らぶこめ・ざ・ろっく!   作:朝比奈小町

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第9話 後編 ぼっち&ご両親とダブルデート

美容室でキスしてしまった僕。

――それを目撃した義理のお義父さん。

 

――修羅場は必然だった。

 

「お前……、ひとりを………!! 殺すぞ……!」

「落ち着いて、あなた。ここで悠くん殺しちゃうとひとりちゃん、また友達がいない状態に逆戻りよ………」

「ぐぬぬぬぬぬ……!」

 

――血涙を流すお父さんに、横浜の美容室は修羅場、

――いや愁嘆場と化していた。

 

それを興味深そうに、

――いやむしろ楽しそうに眺めるスタイリストさん

――頼むから止めてくれ!

 

半分楽しんでいる様子のお母さん

――いや半分どころじゃないわ、絶対この状況楽しんでるでしょ!!!

 

そして……、

「あば……、あばばばばば…………」

 

オーバーヒートして……頭から煙を上げる一人。

本当に大丈夫か????

 

頭から煙なんて、どんなに悩んで法律相談しにきた人でも、見たことないんだが……。

まるで漫画みたいだ。

 

そうして場がドタバタしているうちに、お母さんが助け舟を出してくれた。

 

「この後お食事に行きましょう!もちろん悠ちゃんも含めてね♪ お父さんとお母さんが学生時代に使ってたレストランがまだ営業してて、そこがオシャレなデートスポットなのよ〜♪ ね〜、お父さん♪」

「あ、あぁ……、ぐぬぬ……」

「ほら、あんまり怒ってると皺も増えて、カッコいいあなたが台無しよ♪ お顔、元に戻して」

「………」

「はーい、よくできました♪」

 

お父さんもとりあえず機嫌が治ってくれたらしい。

 

その後は食事に行ったが、本当にお高いお店だった。

 

「焼肉店……?」

「そう、お父さんと昔行ったのよ〜♪ 悠くんもひとりちゃんも一緒に来て?」

 

そう言って、ひとりの両親二人に連れてこられたのはラブホ街のど真ん中にある、焼肉屋さんだ。

周りには……。

ひとりには言えないお風呂屋さんがい〜〜ぱい。

 

ひとりもケバケバした夜職の人を見て、普段学校ですら合わない人種と遭遇し、「あわ、あわあわわ……」と泡を吹いている。

ソープ産業だけに泡は正しい。

――誰もツッコミをくれる人がいないけど

 

「なんでか分からないけど、ホテル屋さんと焼肉ってセットなのよね〜不思議よね〜♪」

「「「…………」」」

 

いや、確かに俺とひとりはHなことをしているが、親公認でこういう歓楽街に来ると少し恥ずかしい……。

 

「あば、あばばばば…………っ!!」

 

また一人は震えてるし……。

と思ったら、緊張と高揚から変なテンションになっているらしい。

 

⚪︎

「さぁ、召し上がれ〜〜 」

「ありがとうございます」

 

お義母さんからやたら差し出される、にんにくのホイル焼き。

ホクホクした旨みに香り、ニンニクに絡む熱々のオイル。

 

――正直とても美味しい。

 

でも……。

 

「ぐぁぁ……!!」

「あなた、これもひとりちゃんのためよ」

「わかってる。わかってるがぁっ……!」

「あわあわああっわ……。お父さん、落ち着いて……」

 

ブチギレ状態のお義父さんを宥めるお義母さんとひとり。

ひとりは宥めきれてないが、それでも今まででは考えきれないぐらい積極的だ。

 

「い〜〜〜ぱい、精をつけてね 」

 

僕はお義母さんのその一言で察してしまった。

――ご両親公認の子作りだ!!!!

 

ハシゴを巧妙に外されたことを理解し、

「あ〜……、今、緊急の電話が……」

「ん〜ん♪今日ばかりはダメよ♪」

 

さりげなく(わざと震わせた)スマホに手を伸ばすが、

――それとなく、

――かつ有無を言わさないほど強めに、

 

――手首ヲ握ラレル

 

「ひぃっ!?」

 

恐怖。

ゾワゾワと、肌の下を蟲が這いずり回る錯覚が身体中を駆け抜け、衝撃のあまり動けなくなる。

 

「悠くん?」

 

ひとりは意味をわかっていないようだったが、お母さんは和やかだ。

――血涙を流すお父さんとは対照的に

 

「沢山、た〜〜〜〜っくさん! 精をつけるのよ〜♪ はい、ひとりちゃんもね」

「うん、ありがと、お母さん」

「それにはーい、悠くん、ここはマカドリンクがおすすめなの♪いっぱい飲んでね」

「は、はい……」

 

強引に精のつくものばかり食べさせられる。

少子化時代と言われる時代にありがたいことなのだろう。

 

アプリは恋愛強者上位3割しかマッチングしないニュースとか、見送られる年金破綻とか、ロマンス詐欺とか、そういう不幸なニュースばかり見せられているのに、

――彼女のご両親に応援されているのだ。

 

嬉しさしか感じない……!

――と、言いたいところだが。

 

(お義母さん、目がマジなのが怖いんだよなぁ……)

 

普段おっとりしたお義母さんが出す本気。

――その本気を俺は甘くみていた。

 

そうして、名残を惜しむかのように焼肉店を出た。

出た後に待ち構えるのは、ネオン輝くピンク街。

 

マカドリンクやニンニク、コーヒー等がぶ飲みさせられて、出た頃には……

――僕はガンギマリになっていた。

 

「悠くん……?」

「ひとり……!」

「ヒェッ!?」

 

思わず一人の手を握りしめてしまう。

「悠ちゃん、い、痛いよ……」

「すまん」

 

慌てて、一人の手を離すも、そこには頬を染めたひとりがいた。

 

「ひとり……?」

「ううん、何でもない」

 

ひとりはそういうと、僕の手をブルブル震えた様子で握り返した。

 

「ひとり……!」

「悠くん!」

 

――この時はまだ気付いていなかった。

――ひとりもまたお義母さんに一服盛られていたことに!!

 

「あら〜、2人はもう熱々ね。じゃ、私たちも行きましょう♪ね〜、アナタ♪」

「ああ」

 

そう言って、お母さんとお義父さんは立ち去ろうとしてくるが、「あら、忘れてたわ〜」とお義母さんが駆け出してくる。

 

「これ、よかったら使ってね」

「ありがとうございます」

 

手を見ると、そこには……

――ラブホテルのクーポン券と現金が

 

「じゃあまた明日ね〜〜♪」

 

俺はお義母さんに用意された据え膳だと頭の片隅で分かりつつも、……本能は止められなかった。

 

――ラブホ街を爆進し、

 

――翌朝、裸になって寝ているひとりを見て、

――お義母さんに嵌められたことに気づくのだった。

 

「あら〜お帰りなさい♪」

「ふぬぅ……!」

「アナタ、素敵なお顔が台無しなんだから、怒るのやめてね??」

「ふぬ……」

「やめてね?」

「はい……」

 

朝、後藤家に帰ると、ひとりのお義母さんは妙にツヤツヤしていた。

反面、お義父さんはげっそりしており、ふたりちゃんは相変わらず元気っぱいだ。

 

「お兄ちゃん!お帰り〜〜っ!」

「ただいま、ふたりちゃん」

 

トテトテと走ってきては僕に抱きついてくる。

なんだか最近、ひとりちゃんとの距離が近まっている気がするが、僕は後藤家に受け入れられている気がして嬉しくなってしまう。

……違う意味じゃないといいんだけど。

 

「お帰りなさい。ひとりちゃん、悠くん」

 

「あっ、お世話になってます、お婆様!」

「そうよねえ……、私もいつまでも若くいられないわよねぇ、アナタたちから見るとお婆さんよねぇ……。皆のためにも、早く逝った方が良いのかしら……」

「そんなことありませんよ、お義母さん。ピンピンころりで長生きしてくださいね♪」

「そうは言っても、すぐに死ねないのが人間の嫌なところね……」

 

ひとりに似たブルーなオーラを出しながら、僕とひとりを見て落ち込むお婆さん。

――彼女こそが僕の義理の祖母

――ひとりのおばあちゃんだ。

 

「私のひ孫はいつ見れるのかしらねぇ……」

「「…………」」

 

僕とひとりは赤面しつつ、お婆さんを見送った。

 

「私たちも期待して良いかしら♪」

 

「お、お母さん、悠くんとは何もしてない……から……」

「あら、そう〜〜?」

 

ひとりは赤面しつつも、お母さんをスルーしようとしているが、

――お義母さんには全てお見通しだったらしい。

 

「私も、楽しみにしているわね♪」

「ふんぬぅ……ッ!!!」

 

お母さんの朗らかなな雰囲気と、お義父さんの某格闘技漫画ばりの憤怒。

 

「あ、あははははは…………」

 

俺の修羅場がまた始まる気がした。

 

――ひとりが妊娠で高校中退したい願望を抱いてるとも知らずに――




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