自己紹介を済ませた俺達はお互いの状況を話すことになった。
「───へぇ…つまり今まで世界を旅してきたが世界の異変に気付き逃げ出そうとしたものの、謎の神に捕まり兄を連れ去られたのか。それで兄を探す旅に出ようとしていたところに偶然俺がいた、という認識で合ってるか?」
俺の確認に蛍とパイモンが首肯いた。彼女達の話を総合すると『八神』のうちの誰かとは考えにくいだろう。
まぁでも『八神』の中にその存在を知っている者がいるかもしれない。そう考えると彼女の行動も無駄ではないわけか。
ついでに蛍の話に出てきた世界の異変とは間違いなく『終焉』或いはカーンルイアの滅亡だろう。まぁアレだけの大災害だったら色々記録が残されてると思うし確認しに行かねばならないだろう。
と、蛍の話が終わったタイミングでパイモンが期待に満ちた目でこちらを見ながら、
「次はアガレスの番だな。どうして溺れてたんだ?」
そう聞いてきたので俺は溜息を吐いた。蛍も同時に吐いていたので恐らくだが同じようなことを考えているに違いない。
「パイモン…すまないが俺は先程どうして溺れていたかは覚えていないと言ったはずだぞ…」
俺が若干の呆れと共にパイモンへそう告げると、パイモンはかなり慌てた様子を見せた。
「お、オイラ別に忘れてたわけじゃないぞ!もう一回聞けば思い出すかなぁって思っただけだ!」
言い訳…失礼、パイモンは自分の考えを尚も述べようとしたので一旦制した。
「まぁそれはいいとして…まずは俺の過去から言わなきゃならんな」
俺は二人に500年前に巻き起こった『終焉』を止めて死に、500年間眠っていたことを話した。すると二人───特にパイモンがかなり驚いていた。
「500年前って…しかも世界の危機を一人で止めたって…!?じ、じゃあアガレスって一体何者なんだ…?」
パイモンのその言葉に、俺は少し考える。昔ながらの自己紹介をしても別に問題ないだろう。
「俺は『八神』が一柱、元神アガレス。7つの元素全てを扱えることからこの二つ名を持っている」
そう考えての自己紹介だったのだが、パイモンには首を傾げられてしまう。蛍は世界を旅して回っていたらしいから知らなくても当たり前だろうが、自称テイワットで一番のガイドと名乗っているのに『八神』のことを知らないというのはどういうことなのだろうか?
と俺が疑問に思っているとパイモンは信じられないようなことを口にした。
「『八神』…?アガレス、七国それぞれには確かに神がいるけど、総称は『七神』だぞ?アガレスっていう神の名前も、『元神』っていう二つ名も元素を全て扱える存在がいることも聞いたことないぞ…」
俺は思わず目を見開いてパイモンをまじまじと見る。
「…その話は本当か?」
パイモンは少し俺の雰囲気に気圧されつつもしっかりと首肯いた。そう聞いた俺は少しだけ考える。
俺は国を持たざる神ではあったが魔神戦争を生き抜き、他の『八神』とも良好な関係を築いていたために民にも敬愛され、どの国でも自国の神の次に信仰されていたはずだ。
それらが綺麗サッパリ忘れ去られているとするなら他の『八神』が行動を起こしたとしか考えられない。勿論、パイモンが嘘をついている可能性も考えられるが…。
辺りの崖の特徴を見る限り恐らくここはモンドだろう。ならモンド城へ行って確認するのが一番早いかもしれないな。
俺はそう結論を出して考えるのをやめ、蛍とパイモンに先ずは何処へ向かうつもりなのかを問いかけた。
「ここから一番近いのはモンドだからな!そこに行こうと思ってるぞ!」
「手始めに一番近い国から、ってことか。効率を考えるなら最高だな」
加えて『八神』の中でも風神は親しみやすい方だろう。そう考えると確かにモンドにいるのは彼女達にとっても、そして俺にとっても好都合だ。昔は風神とも仲が良かったわけだからもし俺のことを覚えていれば色々教えてくれることだろう。
「今から出発か?」
そう問いかけると答えたのは蛍だった。
「その予定だったところに偶然、アガレス…さん?が流れてきて…」
なるほど、先程もそんなようなことを言っていたがそのせいで現状出発が遅れているわけか。なんというか少し申し訳ない気持ちになりつつも俺は苦笑いを浮かべた。
蛍は無表情で何を考えているかわからないがパイモンも俺と同じく苦笑いだったので恐らく遅れていることを少しは気にしていたのだろう。それでも尚俺の話に付き合ってくれる辺り良い奴らだな。
「俺もついていっていいか?」
「「え?」」
蛍とパイモンが同時に驚いたような顔をしつつ俺をじっと見た。少し居心地は悪いが彼女達は七国全てを回るつもりなのだろう。で、あるなら俺としても好都合なのだ。
俺は重要な部分は伏せつつ二人にその旨を説明すると二人は納得したのか許可してくれた。俺は感謝を告げつつ立ち上がる。
「さて、それじゃあ行こうか」
俺がそう言うと二人は首肯いた。
さて、行こうかとは言ったものの俺は二人のペースに合わせている。蛍はこの世界のことをまだよく知らないだろうし見て回りたくなる気持ちもわかるので進むペースはかなり遅めだ。ラズベリーを取ったり、ミントやスイートフラワー、風晶蝶を取ったりしていたがやがて星落としの湖の七天神像までやって来た。
パイモンと蛍が何事かを話した後、蛍の衣服の一部が風元素のイメージカラーに染まった。思わず、俺は驚きを禁じ得ず少し仰け反った。
「旅人、風の元素力は感じられたか?」
「うん、なんか不思議な感覚だけど…」
七天神像に別にそのような機能はないはずだ。あくまでも信仰の対象となるだけで元素力があるなどと言う話は聞いたことがない。
ここ500年で変化したのか、或いは俺だけが知らなかったのか…まぁ、俺は元素一つだけを司るわけではないから知らなくても仕方ないのかもしれないが。
だが七天神像を回ることで元素力を回収できるのだとしたら彼女もまた俺と同じく全元素を扱えるのではなかろうか?
「一先ずモンド城に向かってみようぜ!」
まぁ、いずれわかることだろう。今はまだモンドにいるが次に行くのは隣国璃月だろうからな。
モンドは『自由』の国だが、璃月は『契約』の国だ。その頂点たるモラクス(璃月の民からは敬愛を込めて岩王帝君と呼ばれている)は『八神』からも頑固者と評される程の男だ。昔から何らかの契約を遵守しているのでこの世界にとって異端である蛍をどう扱うかは俺には予想できかねるな。
結論が出ぬままに蛍達について囁きの森方面に歩いていくと、突如暴風が吹き荒れた。風にたたらを踏む蛍達を見つつ、俺は風の発生源を見て驚愕する。
「…トワリン、なのか?」
暴風の発生源となっていたのは巨大な蒼き巨龍だった。巨龍は俺達が今向かっている囁きの森方面へ飛んで行っている。
そしてその巨龍に俺は見覚えがあった。風神バルバトスの眷属である東風の龍トワリンと酷似しているのだ。
風神バルバトスと俺は深い仲だった。勿論男性同士だし神は対して恋愛とか情事には興味がない。なので親友、という間柄だったのだがその関係で東風の龍トワリンともそれなりに交流があった。その彼が暴風を巻き起こしながらモンドを移動しているのには違和感しかなかった。
「…蛍、パイモン、すまないが先行する。後で必ず合流する」
「えっ!?おい!!」
パイモンの制止の声を俺は一切聞き入れずこの異常な状況を打破すべく行動を開始した。トワリンらしき巨龍は囁きの森と呼ばれる森林に降り立ったようだ。
俺は久し振りに元素を扱うべく風元素で少し飛ぶ。元素の扱いに特に問題はなさそうだったので今度は雷元素を全身に纏わせたが、雷元素も問題なく扱えるようだ。この調子だと昔と同じように全元素を扱うことが出来るようだ。
昔の移動方法を少し試すべく俺は雷元素で今いる位置の少し先の地面にマーカーをつける。すると俺の肉体とマーカーとが引き合って光速で動くことが出来る。実際問題なく扱えるようだ。ただ地面にマーカーを置くと少し効率が悪いので空中にマーカーを打ち、そのまま移動を開始した。
僅か数秒で俺は星落としの湖から囁きの森へと到達することができたのだが、そこにはトワリンと思われる巨龍とそして全身緑色の吟遊詩人のような風貌の少年が存在していた。
「───安心して、ボクは帰ってきたよ…トワリン。だから安心しておくれ」
少年の雰囲気は正しく神秘的と言って差し支えないだろう。暖かな微風が彼の周囲を取り巻き、尚その雰囲気を引き立たせていた。
少年の発言から、あの龍がトワリンだというのは確定したが、雰囲気に呑まれていた俺はそれどころではなかった。昔の俺なら、勿論ありえないが。
思わず雰囲気に呑まれてしまっていた俺は足元の灌木に気が付かずへし折ってしまった。それにより少年が驚いてこちらを見た。少年に釣られてかトワリンもこちらを見て彼と目が合った。彼は俺を見て少し苦しそうにした後、一声吠えるとそのまま飛び去ってしまった。
飛び去る直前、うなじの辺りと腰の辺りに毒々しい色の水晶のようなものが存在していた。一体アレは何だったのだろうか?加えてトワリンは俺を見て苦しそうにしていたが何故なのだろうか?如何せん、情報が足りなさすぎて理解が及ばないな。まぁこれから集めれば済むことではあるが。
俺が少年のいたところに視線を向けるとその少年は既に存在しておらず結局わからずじまいとなってしまった。が、そっちの正体はある程度予想できたので良しとしよう。
「アガレスさん!!」
トワリンの去って行った方向を見ていると、蛍とパイモンが追いついてきた。
「さっきここからさっきの龍が飛び去っていったけど…何かあったのか…?」
パイモンが俺にそう聞いてきたので俺は蛍とパイモンに先程見たことを話した。あの龍がトワリンという名前であることと緑色の少年がいたことだけを話し、俺が考えているあの少年の正体の予想に関しては話さなかった。
話を聞き終えた二人は驚いている様子だったが、パイモンがなにかに気付いたように蛍に話しかけた。
「それより旅人、さっき龍がいたっていう場所になにかあるぜ?」
言われて初めて、俺もそのモノに気が付く。非常に濃縮された風元素の塊だが、不純物が混ざり赤く変色している。ともすればただの風元素の濃縮物だが、俺の目には涙のように映っていた。
蛍とパイモンが俺に視線を向けてきたが、俺にもアレが何かはわからない。しかし、
「アレは多分トワリンから出たものだろう。平たく言えば風元素の結晶体のようなものだ…ただ、不純物が多くて構造そのものはよくわからない。他の人が見つけたら危険かも知れないから俺達で回収したほうが良いかもな」
トワリンから出たものだとすれば、それは彼が深い悲しみを抱いていることを意味しているように思えてならなかった。
さて、俺の言葉に対してパイモンがうんうんと首肯いて同意しながら、
「確かに他の人が見つけると危険だろうし…オイラ達で回収しようぜ!」
蛍とパイモンがトワリンの涙(?)を回収しているのを尻目に、俺は再び考察に耽らずにはいられないのだった。
先ず間違いなく誤字があるはずだ…本当にごめんなさい。
出来る限りないように頑張ります…。