って暫く彷徨っていたアガレスは適当な所でトワリンをホバリングさせると風元素で浮遊した。そのままアガレスはトワリンの顔の前まで飛んでいき少し笑いかけると、
「ありがとう、付き合わせてしまってすまないな」
そう言った。その言葉に対してトワリンはグルグルと喉を鳴らすと、
『…気にすることはない。我を救ってくれたせめてもの報いだ』
そう言った。そのままトワリンは一声嘶くとアガレスを置いて飛んで行った。アガレスはトワリンを見送った後、地上を見やる。その場所は誓いの岬の上空であり、何を思ってここに来たのかはわからないがアガレスはここで何かをしようとしている様子だった。
そのままアガレスは覚悟を決めた瞳で地上へと降りていくのだった。
一方飛び去って行ったトワリンはアガレスを降ろした位置から然程離れていない、しかし人目につかない場所で地面に降り立った。
『いるのだろう、人間』
そしてそう言った。一見すると誰もいないように見えるが、少ししてヒソヒソと話す声が聞こえたかと思うとフラフラしながら金髪の少女───蛍とパイモンがその姿を現した。
「どうして私達がいるってわかったの?」
そしてトワリンを見て首を傾げた。何より蛍達にとって疑問だったのは、わかっていたなら何故アガレスに報告せず、そして振り落とさなかったのかということである。
トワリンはそれを理解しているのか、再び喉を鳴らすと、
『自らの身体に何かが引っ付いてくれば嫌でもわかる。それに…我はアガレス殿が何をしようとしているのかも知っている』
そう言って更に瞑目しつつ続けた。
『お前は我ではなくアガレス殿を追ってここまで来たのだろう?なればこそ…アガレス殿が何をしようとしているかを知る権利があるだろう』
トワリンはそう言うと、蛍達の意思を確認するようにジッと見た。蛍とパイモンは顔を見合わせると首肯き合ってトワリンを真正面から見返した。トワリンはフン、と鼻を鳴らすとアガレスがしようとしていることについての説明を開始した。
アガレスがしようとしていることは単純明快で、稲妻のとあるおとぎ話と同じことをしようとしていた。そのおとぎ話とは『泣いた赤鬼』である。
トワリンは正気に戻り、アガレスは何処にぶつけることもできない怒りと悲しみを自らの内に押し留めているため、いつ破裂してもおかしくないのは自分で深く理解していた。だからアガレスは最後はせめてトワリンとモンドのためになるようなことをして消えるつもりなのだ、ということを蛍達はトワリンから聞いた。
蛍達はアガレスと過ごした短い時間の中でも、彼が思慮深く短絡的でないことを知っていたが真相を知る人物はトワリンとアガレスの二人だけ。つまりどちらかが裏切らない限り絶対に失敗することのない計画だと感じていた。
そしてアガレスは決してモンドの民や建物を傷付けないことを確約し、トワリンと風神バルバトスにその感謝を集約させるためにトワリンには怪我を負わせることになるだろうことも伝えていた。
「…つまり、アガレスはモンドの未来のために犠牲になる道を選んだっていうことなのか…?」
パイモンがトワリンの話を聞いてそう感想を漏らし、トワリンがそれに微かに首肯いた。パイモンが空中でわなわなと自らの体を震わせ、その直後今にも泣きそうな表情で地団駄を踏んだ。
「なんだよそれ…自分が誰かを傷付けないように自分を傷付けるなんて…そんなの間違ってるぞ!!オイラ、アガレスと過ごした時間はそんなに多くないけど…アイツが良いやつだってことくらい知ってるし…」
最後の方は失速したが蛍としてもトワリンとしても同意見だった。
「…アガレスさんはわかってない。残された私達の気持ちまで…考えてない…というより考えないようにしている気がする」
蛍が苦々しげな表情を浮かべつつそう言った。トワリンも再びその言葉に首肯くと、
『我は…アガレス殿に報いたい。モンドの民を傷付けてしまった分際で高望みであるのはわかっているのだが…バルバトスのためにもアガレス殿は救ってやりたいのだ』
蛍とパイモンはトワリンのその言葉に首肯くと、
「おう!オイラ達でよければ手を貸すぜ!!」
「うん、アガレスさんを死なせたりなんかしない」
そう言うのだった。トワリンは少し笑うと蛍とパイモンに背に乗るように告げる。そして二人が背に乗ったのを確認すると今度はモンド城へ向けて飛び始めるのだった。
西風騎士団本部大団長室にて、ジンは普段の執務を早めに終わらせ、現在は冷や汗を浮かべつつとある人物と話をしていた。
「───というわけで…せん…コホンッ、ディルックにも一応警戒しておいて欲しいんだ」
そしてその話し相手というのは赤髪の長身の男性───ディルックだった。ディルックはムスッとしながらジンに冷たく告げる。
「…だから言っているだろう。僕はあくまで、酒場のオーナーに過ぎないと。だが…」
ディルックは一転して少し微笑むと、
「その忠告痛み入る。気に留めておこう」
そう言って大団長室を去るべく踵を返そうとしたのだが、窓の外を見てディルックは驚いたように目を見開いた。それと同時にエントランスホールの見張りをしているはずの西風騎士が慌てて大団長室に駆け込んできた。
「代理団長!!急いで来て下さい!!風魔龍が現れました!!」
「ッ…まさかこんなに早く…ありがとう、すぐに行く」
駆け込んできた西風騎士は敬礼をしながらそう報告した。ジンは苦々しげな表情を浮かべながら首肯くとすぐに席を立ち報告に来た西風騎士と共に行こうとした。しかし、
「僕も行こう」
ディルックが少しだけ眉を顰めながらそう言ってジンの隣に並んだ。ジンと西風騎士の二人は少し驚いている様子だったがすぐにジンが許可を出して共に西風騎士団本部の外へ出る運びとなった。
そうしてやって来たジン達だったが空中でホバリングして落ち着いた雰囲気を漂わせているトワリンを見て一瞬言葉を失った。トワリンはジンを見つけると、
『む、来たか…』
そう呟いて風神像の前に静かに降り立つと、頭を西風騎士団本部側に寄せた。ジンや西風騎士達はその様子に思わず身構えたが、すぐに再び目を見開いて驚いていた。
「こ、こんにちは〜…お、オイラ達だぞ〜?」
まずトワリンの頭の上からふわふわと飛んできたのは冷や汗を浮かべて目を泳がせまくっているパイモンだった。そしてその直後に蛍も苦笑しながらジン達へ向けて手を振った。そんな中ジンが安心したように警戒を解く。それを見たディルックも警戒を解きつつ、
「…ジン、あの者達は?」
と怪訝そうにジンにそう問いかけた。問いかけられたジンは怪訝そうに首を傾げるディルックを見ると、
「彼女達はトワリンを撃退した経験があり、モンドへ多大な貢献をした者達だ」
そう言った。そして今度は蛍達を見ると、
「旅人、しっかり説明してもらうぞ」
少しだけ不安そうな目を向けつつそう言った。その言葉に対して蛍とパイモンは目を見合わせてからしっかりと首肯くのだった。
「───まさか、そんなことが…」
蛍とパイモンから、トワリンに聞いた話をそのまま告げられたジンとディルックは深刻な表情を浮かべていた。ジンは色々と思うことがあるのか、特に苦々しげに表情を歪めている。
「…それで、オイラずっと気になってたんだけど…」
そんな中パイモンはジンの隣に立っているディルックを見た。蛍とパイモンにとってディルックは初めて見る存在であるためそう問いかけたのである。ジンは忘れていた、とばかりにディルックを見たが、その彼はジンが口を開いて説明しようとするのを手で制した。
「僕の名はディルック、わかりやすい身分を告げるとアカツキワイナリーのオーナーをやっている。好きに呼ぶと良い」
ディルックのそのぶっきらぼうな言葉にパイモンはお、おう、と曖昧な反応を見せつつ普通にディルックと呼ぶことにしたようだった。
蛍達の自己紹介も一応終えると、蛍はそのままジン達に相談するべく、
「それで、これからどうしたら───」
とそう言おうとした。だが言葉の途中で、大団長室にある開いた窓の外から声が響き渡った。
「───話は聞かせてもらったよ!」
そして窓から入ってきたのは緑色の吟遊詩人、そしてもう一人いた。
「やーやー!現状を打破するべくボク、吟遊詩人ウェンティの登場さ!」
「…それで何故俺まで連れてこられたのか…本当に理解できんな。お前はやはり風情に欠ける呑兵衛詩人か」
「じいさんひどーい」
やけにハイテンションなウェンティに連れ立たれてやって来たのは璃月の服装をした長身の男性だった。長身の男性はなんでもないように大団長室に窓から入ってくると、腕を組んだ。
そんな彼を警戒しつつ見るジンだったが、その様子に気が付いたらしいウェンティが軽い感じでその場にいた全員に告げた。
「紹介します!隣国、璃月の岩神、『岩王帝君』ことモラクスさんです!」
ピシッと空気が固く凍り付く…というより石化した。直後、パイモンの悲鳴にも似た叫び声が西風騎士団本部、ひいてはモンド城に響き渡るのだった。
と、いうことで…『じいさん』ことモラクスさんに滅茶苦茶悩みを打ち明けて少しだけ気持ちが軽くなったバルバトスくん。あまりにも舞い上がり過ぎて皆の、それも旅人の前にバチコーン連れてきちゃいました☆
どんどんカオスになっていくな〜この状況(白目)
曇らせに曇らせて救済…アガレスを蛍ちゃんに惚れさせるにはこれしか…!!