ということで描きまくりで行きますよ!!
今回は最初と最後三人称、真ん中ほとんどはとあるファデュイの兵士の話です。
氷の国スネージナヤを治める氷神に従う軍隊のような存在であるファデュイ。彼等は氷の女皇の願いを叶える、そのために世界各国で様々な活動をしている。その中で、風の国モンドにはスネージナヤから数年前に使節団がやって来たかと思うとゲーテホテルを彼等の拠点とし、モンドの利になることから後ろ暗いことまで、様々な活動を行っていた。
中でも『天空のライアー』を盗み出す計画は途中まで上手くいっていた。とある計画のための布石にすべく潜入工作を行い、なんとか安全に『天空のライアー』を盗み出すことに成功したのだ。
しかし、先の『龍災』の際ゲーテホテルは破壊され、それと同時に『天空のライアー』は失われてしまった。あろうことか侵入者に奪われてしまったのだ。このお陰でファデュイは『天空のライアー』を盗んだことが露呈してしまい、モンドでの立場を無くしつつあった。
加えてモンド城でスネージナヤの使節団のために解放されていたゲーテホテルが使えなくなったことで、そもそもモンド城での活動は表立ってできなくなってしまっている。そのため、モンドの清泉町付近の洞穴内を拠点としているファデュイだが、その中にある会議室では次の計画のための会議が行われていた。
「…やはりモンド城での活動をどうするかが課題だな…側門付近は西風騎士の巡回が少ないとは言えモンド城内はバルバトスが戻ってきた関係で警備も厳しい…そんな中どうやってバルバトスを捕らえられるだけの人員を送り込む?」
「デットエージェントを主軸とする隠密部隊で潜り込むしかあるまい。情報によれば城外を通る時間が僅かながら存在するようだし、そこを狙うべきだろう。如何な神と言えど風神は最弱とまで謳われている存在だ。デットエージェントの光学迷彩で近付いて拘束すれば…」
「いや、ヤツも最弱とは言え神だぞ?なんらかの罠を講じるべきではないのか?最悪バルバトスさえ手に入れてしまえば良いのだから、酒場で毒を盛れば良いではないか」
議論は白熱し、留まることを知らずどんどん案が出る。しかしバルバトスの力量の不透明さと同じく未知数である四風守護のトワリンの存在によってどの案も微妙と言わざるを得なかった。だが、
「───中々進んでないみたいね」
そんな会議室に肌を大きく露出させた女性が入ってきた。その顔面の片側は仮面で隠れており、全貌を見ることはできないがその風格と会議室内に元々いたファデュイの兵士が恐縮していることから、かなり上位の存在であることが察せられた。
女性はふん、と鼻を鳴らすと、
「私が出るわ、それで良いでしょ?」
一言だけそう告げた。だが、
「し、しかし執行官様…此度は自由に行動できるわけではなく、危険が及ぶ可能性もございます。御自らが赴かれるというのは少しばかり…」
一人が異を唱えた。勿論本心から女性───執行官を心配してのことである。しかし、その発言は執行官の機嫌を損ねたようだった。進言した兵士は突如氷に包まれ動かなくなった。
「…何?私の決定に文句があるの?」
「ヒッ…い、いえ!ご、ございません!!」
だが口だけは動くようで振るえた声でそう言った。執行官は氷よりもずっと冷ややかな視線を兵士に向けると氷を解いた。倒れ伏す兵士に駆け寄る二人は何も言わず、ただ去って行く執行官の背中を見ることしか出来なかった。
〜〜〜〜
「───はぁ、密偵の任務ですか?」
「…そうだ。執行官様が風神バルバトスに接触するに当たり、モンド城内部に協力者を作らねばならなくなった。しかし我々はモンドへ馴染んでおらず、仮に旅人としてモンドへ入ったとしても身分が調べられればすぐに牢獄行きだ。だから、できれば内部で協力者を作れ、というのが貴様への指令である」
昨日同じ見張り兵のヤツと汚名挽回の話をしていた矢先、早速俺に機会が回ってきた。だが、潜入任務とは名ばかりで現地で信用できる協力者を見つけねばならないというのが今回の任務だ。つまるところ、ほぼ捨て駒ということだろう。
「…任務、拝命致しました。すぐに発ちます」
ただ軍隊に於いて上からの指令は絶対、逆らうわけにもいかず俺はそう答えるしかなかった。
「───久し振りに来たが…本当に嫌な街だぜ」
俺はモンド城へ潜入するとそう呟いた。勿論デットエージェントである俺一人がモンド城内へ忍び込むのは然程難しいことじゃない。並の西風騎士共は俺達の隠密行動を見破ることなんて出来ないからな。
だがなんというかこの街の、全く人生に不安を感じていそうなヤツがいない自由過ぎる雰囲気が大嫌いだった。世界の現状も知らないくせしてバカみたいに笑って気色が悪い。自分達の置かれている現状に疑問も持たずにただ今を生きている。そんなヤツらを生かしておく価値が本当にあるのかどうか甚だ疑問だと言わざるを得ないだろう。
さて、忍び込んだは良いが協力者なんてどうやって作れば良いのだろうか。作戦決行は最低で一週間後らしい。つまりそれまでに俺はモンド城内で協力者を作らねばならないのだ。一番狙い目なのはやはり風神に恨みを抱いている存在であるわけだが、それを探すためにはまず人々の会話を耳にせねばならない。
俺は人々が最も集まっているであろうモンドの冒険者協会付近の屋根の上で会話を拾う。勿論今も透明になっているわけだが、陰が隠せないのだけはなんとかならないものだろうか。
「───風神が戻ってきては私の立場がないではないか。貴様らのような平民もそう思うだろう?」
なんて思っていたらあっさり見つかった。風神バルバトスに明らかに不満を持っているであろう人物が歩く先々で『下民』だの『庶民』だのとにかく自分を上げている。なるほど、情報に上がっていた旧モンドを牛耳っていた穢れた血を持つローレンス家の末裔か。名前は確かシューベルト・ローレンスと言ったはずだ。
だが、正直彼では役には立たないだろう。いないよりかはマシだと思われるかも知れないが、ヤツは自己肯定感が高すぎて他を無能と切り捨てている。まぁつまるところ、ヤツはなんの役にも立たないのだ。
「…アレは、件の旅人か」
そんな時要注意人物として書類に書かれていた金髪の旅人と小さい仙霊が通りがかった。ヤツはお人好しだと聞くし、俺が困っている人を装えば助けてくれるかも知れんな。
俺は旅人に狙いをつけると少し後を追うことにした。何処へ行くのかはわからないが、モンド城を出て行くとそのまま星落としの湖方面へとしばらく歩いて行く。どうやら、何かをしに行くようだ。
「…何処へ行く…?」
情報では冒険者協会に所属しているらしいが、星落としの湖付近に一体何の用事があるというのだろうか?そのまま彼女は森の中まで入っていくと、キョロキョロと辺りを見回している。そして何かを見つけたのか表情を輝かせると、
「見つけづらい所にいるね」
そう呟いている。木陰から見ている俺には話し相手が誰なのかは不明だが、
「そうか?まぁ木刀の整備をしていたからな。普段とは違う所にいても仕方ないだろう?」
言葉が返ってきている辺り動物の様子を見に来たとかではないらしい。どうせなら道中話しかけておけばよかった、と思ったがそれはそれで怪しまれるだけだろうと思い直す。
俺は相手の姿を見るために少し移動するべく足音を立てずに移動した。森の中なので唯一の弱点である陰がわかりづらいのは非常に強みだ。だが、
「───それで、今日は連れがいるのか?」
その言葉に思わずビクッとして悪寒を感じた。相手の姿はまだ見えない、だがこれ以上近付くとこの身に危険が及ぶことは容易に想像できた。まだヤツには俺の姿を捉えられていないはずだ。それに森林内で透明になっているのだから見られているわけもない。今のうちに立ち去るべきだろう。
だが、俺達の気配が察知できるような存在は後々危険分子足り得るだろう。そう考えた俺は最後にその存在の姿形を一目見ようとして少しだけ接近した。
「え、いや私だけだよ?あ、もしかしてパイモンかな…?」
「おい!オイラはずっとここにいるだろ!アガレスはオイラ以外の誰かがここにいるって言いたいんじゃないのかよ?」
「…ああ、いや───」
勿論すぐに後悔することになった。
漆黒の衣を纏い、それとは不釣り合いなほどに顔が白かった。そして僅かに口の端を持ち上げたヤツの血のように紅い瞳が俺を真っ直ぐに見据えていた。
「───十分伝わった」
瞬間、俺は踵を返して走り出していた。氷の女皇の願いとか執行官様の命令だとか、そんなもの全てを放り出してこの場から今すぐにでも逃げなければならないという本能の警鐘に素直に従っていたのだ。
怖かった、ただひたすらに怖かったのだ。木々の間から見えたあの表情もそうだが、最も感じたのは得体の知れ無さだった。強さとか威圧感とかは何も感じなかったのに、ただ得体の知れ無さだけを全面に感じたのだ。
密偵として様々な国で狂人や巷で最強と謳われる存在にも会ったことはあるし敵意を向けられたことだってある。だがあのような感覚は初めてで、そして同時に非常に気持ちが悪く不愉快だった。今すぐにでも死にたくなるくらいの気持ち悪さだったが、恐怖を覚えるほどの気持ち悪さとは一体何なのだろうか。
クソ、思考が纏まらない。だが俺はデットエージェント、姿形を消し逃げることに関しては右に出る存在はいないはずだ。今までもそうやって生き残ってきたのだ。スメールの教令院の最奥からだって、稲妻城の牢獄からだって俺は抜け出し、生きて帰ったのだ。
「今回だって…生き残ってやるさ───」
一時間ほどかけて星落としの湖から清泉町付近の洞穴まで帰ってくることができた。汗だくになりながらも後ろを振り返ってみるが、あの謎の化け物のような存在が追ってきている気配はない。そこまで来てようやく、俺は安堵することが出来た。
「ったく…真面目に貧乏くじだな今回は…」
俺は先程の出来事を一応上官に報告すべく洞穴内へ戻るのだった。
〜〜〜〜
洞穴付近の木の枝に座って黒い穴をジッと見つめている男がいた。やがて目を細めると一言、
「…追ってきて正解だったな」
とだけ呟くのだった。
…え、アガレス君がホラーの敵に見える?
奇遇だね私も()
アガレス「…お前の描写のせいだからな?俺はただ不審者を追ってただけで」
はいはいストーカーはみんなそう言うんです、後は取調室で聞くから。
アガレス「聞けよ。取調室じゃなくても聞けよ」