アストルティア《裏》プロフェッショナルズ   作:鹿羽 直之

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【第四話】破れた依頼書請け負います(#05)

 一行は、あらためて破れた討伐依頼書の内容を確認してみた。

 

■■■■■■■■■■■■の依頼書

■■■■■■■■■■■ とある人里離れた場所に住む者だ。

■■■■■■■■■目の色を変え人々を襲っている。

■■■■■■■■は 群れの中に紛れている

■■■■■■パンサー を倒して欲しい。

■■■■匹倒して 高みへと行くのだ!

 

 この内容から予想すると、討伐対象はキラーパンサーかダークパンサーである可能性が高い。

 先ずはキラーパンサーを討伐してみることにした。キラーパンサーはグランゼドーラ領にも生息しているので、オウライ屋のルーラストーンを使ってグランゼドーラ城下町に飛んで、そこから城外に出ればすぐである。

(討伐対象がキラーパンサーであってくれれば楽なのだが……)

 皆がそんな期待を持ちながら、キラーパンサーを倒していったのだが、何匹倒しても討伐完了にはならない。念のため30匹程倒してみたが、やはりダメである。

「依頼書の討伐対象はダークパンサーじゃないですかね?」

 リンナがグリケスに言った。

「どうやら、そうみたいだね……ダークパンサーだと何処で狩るのが一番楽だろう?」

「バシルーラ屋に頼んで、ヴェリナード領西かワルド水源に飛ばしてもらうのが早いんじゃないでしょうか!」

 そう答えたのはハンテツだ。

「でも、グリケスさんもハンテツさんもバシッ娘さん3回使っちゃってますよね?、今日まだ使ってないのは私だけですけど、私、ワルド水源にもヴェリナード領西にも行ったことないんですよ」

 そのリンナの発言で、場が変な空気に包まれた。一同は呆気に取られた様子でリンナに視線を向けている。

 暫し沈黙のあと、グリケスが口を開いた。

「リンナちゃん、何時の話してるの?。今のバシッ娘は5大陸なら回数制限なく飛ばしてもらえるんだよ!。5大陸に飛ばしてもらう時『その場所なら回数無制限で飛ばせるよ』ってバシッ娘が言うでしょ?」

「えっ!そうっだたんですか‼。私、最近バシッ娘さん使ってなかったから……」

「ふっ、世界宿屋協会が、最近、新作ルーラストーンを一部のお偉いさんや金持ちに提供しているみたいだから、バシルーラ屋もサービスせざるを得ないんだろう……まぁ、便利になることはいいことさ」

 と、ハンテツが笑みをこぼした。

「ほんと、世の流れですよね!。もっと昔、バシッ娘に飛ばしてもらえるのは1日1回っていう時代もありましたからね。あの頃は、ルラ石をあまり持ってない庶民にとって、その1回は貴重でしたよ!」

 そのグリケスの言葉に共感するように、ハンテツは表情を緩め(そう、そう)と小さく2度頷いた。

「そういうことなんで、5大陸なら何回でも飛べるから……リンナちゃんの行けるヴェリナード領西に近い所って何処?」

「ヴェリナードのお城には行ったことありますけど……」

「じゃぁ、ヴェリナード城から渡し船とドルボードでヴェリナード領西へ行きましょうか?」

 こうして一行は、ヴェリナード領西でダークパンサーを討伐することにした。

 

「あれーぇ、おかしいな……」

 グリケスが討伐依頼書を見ながら呟いた。ヴェリナード領西でダークパンサーを20匹以上倒してるのに、依頼達成にならないのだ。

「キラーパンサーでもダークパンサーでもなかったってことですかね?」

 横からリンナが言ってきた。

「う~ん……それとも、依頼書が破れちゃってるんで、達成表示が機能しなくなってるのかなぁ~」

 グリケスが言ってるのは、討伐を完了したときに通常依頼書の右下に現れる『依頼を達成した!』の文言のことだ。

「そのことですが……実は俺も気にはなってたんですよ」

 と、今度はハンテツが会話に割って入ってくる。

「ハンテツさん、そう言いますと?」

「いや、討伐依頼書って、討伐を達成した時だけじゃなく、討伐途中でも『現在《何》匹 倒している』っていう経過状況が表示されるんですよ。今回、キラーパンサーを倒してもダークパンサーを倒しても、それが表示されない……」

「なるほど……と云う事は、やっぱり討伐対象が違うか、依頼書がダメになっているかだなぁ~」

 グリケスは暫く考え込んだあと、

「分かりました!この討伐依頼書は一旦保留にしましょう!。店に帰って女将さんに相談してみます」

 と言って切り上げようとした。リンナがホッとした表情を浮かべたのに対し、ハンテツは何処か引っかかっている様子だ。

「グリケス殿、時間の許す限り、できるだけ狩ってみませんか?」

「えっ!、それはどうしてですか?」

「確かにグリケス殿の仰る通り、討伐対象が違うか、依頼書の欠損が原因で達成表示が出ないんだと思います。それならそれで、他の可能性をできるだけ潰しておく必要性があると思うんですよ」

「まぁ、そうですけど……討伐数を増やしたとこでどうなります?」

「単に討伐数を増やすのではなく、他の生息地で数匹づつ狩ってみるのはどうでしょう?。もしかしたら、ある場所では依頼書に討伐匹数が出るかもしれません」

「なるほど、5大陸の各街やグランゼドーラ入口で受ける討伐依頼みたいに、討伐場所限定の可能性もあるんじゃないかってことですね?」

「ダメでしょうか?」

 ハンテツの問いに、グリケスは眉をひそめて、

「……実は私、どうしても今日中に終わらせなきゃならない仕事が残ってまして、これ以上時間を取れないんですよ」

 と申し訳なさそうにハンテツに謝った。

「でしたら、グリケス殿はこれで上がっていただいても構いません。後は3人でやれるところまでやりますから」

 意外な返答がハンテツから返ってきた。一番ビックリしたのはリンナである。

(エッ!嘘でしょ‼)

 とでも言いたげに目を丸くしている。リンナは、グリケスなら断ると思ったのだが、

「ハンテツさんがそこまで言うなら、後はお任せします」

 と、あっさり承諾してしまった。

「女将さんには、時間外手当を付けてもらうよう私から頼んでおきますんで……」

 グリケスはそう言った後、リンナへ歩み寄り、袋を1つ差し出した。

「これ、一応リンナちゃんに預けておくけど、あまり無駄遣いしないでね!」

 袋を受け取ったリンナが中身を覗いて見ると、ドルセリンやMP回復アイテム等、旅や戦闘で使用する色々な物が入っていた。どうやら消耗品を纏めておいた道具袋のようだ。

(あぁ~、やっぱり私もハンテツさんに付き合わなきゃならないんだ……)

 気落ちするリンナを尻目に、

「じゃぁ、私はこれで失礼します。くれぐれも無理なさらぬように」

 とグリケスはルーラストーンでオウライ屋へ帰ってしまった。

 グリケスが抜け、3人でキラーパンサーとダークパンサー生息地を廻ることになったのだが、やり方はほぼ同じである。生息地の近くまで箱舟やバシッ娘で移動し、ドルボードに乗ってモンスターを討伐していく。ただ、ハンテツのドルボードはサイドカー型の2人乗りなので、横付けの乗り物にはゲラが乗り、リンナは自分のドルボードでハンテツの後に付いて行く形となった。

 3人は、ジャイラ密林でキラーパンサー、ワルド水源・デマトード高地・ベコン渓谷でダークパンサーを狩ってみたが、やはり依頼書に表示は現れなかった。

 周りはもう真っ暗である。

「今回は、一先ず、これで切り上げるか……討伐対象が特定できないのは心残りだが仕方あるまい」

「そうですね。もう遅いですし……」

「うむ……こんな時間まで、ありがとう」

 ハンテツが少し照れ臭さそうに言った。リンナは微笑を浮かべながら、

「いいえ、元々は私の仕事ですから……こちらこそありがとうございました」

 と礼を返した。それからゲラに対しても軽く頭を下げた。

「ゲラさんもお疲れさまでした」

 ゲラが(ゲコッ)と頷く。

 夜空を見上げると、モヤモヤした心の内とは対照的に、満点の星が煌めいていた。

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