気になる人を曇らせたいオペレーター日記   作:朝起きるのが嫌い病

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申し訳ない。遅れました。そしてこの話は助走なので誰も曇りません。

話は変わりますが私はフロストリーフが好きです。


第7話

■月◇日

 

レユニオンの幹部が殺されたらしい。そんな報告をわざわざ俺にしてきたのはWというサルカズの女だった。そう何を隠そう、事あるごとに俺に突っかかってくる爆弾魔本人である。

 

この女、俺がアポピスであると気が付いているらしく仮面越しでもちょっかいを掛けてくる。俺の怪我が長引いているのはこいつのせいと言っても過言ではない。

 

爆弾魔のちょっかいを往なしつつスノーデビル小隊と共に行動する。どうやら大規模な作戦があるらしくタルラからの指令が色々と増えたらしい。作戦に関しては俺は教えてもらえていないが、レユニオンの構成員の情報は得ている。各諸点についてもクソ爆弾魔に聞いた。

 

ただここにいるだけだと、流石にロドスに言い訳できないからな。ロドス側だけど、スパイとしてレユニオンに入り込みました。その過程でケルシーに殺されましたが成立しないといけないのである。普通に裏切り者だと衝撃が薄いからな。

 

 

 

 

 

 

 

アーミヤの依頼で廃都市の探索に来ていた、フロストリーフ、メテオリーテ、ジェシカの三人は窮地に追い込まれていた。

 

レユニオンのリーダー二人に遭遇し、応戦をしながら逃げる機会を窺っていたが、大気を覆う冷気が彼女たちを追撃する。

 

加えて、レユニオンの憎悪の塊ともいうべきオブジェが精神的に彼女たちを追い詰めていた。悍ましきそのオブジェを見て、応援に来たアーミヤですら取り乱しかける。

 

人間で作り上げた悪趣味なオブジェを炎で彩ったそれは、レユニオンの怒りそのものだった。

 

「これは貴方が作り出したのですか、メフィスト!」

 

アーミヤの怒りにメフィストは哂っている。

 

「そうだよ、テロという手段を使わずにいかに損失を減らすか。10分の1を殺せば、10分の9を恐怖に叩きいれることが可能だと僕は思ってね」

 

アーミヤは瞳を閉じ、戦意を纏う。

 

「ドクター。私はあの時の私ではありません。覚えていないでしょうが」

 

「………」

 

「あの時の私は臆病で弱かった。すぐに怖がってしまっていましたが…あなたのお陰で私は前に行くことが出来ました」

 

アーミヤの周囲に黒い火花が散る。

 

「私の姿はあの時と変わらないままに見えるかもしれません。ですが、私はもう惨劇を見るのは十分です」

 

アポピスやミーシャの顔を描く。

 

「私はもうあんな悲劇が起こる場面を見たくはありません…ですが、それらと向き合わないといけないのです」

 

歩みを止めるな。アポピスの言葉が、彼女の頭を滑っていく。

 

「私は自分に戒めます。まだ下がるわけにはいかない。私は戦い続けます!」

 

少女の決意が戦いの火蓋を切った。ドクターの指示で四名がレユニオンと交戦を行う。レユニオンの構成員をアーツで、武器で、弾丸で薙ぎ払っていく。ロドス側が有利。

 

「フロストリーフ、前に出過ぎよ!」

 

フロストリーフのアーツが、敵陣深くまで切り込む。しかし、メフィストの余裕は崩れなかった。

 

「贖罪し、泣き伏せてほしいところだが………今は、お前の命が欲しい」

 

フロストリーフの瞳に怒りの炎が冷たく宿り、冷気がレユニオンの構成員ごと切り裂いた。

 

「命を尊重しないやつは――命を持つべきではない」

 

「あっそ」

 

余裕と嘲笑は、フロストリーフが喉元に牙を突き付けても変わりはしない。

 

その理由を少女は何となく知っていた。同系統のアーツを扱う彼女だけが予感じみた何かを感じている。

 

「しまった!?」

 

「アーミヤ!四方からレユニオンが現れたわ!数は少ないけど…」

 

メテオリーテの叫びがアーミヤに聞こえた瞬間、フロストリーフの足は氷によって凍結していた。焦りと痛みで顔を歪める彼女を見て、メフィストは哂う。

 

「さあ、お出ましだよ。北西雪原の悪夢、スノーデビルのプリンセス」

 

凍気がその場を蹂躙する。辺り一面が銀世界に切り替わり、オブジェの炎も氷によって沈下する。フロストリーフの視線の先、そこに死神が立っていた。冷気と凍てつくような孤独を纏い、周囲を睥睨する雪原の怪物が。

 

「フロスト―――ノヴァ!」

 

演劇のように高らかに、彼は少女の名を呼んだ。

 

メフィストに名を呼ばれた彼女は、不快そうに眉を歪め殺意を向ける。

 

「――メフィスト――――」

 

美しい声が響く。重く、美しく、凍てつく声が。

 

「お前のような獣にも及ばない殺人狂は雪原の人柱にでもしてやるべきか」

 

「あら、怖い怖い。でも、ロドスはあそこにいるよ」

 

彼女の登場にアーミヤは、即座に撤退を決めた。

 

同時にフロストリーフは、犠牲なしに撤退が成立しないと悟った。

 

「フロストリーフさん、下がってください」

 

「アーミヤ、二人を連れて逃げて」

 

地面を霜が覆い、空を黒雲が隠す。大気が凍え、気温が急激に低下する。

 

「できません!」

 

凍傷の痛みを感じながら、少女は思う。数日前に行方不明になった少年を。彼ならきっと、同じ選択肢を取るだろう。

 

「………あれが、私たちに狙いを定めたら勝ち目がほぼない」

 

アーミヤの動きもメテオリーテの狙いも予想できる。自分を見捨てるという選択肢を、二人は選ばないだろう。特に、アーミヤは絶対にここで見捨てて逃げたりしない。

 

「フッ………まだ十分に生きたとは言えないけど………お前たちに会えてよかった」

 

様々な感情が複雑に絡み合う。

 

「私の足はもう動かないし、あと一分で広場全体をあの化物が凍り付かせる。私の命を無駄にしないで」

 

「フロストリーフさん!?」

 

「行って」

 

「ダメ、ダメよ!アーミヤ」

 

アーミヤはメテオリーテが吐いた拒否反応に頷く。

 

「わかっています!」

 

「行くのッ!」

 

「決して、誰も見捨てたりしません!」

 

あの日の光景がアーミヤの頭を掠める。見捨てるという選択肢はなかった。

 

それを見て、彼女は目を細める。似ていると思う。小さな体に大きな理想と過ぎたる力を背負って、現実に弄ばれても折れない力強い瞳がアポピスと同じだった。

 

「ドクター、指示を出してください!ここでレユニオンを撃退します」

 

「――――アーミヤ。少しだけ待て。すぐに戦況が逆転する」

 

アーミヤの言葉に制止で答えた指揮官は、メフィストの方を向いていた。

 

ドクターが左腕を掲げゆっくりと振り下ろす。瞬間、廃ビルの屋上から何かが降ってきた。戦場のど真ん中、敵の幹部が立っているその場所は敵に囲まれた超危険地帯。しかし、それは裏を返せば敵にとっては油断できる安全地帯であり、虚を突ければ奇襲が成功する場所ともいえる。

 

「フンッ!!!!!」

 

現れたのはAceとその部下たちだった。彼の武装であるハンマーがメフィストの胴体を殴りつける。骨の軋む感覚を手放さんと武器を振り抜いた彼の元に狙撃が襲う。しかし、矢は彼には届かず持っていた盾で弾く。

 

ノールックで狙撃を迎撃したAceは、事前にドクターから説明を受けていたのだ。狙撃手の存在もメフィストを襲えば狙撃手が動く可能性も。戦場のど真ん中に上空から飛び込み、単身で敵を奇襲する。

 

絶対的なまでの信頼をAceがドクターに持っているからこその動きだった。

 

壁に叩きつけられたメフィストは、意識を手放した。動揺するレユニオンの構成員が、隙を見せた瞬間ドクターの指示でアーミヤのアーツが戦場を蹂躙する。

 

「ッ!?」

「うわあああああ!」

「ぐぇ!」

 

「メテオリーテは、フロストリーフの保護。Ace小隊は狙撃手の捕捉と敵の迎撃。その他はスノーデビルをッ」

 

戦場の趨勢はすぐに変動する。ロドスに攻撃を受けた構成員が倒れていく。司令官の一人が撃たれた影響は大きく、動揺は彼らの足並みを乱す。

 

「―――――♬」

 

フロストノヴァの元に冷気が集まる。冷気は氷塊を形成し、殺傷力を持った弾丸となりロドスを襲う。

 

「させません!!!」

 

アーミヤのアーツが氷弾をすべて叩き落すが、それを見て警戒心を跳ね上げたフロストノヴァが徐々に弾幕を広げる。

 

「ッ!」

 

弾丸を防ぐ度苦し気なアーミヤと同様にフロストノヴァの顔色もよくない。凍傷で傷つく身体を庇いつつ、戦況を見極めるドクターは一人の構成員を見た。

 

スノーデビルと同じ格好で武装しているが、何故か目を離せない。あまりにも異質な雰囲気を醸し出している。彼はフロストノヴァの傍に歩み寄り、フロストノヴァの腕を掴み小声で何かを囁いている。

 

瞬間、広場全体を蹂躙していた凍気がAceたちの方へ集まっていく。異変に気付いたアーミヤとドクターは、一瞬構成員から意識を逃がした。

 

爆音が響く。地面を踏み砕き、フロストリーフを救出しようと走っていたメテオリーテの前に傷の入った仮面を付けた構成員(アポピス)が立ち塞がった。

 

「なッ!?」

 

フロストノヴァが立っていた地点から、一気に駆け抜けたアポピスを見てメテオリーテは警戒心を引き上げる。

 

「悪いな………死ぬなよ?」

 

アポピスが拳を鋭く突きだした瞬間、メテオリーテは武器を拳と体の間に滑り込ませた。炸裂音にも似たインパクトが、周囲に響いた。周囲の大気は激震を起こし、アポピスとメテオリーテの接点、拳と武器の間を爆心地として余剰の衝撃波が瞬時に広がる。レユニオンの身に着ける白いコートが、バサバサと風で靡いている。背後の建物の窓ガラスと外壁が、下から上階に向かって駆け上がる衝撃により、割れていく。

 

不可視の力場を攻撃に使用し、力場を拳にインパクトに合わせて放つだけでこうなる。故に、アポピスはアーツを攻撃に使用したがらない。加減を間違えると殺してしまうからだ。

 

メテオリーテは武器を砕かれ、その場に膝をついた。加減したとはいえ、これで済んでいる少女の頑丈さは流石だとアポピスは思った。

 

「さて、次はAceさんかな」

 

 

 

 

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