ろっきんがーるに恋する男子   作:詞連

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 実は漫画とアニメで文化祭の最後が大分違うので、アニメベースにちょい漫画たした感じに。


Chapter28 ろっきんがーると文化祭ライブ その3

 やあ!私は後藤ひとり!たこせんべいプレス機!昔はバンドでギターを弾いてたこともあった気がしたけど、きっと気のせい!

 今日も1tの力でタコを焼き潰すわ!

 えいっ!

 ぷぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!(タコの断末魔)

 あ!今度はエビ!?でも、えいっ!

 ぷぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!(エビの断末魔)

 あ、今度は石塚君ね!えいっ!

 ぷぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!(石塚の断末魔)

 

 わぁあ、石塚君も美味しそうなせんべいになったわ!

 つぎは―――

 

 

 

 

 

 

「―――はっ!?江ノ島!?」

「後藤さん大丈夫?」

 

 ぼっちが目を開けるとそこは保健室だった。ベッドサイドには心配そうな

 

「喜多さん。それにお父さん達も……」

「あっ!お姉ちゃん起きた!」

「大丈夫か、ひとり?」

「心配したのよ」

「ここ、学校の保健室よ?江ノ島行ったのは夏休みで、今は文化祭の後。わかる?」

 

 寝起きの一言で、ぼっちの記憶障害を心配した喜多が聞いてくる。

 

「あっ、はい、大丈夫です。ちょっとたこせんべいプレス機になって石塚君を―――」

 

 記憶が、蘇った。

 ステージからのダイブ。

 よける観客。迫る床。視界の端に、飛び込んでくる石塚君が……

 

「ぃ、石塚君は!?」

「こっちやで、先生」

 

 喜多とは逆サイドからの声に振り向くと、隣のベッドに横たわった石塚と、それに付き添いをしている頼光がいた。

 石塚は、動かない。

 

「ぁ、かっ、きっ、こ、ころっ、殺し……―――ロックバンドだから、前科がついても大丈夫だよね」

「いや、勝手に殺さんといてな」

 

 すっと両手を前に出すぼっちに、頼光はあきれた様子で言った。

 

「で、でも、私が石塚君を1tの力でぺちゃんこに」

「どんだけ重いねん?」

「ええっと、い、石塚君が気絶してるのは後藤さんのせいじゃなくて……そう、事故!不慮の事故みたいなものだから!後藤さんは気にしなくていいのよ!」

「……間に合わんかったどころか、むしろ石やんが追撃加害者まであるからなあ」

「???」

 

 どういうことだろうか?

 後藤は首をかしげる。確かに言われてみれば、地面に激突する直前の瞬間の光景と、そして激突した事実を考えれば、石塚を巻き込みはしなかったはずだ。でも、だったらどうして?

 

「じゃ、じゃあ、何で石塚君は……?」

 

 家族の方を見ると、両親は気まずそうに

 

「ま、まあ、その少年の努力は買おうと思う」

「結果が全てじゃない、そうよね?」

「すっごくおもしろかった!」

 

 気まずそうな顔をする面々の中で、ふたりだけが満面の笑顔でそう言った。

 

(あっ、これ絶対黒歴史化する奴だ)

 

 なれば聞くまい。

 少なくとも知らない間は苦しまずに済む。

 

「―――っ、ここは……」

 

 その会話の音で意識が戻ったのか、石塚も目を覚ました。

 頭が痛むのか、顔を顰めながら体を起こし、ぼっちと目が逢う。

 

「ぁ、あ、あの、その……」

 

 何を言うべきか悩むぼっち。

 助けてくれてありがとう?ライブ、どうでしたか?それとも―――

 などと言葉を探しているうちに、石塚は、逃げるようにぼっちから目を背ける。

 

「ふぇっ…」

 

 と、地味にショックを受けたぼっちにも気づかず、石塚は顔を両手で覆いながら

 

「先輩」

「なんや?」

「殺してください。俺は今、恥を知った……っ!」

「ファンの子らに約束したサイン会、済ませてからな」

 

 悲嘆にくれる石塚に、頼光は肩をすくめて言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえずは大丈夫そうだということで、石塚達は保健室を出て校庭に向かった。

 

「あの3人だけでサイン会放置とかどないなるかわからんからなあ。俺以外、常識人がいないの、ホンマ困るで。ほなな、喜多ちゃん、先生!親御さんにふたりちゃんも!良かったらEXoutに遊びに来てな!」

 

 と言って出て行く頼光に、死んだ目をした石塚がついていった。

 それに続いて両親も

 

「一般客も退去の時間だし」

 

 と、ぼっちの無事を確認してふたりを連れて帰っていった。

 残るのは、喜多とぼっちの二人だけだ。

 暮れる秋の日が差し込む保健室で、ぽつりぽつりと、言葉を交わす。

 

「あの、ステージ、台無しにしちゃってすみません、せっかくの……」

「ううん、逆に何故か盛り上がってたかも」

「そう、ですか。虹夏ちゃんたちは……」

「片付け中。終わったら打ち上げ行こうって。行くでしょ?」

「あっはい……あっ、それと、あの、驚きました」

「え?何が?」

「喜多さん、いつの間にか上手になってて……」

「バッキング、だけだけどね」

「それでも、その、凄かったです」

 

 身を起こしながら言うぼっち。喜多は少し面映ゆそうに

 

「凄いのは、後藤さんの方だよ」

「え?だ、ダイブが?」

「そうじゃなくて!

 ―――さっきさ、大河内先輩が言ってたの。

 後藤さんの演奏、すごく感動したって」

 

 ギターがこれほど、人を感動させることができるものだとは思ってなかった。

 自分も、ギターには相応に真剣に取り組んできたつもりだったが、まだまだ甘かった。

 

「だから、自分もこれからはもっとがんばんなきゃって。後藤さんのこと、先生なんて呼んでたよ」

「せ、先生だなんて、そんな、でへへへ……」

 

 溶けかけの恵比須顔になるぼっち。それを見ながら、喜多は思う。

 

(後藤さんは本当にすごい。あんなに歌える大河内先輩をこれだけ惹きつけて、評価されるなんて)

 

 それに引き換え、自分は人を引き付けるような演奏なんてできない。初めてソロをやってみてわかった。

 それは天性の才能か?積み重ねた努力か?その両方か?もっと別の何かか?ぼっちと自分の演奏の間には、何か明確な差があった。

 だがそのことを羨んだり、失望したりはしない。自分達は同じバンドの仲間で、補い合う関係なのだ。

 

(私は人に合わせるのは得意みたいだから)

 

「私もこれからギター、もっと頑張るから教えてね」

「は、はい!この後藤先生に任せてください!」

「もう、調子乗りすぎ!後藤―――」

 

 言いかけて、喜多は思い直す。

 バンドは、家族だ。ならば呼び方は

 

「―――ひとりちゃん」

「はい!……えっ?」

「じゃあ、先に先輩達の所に行ってるから!」

「ええ?……えっ?」

 

 家族以外にはまず呼ばれたことのない、下の名前。

 それで呼ばれたことに混乱するぼっちを置いて、喜多は保健室を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「後藤先生……ひとりちゃん……んふ、んふふふふっ!」

 

 数分後、復帰したぼっちも保健室を出て廊下を歩いていた。顔には、彼女にしてみれば非常に珍し満面の笑み。

 理由は、呼び名だ。

 自尊心を満たす“先生”という呼び方と、妄想の中ですら滅多に体験したことのない友達からの下の名前にちゃん付け呼び。

 最高にご機嫌な欲張りセットで、ぼっちの自尊心は腹いっぱい。テンションもマックスだ。

 そんな風にご機嫌に歩いていると、通り過ぎた教室のドアから、こんな声がした。

 

「それじゃあ!後夜祭終わったら打ち上げな!来る奴は!?」

「来ない奴数えた方早くね?」

「つか、みんな来るっしょ?」

「カラオケ行こうぜ!カラオケ!」

 

 クラスのみんなで打ち上げ。

 普段のぼっちなら、今の会話だけで弾き飛ばされ、瀕死の重傷を受けていたことだろう。

 しかし、

 

(今のは私はひとりちゃん先生!)

 

 その程度の陽キャの波動、物の数ではない。

 いや、それどころか、こんなことすら思いついた。

 

(……うちのクラスも、打ち上げ、あるよね)

 

 ……行ってみようか?

 

(いやいやいや!流石にそれは死ぬ!っていうかバンドの打ち上げもあるし!)

 

 だが、ちょっとくらい顔を出すのはありかもしれない。

 ほら、ライブも盛り上がったし、人気者としてクラスの中心でちやほやしてもらえるかも……!

 と、皮算用をしながらふらふらと歩くぼっち。

 そんな彼女とすれ違った生徒が、振り向きざまに

 

「あっ、ダイブの人」

「ガッ!!」

「ああ、ロックのやべー奴か」

「ボッ!!」

 

 彼らのつぶやきの2連打に、ぼっちは完全に硬直した。

 彼らとの距離が大分空いた後、ぼっちは辛うじて再起動し、思う。

 

(いつか、いつか高校やめてやるぅ……っ!)

 

 その心に、もはやクラスの打ち上げなどという地獄の祭典に行こうという考えは、思い浮かばなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 後夜祭の後、地獄の祭典に向けて人数確認をしていた1年2組はというと、

 

「えっ!?後藤さん、打ち上げ来ないの!?」

「ああ、喜多から連絡があった。バンドの打ち上げ終わったら帰るって」

「え~なんでだよ~」

 

 湧き上がるブーイングと、残念だという声を、皆実はどうにか抑えようとする。

 後夜祭の後、クラスにぼっちの姿はなかった。いや、後夜祭の時点ですでに学校を出ていたようだ。

 後夜祭は自由参加で、部活やクラブ活動などの少人数単位の集まりは、先に離脱し軽く打ち上げをして、その後クラスの打ち上げにも顔を出す、というのが秀華高の定番ルートなのだが。

 

「後藤、家が遠いしダイブで全身打ってるから、早く帰るんだってさ」

「それなら仕方ないか……」

「もっと話とか聞きたかったのになあ」

 

 喜多経由の話を伝える皆実。

 

(まあ、本音としてはこういう集まり、苦手だから避けてるって感じだろうけどな)

 

 そう長くも深くもない付き合いだが、皆実もだんだんとぼっちのことを理解しつつあった。彼女はいわゆる陰キャ、というタイプだ。しかも今まで皆実が見てきたその手の人々とは一線を画す、高レベルな陰キャだ。当然この手の集まりは避けるだろうが

 

(ま、そんなことみんなに言っても盛り下げるだけだしなあ)

 

 ここはロインの内容を信じてそのまま伝えるに限るだろう。

 とはいえ、皆実もぼっちと、ちょっと話したりしてみたいな、などは思っていたが

 

「―――なんて言ったら、石塚に睨まれるかな?」

 

 そういえば、石塚はどうしただろう。校庭でやってたサイン会では、流石に少し凹んだ様子だったが、

 

(後でロインでもしてやるか)

 

 そんなことを考えながら、彩人は打ち上げに向かうクラスメイト達を追った。

 

 

 

 

 

 

 

「てなことで!ライブ打ち上げ&後藤先生に頭突きかまして逃げてきたヘタレの査問会を行いたいとおもいまぁすっ!」

 

 後夜祭が終わった頃、ライブハウスEXoutにてイレナン達の軽い打ち上げが開かれていた。

 肴にされた石塚は

 

「……保健室出る時、ちゃんと謝りましたよ」

「“その、ごめんな、後藤、じゃあ”だけやん!」

「うーん、イッシー。それはいただけないなあ。傷は残らなかったとはいえ、女の子にたんこぶつくらせちゃったんだろ?」

『しかもご両親もいたんだって(´Д`υ)?それでその謝り方はちょっとどうかなあε=(д` )』

「ここは『責任を取ります!娘さんをボクに下さぁい!』とかいう場面やろ!」

 

 などと詰めてくるメンバー達だが、1人、ジョージだけが石塚の側に立った。

 

「まあまあ、待たれよ。あの件は事故ということになったのでござろう?なればいきなりそこでガンガンいっても、後藤殿が引くだけにござる」

『(´・д・`)え?ジョージ、石塚と後藤さんのこと、反対気味だったじゃん?心境の変化?』

 

 ジョージは腕を組み、遠い目をして

 

「後藤殿を見て分かったのでござるよ。アレは、拙者と同じ陰に生きる者の目。であらば、少しくらい応援して差し上げてもよかろう、と」

「陰キャ同士のシンパシーちゅーことかい」

「ふむ、よくわからないが、イッシーの恋を応援したい、ということだね、ジョージ!」

「邪魔する奴らが増えただけって気がしますが……」

『そんなことないよ!トラストミー! ´^ิ ౪ ^ิ)ニヤニヤ』

 

 などと駄弁っていると、

 

「へい、大将!やってるぅ」

 

 酔っ払いが、店にやって来た。

 

「経営はしているが、酒は出さんぞ。まだ八時前だ」

「え~っ!飲ませてよぉ~。ぼっちちゃん達の打ち上げファミレスだったから飲み足りないんだよぉ」

 

 カウンターに立つ渋面の律志に、絡む廣井。

 

「きくりの姐さん!結束バンドの打ち上げは終わったん?」

「え~?あ~!うん!今日は軽めに、だってさ!喜多ちゃんもクラスの打ち上げあるって言ってたし、ぼっちちゃんも全身打った後だからって早めに帰ったよ」

「ということは―――後藤君は今、電車で一人移動中、ということかな?」

 

 綺斗の言葉で、イレナン全員が石塚に視線を向ける。

 

「……何ですか?」

「電話タイムやで、石やん!」

「いやですよ、用事もないのに」

「用事はなくても話題はあるやろ!ライブの感想とか!」

「そうだね、ここは押してもいいシチュエィショォンだよイッシー!」

「まあ、いざとなれば怪我の心配でかけたことにして、すぐ撤退という選択肢も取れるでござるしな」

『(○´∀`)o"で・ん・わ!アソレ で・ん・わ!(○´∀`)o"』

「何~?石塚君がぼっちちゃんに電話するの~?そういう企画~?」

 

 ついには廣井まで食い付いてくる。

 さて、どうしたものか、と石塚は考える。

 別に石塚自身は聞かれて困るものではないが

 

(後藤は嫌がるだろうし、それに、散々チャチャや妨害が入るだろうからなあ)

 

 と、悩んでいると

 

「2番の小スタジオ、空いているから使い給え」

 

 律志がやってきて、鍵を渡した。

 

「ありがとうございます」

「おおきにな、店―――ぐぇっ!」

「お前らはダメだ」

 

 ついていこうとする頼光の襟をつかんで引っ張り、他の面々は視線で牽制。

 

「え~!りっくんのイケズ!」

『(´;ω;`)ウゥゥ ソンナー』

「やかましい!ダメと言ったらだめだ!」

 

 店長に感謝しながら、石塚はスタジオに入り、内側から鍵をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『もっ、もももしもし!』

「こんばんわ、石塚です」

『こここ、こんばんわ!そ、その一体どんな御用で』

「大丈夫かなって。ほら、ステージから落ちたし」

『あっ、はい。大丈夫です。打ったところもそんなに痛くないし。その、頭のぶつかったところも、だ、大丈夫です』

「……聞いたのか」

『というか、その、動画が流出してて……』

「……マジか」

『か、顔にぼかしは入ってました!私も、石塚君も!あ、安心してください!』

「……まあ、別にいいけど。ただ塩谷さんがなんて言うか……」

『塩谷、さん?』

「ああ、契約した事務所のプロデューサーの人で……

 ―――少し、話せるか?」

『は、はい!』

 

 

 

 

 

 片方は1人きりのレッスンスタジオで、もう片方は人気のない休日の夜の電車で、いろいろな話をした。

 今日のライブの事。今のバンド活動の事。バンド仲間のこと。曲の感想。

 

 

 

 

 

「やっぱり、家に改めて謝りに行った方がいいか?たんこぶ、作らせちゃったし」

『家っ!?だ、だだい、大丈夫です!そ、その!だ、男子が家にとか死ぬぅ……

「後藤?」

『ひゃい!えっと!その!えっと!』

「……無理に行くつもりはないから」

『あ、ありがとうございましゅ……』

「……大分、長く話したな」

『そ、そうですね』

「流石にそろそろ切った方がいいか」

『あ、はい、その、私ももうじき到着ですし』

「そっか……それじゃあ……」

『―――あっ!あのっ!』

「何?」

『ひ、一つだけ!その、あっ、ゆ、夢のことなんですけど』

「……1tの力で俺を押しつぶす奴?」

『ど、どこでそれを!?』

「なんか、頼光先輩が言ってた。俺が目を覚ます前に後藤が言ってたとか」

『へ、変な夢の中で石塚君を真っ平らにして誠に申し訳ありません』

「いや、別にいいけど、そのこと?」

『そ、それのことじゃなくてですね、その、石塚君が言ってた夢のことです』

「―――後藤と、一緒のステージに立つことが俺の夢だって話?」

『はい。……私にも、夢、っていうか目標が、できました』

「何?」

『わ、わ、私も―――石塚君と一緒にステージに立ちたい、です』

「―――それは」

『ステージの上で、それと、石塚君のステージを見て、思ったんです。

 お互い、観客席とステージじゃなくて、ステージの上同士で、一緒に並んで、演奏出来たらなって。

 そのっ!すすすすみません!なんか、真似しちゃってるみたいで!っていうか真似その物で!なんといっていいか、えっと!とにかくその―――』

「―――ありがとう」

『はへぇ?あ、あの、なんで……』

「後藤も、そう思ってくれたのが、なんか、嬉しくて」

『あ、そ、そう、ですか。わ、私もそう言っていただけると、その、嬉しい、です』

「……どうせ叶えるなら、でっかいステージやフェスがいいな」

『そうですね。イレナンと、結束バンドのコラボ曲とか、出しちゃったりして』

「いいな、それ」

『いいですね、そんなの』

「―――」

『―――えっと、それじゃあ』

「ああ。……おやすみ、後藤」

『お、おやすみなさい。し、失礼します!』

 

 

 通話が終了する。

 気づけば30分近く喋っていた。

 迷惑に思われてはない、と思いたい。後藤も話すのを楽しんでくれた、だろうか?

 そんな、取り留めないことを想いながら部屋を出ようとすると―――

 

「うおわっ!?」

 

 と、イレナンのメンバー達と廣井が転がり込んできた。

 扉に張り付いて、聞き耳を立てていたらしい。

 石塚は、珍しいことに少し笑った。

 

 

 

 

 

 

 

「30分も、話しちゃった」

 

 駅から出た帰り道、ぼっちは通話履歴を見ていた。

 こんなに、電話で誰かとおしゃべりしたのは初めてだ。

 友達と、長電話。しかも相手は男子。そんなことを自分がするとは、夢にも思っていなかった。

 

「男子と……初めて……」

 

 その単語を口にした瞬間、

 

「―――っ」

 

 ぼっちは、顔が熱を持ったのを感じた。

 鏡を見るまでもなく、真っ赤になっているのが分かる。

 

「お、落ち着け私!こんな単語だけで変な妄想するな!陰キャでコミュ障の癖にバンドで人気者になりたがってる拗らせ人間な上にむっつりスケベとか救いがなさすぎるっ!」

 

 たっぷり3分間ほど悶えて、少し落ち着いた。

 荒い息を整え、今にもまた暴走しそうな妄想から意識をそらすために考えるのは、電話の最後の会話。

 

「……いつか、一緒に……」

 

 空を見る。

 星空だ。無辺の黒に輝く星が、ステージ上から見た光景に被る。

 そして、もし夢がかなったのなら―――数歩くらい隣に、彼がいるのだろう。

 

「……まあ、その為にはまず結束バンドが人気バンドにならないといけないか……」

 

 虹夏ちゃん達の夢を叶えるためにも、イレナンとコラボして大きなステージに立つためにも、

 

「高校を中退するためにも!!がんばるぞ~っ!」

 

 前向きなのか後ろ向きなのかわからない気炎を上げて、ぼっちは家路を急いだのだった。

 

 

 

 つづく




もうじきアニメ分が終わる。
原作からそれ以降の展開もある程度は考えてますが、しばらくは時系列なしの外伝的な話で引き伸ばす予定です。

ぼざろ2期はよ
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