アストルティア《裏》プロフェッショナルズ   作:鹿羽 直之

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【第二話】今際の願い請け負います(#11)

 巨大メロンモンスターからリンナを救い、かつ、巨大メロンモンスターだけを倒すという一か八かの賭けに出ることにしたハンテツ、レミィー、ゲラだったが、

「ううぐっ……ぐああぁ……」

 と、エルフの男が苦しみだした。彼の死期が迫っているのだ。

「ハンテツ、やっぱりマズイよ!このまま、あの娘と一緒にメロンモンスターを魔法陣に押し込んだ方がいいんじゃねぇのか?」

「……」

 エルフの男が大量の血を吐きながらも声を絞り出す。

「待て……何か……きっかけを……以前のあの娘の想いを喚起する……何か……」

 ハッとするハンテツ。エルフの男が言った『あの娘の想いを喚起する何か』に思い当たるふしがあるようだ。

 ハンテツは、懐から、以前グランゼドーラ城門前でリンナから貰った一輪の野花を取り出した。そして、その野花をリンナの視線上に掲げ、叫んだ。

「リンナ!覚えているだろうこの花を!

 死んだ仲間のモンスターを想って手向けようとした花だ!

 そして『お礼だ』と言って俺にくれた花だ!」

 リンナが野花を注視したように思えた。

 が、それも束の間、葉のように変化したリンナの両手がハンテツに襲い掛かった。歯のついた二枚の葉を大きく開き、ハンテツにかぶりつこうと腕を伸ばす。

「ハンテツ!マズイって!」

 レミィーが、リンナの腕を払い退けようと鞭を振るおうとしたのだが、

「手を出すんじゃない!」

 と、ハンテツは、迫る攻撃に微動だにせず、レミィーを一喝した。尚も野花を掲げハンテツが叫ぶ。

「この花は、邪悪な魔物にも決して蝕まれることないお前の優しさの顕れじゃないのか!」

 すると、歯の生えた葉と化しているリンナ腕の攻撃が、ハンテツの直前で止まった。ハンテツの叫びがリンナに届いたのだろうか。

 リンナと一体化したメロンモンスターが、何かに抵抗するかのように、苦しみもがき始める。

「一瞬でいい!このモンスターの呪縛を振りほどいてくれ!そうすれば、俺たちが絶対に助けてやる!」

 ハンテツの言葉に、メロンモンスターが再び発光し出た。

 その様子を、リンナがメロンモンスターと分離する兆しと看たハンテツが、ゲラとレミィーに指示を出した。

「リザードマンは分離したリンナを助け上げてくれ!後は、俺とレミィーでモンスター本体を魔法陣に押し込むんだ!」

 頷くゲラとレミィー。

 メロンモンスターの発光が強くなり、また、その光っている本体が上下に伸び、元の二つの身体に分かれようかという様相である。

 発光はさらに強まり、先程リンナとモンスターが一体化した時のように、辺りが白光に覆われ始めた。

「ハンテツ!見えなくなったらタイミングが判らねぇよ!」

 そう叫んだレミィーに、

「その時機は……私が……合図……しよう……」

 とエルフの男が応えた。

「あんたに、判るのか?」

「私を……貫いている2本の触手……この触手が……あの娘の髪に戻った時……その時を私が……知らせよう……」

 リンナの髪が変化した触手が、今もエルフの男を貫いている。エルフの男はその触手を両手で握っているのだ。リンナがメロンモンスターから分離すれば、触手が毛髪に戻る筈で、それは触手を握っている手の感触で判るという事だろう。

 触手を握っているエルフの男の手に力が入る。おそらく、その程度の力みでも相当苦しい筈である。

「今の、聞いたか?皆、頼んだぞ!」

 ハンテツが叫ぶ。

 周りは真白くなり、もう何も見えなくなった。

 その時、

「今だーっ!」

 エルフの男の、瀕死とは思えぬ絶叫が洞窟内に響き渡った。

 ゲラが跳躍し、メロンモンスターの上部、リンナの肩を抱きかかえた。

「ゲオォーッ!」

 雄叫びを上げ、リンナをメロンモンスターから引き離した。

 真っ白な光に包まれ見えてはいないが、ゲラの腕の感覚は、それがモンスターの影響下にないエルフの少女の身体であると確信できた。

 ゲラの雄叫びを聞いたレミィーが、持っていた黒い球体を魔法陣の真上に向かって放り投げた。

――ドッカーン!

 と、大きな爆発音が鳴り響き、爆風が巻き起こる。

 黒い球体の正体は爆弾である。見事、魔法陣の垂直上で大爆発したようだ。これは盗賊スキル《ギガボンバー》の応用であろう。本来は爆弾を地面に設置して爆発を起こさせ、ダメージを与えると同時に相手をノックバックさせる技だ。

 レミィーは、地面ではなく、魔物本体がいるであろう魔法陣の真上で爆弾を爆発させることで、魔物本体をノックバックさせ、魔法陣に追い遣ろうとしたのだ。

 さらに、上空高くジャンプしたハンテツが、全体重を乗せたニードロップを、メロンモンスターの真上に急降下で落とした。これは《戦士》の《たいあたり》に似た技のようで、《ふっとばし》効果により魔物をさらに魔法陣へと沈めた。

 ハンテツは、メロンモンスターを魔法陣に押し込んだ手応えを感じたのだろう。

「モンスターを押し込んだぞ!魔法陣を消してくれ!」

 とエルフの男へ叫んだ。

 少し前から発光は弱まってきており、周りの視界が開き始めていた。

 メロンモンスターの姿が見当たらないところをみると。メロンモンスターを魔法陣の中へ収喚させることには成功したみたいだ。

 だが、まだ魔法陣が消えていない。

「早く!魔法陣を……!」

「何やってんのサ!」

 ハンテツとレミィーが、エルフの男へ立て続けに呼びかけるが、返事はない。

 魔法陣が消えていないということは、エルフの男はまだ生きているということだ。にもかかわらず、反応がないのは、おそらくエルフの男はもはや意識がないのだろう。

「⁉」

 その時、魔法陣から、また、あの触手が飛び出しハンテツとレミィーを襲った。

 レミィーが触手の攻撃を振り払う。よく見ると、メロンモンスターの天辺部、リンナが分離したことにより元に戻った《花》も魔法陣から顔を出していた。

「ハンテツ!このままじゃ、戻って来ちまうぞ!」

「レミィー!もう一度《ギガボンバー》であいつを押し返せるか?」

「やっても、また出てきちまったらどうすんだよ!」

「次、モンスターが魔法陣に沈んだタイミングで、俺があの男の命を絶つ!そうすれば強制的に魔法陣は消える筈だ!」

「……分かった!やってみるよ!」

 レミィーは、爆弾を放り投げ、前と同様の手法で再びメロンモンスターを魔法陣に押し込んだ。

 メロンモンスターが魔法陣の中に沈んだのを見定めたハンテツは、握りしめた右手をボキボキと鳴らし、三本貫手の構えをとった。そしてエルフの男へ詰め寄ると、右手をエルフの男の右胸へ押し当て、その胸を捻り潰すように掴んだ。

 一瞬、ビクンッとエルフの男が痙攣し、ぐったりと力が抜けたように動かなくなった。

 外部から直接心臓に圧力を掛け、心臓の動きを停止させるハンテツの秘技である。

 エルフの男の絶命と共に、魔法陣は消滅した。

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