気になる人を曇らせたいオペレーター日記   作:朝起きるのが嫌い病

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再熱したのと感想をくださる方がいましたので、投稿します。


第6話

龍門にて、ウェイ長官と契約を結び終えたアーミヤたちはエレベーターの中で安堵のため息をついた。

 

「うぅ………!あのおじいさん一筋縄でいかないですね…」

 

アーミヤは脱力し、手すりを握った。

 

「話し方はとても静かなのですが、全く動じないというか」

 

「アーミヤ、君はまだまだ未熟だ。ああいった人間と交渉する方法を学ぶ必要があるな」

 

ケルシーの指摘を受け、顔を下に向けたアーミヤに近づきケルシーは彼女の頭を撫でた。

 

「だが、最後の指摘は悪くはなかった」

 

アーミヤは喜びと驚きの感情で固まってしまった。ケルシーが誰かを褒めることは稀にある。しかし、スキンシップを用いて褒めることはほとんどない。

 

犠牲になった仲間を思い傷ついているアーミヤに気を使っているのか、それともケルシー自身の心に影響があったのか。アーミヤは測りかねていた。

 

「…君は」

 

ケルシーはドクターに視線を向け、僅かに目を細めた。

 

「私はあなたを知っているのか、ケルシー?」

 

「…ケルシー先生、ドクターを困らせないでくださいね?」

 

間に入りケルシーを諫めるアーミヤだったが、それほど意味はなかった。

 

「今回の犠牲は特に大きかった。………これまでの犠牲に報いれればいいがな………」

 

熱も色もない声色でケルシーはつぶやく。

 

「歓迎するよ、ドクター」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アールドとAceはエントランスでアーミヤとドクターの帰還を待っていた。窓の外には細かい雨が降っていて、部屋の中は水族館の様にひやりとしている。

 

「何で俺をここに連れてきたのでしょうか。Aceさん」

 

アールドとAceはアーミヤたちのバックアップ要員として駆り出されていた。

 

「何のことだ?」

 

「知っていますよ。元々、今回の龍門での護衛は別のオペレーターが行うはずだった。そこに、俺を捻じ込んだのがAceさんですよね?」

 

「………」

 

「俺をロドスに残せば、勝手にアポピスを探すと思ったんですか?まあ、そういう意見も小隊の中では出ましたけど俺は反対しました」

 

「意外だな…お前たちはロドスの目標に感銘を受けたわけではなく、アポピスの生き方に目を焼かれた人間だろ」

 

「…隊長が生死不明になった時、探すよりもまず先にこれをケルシー先生に渡してくれと頼まれていたので」

 

「録音機か」

 

Aceの視界に映ったのは古びた録音機だった。傷だらけのそれは明らかに型落ちの機械だった。

 

Aceは想像よりも冷静だったアールドが爆発直前の爆弾に見えた。

 

「俺はこの録音機の内容を知りませんが、おそらく遺書替わりなのでしょうね。俺たちよりもケルシー先生に宛てた録音っていうのがあの人らしいです」

 

冷静なアールドが平坦な声で笑う。否、冷静という表現は正しくないだろう。少なくともAceの眼には冷静を装っているようにしか見えなかった。

 

エレベーターの到着を知らせる音と共に、ケルシーを含むドクター達が現れる。明らかに空気が変わったことをAceは感じ取った。

 

「アーミヤ、ドクターを連れて先に行ってくれ」

 

「でも、ケルシー先生………」

 

アーミヤは胸を押さえて苦言を呈する。この場にいる人間の感情が流れ込んだ来ているアーミヤには、結末が見えていた。

 

「アーミヤ」

 

「…わかりました。お任せします」

 

アーミヤとドクターはケルシーの目配せで、この場を離れた。

 

アールドはケルシーに録音機を差し出した。Aceはその様子を不安げに見ている。

 

「…アポピスが死にました」

 

「………ああ、聞いている。残念だったな」

 

ケルシーから帰ってきた返答はあまりにも熱の籠っていないものだった。

 

「残念だったな………ですか。アポピスは最後にあなたの名前を呼んだそうですよ」

 

「それもアーミヤから聞いている」

 

ケルシーから帰ってくる言葉は一貫して、淡白で熱のないものだった。

 

やがて、アールドは肩を、手を、唇を激昂の炎で燃やす。

 

「君は冷静ではないようだ。一度頭を冷やすべきだな」

 

その言葉が理性を決壊させる。アールドは怒りのままにケルシーの首を掴み、エントランスの壁に叩きつけた。ケルシーは一切の抵抗を行わなかった。それもまた彼を苛立たせる。

 

「俺は昔からあんたが嫌いだった!アポピスはあんたを好いていたから、口には出さなかった!だけど、嫌っていて正解だった!この冷血女!!!!!」

 

危惧していた通りの結果となった。溜まっていた衝動が爆発する。怒りで顔を染め上げるアールドをAceが止めに掛かる。

 

「落ち着け!」

 

「落ち着けだと!?これが落ち着いていられるか!」

 

「アポピスが!こんなことを望むと思うのか!」

 

アールドは、水を掛けられたように静寂を帯び拳を握る。青年とてわかっている。アポピスはこんなことを望んではいないことを。ケルシーの反応は間違いではない。多くの仲間が死んだ。アポピスだけを特別扱いはできない。わかっている。わかっているが………だが、それでも納得はできない。

 

板挟みの感情で揺らぐ瞳がケルシーを捉える。

 

「ケルシー先生、アポピスの死に意味はあったと思いますか?」

 

「………少なくともロドスは決して忘れない。ロドスは永遠に彼らの名を刻み込む。アポピスがロドスのために成したすべては、この大地に軌跡として残っていく」

 

アールドはケルシーの首を絞めていた手を外し、録音機を再度差し出した。

 

「ロドスは………か。すいません、冷静さを欠いていました。処分は如何様にでも」

 

「………君はアーミヤの護衛だろう。ここにアーミヤはいないぞ」

 

おおよそ意味のない釈明と知りながら、アールドは謝罪の言葉を口にした。それに対し、ケルシーは御咎めなしを言い渡し、青年は黙ってエントランスを出ていった。

 

「人間は強くなればなるほど脆さも内包するものだとアポピスはよく言っていた。ケルシー…アポピスはあんたの身を案じ続けていた。お節介だとわかっているが、自分を追い詰めるのはやめておけ」

 

Aceはそう言い残し足早に出ていった。彼だけは気が付いていた。明らかにいつもよりも話が短く、口数が少なかったケルシーに。

 

 

 

 

 

 

 




アニメのアーミヤがスカルシュレッダーを手に掛けてしまったシーンで、絶頂したそこの君!仲間だね。
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