アストルティア《裏》プロフェッショナルズ   作:鹿羽 直之

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主要キャラクターの紹介です。

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【第五話】こっそり助っ人請け負います(#01)

 アストルティア随一の歓楽街、極楽島ラッカラン。

 ラッカランにあるカジノの2階、10コインスロットを打っているオレンジ色のウルフボブの髪をしたウェディの女がいた。レミィーだ。顔が綻んでいる様子だと今日はそれなりについていたようだ。

(そろそろお開きにするか……)

 レミィーはしまい支度をして1階のセンターホールへ降り、エントランスへ向かおうと1コインスロットの島の側を通ったとき、

(あれ!)

 と、スロットを打っている顔見知りに気づいた。年配のプクリポの男だ。体が悪いのか、そのプクリポの男はスロットの筐体に松葉杖を立て掛けている。

 レミィーが、スロットを打つプクリポの男の背後に近寄り様子を窺ってみると、その男からギャンブルに意気込む覇気や熱意みたいなものは感じられず、ただボーっと惰性でスロットを打っているようだった。

 レミィーは、そんなプクリポの男を驚かすように、

「よぅ、ポム爺!久しぶりじゃねぇか!」

 と、肩を叩いた。

 プクリポの男の体が一瞬ビクッと浮き上がり、

「ハッ!、なんだレミィーか⁉」

 驚いた様子でレミィーの方を振り返った。レミィーが『ポム爺』と呼んだこのプクリポの男、本名を《ポムゾウ》という。

 ポムゾウは、根っからの博打好きという訳ではない。1年ぐらい前からちょくちょくカジノに顔を出すようになったのだが、ただ時間を潰しに来ているだけなので、1階の最低レートの勝負しかやらず、遊び方も適当で、勝ち負け・収支はそもそも度外視だ。こういった、時間を持て余しダラダラと博打を打っている輩などラッカランにはいくらでもいる。

 レミィーもそんな輩の一人々々をいちいち気に留めたりはしないのだが、ある日のことであった。

 

 その日、レミィーはスロットで大損をしてしまい、むしゃくしゃした気分でカジノを後にすることになってしまった。カジノの正面門を出て『CASINO』のロゴのネオンを潜ったあたりで悔しさを抑え切れなくなり、

「クッソが!」

 と、足元の小石を思いっきり蹴り飛ばした。その小石は、不運にも、ちょうどラッカラン駅からカジノへ向かって歩いて来た年配のプクリポに向かって飛んで行ってしまった。しかもその年配のプクリポは体が悪いらしく、松葉杖を突きながら歩いている。小石を避けるなどできそうにない。

(あちゃ~!)

 このままでは、年配のプクリポに怪我をさせてしまうかもしれない。レミィーがそう思った次の瞬間、

――カン!

 年配のプクリポは松葉杖を振り、飛んできた小石を弾いてしまった。

 レミィーは慌てて年配のプクリポに駆け足で寄って行った。

「爺さん、大丈夫だったかい?」

「あぁ大丈夫じゃよ。突然、石が飛んできたんで、ビックリして反射的に身を庇ったら、運よく杖に当たってくれたわい」

 年配のプクリポは、カッカッカッと笑った。その後も、

「ホッホッ、今日はツイとる日だから、博打も期待できるぞい!」

 などとおどけた事を言いながら、カジノの正面門へ足を引きずりながら歩いて行った。

 レミィーには分かっていた。あの年配のプクリポは『運よく杖に当たった』などと言っていたが、意識して杖で小石を弾いたということを……

(あの爺さん、只者じゃねぇな!)

 年配のプクリポに興味が湧いてきたレミィーは、少し後を付けてみることにした。

 感付かれない様に、距離をとってカジノの中に入って行く。

 年配のプクリポは、暫く1階でスロットを遊んでいたが、知り合いにルーレットに誘われて、その後は仲間たちと一緒にルーレットを楽しんでいる。その一緒にルーレットをしている、年配のプクリポの知り合いと思われる人達の中に、レミィーが知っている者もいた。

(後で、あいつに聞いてみるか)

 後日、レミィーは、カジノで年配のプクリポを知っている《その者》を見かけ、彼の事を聞いてみた。

「この前、足の悪いプクリポの爺さんとルーレットしてただろ?」

「あぁ、それが?」

「あのプクリポの爺さんとは仲いいのかい?」

「うぅん、『仲いい』って程じゃないけど、会えば世間話を一つ二つする程度かな……なんでそんな事気になる?」

「いや、別に大した事じゃないんだけど、最近よく見かけるなぁ~と思って……」

「あの人はね、《ポムゾウ》さんって言って、若い頃はそこそこ名の通ったバトルマスターだったらしいよ」

「バトルマスター⁉」

「ああ、なんでもハンマーの二刀流を得意とする戦闘スタイルで、『ダルマ落としのポムゾウ』の通り名で呼ばれていたらしい」

「『ダルマ落とし』って?、重ねた積木の上にダルマを置いて、ダルマを落とさないように木槌で積木を弾くっていう子供が遊ぶ玩具のことかい?」

「そうそう!、ポムゾウさんのハンマー捌きが、あたかも『ダルマ落とし』のように見えるから、そう呼ばれるようになったって話さ」

「ほぅ~!」

「でも、体を壊してしまって、バトルマスターを引退して、それからは奥さんと慎ましく生活していたらしんだけど……その奥さんも去年お亡くなりになられてね……」

「はぁ、それで博打を打ちに、よくここに来るようになったって訳か……」

「周りには陽気に振る舞っているけど、内心寂しいんだと思うよ。ポムゾウさんが体を壊してからずっと献身的に支えてくれた奥さんだったからねぇ」

 そんな話を聞いてから、レミィーも度々ポムゾウに声を掛けるようになり、2人は知り合いになった。

 

 話を今に戻す。

 ポムゾウが打っているスロットの横から上体を滑り込ませ盤面を覗き込むレミィー。

「なんだ~ポム爺、相変わらず出てねぇ~じゃないか!」

「ヘッ、へへへ……」

 ポムゾウが恥ずかしそうに愛想笑いを見せた。

「そもそもポム爺は勝負運無ぇ~んだから、博打なんて打ったところで無駄なんじゃねぇの?」

 そのレミィーの嫌味な言動に、一瞬表情を曇らせたポムゾウだったが、すぐにまた人懐こそうな笑顔に戻り、

「あぁ、それは儂が一番よく分かっているよ……だから、ここのところは魚釣りとかして暇を潰していたんじゃが、ちょっと釣りにも飽きてきてのぅ、久しぶりにここに来て打ってみたくなったんじゃ」

 と目を細めた。

「まぁ、ポム爺の金をどう使おうとポム爺の勝手だけどな……」

 レミィーも、そんなポムゾウに対しては笑顔で返すしかなくなる。

 ふと、レミィーが筐体に立て掛けてある松葉杖に手を置いた。

「ところで、最近、体の具合は大丈夫なのかい?」

「あ~、今んとこ、何とか一人でも日常生活はこなせてるけど、それも日に々々きつくなってきてる気がするなぁ……」

「だったら、こんなところでスロットなんか打っていないで、もっと健康的な事に時間を使った方がいいじゃないの?。もうカミさんもいないんだし……」

 ポムゾウが苦笑いをする。

「若い頃は、『ダルマ落としのポムゾウ』って言われたバトルマスターだったんだろ?。体を悪くして引退したとはいえ、老いぼれるにはまだ早いんじゃね?」

「ははっ、そんなのは昔の話じゃよ。今じゃ手足を動かすのもままならなくなっちまった。ま、ダルマ並みに落ちぶれたジジイさ」

「そうは見えないけどね……」

 ボソッと呟いたレミィー。あの日、小石を杖で弾いたポムゾウの動きをが思い出したのだろうか。

 そんなレミィーの呟きなどは聞こえなかったのか、ポムゾウは、

「そうだな~、強いて今の儂にあだ名をつけるとしたら……『ダルマ落ちのポムゾウ』とでも言ったところじゃろうか?」

 と言いながら、カラカラと乾いた笑い声を上げるのだった。

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