最初のアガレス=『アガレスA』
現アガレス=『アガレスH』とし、『アガレスA』から現アガレス『アガレスH』までアルファベット順に『アガレスA』→『アガレスB』→//→『アガレスG』→『アガレスH』となる。
アガレスAからアガレスEまではテイワット世界の住民ではないが、自らの世界の存在や世界そのもの、そしてアガレスAの肉体そのものも消滅したために忘れ去られて存在が希薄になっていたが、その世界と同じ座標に新たな世界が誕生、『アガレスそのもの』は自己承認欲求の鬼なので執念でその世界に存在する自分に近しい波長の存在『アガレスB』に入り込む。
以後、『アガレスF』までこの流れが続き、『アガレスF』からは肉体的にはテイワットのモノである。尚それぞれの思念や魂とも言えるものには別世界に存在したそれぞれの能力がある。そしてその能力は『アガレス』がテイワット大陸に存在した際、世界に合うような形で発現し、それぞれが七種類の元素の役割を果たしている。加えて『アガレスA』の意思は多少変異しつつも『アガレスH』まで受け継がれている。
って感じです。うーん、長い前書きですね。本編よりわかりやすく書くとこんな感じになります。つまりアガレスを落とすにはとにかく褒めまくればいいってことだね(白目)
「───ん?んん?オイラ、アガレスの話の半分も理解できないぞ…」
途中まで前提となる話を聞いたパイモンがそう言った。確かに俺自身完全に理解しているわけじゃない。実際世界から世界に思念体のようなモノだけで移動することが可能なのか、それが全く以て不明でブラックボックス化されている。
俺はパイモンに苦笑しつつ、
「まぁ簡単に言えば、俺は純粋なこの世界の住人ではない、って覚えておいてくれればそれでいい」
そう告げた。パイモンは取り敢えず先程までの小難しい話は頭の片隅に追いやって今言ったことを覚えているようだ。蛍に関しては自分なりに先程の話を消化しているらしい。俺の想いを垣間見た経験からある程度理解できていたみたいだが、恐らく全部ではないだろう。
俺は二人がある程度理解できたのを確認した後、
「それじゃあ、続き話すぞ?」
と告げるのだった。
〜〜〜〜
アガレスは世界を通常とは違う方法で股にかけてきた。そうして世界を渡り歩き、テイワットに生まれたアガレスだったが、今までとは異なりアガレスの意思に変化が生じ始めていた。
最初に生まれた『アガレス』から受け継がれた、いや、正確には自分自身へとかけた『承認欲求』という呪いと、大切な存在を護りたいという『守護』の理念の板挟みになり、初めてテイワットに生まれたアガレスは自らの力を磨かなかった。加えて友人と言える友人を作らず、知り合いという関係性に留めていた。まぁ生来のお人好し精神で、何度も何度もその知り合いを助けてしまっていたのだが。
自分の力を磨いてしまえば、その力に責任が生まれる。何より、友人を作ればその友人を護るべく動かねばならない。自分の力で他人を傷つけることを恐れ、何より大切な存在を力不足で護れないことを恐れた。『守護』の理念から、テイワットで最初に生まれた『アガレス』は逃げたのだ。
そもそも自らにかけられた無意識下の呪いである『承認欲求』を満たすことなどできようはずもなかった。他者に壁を作って知り合いで留めてしまうこの『アガレス』には、この二つのある意味での『呪い』に蝕まれていたとも言えるだろう。
だが『アガレス』にとって契機となる出来事が巻き起こった。いや、契機とは恐らく言えないだろう。彼自身にとっては自分自身に絶望するような出来事だったためだ。
───世界と世界の衝突…か、止められる筈も無し。私自身の力不足が原因だろうな…今までのツケが回ってきたというわけだ。
『アガレス』は想う。自分の番は終わりだ、また次の世界で次の『私』が呪いを満たしてくれるだろう、と。眼前で起きている世界と世界の衝突という現象を目の当たりにしてアガレスは全てを諦め瞑目した。
───私は信じてる。貴方がきっと…次はこれを止めてくれるって。
───皆のことを…この世界を、お願いします、アガレス。
だが、それを許さぬ存在がいた。
───盤石もいつかは…土に還る。お前に後は託す…友よ。
全てを諦めたアガレスの下に集う者達がいた。
───ボク達じゃ止められなかったこの『終焉』を…キミなら止めてくれるよね、アガレス。
認めたくなかったし、現実を直視したくなかった。
『友人』になんてしたくなくて、それでも困っていると見過ごせなくて。そんな中途半端な自分を友人だと、信じていると言ってくれた存在がいることがアガレスにとってはこれ以上ない程嬉しくて、堪らなく悲しかった。
そして残酷な程に理解できてしまう。これから彼等が何をするのか。自分のためにその身を犠牲にしようとしているのだ。『終焉』を…否、この世界そのものの時間を、神四柱のエネルギーを利用して巻き戻そうとしているのだ。
本当なら自分一人で『終焉』を止めて犠牲になっても良かった。だが、現状の自分の力では止められず、護ることが出来ない。そこまで来て、『アガレス』は気付いたのだ。とうの昔に、『知り合い』ではなく『友人』へ、そして『大切な存在』になっていたことに。
『アガレス』は絶望を味わった。『大切な存在』を護ることが出来ないことに、『終焉』の理不尽さに、何より…現実から逃げ続けた自分に。本当ならこのまま逃げてしまいたかった。数千年逃げ続けた自らの呪いの影響は弱まっており、そのまま消えることだって可能だったはずだ。
だが、アガレスはそれをしない。確固たる意思を以てやり直された世界に再び誕生した。友人からかけられた『世界を救え』という呪いの言葉と想いを背負って。
新たに生まれたアガレスの中には『アガレス』が存在している。といっても意識のかなり深い部分だ。そのため記憶はかなり曖昧であり、そもそも復活前の自分のことなどほとんどわからない。ただ、『酒が敵』であるということと、『力を磨く』こと、そして『大切な存在を守護する』ことだけは自らの確固たる意思として遺っていた。
だからアガレスは力を磨き、『アガレス』では成し得なかった『八神』としての活動を開始した。元々いた魔物を駆逐してその怨恨を背負い、『魔神戦争』で魔神達の呪いを出来得る限りその一身に受け止め、そして『終焉』を自らのエネルギーのほとんどを使って止めた。全ては『大切な存在』である『八神』の皆と世界の民を護るためだった。
だが、500年経って復活しても自らを知るモノは誰もいないように思えてしまった。『アガレス』はそれでも問題なかった。目的は達せられたのだからそれで良いと思っていた。だが、新たなアガレスはそれを良しとはしなかった。『毒血の侵食』を受けていたとはいえ『承認欲求』にのみ拍車がかかってしまったのは事実だった。
だが、『アガレス』はアガレスのその想いも孤独も理解できた。だからこそ、他の問題である魔神達の怨恨や『承認欲求』と『守護』の呪いを一身に受けてこの世から消滅したのだ。
魔神達の怨恨による呪いによって『魂の摩耗』という現象が、アガレスは他の神々より早く進行していたのだ。
「───だからまぁ結局のところ、今現在俺から寿命の問題は消えて他の神々よりちょっと短いくらいになってるはずだ。まぁ長々と話したがつまり…」
最初のアガレスが『アガレスA』だとすると、そのアガレスAは『承認欲求』と『守護』の二つの呪いを後に生まれる『アガレス』に掛けた。
その呪いの影響が緩くなっていたのが『アガレスF』であり、その『アガレスF』は現在の『アガレスH』と500年前『終焉』を止めた『アガレスG』の中に存在していた。
『アガレスH』は『承認欲求』の呪いがアビスの使徒によって強められてしまっていたが、その時には既に『アガレスG』は他の呪いを消滅させていた。『守護』欲求が『アガレスH』の中で弱まっていたのはそのためである。
全てが解決した今では、『アガレスH』の他に恐らくアガレスの人格は存在していない。
「…ってくらいだな。かなりややこしいだろ?」
アガレスは苦笑しつつそう言った。事実、蛍もパイモンもかなり頭を捻っており、断片的にしか理解できていないようだった。話している最中はまだまだ明るかったのだが、話が落ち着く頃には暗くなっていた。
焚き火の光のみが周囲を照らす森の中で、蛍はアガレスを見て微笑むと、
「…まぁ大体わかったけど…総合すると、やっぱりアガレスさんは優しい人だよね」
不意にそう口を開いた。突然のその発言に面食らったらしいアガレスはそのまま固まっていたが、
「だって…今までのアガレスさんも同じように沢山の人を助けて来たんだろうな、って思って」
蛍のその言葉でどことなく照れているようだった。勿論、アガレスにはまだ『承認欲求』というものが遺っているので全肯定botのようになっている蛍のことを常に考えるようになってしまっていたのだが、蛍にもアガレス自身にもそれを認識することはできなかった。
そのまま暫くアガレスは二人に情報を消化する時間を与えるために静かになった。蛍もパイモンもそれを理解しているため口を開かずに顎に手を当てて色々考えているようだった。
焚き火に焚べられた薪がパチパチと爆ぜる音と虫の音、そして穏やかに吹く風音のみが辺りに響いている。そうして五分程経った時のことだった。
「…よしっ、決めた!」
突然立ち上がった蛍は再び不意にそう言った。アガレスもパイモンも先程と同様驚いた様子を見せる。蛍はそんなアガレスを見てニッと笑うと口を開いた。
「私の旅にアガレスさんにもついてきて貰うのは決まったけど、具体的に何をしてもらうか決めてなかったんだ」
蛍はアガレスを見たまま更に続ける。
「アガレスさんには、私を鍛えて欲しいんだ。一人よりも二人の方が色々とやりやすいだろうしさ。どう、かな…?」
その提案を聞いたアガレスはふむ、と一つ唸った。
アガレスとて自らの戦闘技術を誰かに教えようと思ったことはあるし、実際剣術のみ指南したことはあった。だが、自分の戦闘スタイルは『全元素が扱える』ということを前提としており、今まで本当の意味で自らの戦闘技術を教えたことはなかった。
しかし、蛍は理論上は全元素を扱うことができることに加え、テイワットの存在ではないことからアガレスの戦闘スタイルにも十分に適応できることだろう。寧ろアガレスの剣術を糧として新たな戦闘スタイルを身につけることすら可能だろう。
アガレスはそこまで考えて、
「いいだろう、だが訓練は厳しいものになるだろうが…それでもいいのか?」
と告げた。蛍はフッと笑うとアガレスの手に自らの手を重ねた。
「…うん、私はアガレスさんの一番の理解者で、一番今は側にいられるから」
そして何度目かわからない固まっているアガレスにそう告げ、告げられたアガレスも少し笑って礼を告げるのだった。
…余談だが、パイモンがいるのを忘れてすっかり二人の世界に入っていた二人がパイモンの存在を思い出して赤面することになるのは…言うまでもないだろう。
今回のポイント
・『アガレス』には生来の呪いが備わっており他人に認められたい『承認欲求』と大切な存在を護りたい『守護』の二つ。
・まえがきにある『アガレスF』は他の『アガレス』とは異なりこの二つの呪いの影響を受けて呪いを忘れるために酒に逃げている。その影響か、『アガレスF』のみ呪いの影響が軽い。
・『アガレスF』のせいで『アガレスG』からは『酒』が天敵になり、速攻で意識を失うようになってしまった。
・『アガレスF』は自らを助けてくれた友人に報いるため『アガレスG』に別の呪いをかける。
・『アガレスG』はそれを理解して魔神達の呪いを一身に引き受け、『アガレスF』の止められなかった『終焉』を止める。
・500年後復活した『アガレスH』が体内に潜む『アガレスF』を説得、自らの行いを受け入れさせることで完全に消滅、同様に本来『アガレスH』にかけられていた魔神の怨恨からくる呪いが『アガレスF』によって消滅し、寿命問題を解決する。
って感じです。いやぁ…なげぇな…。