ろっきんがーるに恋する男子   作:詞連

10 / 33
8話が最高過ぎた。ライブもそれ以外も(視聴中)


Chapter10 天海恭弥と伊地知星歌 その1

 普段から明るい虹夏だが、今日は輪にかけて明るかった。

 

「明日、バンドTシャツが来るんだ~♪」

「8回目」

「しかもお兄ちゃんが持って来てくれるんだ~♪」

「それも8回目」

 

 鼻歌交じりで、同じことを繰り返す虹夏。今日は朝からバイトに入り、ほぼずっと一緒にいるリョウにとっては8回目の情報だ。

 虹夏が楽しそうなのはいいことだが、ここまで繰り返されると流石にリョウも辟易する。

 

「え?先輩ってお兄さんもいらしたんですか?」

 

 一方、午後からシフトだった喜多にとって、それは初情報だった。特に、伊地知姉妹に兄がいるというのは初耳だった。

 

「お兄さんって店長さんから見てお兄さんなんですか、それとも弟さん?」

 

 尋ねられた帳簿を整理していた星歌は、「あー」と心底面倒くさそうにためらってから

 

「―――いや、旦那なんだ」

「ああ、義理の兄っていう意味で―――――――!?!?!?

「あ、て、店長って結婚してたんですね」

 

 予想外の情報にわなわな震える喜多と、普通に受け止めるぼっち。

 

「って、なんで後藤さんはそんなリアクション薄いの!?」

「え、だって怖いけど、その、美人だし、そういう相手がいてもおかしくないかなって……」

「そ、それはそうかもだけど!そうかもだけどぉっ!」

「どうどう、おちつけ~」

 

 リョウになだめられ、テンションが下がる喜多。だが、今度は下がりすぎたのか

 

「出会いがない……カレシいないネタ……牽制……

 報告の約束……欺瞞……抜け駆け……気が付けばみんなカレシ持ち……

 クリスマスパーティ……2人×たくさん+おひとり様……ああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

「き、喜多ちゃん!ぼっちちゃんみたいになってるよ!喜多ちゃーん!」

「陽キャにも、陽キャ特有の闇があるんだな」

「もう……、もう誰も信じられないっ!

 リョウ先輩にも婚約者がいたしっ!後藤さんも石塚君を彼氏にしてチケット3枚買わせるしっ!虹夏先輩だってきっと彼氏が10人ぐらいいて隠してるんだっっ!」

「つ、付き合って、ないです!ノルマは石塚君が買ったんじゃなくて……!」

「ぼっち、見栄のための嘘で状況を引っ掻き回すのは良くない」

「あ、私、やっぱり信じられていない」

「彼氏10人て、私は悪女か」

「そうだね。10人は違うね」

 

 同じ学校に通うリョウは知っている。社交的で明るい虹夏に気がある男子は、柊商店の少年以外にも、両手の指に余るほどいると。

 

「お前ら!それ以上のおしゃべりはやめて、手を動かせ!」

 

 わいのわいのと騒ぐ結束バンドに、いつもの雷が落ちる。

 それぞれ仕事に戻るバンドの面々。だが、喜多は一つだけ、どうしても気になって小声で虹夏に問う。

 

「あの、そういえば結婚しているのに、苗字は伊地知のままなんですか」

「仕事だと都合が良いから、そう名乗ってるんだって。本当の苗字は―――」

「そこ!無駄口叩くなって言ったろ」

『す、すみませんでした!』

 

 聞き咎められ、追撃の雷。

 流石にそれ以上のおしゃべりはできず、作業に向かう喜多に

 

「―――天海(あまみ)だ」

「え?」

「天海が今の戸籍上の苗字。旦那の名前は天海(あまみ)恭弥(よしや)

 これで気が済んだろ。なら仕事ちゃっちゃと済ませて、練習時間確保しろ。ライブも近いんだから」

「は、はい」

 

 そういうと、星歌は帳簿に向き直り

 

「天の海に星の歌、か。いいなあ」

 

 喜多はそう呟いた。

 喜多郁代16歳。自分の名前にコンプレックスを感じるお年頃である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 子供の頃は子分。思春期になってからは仲間。そして二十歳を過ぎた頃は、煩わしい存在になっていた。

 それが、伊地知星歌にとっての天海恭弥だった。

 

 物心ついた頃から側にいた。幼馴染という奴だ。

 気が強く、体も大きく、要領も良い女の子だった。気が弱く、背も低く、要領も悪い少年だった。自然と星歌の後ろに恭弥がくっついて回る関係になった。

 中学に上がった頃から少し関係が変わった。

 理由は色々ある。

 恭弥の身長が伸びたこと。

 虹夏という、守るべき年下ができたこと。

 それと、星歌がギターを始めたこと。

 星歌は恭弥にも楽器を勧めたが、残念ながら絶望的に適性がなかった。だが子供の頃からのコンビを解消するという選択肢は、その時の二人にはなかった。自然と恭弥は星歌のマネージャーのような立ち位置になった。

 荷物運びに始まり、ライブのスケジューリング、路上ライブの申請や、チケットノルマのクリア。おおよそ音楽以外のことなら、恭弥は頼りになった。

 中学から高校まで、二人一組でやってきた。

 失敗もあった、痛い思いもした。けれども二人は無敵だと、無邪気に信じていた。

 

 

 その関係が変わったのは、高校2年の冬だった。

 星歌がバンドを結成し、恭弥が本格的に受験を意識し始めた。

 星歌がバンドを組んだ当初は、そのまま恭弥がバンドのマネージャーも務めた。

 最初は上手くいっていた。だが、受験が本格的になるにつれ、バンドが少しずつ有名になるにつれ、恭弥の負担も増えていった。

 バンドメンバーともかみ合わないところが目立ってきた。元々恭弥は音楽についてはずぶの素人だ。それが星歌と組めたのは、恭弥と星歌の幼い頃からの相互理解があったからだ。その積み重ねがないメンバー達との間には軋轢、とまではいかないが、どうしても壁ができていた。

 離脱を申し出たのは恭弥からだった。

 受験を理由の離脱を、星歌以外のメンバーは、残念がりつつも、僅かに安堵しながら歓迎した。恭弥の存在に不協和音を感じていたのは事実だが、恭弥が頼りになる裏方にして大切な仲間であったことも確かだった。その彼と、喧嘩別れや追い出すような形ではなく、新しい目標に送り出すという形での別れを迎えられるなら、と納得した。

 だが星歌だけは違った。怒鳴り、罵倒し、手まで出した。裏切り者と散々に詰った。

 星歌の視点では万事が順調に見えていたのだ。メンバーと恭弥の間の壁も、時間が解決してくれるものだと思っていた。恭弥が受験などという()()()()()()()を捨てて、自分の、自分達の夢に全て賭けてくれるなら、可能だと思っていた。

 あるいはその考えは正しかったかもしれない。恭弥が受験より、バンドのマネージャーとしての業務に力を注いでいれば、メンバーとの関係も改善していたかもしれない。

 だが、現実として恭弥はバンドではなく受験を、自分の進路を選んだ。

 星歌の怒りを、恭弥は黙って受け入れた。裏切り者という言葉にも、言い訳をしなかった。確かにバンドより自分の進路を選んだ、裏切り者だと認めて謝罪した。

 星歌の行いを、バンドメンバーは咎めも止めもしなかった。事前に恭弥から話があったのだ。

 

 

「星歌は相当荒れると思うけど、彼女の味方をして欲しい。傷つけたのは俺の方で、傷ついたのは彼女の方だから」

 

 

 そう言って頭を下げられては、メンバーとしてもどうしようもなかった。

 こうして18歳の初夏。二人の道は一度分かれた。

 

 

 

 

 再び二人の道が交わったのは1年近く後だった。

 受験が終わり、星歌もギリギリ大学に滑り込んだ春、都内の別の大学に進んだ恭弥が、観客としてライブを見に来ていた。そのまま何も言わずに帰ろうとしたところを、他のバンドメンバーが捕まえて、打ち上げの居酒屋まで連行した。

 その頃には星歌の態度も軟化していた。時間も経ち、離脱の際、恭弥がバンドメンバーにしていた根回しが既に彼女の知るところとなっていたこともあり、少なくともいきなり殴りかかるような真似はしなかった。

 だが、裏切られたと、自分達の夢より受験という現実を選んだという思いは消えず、どうしてもわだかまりは残っていた。

 

 

 星歌と恭弥の関係は、バンドとそのファンにして、幼馴染という間柄に修復された。そのことに一番喜んだのは虹夏だったかもしれない。

 虹夏にとって、恭弥は兄のようなものだった。

 それがバンド離脱による星歌との関係悪化と、受験での忙しさから、1年近く会えなかったのだ。

 以前のように、とまではいかずとも頻繁に家を訪ねてくれるようになった恭弥に虹夏はべったりと懐くようになった。それは、大学に進んでから家に寄りつかず、虹夏や家族を疎むようになった星歌への反発もあったのかもしれない。

 その一方で、星歌は恭弥に対して別の形での反発を持ちつつあった。

 

『星歌。おばさんがまた心配してたよ。たまには帰って来いって』

 

 切っ掛けは、母親が恭弥をメッセンジャーに使いだしたことだ。最初は『ガキのお使いかよ』と、と顔を顰めていただけだった。

 だが時が経つにつれて印象は変わっていった。

 決定的だったのが大学3年目の出来事だった。星歌の留年がほぼ確定した頃、恭弥に『ノルマ達成手伝え』と、ライブに誘った時、断られた。

 

『ごめん、インターンシップと被るから行けない』

 

 恭弥は順調に単位を取り、就職活動に歩を進めていた。

 自分の後ろや隣にいたはずの彼が、自分を取り残して先に行ってしまったように思えた。

 

 

 それからだ。星歌が恭弥を煩わしいと思うようになったのは。

 彼のリクルートスーツ姿を見かける度に、家族やバンドメンバーから、彼の就活の話題を聴く度に、彼にこう言われているように思えてならなかった。

 

『いい加減、バンドなんて馬鹿げた夢から覚めて、現実を見ろよ』

『バンド以外のものにも目を向けろ』

『大人になれ』

 

 それは錯覚だし、妄想だ。

 変わらず恭弥はバンドを応援しているし、やめろなどとは言わない。

 だが 『まともな大人』 になっていく彼を見る度に、そんな彼が『おばさんが心配してたよ』という伝言を預かってくる度に、思うのだ。

 現実の象徴である彼が、星歌をバンドという夢から引きはがそうとしているようだ、と。

 そんな気がして煩わしくなり、ますます恭弥や家族や、虹夏から距離をとるようになり――――

 

 

 

 

 

 

――――そんなある日、母さんが死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ん」

 

 星歌は目を覚ました。

 場所は、自宅のリビングのソファ。

 時間は19時過ぎ。今日は休みで洗濯とかの当番で―――

 

「やばっ!」

 

 焦燥感で一気に目が覚めた。

 そうだ。今日は溜まっていた家事をやらなくてはならない日だ。それを完全に寝過ごした。

 何から手を付けようかと寝ぼけた頭で必死で考えながら飛び起きると、

 

「もう少し寝てていいよ」

 

 聞きなれた声が隣からした。

 

「……もう来てたのかよ、恭弥」

「ただいま星歌。洗濯や掃除はやっておいた」

 

 いつもの穏やかな表情で、恭弥が言う。

 彼と自分の位置関係を見るに、どうやら膝枕をされていたらしいと、星歌は理解した。

 

「ごめん」

「いいよ。星歌は立ち上げたばかりの事業主で、大変だろ?休めるときにはゆっくり休まないと」

「大変なのはお前だってそうだろ。外国語できるからってあっちこっち飛び回って。今どこだっけ?」

「ヴィジャヤワーダとペカンバルと岡山を行ったり来たりだね」

「岡山は聞いたことあるな、どこの国だっけ」

 

 気怠げに言いながら、ごろんと星歌は仰向けになる。頭は恭弥の膝の上。

 その髪を恭弥は撫でながら

 

「インドとインドネシアだよ。インドで綿花買って、インドネシアで布にして、岡山で縫製」

「アパレルメーカーって、もっとオフィスとかショップとかの優雅な感じだと思ってた」

「俺も。まさか英語できるからってインドに行くことになるとは思わなかった。

 英語通じなくてその場でテルグ語覚えることになったけど」

「そんな無茶振りに応えるから、ますます無茶なことやらされるんだろうが」

「性分なんだ、ごめん」

「―――知ってる」

 

 恭弥は子供の頃から要領が悪かった。それを人一倍の努力でどうにかして、やり遂げてきた。それは、子供の頃から散々無茶振りをしてきた星歌がよく知っている。出来なかったのは音楽くらいだ。

 

「なんつーか、ありがとう」

「どうしたの、急に」

「いや、虹夏のバンドTシャツの事とか」

 

 結束バンドのバンドTシャツ。その製造や発注は、恭弥のコネで格安で行われた。

 恭弥は大学卒業後、そこそこ大きなアパレル企業に就職した。そこで人当たりの良さと、星歌に鍛えられた無茶振りに応える適応力を見込まれ、世界中を飛び回る羽目になっている。

 

「いいよ、可愛い義妹の為だもの。それに、バンドのマネージャーやってた時の事思い出して、少し楽しかったし」

「―――それと、そのことも」

「どのこと?」

「ガキのころ、マネージャーさせたこととか、やめる時も、私の為に仲間に根回ししてくれてたこととか―――母さんが死んだ時とか」

「……本当にどうしたんだよ、急に」

「ちょっと、昔の夢を見ただけ」

 

 蛍光灯が眩しくて、星歌は目に手をかざした。

 

 

 

 母親を交通事故で亡くした時、その現実に向き合いたくなくて、星歌はロックに逃げた。その間、恭弥はちょくちょく星歌の所に訪れた。

 最初の頃は、家に帰って来いというつもりかと身構えた星歌だったが、恭弥は特に何も言わず、とりとめのない話をして、そのまま帰るということを繰り返した。その時は理由もわからなかったが、母親の事にも家族の事にも触れない恭弥の態度が居心地よくて、そのままにしていた。

 その1か月後だった。虹夏が癇癪を起したのは。

 そこで初めて、星歌は知った。恭弥がほぼずっと、虹夏につきっきりで面倒を見てくれていたことを。

 就活の方もギリギリまで減らし、不在なことも多い父親や、そもそも家に寄りつかない星歌の代わりに。

 

「ごめん。俺だけじゃダメだったよ。やっぱ、ホントの家族じゃないと」

 

 ぐずる虹夏を寝かしつけた後、恭弥は星歌にそう謝り、星歌はその胸倉をつかみ上げた。

 

 なぜもっと早く自分を呼ばなかった!?

 

 自分から目を背けていたくせに、知ろうともしなかったくせに、身勝手に叫ぶ星歌に、恭弥は静かに、そして申し訳なさそうに

 

「星歌も、傷ついてたから。

 音楽ができない、星歌の夢を共有できない俺は、ただ待つことしかできなかったんだ。

 ごめん」

 

 言われて、星歌は初めて気づいた。

 自分は守られていたんだと。

 恭弥がマネージャーをやめた時も、今、この時も、恭弥は自分ができる最大限の方法で、私を守ろうとしてくれてたんだ、と。

 母さんに心配かけて

 虹夏に孤独と喪失を押し付けて

 恭弥に守らせてるくせに疎み、詰って

 そのくせ自分は夢ばかり追って、何も返せていない。

 

「そんなことはないよ」

 

 泣き崩れる星歌を抱き留めながら、

 

「これはおばさんの、星歌のお母さんの受け売りだけどさ。

 夢は、どんな辛い時でも、道を照らしてくれる光になるんだ。

 俺は夢を追えなかった人間で、自分の夢って言える物も持ってないつまらない奴だけど、それでも星歌の夢に照らされて、何とかやってけてるんだ。

 だから、何もできてないなんてことはない。おばさんも、夢見てキラキラしてる星歌を見て嬉しいっていつも言ってた。

 だから今度は、虹夏ちゃんのこと、照らしてあげてくれないか?

 俺も手伝うから。できることは、限られてるけど」

 

 星歌が泣き止んで、自分の足で立てるようになるまで、恭弥はずっと、彼女を抱きしめ続けた。

 

 

 

 

 

「そういえばお義母さん――お前の母さんの方の6回忌って、もうじきだっけか?」

「今年の秋だよ。といっても、法要とかなしで、お墓参りするだけ。来てくれると嬉しいけど無理しなくてもいいよ」

「絶対行く」

 

 遠慮がちに言う恭弥に、星歌は強い口調で言った。

 恭弥は母子家庭で、母親は体が丈夫ではなかった。

 彼がマネージャーをやめ、進学と就職という安定した道を選んだ最大の理由は、この体が丈夫でない母親に心配をかけたくなかったからだったらしい。

 そのことを、末期の病床の彼の母親から、懺悔するかのように告げられた星歌は、とりあえず恭弥をぶん殴って

 

「おい、次から何か辛いことや困ったことがあったらまず私に言え。一人でカッコつけて抱え込むな」

 

 看護師に怒られてから、鼻血を流した恭弥と一緒にもう一度病室に入ると、そこにはやつれた顔に安心しきった笑顔を浮かべた彼の母親がいて

 

「星歌ちゃん、恭弥をよろしくお願いします」

 

 それが、年貢の納め時だったんだろう。

 

 

 

 

「で、最近なんか、あったか?」

「ないよ」

「本当だろうな」

「本当。もう星歌に泣かれたくないからね。何かあったら正直に言います」

「……よろしい」

「あ、けど、頑張ってるご褒美は欲しいかな」

 

 珍しいこともあるものだ。恭弥がおねだりなんて。

 

「なんだ?」

「子供」

「っ!」

「―――なんてね。いつか欲しいのは本当だけど、もう少しお互い、時間に余裕ができてからでいいかな」

 

 言葉に詰まる星歌と、それを見て、少し意地悪く笑う恭弥。

 こいつぅ、恭弥のくせに生意気だ。

 だから

 

「そんなこと言ってグダグダしてると、そのままお互いジジババになりそうだな」

「ははっ、そうかも―――」

「だから今作んぞ」

 

 急に起き上がり、不意打ちで引き倒し、そのまま上に負い被さる。

 星歌の頬に赤い色が指すのは、気恥ずかしさからか、興奮からか。

 

「星歌?そ、その、今はマズいって……!」

「うるさい。後先のこと考えるとか、ホントロックじゃないな、お前」

「後先とかそうじゃなくて…!」

 

 まずはその口から塞いでやろうと、お互いの吐息がかかる距離まで身を寄せ

 

 

 

「お姉ちゃん、起きた?お風呂空いたから―――」

 

 

 

 あと数センチの距離で、虹夏がリビングに入ってきた。

 時が止まったかのような沈黙のあと

 

「ごごごごごめん!お姉ちゃん、その!うん!ごめん!」

「ちが、そ、あっ、違うから!」

「違うところが一つもなげぶぼっ」

 

 星歌はこぶしで恭弥を黙らせる。

 クソッ!まだ脳味噌寝てた!虹夏がいるのは当たり前じゃないか!

 不覚を悔いる星歌。一方の虹夏は湯上りの頬をさらに赤くして

 

「わ、私!ドラムの練習があるから!部屋にこもるから!に、二時間くらいでいいかな!?ヘッドホン付けてガンガン音も鳴らすから大丈夫だよ!それじゃあ!」

 

 そう言って、虹夏はバタバタと自室に駆け込んだ。

 残されたのは妹の気遣いで羞恥心に追撃を受けた星歌と、殴られた頬を抑える恭弥。

 

「……お言葉に甘えて、する?」

「するかバカ!」

 

 顔を真っ赤にした妻は、夫を怒鳴りつけた。

 

 

 

 

 つづく




 感想でも期待されていた星歌ですが、原作特別編が完璧すぎて、あの雰囲気を壊してないか戦々恐々。
 楽しんでもらえたら幸いです。

この作品で好きな組み合わせは?

  • 後藤ひとり・石塚太吾
  • 伊地知虹夏・柊俊太郎
  • 山田リョウ・海野敦
  • 喜多郁代・皆実彩人
  • 廣井きくり・高清水律志
  • 伊地知星歌・天海恭弥
  • 大槻ヨヨコ・大河内頼光
  • PA・マスター
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。