ろっきんがーるに恋する男子   作:詞連

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ああ、ぼざろアニメが、1期が終わる……


Chapter21 石塚太吾と後藤ひとり その6

 日が傾きかけた頃、石塚と彩人は結束バンド組との待ち合わせ場所に向かっていた。

 江の島から出てすぐの、橋の袂あたりだ。

 

「トンビ、今日は多いな」

「やあ、偶然だね。やあ、偶然だね。やあ、偶然だね。やあ、偶然だね」

「……言っとくが、今から待ち合わせ場所会いに行くわけだからガッツリ必然だぞ?」

 

 などと言っていると、堤防に腰を掛けている結束バンドの面々が見える。名物の塩アイスを食べているようだ。声をかけようか、と思った時だった。

 

「あ、後藤、アイス盗られた」

 

 トンビだ。

 観光客が食べ物をかっさらわれる光景は、バイトをしていて稀に見かけるものだったが

 

「……おい、まずくないか?」

 

 上空に、見慣れない数のトンビが集まってきたかと思えば、それらはほぼ同時に滑空。

 狙うのは―――

 

「後藤!上!」

 

 叫んで、石塚は駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは弱小な生命体の直感とでもいうべきか。アイスを盗られた瞬間、ぼっちは確信していた。

 

(私、狙われている……!)

 

 見上げれば、十羽近いトンビの群。

 

「は、はあ、はわあああ……」

 

 恐怖しながら見上げると、奴らが一斉に急降下してきた。

 

「うわああああああっ!」

 

(つ、啄まれる!)

 

 もはやこれまで、と、ぼっちが身を竦めた時だった。

 

「おい!離れろ!」

 

 ぼっちに覆いかぶさるように、彼が駆けつけた。

 脱いだパーカーを振り回し、トンビを追い払う。

 弱っちい獲物、とぼっちを認識し、襲い掛かってきたトンビは、急な乱入者に驚き、彼女を襲うのを諦めて飛び去った。

 

「大丈夫か?後藤」

 

 トンビを追い払った後、彼はぼっちに声をかけた。

 その姿を見上げてぼっちは

 

「……え、誰?」

「一応、クラスメイトだよな、俺ら」

 

 彼―――皆実彩人は呆れたように言った。

 

「ハァ、ハァ、だ、大丈夫かっ、後藤……っ!」

 

 彩人の背後から遅れて、息を切らせた石塚が駆け寄ってきた。

 

 

 ぼっちが襲われそうだ、と察知した瞬間。石塚と彩人は同時に駆け出した。

 石塚は所詮バンドマン。彩人はバスケ部で、それも1年にして冬の大会でレギュラーが確定しているエース候補だ。

 砂地のダッシュ走のタイム差は歴然だった。

 

「……まあ、後藤が助かったからそれでいいけど」

 

 自分に言い聞かせるように石塚は言って、ぼっちに手を差し伸べた。

 

「立てるか?」

「あっ、は、はい」

 

 石塚の手をぼっちがとった時だった。

 

 

 

 

 

 トンビたちは、あきらめていなかった。

 いや、あの弱そうなムカつく生き物を襲撃することはもう無理だろうが、このまま引き下がるのはシャクだった。

 しかし、近づけばさっきの強そうなのが反撃してくる。

 ならば、飛び道具だ。

 

 

 装填良し!狙い良し!―――投下!

 

 

 べちゃっ!べちゃっ!べちゃっ!

 

 3羽が放った三発のそれは、目標の頭部、上半身、下半身に一発ずつ弾着。

 

「こらぁっ!ぅ゛あっちいけぇ!」 

 

 弱そうなのの近くにいた別の奴が大声を上げるが、無視。

 もう用事は済んだとばかりに、トンビたちは飛び去った。

 

 

 

 

「……」

 

 トンビの糞を3発。全身に浴びたぼっちは無表情だった。

 そのぼっちに、石塚は沈痛の面持ちで

 

「海の家、シャワーとコインランドリーあるから。行こ」

「ひぃん」

 

 石塚の言葉の温かさに、氷結した感情が解けたかのように、ぼっちは半べそを掻きながら頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ!どうしたの?トンビにやられた!?

 そりゃ災難だったね!シャワー使いなよ!石鹸とシャンプーはおまけするからさ!

 あと着替えも貸すよ!バイト用の服だけど!」

 

 海の家でぼっち達を待ち構えていたのは、到着してすぐに遭遇したパリピ達だった。

 一瞬、またぼっちが爆発四散するのではと警戒した虹夏達だったが、糞直撃で流石に凹んだせいか、爆発する気力すらなかったぼっちは

 

「あっ、はい。あ、ありがとうございます」

 

 と、いつもより俯いた状態でシャワーに向かった。

 一方の虹夏達はというと、

 

「ヘイ!シラス丼3丁!」

「わぁい」

「イソスタにあげなきゃ!」

「私は、お腹いっぱいだからいい」

「お前の分は最初から頼んでないっつーの」

 

 運ばれてきたシラス丼は、海の家とは思えないクオリティだった。

 

「あっ、おいし」

「郁代!やっぱ私も、一口」

「はい、リョウ先輩!あーん」

 

 などと虹夏達が楽し気にしていると、それを見掛けた客が、ボチボチと引き寄せられてくる。

 それを見ながら彩人が

 

「……行けますかね、店長」

「ん~、もうちょい起爆剤欲しいねえ」

 

 ちょっとずつ増えてくる客足を見ながら店長は腕を組んで考える。

 その横で、石塚は注文されたドリンクを用意しながら、シャワールームの方を見てぼやいた。 

 

「後藤、遅いな」

「ん?まあ女の子だからねー、シャワーは長いさ!」

「……着替え。女性バイト用の服って言ってましたが、どんなんですか?」

「そういや、女のバイト、みたことないな」

 

 彩人達がバイトに入ってから、スタッフは店長含め全員男だった。

 男はハーフパンツかサーフパンツで、追加でパーカーか、店のロゴが入ったTシャツを着用可能、というのがルール。あと、星型サングラスは備品だ。

 ちなみに彩人は自前のパーカー。石塚はTシャツ。店長達はサーフパンツorハーフパンツのみに、星型のサングラスをお揃いでかけている。

 じゃあ、女性スタッフは……と、思っていると、

 

 

「ぁ、あの!」

 

 着替えが終わったのか、ぼっちがランドリールームからでてきた。

 

 

 

 ピチTとホットパンツだった。

 

 

 

「こ、これ、さ、サイズ、合ってるんでしょうか?」

 

 おずおずと、全身を隠す様に身を縮こませながらでてきたぼっち。

 

「FOOOOO!!似合ってるねお嬢さん!」

 

 ぼっちにむけて笑顔でサムズアップする店長。

 なお、断言するが、彼には一切の下心は存在しない。

 純度高めのパリピである彼にとって、体のラインが出まくりのピチピチなTシャツと、太ももまで丸見えのホットパンツは、海辺の女の子が着る服として標準的、常識的な衣装であり、むしろ芋ジャージこそが異装なのだ。

 

 さて、そんな生足が魅惑的なぼっちへの反応はというと

 

「…っ」

 

 と膝から崩れ落ちた石塚と

 

「まあ、そうなる気はしてた」

 

 とむしろ石塚の方に目をやる彩人。

 

 他方、結束バンドの面々はというと

 

「ほほう!ぼっちちゃん、そういう方向もありだね!」

「甘い系以外も似合いますね!」

「んひぃ……」

「もう。普段からジャージ以外も色々着ればいいのに」

 

 目を輝かせて寄ってくる虹夏と喜多。

 リョウは真剣な表情で

 

「ふむふむ」

「あ、あの、なにか……」

「ビジュアル方面で売り出すのも……ありか」

「え゛?」

「ぼっちはダイヤの原石だったのか」

 

 目が$マークになった。

 

「うん。今後、ぼっちのTシャツは1サイズ、いや2サイズ小さいのにしよう」

「ひっ!」

「あとミュージックビデオは水着、いや、ライブも上は水着で行こう」

「む、無理です!」

「今は動画の再生数こそ全て!多少の犠牲はやむを得ない」

「むむむむむむむむむむむむっ!」

 

 金に目のくらんだリョウの無理な押しに、無理無理ヘッドバンギングで対抗するぼっち。

 

「あはははっ。シュンはどう思う?」

 

 と、虹夏が声をかけるが、シュンは応えなかった。

 彼は一点を凝視していた。

 いや、正確にはその瞳は左右に動いていた。見つめる対象が左右に揺れていたからだ。

 それは、ぼっちの胸だった。

 

「むむむむむむむむむむむむっ!」

 

 と、頭を振るぼっち。その動きに従い、ぴっちりサイズの布地で強調された乳房が、右に左に揺れ動く。

 少年の瞳は、その動きにくぎ付けとなっている。

 

「……シュン」

「っ、な、なに?何だよ」

「何見てるのかなあ」

「べ、別に(チラッ)何も(チラッ)みちゃ(チラッ)いねーよ(チラッ)!」

 

 冷たい虹夏の視線にさらされながらも、本能が彼の視線を双丘へと誘う。

 

「……むぅ」

 

 いよいよしかめ面が深くなった虹夏は、少し何か考えてから、

 

「―――店長さーん!ちょっといいですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――はっ!マーメイド!?」

「あ、お、起きたんですね」

 

 石塚が目を覚ました。

 場所は海の家の裏手。スタッフの休憩スペースを兼ねたベンチだった。

 そこには石塚の他にぼっちもいた。

 ぼっちの格好を見て、石塚は意識を失うことはなかった。

 厳密にいえば、ピチTとホットパンツは変わらなかったが

 

「あの、皆実君が、これ、貸してくれて」

 

 その上から、男物のパーカーを着ていた。

 いわゆる、彼シャツ状態である。

 背の高い皆実のパーカーは、ぼっちにはぶかぶかだ。前を閉めて着ているその姿は、きゃしゃで小柄な少女らしさを強調していて、非常に魅惑的に見えた。

 ただし、繰り返すがそれは皆実の服である。

 

 好きな子が 他の男の 服で彼シャツ(字余り)   ※ただしめっちゃ可愛い

 

「ああ」

 

 石塚は理解した。

 

「ジョージさんやイライザさんの言っていた脳が破壊されるって、こういうのを言うのか」

「え?あ、あの、それはどういう」

「いや、何でもない。ちょっと、新しい曲の構想を得ただけだから」

 

 と、言った所で、石塚は思い出す。

 

「ヤバい、今バイト中だった!後藤!俺、どのくらい寝てた!?」

「え。あ、その、大丈夫です。ほんの10分くらいですし。

 それに、今は―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 石塚が目を覚ました頃、海の家に、ピチTとホットパンツの女子が増えた。

 

「ということで!ぼっちちゃんに着替えとか貸してくれたお礼と、そのぼっちちゃんが石塚君をノックアウトしちゃったお詫びに、ちょっとお店を手伝うことにしましたー」

「いーのかい!?バイト代とか出せないよ?」

「いえいえ、構いませんよ。これも夏の思い出ってことで!」

「怠ぅ……」

 

 海の家でのバイトというイベントに乗り気前回の喜多は、シャツの裾をさらに縛った装い。

 喜多に引っ張られて渋々なリョウは、頭に例の星型サングラスを乗せている。

 そして、

 

「どうかな、シュン?」

 

 所在投げに座っていたシュンと目線を合わせるように、前屈みになって尋ねる虹夏。

 

「に、に、似合う、んじゃねえの?」

 

 顔を赤くして、そっぽを向くシュン。だが、やはり所詮は思春期ボーイ。

 その目線は、眼前の魅惑に逆らえず、ちらりちらりと胸元や足に引き寄せられる。

 

「……ふーん、ぼっちちゃんだけじゃ飽き足らず……。節操ないなー」

「っ!さっきっからなあっ!」

 

 流石に腹が立って、食って掛かろうとしたシュンは、虹夏に食って掛かろうとして、

 

「―――」

 

 言葉を失った。

 予想していたのは、江の島に行く前にされた、冷たい軽蔑するような表情。

 しかし今、目の前にいる虹夏の表情は、嬉しそうな、いたずらっぽい笑顔だった。

 

「シュンのえっち!」

 

 そう言った顔が赤く見えたのは、夕日のせいか、気恥ずかしさか。

 虹夏は身をひるがえし

 

「さ!リョウ!喜多ちゃん!呼び込み頑張るよ!」

「ハイ!」

「えぇ……」

 

 仲間を引き連れビーチに出て行く虹夏を、呆然と見送るシュン。

 そんな光景を、バックヤードから戻ってきた石塚が見て

 

「……人が脳破壊喰らっているというのに」

「おーい、石塚!戻ってきたんなら手伝え!」

「……」

「な、なんだよ」

「どうして……どうして俺の服を剥いて後藤に着せず、自分の服を貸したんだ、彩人!」

「質問の意味が分かんねえよ!」

 

 太陽が、水平線に触れつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「すっかり暗くなっちゃったわね」

「す、すみません。ジャージ乾くのに、時間かかっちゃって」

 

 8月も末になれば、日が落ちるのも早くなる。

 西の空に夕日の残照が残る頃、結束バンドとシュンに加え、バイト組の2人も一緒に帰りの電車に乗った。

 

「シラス丼も売れて、店長さんも喜んでたね。完売まではいかなかったけど」

 

 虹夏はそう言って、ビニール袋の中を見る。中身は保冷剤とパッケージングされたシラスだ。

 

 

 

 虹夏達が手伝い始めてから、海の家は一気に客足が増えた。

 虹夏目当ての男客が、と思いきや、女性客が明らかに増えた。

 

「やっぱ女の子のスタッフがいるだけで、お客さんが安心して入ってくれるんだよねー」

 

 とは店長の談。それが分かっててなんで女性スタッフを入れなかったかと聞くと

 

「いやあ、ホントは2人来る予定だったんだけど、体調不良とかでね!」

 

 その空いた枠の分で緊急募集で入ったのが、彩人と石塚だったというわけだ。

 

 ともあれ、帰りがけのサーファーに加え、ナイトダイビングの準備に来た客相手に、シラス丼はだいぶ売れた。

 こうして店長は一命をとりとめ、そのお礼として余ったシラスを貰えたというわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

「そ、それじゃあ、喜多さん。また、明日」

「じゃ。彩人、今度、ライブとかの予定とか送る。暇なら来て」

 

 藤沢駅にて、ぼっちと石塚が離脱した。

 二人はここから東海道本線で横浜まで。他のメンバーはそのまま江ノ島線で下北沢へ行く。

 社内に残ったのは5人だが

 

「みんな寝ちゃったね」

「だな」

 

 電車に乗って早々、虹夏とリョウは寝入り、藤沢の手前でシュンも船を漕ぎだした。

 起きているのは喜多と彩人の二人だけだ。

 

「あーあ、夏も終わりだなあ」

「そうね」

 

 すっかり暗くなった窓の外、流れる夜景を眺める。

 

「もっとバンドのみんなと遊びに行けばよかった」

「意外だな。喜多のことだしバンドメンバーともいろいろ遊び歩いてるとばかり思ってたぜ」

「ちょっとー、それどういう意味?私達、真面目にバンドやってるのよ?四人で集まる機会があるなら練習するに決まってるじゃない?」

「今、遊びに行けばよかったーって言ってたくせに」

「むー」

 

 人気もない車内で取り留めなく続く会話。

 不意に、少し気になっていたことを、彩人は尋ねた。

 

「なあ、喜多。なんで学外バンドなんだ?」

「え?」

「バンドだったら軽音部とかあるだろ?なのに、なんでわざわざ学外バンドなのかなって」

「ああ、それね。最初は不純なんだけど―――」

 

 それは、以前聞いていたのと、ほぼ同じ内容。

 ベースを弾いていたリョウに一目惚れして、それを追いかけるようにバンドに入った経緯。

 そして

 

「それと、みんなで一緒に過ごして、同じ夢を追って。なんかそういうのに憧れたの。ほら、私って部活とかやったことなかったし」

「じゃあ、なおさら部活とかにしといた方が、楽だったろ?」

「えー。だってリョウ先輩いないじゃない」

「結局そこか」

「アハハハ」

 

 ひとしきり笑ってから、喜多が、少し真面目な面持ちでつづけた。

 

「……それだけじゃなくてね。

 なんか、なんていうか『自分で選びたかった』ってのもあるんだ」

「自分で?」

「例えばクラスの行事とか、文化祭とか体育祭は、組分けとか決まってるじゃない?

 部活だってそう。結局は同じ学校の中の人同士の組み合わせでしょ?

 けどバンドは、結束バンドはそう言う枠も柵もなしで、この広い世界の中で、無限に近い自由な選択肢の中から選んで、出会って、つながった仲間じゃない。

 それが凄く……なんていうんだろう、逆に、強いつながりに思えたんだ」

 

 この国において、大多数の学生の交友関係は、学校という箱の中で展開される。

 狭い世間、限られた選択肢で、半ば仕方なく構成される友人関係やグループ。

 それは、どこまで自分の意志だと言えるだろうか?強い絆と、言えるだろうか?

 

「―――あっ!ご、ごめんね!その、学校の友達や、部活のことを否定にするつもりはないの!

 ただ、その、なんていうか……」

「いや、わかる」

 

 彩人の無言を、否定的な意味に捉えたのか、喜多が慌てて謝ってくるが、彩人は首を振った。

 

「分かる。なんか―――時々息がつまるよな」

 

 学校の友達のことは嫌いじゃない。バスケ部の仲間のことも嫌いじゃない。

 だが時々、打算がよぎるのだ。

 今後2、3年は顔を突き合わせなくてはならない相手だ。上手く付き合わないと、と。

 

「ここ数日、石塚相手は気楽だった」

 

 変な奴だ。

 太々しく、鈍感力高めで、クールなタイプかと思いきや、後藤が絡むと突如ヘタレのポンコツと化す。

 無遠慮だし、発想の基本が根暗だし、バンドマンだし。

 

「いつでも付き合いを切れる相手で、だからこそ一緒にいて楽しいって、楽しいから自分の意志で一緒にいるって、そう言い切れるんだよな」

 

 いつでも切れる関係。自分の意志でつなぎ続けないと切れてしまう関係。

 だからこそ無遠慮にぶつかれるし、ムカついたり面倒だと思っても、ついついロインを交換して、友達を続けたいと思ってしまう。

 

「喜多も、なんか普段よりハッチャケてたよな」

「そうかな?けど、彩人君だって石塚君相手だとなんか普段より楽しそうだったわよ」

「そうか?」

「そうよ」

「そうかもな。

 なんか、いいよな。学校とかそう言うの関係ない仲間とか友達って」

「……うん!」

 

 そう言って、二人は笑い合ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(気まずい!)

 

 同じ頃、ぼっちはストレスに晒されていた。

 いや、いつもただ存在しているだけでストレスを感じているぼっちだが、今のは格別だ。

 ストレッサーは隣の石塚だ。

 

(何か、何か話さないと!こう、場を盛り上げられるような、イケてる感じな話題を!)

 

 思考を空転させるぼっち。もちろん、陰キャでコミュ障な彼女にそんなものは思い浮かばない。

 その一方で、石塚も

 

(どうにか、何か後藤が興味を引くような話題はないか……!)

 

 同じ様に思考を空転させていた。

 やがて二人は、とりあえず何か言わないと、と決意を固め

 

『あ、あの!』

 

 被った。しばしの沈黙の後

 

『ど、どうぞ……』

 

 異口同音で同じ言葉が漏れる。

 そして再び始まる沈黙。

 

 ああ、このまま横浜まで無言のままだろうか?

 

 二人そろってそんな絶望感に浸っていると―――石塚のロインにメッセージがあった。

 頼光だった。そのメッセージを呼んで、石塚が

 

「アルバム、決まったのか」

「ぇっ?」

 

 アルバム、そのキーワードにぼっちが反応した。

 

「あの、それって、ひょっとして」

「ん、ああ。―――プロデビューって奴、かな。

 まだ、正式発表じゃないんだけど、この前レーベルに入ってさ。アルバム出す日程も決まったんだ」

「そ、そうですか。その、おめでとうございます」

 

 そういうとぼっちは、座席から降りて、やおら地面に正座した。

 

「……どうした?」

「いや、アルバムを出すようなプロバンドマン様と同じ高さに座るなんて、このフナムシバンドマンには恐れ多く……」

「いいから、ちゃんと座りなよ、ほら」

「は、はいぃ」

 

 促され、ぼっちは再び椅子に座る。

 

「大丈夫だろ」

「え、あ、何がですか?」

「後藤なら、すぐさ」

「な、何が?」

「デビュー。後藤と、結束バンドならできる」

 

 まっすぐに、向けられた石塚の視線に、ぼっちは少しどぎまぎしながらも

 

「あ、その、ありがとう、ございます」

 

 ちょっと引きつっていたかもしれないが、俯き加減だったが、確かに笑って返したのだった。

 

 

 それから、横浜につくまで二人の間に会話はなかった。

 だが二人とも、気まずさは感じていなかった。

 

 

 

 

 

 夏が、終わる。

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

その夜

 

リョウ 「アツシー。お土産のシラス。あと、膝枕しろ」

敦   「おや、何かあったんですか?」

リョウ 「別に。どいつもこいつもトロピカルラブ過ぎて、ちょっと当てられただけ」




ロスにも負けず冬の寒さにも負けず、今後もこの二次創作を、とりあえずアニメ1期分までは続けられるよう頑張ります。

この作品で好きな組み合わせは?

  • 後藤ひとり・石塚太吾
  • 伊地知虹夏・柊俊太郎
  • 山田リョウ・海野敦
  • 喜多郁代・皆実彩人
  • 廣井きくり・高清水律志
  • 伊地知星歌・天海恭弥
  • 大槻ヨヨコ・大河内頼光
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