ハンテツ、レミィー、リンナの3人が一堂に集まった。場所はどこかの住宅村のレミィーの自宅である。自宅と言っても簡素な家に最小限の家財道具が置いてあるだけだ。
レミィーは短期間で居所を転々とさせる習慣がある。自分を狙う刺客に居場所を絞らせないようにするためと、もし何かあっても直ぐに土地・家を引き払って他の場所に移れるようにするためだ。そんな訳で、レミィーの家は隠れ家的に使うにも都合良いので、ここで秘密の会合をしたりすることもあるのだ。
レミィーはポムゾウから聞いた話を皆に展開した。主なポイントは、
1.対象となる《4重スライムタワー》はメタル系であること。
2.通常の《スライムタワー》と違い4匹の独立性が高く、4匹それぞれを撃破しなければならないこと。
3.蘇生能力を有するので、ほぼ同時に4匹を倒さなければならないこと。
である。
「なるほど……ポムゾウ爺さんは、自信がある《会心》4連打の《古今無双》で一気に勝負を着けようってつもりか」
レミィーの話を聞いて、ハンテツが確認するように問い返した。
「間違いなくそうだろうね!」
「とすると、先ずは、ポムゾウ爺さんが《古今無双》を使えるようになるまでの時間を稼ぐ必要があるな」
チャージタイムがある特技《古今無双》は、戦闘開始直後は使うことができないのだ。
ハンテツとレミィーがリンナに目をやった。
「リンナ!。ポムゾウ爺さんが《古今無双》を使うまで、何とか持たせるんだ!。できるな?」
「はい!」
「女将さんも言ってたが、依頼人のピナタが呪文を使ってるように見せかけてポムゾウ爺さんを回復してやらなければならないぞ!」
「任せてください!」
リンナにしては珍しく自信有り気な返事をし、
「レミィーさんの話では『ポムゾウさんの《古今無双》は会心率が異常に高い!』らしいですから、後は、ポムゾウさんが倒し損ねた残りをお二人が倒せば依頼達成ですね!」
と、話を繋いだ。が、そこへハンテツが口を挟んできた。
「事は、そう簡単じゃない!。俺らもポムゾウ爺さんが《4重スライムタワー》を倒したように見せかけなきゃならないからな!」
加えてレミィーも、
「ああ!。それに、ポム爺の《会心》は当てにならないと思った方がいい!。確かにあたいとの試合では《古今無双》の4発中3発が《会心》になってたけど、実戦でどのぐらい《会心》が出るかは疑問だ!。しかも、あの試合では、あたいは敢えてポム爺の攻撃を受けたんだ!。下手すりゃ攻撃そのものが躱される可能性だってある!」
と詳解した。
「レミィー、お前、確実に《会心》攻撃出せるか?……ポムゾウ爺さんが自力で倒したように見せかけなきゃならないんだから《会心》で倒すしかないぞ」
そのハンテツの問いに、レミィー不敵な笑みを浮かべ、
「フフッ、あたいは、もう準備できてるぜ!」
と、禍々しい瘴気を放つハンマーを取り出した。
「それ、《まじんのかなづち》ですよね!。でも、《まじんのかなづち》は確かに会心率は高いですけど確実ではないんじゃ?」
と、リンナが疑問を呈す。
「この《まじんのかなづち》はな、市場に流通している《まじんのかなづち》じゃないんだ!。呪われた武器で、当たれば確実に《会心》攻撃になる!。ちなみに、元々《まじんのかなづち》はこの呪われたヤツのことを指したんだ。これを元に、呪われていない使いやすいハンマーに再設計したのが今世間一般に言われている《まじんのかなづち》なんだぜ!」
「へ~⁉そうだったんですね!……でもレミィーさん、そんな物よく手に入れられましたね?」
「そりゃ~、あたいが持ってる闇ルートから仕入れたに決まってるだろ!。ま、けっこう値は張ったんだけど『必要経費として女将に請求すればいいかな~』って……」
そんなレミィーに、ハンテツが懸念を示す。
「レミィー、その《まじんのかなづち》は、確かに当たれば《会心》だが、扱いが難しく空振りする確率も高い!その点は大丈夫なのか?」
「的を外さなきゃいいんだろ!あたいを誰だと思ってるんだい⁉」
「ポムゾウ爺さんから『慢心は禁物だ!』と注意されたばかりなんだろ?。あまり過信するなよ!」
「大丈夫だって!。今まで《会心》が必要な時は何度もこのやり方で成功してきたんだから!」
「お前がそこまで言うなら信用してやるが……」
そのハンテツの口ぶりに、レミィーは少しイラッとしたらしく、
「そう言うハンテツの方はどうなんだい?。確実に《会心》を出せる手はあるのかい?」
と食って掛かった。対してハンテツからは、
「俺は、只の《会心》でいいなら何時でも撃てる!」
と驚きの回答が返ってきた。
「えっ⁉、それは、戦士の必殺技の《会心必中》を何時でも出せるって事かい?」
「いや、戦士が使う《会心必中》とはちょっと違う……対象は1体だけだし、威力も増加されない。おまけにMP消費が激しいんで、あまり使い勝手は良くないんだが、MPがフルの状態だったら2・3発はいける!」
「へ~!、んじゃ、これで見通しは付いたじゃねぇか?」
「あとは段取りをどうするかだな」
「ポム爺の《古今無双》は、本当に《ダルマ落とし》みたいにハンマーを真横から叩き込むんだ。だから、あたいとハンテツが姿を消して、横からポム爺の打撃に合わせて《会心》を打ち込めば何とか騙せるんじゃね?」
「うむ、その手で行くか……確か、ポムゾウ爺さんの《古今無双》は右・左・右・左と交互に4回繰り出すんだったよな?」
「ああ、そうだけど?」
「よし!。俺はポムゾウ爺さんの右側に位置を取り、右手からの2発、一打目と三打目に合わせて《会心》を撃つ!。レミィーはポムゾウ爺さんの左に位置を取って、左手からの2発、二打目と四打目に合わせてくれ?」
「おう、了解だぜ!」
意気揚々と返事をするレミィー。ハンテツは頷き、
「リンナ、女将さんに『こっちは目途が付いた』と連絡しておいてくれるか?」
とリンナに頼んだ。
「はい、承知しました!」
と愛想よく応えるリンナだったが、内心、寒心を覚えていた。
(呪われた武器を使い熟したり、何時でも会心攻撃を撃てたり、この人達っていったい何者なの⁉。魔族の血を引く私なんかよりもよっぽど化け物染みてるわ!)
本文中でハンテツが言った「いつでも撃てる《会心》技」とは、ドラゴンクエスト3 (HD-2Dリメイク版)で武道家がLv47で覚える特技《会心必中》みたいなものだと思ってください。