忘れ去られたもう一柱の神〜IF旅人〜   作:酒蒸

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あれ…割とタイトル詐欺では?となる内容説があります。

いや、大丈夫!!手伝いもしてる!!はず!!


第9話 お手伝いなら万能アガレスちゃんにおまかせ!②

西風の鷹の神殿を攻略した俺達はここで別れることになった。

 

「それじゃあ、またねアガレスさん、アンバーも」

 

「アガレス、アンバー、またな!!」

 

蛍とパイモンが手を振りながら次の神殿へ向かって去って行った。俺とアンバーは手を振って彼女達を見送った。

 

「…さて」

 

俺は確かめねばならないことがあったので再び西風の鷹の神殿へ足を踏み入れるべく歩き始めた。だが、アンバーが俺を呼び止めた。

 

「ちょっと、どこ行くの?」

 

アンバーの言葉に俺は振り向かずに答えた。

 

「…さっき蛍の反応がおかしかったから何かあるのかも、と思ってな。だからもう一度見てこようかと思って。駄目だったか?」

 

アンバーも俺も見落としていたのに加え、蛍は微かな違和感だけを察知したのだろう。だからこそ確信が持てず先程俺達に言えなかったのだと思われる。

 

俺の言葉に対してアンバーはぶんぶんと首を横に振って否定した。

 

「ううん!全然駄目ってわけじゃないよ?でも、私全然違和感に気が付かなかったし…やっぱり気のせいじゃないかなって」

 

最後の方は少し自信がなさそうだったアンバーに対して俺は首肯いて肯定してみせた。

 

「ああ、その可能性も勿論ある。蛍の勘違いである可能性もかなり高いとは思う。ただ…やはり念には念を入れておくべきだろう。不安ならアンバーも来るか?」

 

俺はアンバーにそう聞いた。一瞬面食らったように固まっていたアンバーだったが、すぐに首肯いてくれたので俺達は再び西風の鷹の神殿に入る運びとなった。

 

 

 

「───さて、入って来たはいいが…」

 

俺は先程と同じようにアンバーと共に西風の鷹の神殿の中を見て回ったのだが、やはり特に変わりはなかった。異常もなさそうだし、やはり異常と言えば先程まで残っていたトワリンの力の源くらいだろう。

 

因みに、見て回っている間にもう一つ失くなったようだ。順番的には…北風の狼の神殿だろうな。ガイアと蛍達で終わらせたのだろう。これで旅人達が協力するのはあと一つというわけか。

 

それはともかくとして俺達の方はもう出口手前だ。まだ少し先程のトワリンの力の源が影響しているのか、風元素が満ちているようだ。お陰で元素の不自然な流れがわかりにくい。

 

「…潮時かな…いや、待てよ…?」

 

「アガレスさん、こっちは何も…」

 

部屋を隅々まで見終わったアンバーが首を横に振りながら俺に近付いてきた。俺は首肯くと、

 

「わかった、わざわざありがとう。先に外で待っていてくれ」

 

とアンバーに言って先に外へ出てもらった。そのまま俺は振り向いて出口とは真逆の方向を見つめて目を細める。

 

「……気のせいではないな」

 

俺は刀を抜き放ちながら一歩一歩部屋の入口に近付いていく。俺はそのまま入り口から2mほど離れた場所で立ち止まった。

 

『今更ここへ迷い込む人間がいるとは…』

 

するとそんな声が響き渡り入り口の柱の影からふわふわと怪物が飛んでくる。怪物と言っても然程大きくはない。だが…なるほど、禍々しい気配だ。

 

「そういうお前は?」

 

『フン、人間如きに答えることはない…が、私の姿を見た以上生かしては帰さん。まぁ言ってしまっても問題はないだろう』

 

怪物はそう言うと俺に向かって話し始めた。その内容としては至極単純で、ここに設置していたトワリンの力の源の反応が消えたから見に来たらしい。

 

つまるところ、今回の事件の黒幕はコイツ…いや、アビス教団か。

 

「なるほどなるほど」

 

『さて、そういうことだ。では───「ありがとう」』

 

怪物───いや、アビスの魔術師は首を傾げる。それに対して俺はニィ、と笑みを浮かべた。

 

「改めてありがとう。俺をただの人間だと思ってくれて」

 

勿論皮肉を込めている。神としての身分、立場、記録や記憶…その全てを忘れ去られている俺自身と、忘れ去っている彼等に対しての皮肉である。

 

そのまま俺は反論を許さず地を蹴って不意打ちでアビスの魔術師の首を刎ねた。俺は刀を仕舞いつつ呟く。

 

「…ああ、全く以て…これからどうすれば───「アガレスさーん!大丈夫ー!」」

 

言いかけて俺はアンバーがいたことに気が付いて言葉を止めてアンバーを見た。アンバーは俺の後ろに転がっているアビスの魔術師の死体を見て息を呑んだ。

 

「この通りだ。どうやら今回の事件の黒幕はアビス教団のようだ」

 

俺は平静を装ってアビスの魔術師を指さしてアンバーをそちらに通した。アンバーはアビスの魔術師の死体を少し調べて俺を見た。

 

「これ、アガレスさんが?」

 

アンバーの言葉に首肯くと、アンバーは再びアビスの魔術師に視線を落とした。

 

そうしているとようやく最後のトワリンの力の源が消えたようだった。モンドを取り巻いていた不自然な元素と地脈の流れが直ったのを俺は感じ取っていた。

 

俺はアンバーに言う。

 

「向こうも終わったようだし俺達も戻るべきだろう」

 

「そうだね、一旦戻ろっか!」

 

色々と報告すべきことがあるため、俺達はそのまま帰ることになるのだった。

 

〜〜〜〜

 

アンバーと共に西風騎士団本部へと戻ってきたアガレスは先に戻って来ていた蛍達と合流した。

 

「おかえり〜アガレス〜…って、アガレス?なんか顔色が悪くないか?」

 

「…気にする必要はない。それよりジン、報告することがある」

 

アガレスはパイモンの言葉を軽く流してジンに話しかけた。話しかけられたジンはアガレスに怪訝そうな視線を向けている。この場───大団長室にはジン、ガイア、リサ、アンバーに蛍達、そしてアガレスがいるが、その誰もが一様にアガレスを見ながら怪訝そうに首を傾げていた。

 

「今回の事件…『龍災』の黒幕は…アビス教団の連中だ」

 

アガレスの言葉にアンバーとガイアを除く全員が驚きに身を染めていた。そんな彼等にアガレスは更に詳しく説明を行う。

 

「蛍、お前は先程西風の鷹の神殿で煮えきらない表情をしていただろう。それは何か違和感を感じたから、そうだな?」

 

アガレスの言葉にまだ動揺している様子の蛍は首肯いた。

 

「その違和感を辿ってアンバーと共に再び西風の鷹の神殿の調査を行った所…アビスの魔術師が出てきた。ヤツは力の源の反応が消えたため様子を見に来た、とも言っていたからな。ほぼ間違いないだろう」

 

アガレスはそのままジンに視線を向けた。

 

「諸々の議論は任せる。俺が知っている情報は全て話したしな」

 

そのまま目を伏せ、疲れたから寝るとだけ言い残してアガレスは大団長室を去って行った。ジンは溜息を吐きつつも心の中でアガレスに感謝の念を感じつつ、

 

「では、色々とまずは報告を聞こう」

 

ジンはそう言った。ジンの言葉にその場に残った全員が首肯く。だが蛍だけがアガレスの去って行った方向へ視線を向けていた。

 

そしてその翌日からアガレスはその姿を眩ませた。西風騎士団も蛍達も出来得る限り捜索したがアガレスが見つかることはなかった。西風騎士団はモンドの治安と安全を守らねばならないためアガレスを手配することに決め隣国の璃月にもその旨を伝え見かけたらすぐに連絡するよう連携を取ることとなる。

 

 

 

「───バーテンダー!もういっぱーい!」

 

モンド城内にある酒場、エンジェルズシェアのカウンターで全身緑色の吟遊詩人の少年がジョッキを赤髪のバーテンダーに突き出しながらそう叫んだ。彼の目の前には結構な量の空き瓶が置いてあった。

 

赤髪のバーテンダーははぁ、と大きい溜息を吐くと少年にジト目を向けながら、

 

「…飲み過ぎだ。君はいい加減、ツケを払ってくれないか?どれだけ溜まっていると思っている」

 

そう言った。言われた少年の方はうっ、というと目を逸らしつつもお酒を飲むのをやめなかった。

 

「そうは言ってもね…飲まなきゃやってらんないよ?」

 

「それを僕に言ってどうする。いい加減つまみ出すぞ」

 

赤髪のバーテンダーの言葉に少年は苦笑を浮かべると、モラの入った袋をカウンターに置いて驚く赤髪のバーテンダーを尻目にエンジェルズシェアを出る。

 

そのまま少年は歩いて騎士団本部付近の公園に移動するとそこに備え付けられているベンチに腰掛け、ライアーを奏でる。ライアーの音色は決して大きいわけではないが、穏やかに流れる夜風に乗って遠くまで流れてゆく。

 

ライアーを奏でながら少年は少し笑う。

 

「…かつての栄光は消え去り、忘れ去られ、それでも尚生きねばならないとしても…その者の人生は自由である、か…」

 

ライアーを奏でるのをやめた少年は笑うのもやめて天を仰ぎながら、

 

「…帰ってきたんだね、アガレス」

 

そう言った。不安と期待が綯い交ぜになったような表情の少年の顔を月明かりだけがただ、照らしていた。

 

 

 

「───鍾離さーん、何してるのー?」

 

黒い喪服のような服装の少女が椅子に座って茶を啜る男性の後ろからひょこっと顔を出した。突然視界の端に現れた少女に驚くようなこともなく、男性はただ何処か遠くを見つめている。そんな中、微かに風に乗って聞こえてきたライアーの音色に、

 

「…そうか、ようやくか…」

 

と目を瞑ってそう呟いた。

 

「鍾離さん?あのー、いつにもまして意味わからないこと言ってるね。こういうときは放っておくに限る!!」

 

それに対して少女がハイテンションで、しかし少し気を使いながらその場を離れてゆく。鍾離と呼ばれた男性は茶の入った湯呑を置き、天を仰ぐ。

 

「…千変万化、万物流転…例え盤石と言えど時の流れと共に変遷していくものだ。俺達の関係性もまた…500年前とは異なるものになってしまうのだろう」

 

だが、と目を細めながら彼は続けた。

 

「それでも…俺はこの500年間…変わらぬ思いでお前を待っていたぞ…アガレス」

 

彼の言葉を聞く者も、そして答える者もいないが彼は満足げに首肯く。その瞳にはかつての友の姿が、ありありと映っているようだった。

 

 

 

「───今のは…」

 

薄暗い部屋の中で座布団の上に座っている着物姿の女性が顔を上げた。部屋に入り込んでくるのは月明かりと風だけ。その風にライアーの音色が乗って女性の耳に届いた。

 

「…まさか」

 

女性は首を横に振って幻覚だ、あり得ないとばかりの反応を見せた。しかしライアーの音色が止むことはない。そして幻覚であるはずがないのは彼女自身がよくわかっていた。女性の瞳には涙が浮かんでおり、しかし流すようなことはない。

 

「彼には…申し訳が立ちませんね…」

 

そう言って女性は視線を自身の膝元に向ける。そこには自身と瓜二つの女性の姿があり、布団に入って目を閉じている。規則正しく胸が上下に動いてはいるが、起き上がる気配は微塵もない。

 

「…私が守らなければならなかったのに…守ることができなかったのですから…彼ならなんと言うでしょうか…」

 

そんな彼女の様子を見て女性は苦々しげに表情をうち歪ませた。

 

「…アガレス、あなたなら…」

 

そんな表情のまま女性は窓の外に広がる夜空を見る。夜空も月光も女性に光を届けるばかりで言葉を届けることはない。しかし確かに二人の瓜二つの女性達にその光を届けている。

 

 

 

やがてライアーの音色は世界を巡り、再びモンドへと還ってくる。その音色を聞いた一人の男は顔を曇らせながらモンド城を去って行くのだった。

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