忘れ去られたもう一柱の神〜IF旅人〜   作:酒蒸

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新年あけましておめでとうございます、今年もよろしくおねがいしますっ!(遅すぎる挨拶)

いやー、時間なさすぎでした。本編も更新するのでことよろでよろしゃすっ!!


第6話 信用されたがしかし───

「話し合いを続ける前に、ガイアは彼と共に退出してくれ」

 

ジンはガイアへ向けてそう言った。なるほど、旅人は良いが俺は駄目らしい。ガイアはジンの言葉に口の端を持ち上げ同意した。まぁ、俺としても否やはないので特に反発したりはしない。一つだけ気がかりがあるが、蛍もパイモンもまぁ大丈夫だろう。蛍もパイモンも先程からずっと俺を心配そうに見ているのだが、そんなに心配される要素が俺にあるだろうか。

 

なんだか解せぬ。

 

「ほんじゃ、俺はお前さんのお守りだ。行こうぜ」

 

俺は首肯くと、蛍とパイモンの二人に問題ないことを告げ、ガイアと共に大団長室を後にした。蛍と別れたので特にすることもないためガイアに聞きたいことを聞くことにした。ただ、なんて呼べばいいかを聞いていなかったためどう呼べば良いのかわからず少し黙る。黙って末に出たのが「なんて呼べば良い」なんてありきたりな言葉だった。本人によればガイアで構わないとのことなので一つ聞くことにした。

 

「そういえばここは昔図書館だったよな?」

 

ガイアに俺はそう問い掛けたのだが、ガイアは苦笑すると肩を竦めた。

 

「ははは、俺はそんなに歴史に詳しくないんだ。気になるなら図書館の本でも読んでみたらどうだ?」

 

ガイアは正面にある扉を指差す。どうやら何らかの理由でここが西風騎士団本部となり、図書館が縮小されたらしい。ついでに色々探ることにして俺はその扉を開いて中へと入るのだった。

 

〜〜〜〜

 

「───リサ、ガイアにはあとで私からここでの話を伝えておこう。さて、ではモンドを取り巻く状況を君に説明しよう」

 

アガレスとガイアの去った大団長室でジンは蛍にそう告げた。

 

「君が先程戦ったあの巨龍は風魔龍と呼ばれていて、最近になってモンド城を攻撃し始めてな。襲撃のタイミングも一定ではなく、また来る方向も去っていく方向もバラバラだからわからないんだ。そのため西風騎士団は後手後手の対応を取ってしまっていた。ここまではいいだろうか?」

 

ジンの問いかけに対し、蛍とパイモンは首肯くことで返事を返した。ジンはそれを確認すると、

 

「そこで、リサにモンド城周辺の元素の流れを探ってもらったのだが…」

 

ジンはそう言いつつリサを見た。リサは首肯くと蛍達に向け説明を始めた。

 

「私が調べたところによればモンド城周辺を取り巻く元素の奔流は酷いものよ。子猫ちゃんが好き勝手遊んだ後の毛糸玉のような状態ね」

 

蛍は無表情で、パイモンは後半の例文を聞いた瞬間眉をひそめてよくわからない、といったような風貌になった。

 

「リサの調査によって風魔龍の力があると思われる場所が判明した。アンバー、リサ、ガイア、そして私でその4つの秘境を調べることになっている」

 

ただ、とジンは蛍達を見つつ続けた。

 

「旅人、先程風魔龍を撃退してくれた君に頼むのは申し訳ないのだが、もう少し手を貸してくれると助かる」

 

ジンは軽く頭を下げ蛍にそう言った。蛍とパイモンは互いに顔を見合わせて、やがて口を開いたのはパイモンだった。

 

「手伝うのは全然いいんだけど、アガレスのことはどうするつもりなんだよ?あいつだって撃退に力を貸してくれてたんだぞ?」

 

パイモンの言葉に蛍も首肯く。ジンは困ったように笑うと理由を説明した。

 

「彼は確かに君同様に風魔龍の撃退に協力してくれたが、重要な真実を隠匿していたという事実があるからな。念の為の監視というだけだから安心してほしい」

 

ジンの言葉に蛍とパイモンは安堵の溜息を吐いた。

 

「旅人、君にはアンバーとガイアの秘境攻略の手伝いを頼みたいのだが…いいだろうか?」

 

蛍は肯定しつつ、

 

「さっきパイモンが言った通り手伝うのは全然大丈夫」

 

「すまない、感謝する」

 

ジンは再び頭を下げるとアンバーを見る。

 

「アンバー、ガイアを探してこのことを伝えてくれないだろうか?それと…いや、なんでもない。彼にはその場に留まるよう伝えてくれ」

 

「わかりましたっ!偵察騎士アンバー、任務を開始しますっ!」

 

アンバーは笑顔でそう言うと大団長室を出て行った。ジンとリサはそれを微笑みながら見送ると、蛍達へ向けて告げた。

 

「では質問があったら何でも聞いてくれ。私とリサで可能な限り答えられることは答えよう」

 

そのまま蛍達はジンとリサに蛍の兄を探すのを手伝ってほしいことを告げた。ジンとリサは考え込むような素振りを見せたがすぐに微笑み、

 

「わかった、君の兄を探すのに私達も協力しよう」

 

「可愛い子ちゃんのお兄さん、早く見つかるといいけれど」

 

それぞれそう言った。その言葉に対しパイモンは空中で喜びを顕にしながら、

 

「へへっ、旅人のお兄さんを探す仲間がいっぱい増えたなっ!」

 

そう言い、言われた蛍は少し嬉しそうに笑うのだった。

 

〜〜〜〜

 

会議中の蛍達とは別行動の俺は元素の状況を把握しつつ歴史書を読み漁る。昔よく人間の書物を読み漁っていたことがあったのでそれなりに読むスピードは早い。

 

西風図書館に関してはどうやら『秋分の日の大火』という火事によって規模がかなり縮小されてしまったようだ。ただ、日時が正確ではないためいつ起こったのかは不明だ。まぁ少なくともここの改造が行われた時よりは後だから…大体1000年前よりかは最近ということになるだろうな。まぁそもそもこの大火の名称も書物によってバラバラだから明確なところはわからないな。

 

次に『八神』に関してだが歴史書にはぽっかりと穴が空いたかのようにその存在は確認できない。どうやら本当に世界は俺の存在を忘れてしまったらしい。加えて『禁書庫エリア』なる場所にある本をガイアの目を盗んで見てみたのだが、そちらには口伝が書かれている本に俺の存在が仄めかされているような記述が見受けられた。世界そのものが忘れ去ったというよりかは一部を除き俺の存在を忘れさせたかのような感覚に近いだろう。

 

500年前にあった『終焉』とカーンルイアに関する記述は存在しないものの、その副作用とも言うべき事件は起きていたようだ。

 

「…大体読むべき本は読み終わったな」

 

俺は本を閉じつつそう呟く。近くの壁に寄りかかってあくびをしていたガイアがそんな俺を見て呟く。

 

「ふわぁ…歴史書なんて見て楽しいのか?俺は退屈でカビが生えそうだったぞ?」

 

失礼な、と思いつつ俺はガイアにジト目を向けた。

 

「歴史書は書いた者の主観はある程度入るが複数見れば客観的な事実も見えてくるものだ。それよりそんな調子じゃ俺の監視が甘いって怒られるんじゃないのか?」

 

俺がそう言うとガイアはわざとらしく肩を竦めた。

 

「さてな、あんたはここで問題を起こすようなタイプじゃないだろ?」

 

ニヤリと笑いながら俺へ向けてそう言ってのけるガイアを俺は侮れないな、と少しだけ警戒しつつ図書室の扉が開く音を聞いてその警戒を一旦置いておくことにした。

 

下へと降りてきたのはアンバーだった。

 

「ガイアさん、大団長室まで来てもらえますか?」

 

「はいよ。で、アガレスはどうする?」

 

「アガレスさんはその場に留まってくれって代理団長が」

 

その場に留まれ?よくわからんがまぁ良いだろう、ということで首肯く。

 

「じゃあな、また会えると良いんだが」

 

俺がそう言うと、ガイアは苦笑しつつ、

 

「監視役なら嫌でも会うことになるだろ?まぁ、またな」

 

アンバーと共に去って行った。俺はその隙に禁書庫エリアに本を戻し他の本を読んで何らかの動きがあるのを待つことにするのだった。

 

 

 

十数分ほど経った時図書室の扉が開く音がし、足音が聞こえてきた。図書室に用があるのか、はたまたガイアかと予想していたのだが、姿を見せたのは意外な人物だった。

 

「───相席失礼する」

 

そう、姿を現したのは西風騎士団代理団長ジンその人であった。俺は少し面倒事の匂いを感じつつ話を聞く態勢を整えた。

 

お互いの間に沈黙が流れた後、先に口を開いたのはジンだった。

 

「…すまない、君の疑いは晴れた。監視は外させてもらおう」

 

開口一番それ、ということは蛍が何かしら言ったのかもな。彼女がトワリンの撃退に一役買ったのをモンドの住民が見ていた、というのはガイアが言っていたがそう考えるとそれなりに蛍の株は高いだろう。

 

心の蛍に感謝しつつ、俺はジンにも礼を告げる。

 

「そりゃどうも。で?それを言いに来ただけじゃないんだろ?」

 

告げつつ、催促した。ジンは首肯くと、改めてモンドの現状を説明しようとしてくれた。だが俺はそれを手で制す。

 

「話の検討はついてる。お前達が風魔龍と呼ぶあの蒼き巨龍トワリンのことだろう」

 

その話をするということは蛍とジン達の間で俺を信用する材料ができたのだろう。それが何かはわからないが今はまぁいいだろう。

 

加えてここでその話をするということは図書室に誰も入ってこれないようにしているはずだ。いや、まぁ西風騎士達が図書室の外で待機してはいるだろうが。

 

さて、俺の予想は間違っていなかったらしくジンは首肯いた。

 

「モンド城周辺の元素力が著しく乱れている原因がトワリンの力であり、その元凶だと思われるものが『四風守護の神殿』にある、と睨んでいるようだな」

 

「!?」

 

ジンは驚いたように目を見開く。俺は先程、元素力で辺りの状況を探るのと同時に周囲の会話を拾っていた。風元素の応用でできることなのでこれに関してはバレたところで問題はないだろう。

 

俺は元素の奔流を確かめ四箇所に力が集約されていたことを知り、位置的に『四風守護の神殿』がある場所だということを突き止めたのだが、会話を拾っているとリサが同じようなことを話しているのを聞いたのだ。

 

そもそも四風守護とは風神バルバトスが1000年程前にモンドの安全と保護を託した4つの存在のことを指す。そして『四風守護の神殿』とはそれぞれを祀る神殿である。

 

「色々と知っていることを共有しようか。それに伴って俺の正体もお前には明かすことになるだろうが」

 

トワリンもモンドの民も救わねばならないのだ。つべこべ言っている場合ではないだろう。

 

俺は覚悟を決めてジンと話し始めるのだった。

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