忘れ去られたもう一柱の神〜IF旅人〜   作:酒蒸

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お久しぶりでごぜーます

久しぶりに少しだけ余裕ができたので…


第33話 直接対決

さて、罠を張ってこうして淑女を嵌めたはいいのだが、ここからどうしたものか…とばかりに俺はその場で立ち尽くしていた。

 

今回は全ての情報が手元にある状態で水面下であらゆる準備をしたので最早ズルの領域ではあるが、まぁ勝てばよかろうなのだ。実際それで困るのはファデュイ連中でしかないのだから。いや、代理団長様が厄介ごとを持ち込んでくれるな…と頭を抱えているのが目に浮かぶな。まぁ、トワリンを放置していたモンドの民の一人なのだからこれくらいは許容してもらおう。

 

俺の眼前には警戒態勢の淑女、そして無警戒で突っ立っている俺。構図的には全く以てお互いに面白くはないな。

 

だが、耐えきれなかったのか淑女が口を開いた。

 

「…情報では風神がここに現れるはずだったのだけれど、当然それは貴方の策謀、ということなのでしょうね」

 

俺はほう、と息を漏らす。勿論、感嘆と驚嘆の入り混じった溜息だ。

 

俺の情報は軒並みこの世界から消され、この世界の情報のほとんどを司る世界樹からも取り除かれている。まぁ、それでも俺が存在していられるのは元々別の世界の人間だからだろうな。世界樹からはただ一人のアガレスが消えたに過ぎないのだから。

 

それはともかく、そんな情報皆無な俺のことを大体でも把握しているというこの点において俺は驚かざるを得なかったのだ。何ならちょっと喜んでしまったくらいである。

 

俺はそんな彼女に虫へ向ける程度の敬意を表して首肯した。それを見た淑女はそう、と言葉を漏らした。

 

一応、友人を守るために罠に嵌めた訳だが、こいつがもうバルバトスに手を出さないと誓いさえすればいいんだが、臨戦態勢に移行している辺りそうはいかないのだろうな。

 

一応俺は口を開いて、

 

「諦めるなら帰っていいし、命を取ることもない。スネージナヤでひっそり暮らすくらいなら許してやるがどうする?」

 

と言った。その言葉を聞いた淑女は一瞬目を丸くした後、大きい声で笑った。どうやら怒らせてしまったようで、完全に和解の道はなくなってしまった。

 

俺は溜息を吐くと俺の愛用していた刀を出す。かつて、稲妻で最も優れていたと言われる幻の名工の打った太刀だ。なんの素材を使っているのか最早わからないのだが、今の今まで壊れたことはないし刃こぼれもしていない。

 

俺が刀を出したためか、淑女は肩の横にある謎の浮遊物を軽く指で弾いた。すると、淑女を守るように氷元素のシールドが出現した。

 

「まぁ、私の作戦は失敗したけれど───」

 

そして淑女がそう言いながらシールドの表面から三つほど氷元素の棘のようなものを生やして、

 

「───ここで貴方の神の心さえ回収すれば戦果としては十分よね」

 

俺へ向けてその氷の棘を飛ばしてきた。俺は真っ直ぐ飛んできたその棘を余裕をもって横に飛んで躱したのだが、かなり曲がって俺の方へと尚も向かってくる。俺は軽く舌打ちすると刀で棘を切り落とした。

 

ホーミングしてくるタイプとはなぁ、と俺はあまりの面倒くささに溜息を吐く。そのまますぐに俺のいる付近に生成された氷柱が降ってきたがそっちは軽く避ける。なるほど、と淑女の手の内にある浮遊物を見る。わかりづらいがアレは法器だったようだ。距離が離れていても正しく元素を扱えているのは、元素力を増幅させる法器あってこそだろう。

 

「はは、面倒くさいな」

 

吹き飛ばせば済むが、一応モンド城付近ではあるから迂闊に炎元素なんかを使ったりすることができないのがとても困る。これで火事になってしまっては本末転倒だからな。

 

俺は笑みを浮かべながら淑女から放たれる氷の棘や氷柱をいなしつつ観察する。このままの密度であれば全く問題なくいなせるから、思考に耽る余裕ができている、というだけの話だ。

 

さて、先程より気温がかなり下がっている。これは淑女が氷元素を行使しているからというのもあるが、何より彼女が意識的に氷元素をばら撒いているからである。俺達のいる場所は、月光によってダイヤモンドダストのように輝く氷元素を視認することができ、淑女はそれら氷元素を活用して氷柱を落としたりしているようだ。

 

特筆すべきはその元素力の強力さだろう。先天的な才能を磨き続けてここまで来たのだろう。まず間違いなくテイワット人の中では上澄みの方だろうが、昔魔神と戦うことになってしまった俺からしてみればよくある話だ。

 

ではどうやって突破するのか。一番簡単なのはやはり本体を炎元素で吹き飛ばしてしまうことだが、それではモンド城に被害が出てしまうだろう。別にどうなろうと構わないが念の為バルバトスの愛する国を護ろうというわけである。

 

ということで必然的に二番目の手札を切るわけで、俺は猛攻を避けつつ法器を取り出した。まぁ、所詮は生徒ノートなので性能の良い武器ではないのだが、これで十分だ。

 

俺はそのまま風元素を行使して氷元素を拡散反応で散らしていく。シールドで護られている淑女はその事実に気付くのが少し遅れる。そうしてできた一瞬の隙を俺は見逃さず懐に飛び込んで炎元素を纏った拳で思いきりシールドをぶん殴った。

 

そうしてシールドと一緒に淑女も無力化!というのが算段だったのだが、俺の拳はシールドにわずかにひびを入れた程度で止まってしまった。俺はすぐにその場を離れると、直後俺がいた場所に氷の棘が生成された。そのままいたら串刺しになっていただろう。

 

そうして冷や汗を浮かべた淑女は口角ををひくつかせながら、

 

「やるじゃない、流石に今のは肝が冷えたわ」

 

そう告げた。氷元素だけに、ってことか…どうやら軽口を言うくらいの余裕はあるらしい。俺は軽くそりゃどーもとだけ返し、氷元素シールドを観察する。先ほどまで入っていたヒビは勿論既に修復されている。

 

一筋縄ではいかない、か。神に匹敵する力量を持つ、というのは嘘ではないってことがわかっただけでも収穫だろう。

 

俺は刀を取り出し、そのまま居合の体勢を取った。息を大きく吸い、そして吐く。淑女は動きを止めた俺を怪訝そうに見て、いや警戒して見ているようだ。だが、それには意味がない。俺は二度目の深呼吸を始め、そして三度目の深呼吸。淑女が何かしてくる気配はなく、どうやらカウンター狙いのようだ。

 

俺が息を吐いたタイミングで一気に地を蹴り、10m程の距離を瞬時に詰める。淑女は瞬間目を見開いて防御態勢を取ったがもう遅い。俺は抜刀しながら炎元素を刀身に纏わせ、シールドごと淑女を切り裂いた。

 

のだが、既のところで横腹を少しえぐった程度に抑えられてしまった。俺はそのまま走り抜けブレーキをかけながら納刀、再び居合の姿勢で固まった。

 

横腹から血を流し、傷口を抑えている淑女がこちらを睨めつけている。ギリギリ致命傷といったところだが、ここで逃してしまえば面倒なことになるだろう。恨みはないが、ここで───

 

「───何?」

 

再び刀を振るったが、受け止められている。正確には、淑女ではなく、その後ろから伸びる血色の刃に。俺は舌打ちしつつ刃を弾いて距離を取った。背後から出てきたのは黒ずくめのファデュイで、長身。いや、俺より少し低いくらいだろうか。声も出さず、とにかく存在を秘匿しているのが見て取れる。

 

そして何より、俺の一撃を止めた。間違いなく、淑女より上位の執行官だろう。二対一では少し分が悪いかもしれないが、一応ハッタリはかましておこう。

 

「今退くなら追いはしない。お前の目的は淑女の回収だろう?双方にとっても引き際は肝心だと思うが」

 

上辺だけだがそう並べ立てる。だが、淑女は勿論重傷で放っておけば死に至るだろう。今は氷元素で傷口を凍らせているようだが、誤魔化しは長くは続かない。それを理解しているらしい黒ずくめのファトゥスは持っていた武器をしまった。形状は鎌…いや、恐らくは槍だろう。能力は不明だが、かなり厄介そうだ。

 

ファトゥスは淑女を抱き起し、そのまま一緒に姿を消すようだった。

 

「…『元神』アガレス、この借りは必ず返すわ」

 

そして当の淑女は俺を睥睨しながらそう言い残して一緒に消えていった。それを見届けた俺も武器をしまって大きく息を吐く。

 

「一先ずは、何とかなったか。問題の先送りでしかないが…」

 

天を仰ぎながらそう嘆かずにはいられない結果となった。まぁ、何も護れないことに比べてしまえば、ずっとマシだ。

 

昔と比べての本当に僅かな成長と、これから更に激化するであろうファデュイの水面下の攻撃に、溜息をつかずにはいられないのだった。




法器云々は適当じゃい()

アガレス「てか久々すぎだろ今まで何してやがった」

聞いて驚くなよ。モチベがなかったんだ

アガレス「……」

ごめん、言いたいことはわかるから無言で殴るのはやめてもらっていいかい?ちょ、それ以上は〇ぬよ、私が!!(某どっかの淵)


ということでちょくちょくやりますので、見て下さるとめちゃんこ喜びます
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