気になる人を曇らせたいオペレーター日記   作:朝起きるのが嫌い病

3 / 9
第3話

アポピスは度数の高い酒を飲むことが嫌いだった。喉を焼くあの感覚が好きではなかったからだ。

 

しかし、ケルシーの件や今日が部下の誕生日ということもあり値段も度数も高いブランデーを開け、部下とその他数人でちょっとしたパーティをしていた。

 

「で、どうなんすか隊長!」

 

「え?何が?ケルシー先生がどうして可愛いか?」

 

「違いますよ」

 

「は?ケルシーの可愛さがわからねえのか?目ん玉腐っているのか?」

 

「うわ、だるいな」

「誰だ、アポピスに酒飲ませた奴。5%以上の酒を飲ませるなって厳命しただろ」

「つーか15歳に酒を飲ませるな」

 

「ソーンズの作った理性緩和薬をフロストリーフさんとアポピスが飲んでしまった後の話ですよ。大丈夫ですか?アンセルかハイビスカス呼んできましょうか?」

 

主役の部下の質問をスルーして荒ぶりだしたアポピスと冷静に話を進めるスチュワードを見ながら、溜息を吐くAceとアールドがアポピスの酒を取り上げる。

 

「アポピス、ケルシーから飲酒は禁じられているだろう。その辺にしておけ」

 

「Aceさんがいなかったらこのカオス空間にケルシーさんを呼ぶところでした」

 

「他のみんなも呼べばいいじゃん。ウサギちゃんも呼ぼ?」

 

ブレイズの言葉にアポピスの部下たちが苦笑いを浮かべる。

 

「アーミヤさんを呼んだら隊長の機嫌が急降下しますからそれはなしでお願いします」

「あれって同族嫌悪なのかな。二人ともよく似てるのに」

「そ、それよりもブレイズさんのお話聞きたいな~」

「確かに俺ブレイズさんと話したことないんで聞きたいっス」

 

アポピスがロドスのトップであるアーミヤに何かしら思うところがあるという話は、部下たちの中ではよく知られた話だった。

 

「ブレイズさんと隊長ってAceさん繋がりですか?」

 

「そ!ちょっと前までは訓練も一緒にやってたんだよ?まあ、私が無理やり付き合わせてたみたいなことろはあるけどね」

 

「あー、隊長のアーツの扱いはやばいですからね」

 

「そう!私、最初にあった時ただの子供と思ってたのに全然勝てなくて、ビックリしちゃった!ロドスの中でもアーミヤちゃんとアポピスは戦士の才覚に恵まれてる子よ。戦況の判断ははっきりしてるし、あのアーツは見るだけでも震えが来る。でもよくよく考えてみれば、この歳でどうやってこれだけの力を身に着けたのかな?正直、こんな力は持たないほうが幸せでしょうに………」

 

会話を聞いていたアールドは少し意外に思っていた。ブレイズという女性がここまでアポピスのことを見ているとは思わなかったからだ。

 

「こんな力持たない方が幸せだった。アーミヤさんはわかりませんが、隊長はそう思っていないですよ」

 

部下は頷き、ブレイズはアールドに視線を向ける。

 

「あの人にとってアーツは誇りです。バベル………ロドスに来るまでのことをあの人は語りたがりませんが、色々あったことは知っています。ですが決まってあの人は言います。『これまでの時間でよかったことが二つだけある。一つはケルシ―を含めたロドスの仲間に会えたこと。二つ目は、このクソッタレな世界で仲間を守れる力を得たことだ』とね。下手をすれば鉱石病よりもアーツの扱いで苦しんできた隊長ですが、それでも胸を張ってあの人はそう言います。酒の席でこんな話をして申し訳ないのですが、こんな力持たない方が幸せだったなんて言葉を彼に言うのはやめてください」

 

ブレイズに悪気はなかった。それでもアポピスの誇りを汚す発言は看過できない。年上の部下にそうまでさせるアポピスのカリスマにブレイズは感心していた。アーツだけではない。AceがScoutが、アーミヤが他の仲間たちが彼に一目置く理由の一端を垣間見た気がした。

 

「頭痛い」

 

その光景を見ながらアポピスはグラスの中に三分の一ほど残っていた洋酒を飲み干した。ぬるくなった分、辛く当たってくるような苦みが舌に残って、彼にこの日最後の小さな溜息を吐かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■月◇日

 

明日から任務だ。日記は持っていくのだが、書くことはできないだろう。

 

今回の任務はドクターの救出だ。バカウサギの意志も固く、誰も彼女の考えを変えることはできなかった。あるいは誰しもがそうするべきだと思い込んでいたのだろう。Aceさんですらドクターを救出できれば袋小路の局面を脱出できると思っている。Scoutはもしドクターが昔と同じであれば、抱えている袋小路の多くをなんとかできると確信していた。しかし、それと同時にあいつは不安に思っているようだった。ドクターの眼には勝利の確信以外の情は何もなかったと。ドクターは殺人マシーンになってしまっているのではないかと。ドクターはもう二度と指揮をしてはいけないと。ドクターに重荷を背負わせることを是とする空気を彼は恐れていた。それは俺も同意できる。周囲の期待は重圧となり優しい奴ほど苦しむ。

 

戦う覚悟を、弱さを、逃げを近しい人間に押し付けるきらいが少しある。

 

まあ、俺があの女を嫌いな理由は他にもあるけど。

 

■月◇日

 

どうせ俺が傷ついてもケルシーは曇らない。そこで俺は思った。やり方を変える必要がある。

 

そうだ、闇落ちしよう。

 

レユニオンに寝返ろう。

 

待っていろケルシー!俺が貴方に殺されに行くぞォ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。