とりあえず「世界一ピュアなキス」を「世界一ピュアなファーストキス」にしようか 作:ショタモア
「ゴラァ! やめんかこの酔っぱらいが!」
「あだっっ!!? あんだってんだよぉ~~! いきなり大声出して。それにどつく事ねぇじゃねぇよぉ~~!」
これは、2人の男が言い合っている場面。
「酒臭ェ息まき散らしながら、ヒトの母親口説いて、手ぇ出してんじゃねぇっつってんだよ! このボゲぇ」
「だぁぁれが、口説いてるだぁ~~!? 手ぇ出すだぁぁ?? 俺ぁ、優しく手ぇ差し伸べただけだろうが」
「どう見ても手ェだけじゃなくて、抱き着く勢いだったっつってんだよ! 俺の魔法無かったら、そのまま押し倒してただろうが!」
「うるへーー! そもそも、俺は酔ってねぇ!」
「酔っ払いは皆同じ事言うんだよ!」
1人の女性を前にして言い争っている2人組。
見た目麗しな女性を2人の青年男性が取り合ってる、と言う感じだろうか……。
「あんだ~~? 俺と同じくれーの歳のくせに、いまだママが恋しいってか? マザコンか??」
「あんだ?? 愛妻家だとか子が心配だとかほざいてた割に、超がつく程浮気性じゃねーか。何ならザナルカンドで待ってるっつー嫁さんに俺の口から告げ口してやっても良いぜ? スフィアでその辺バッチリ収めてんだから物的証拠アリだ。あーぁ、リティアさんとかティーダが、それ見たらどー思うかなぁ?? 子は益々親父嫌いになって、嫁さんは離婚一択か。親権もあっちだな」
「よ、よよ嫁はカンケーねーだろっ!?」
「酔っ払いの癖に慌ててるって事たぁ、不味い事してるって自覚あるってこった!」
益々ヒートアップしそうになってた所だったが、戦況に変化が訪れる。
禁句ワードだったのだろうか、一気に狼狽えだしたのだ。
更に畳みかけようとしたのだが……。
「止めなさい」
「あだっ!!?」
「いてぇっ!!?」
その両者を止めたのは、渦中の女性……。
愛ある拳をその2人の頭頂部にくれてあげたのだ。
「シーモ……こほんっ。リュウもいい加減落ち着きなさい。と言うか、恒例行事の様にやり合ってるせいで、余計な時間かかってるって自覚なさい。それとジェクトも。貴方が奥さんや息子さんを想う気持ち、今までどのくらいスフィアで撮ってきてると思ってるの? 酔った勢いとはいえ、軽はずみな事はしない様に」
「「はい。すみません……」」
愛ある拳の後に、淡い緑の光が2人を包む。
この光の正体は白魔法エスナ。状態異常を快復してくれる魔法だ。
因みに、酔っ払いやら二日酔いにもそれなりに効果があるらしい。……あれは状態異常だったのか、と初めて知った時はそれなりに驚いたというモノだ。
「シーモアもジェクトもチョコボイーターを倒して気が強くなっていた、と言うのもあるかもしれないな。いつも以上に賑やかな気がするよ。エリーナさんも楽しそうだ」
「ブラスカ様。やはりメンバー編成をそろそろ見直す時期が来たのではないでしょうか? 少なくとも、トラブルを起こしているのは決まって1人。今こそ見限る時だと俺は思います!」
「だぁぁ、アーロン!! てめぇは毎度毎度、俺の事クビにしようとすんのやめれや!」
「貴様が毎度毎度余計なトラブルを起こすからだろうが! トラブルと言う意味では、シーモア様も同じだが、それ以上に起点となるのが貴様だと自覚しろ!」
更に男が2人追加参戦してくる。
その雰囲気はケンカをしている様で何処か和みがあるので、ある意味嫌いじゃない……と笑うのは、ブラスカと呼ばれた男と、そしてもう1人のエリーナも同様だ。
「ええ。賑やかな旅は嫌いじゃないですよ。……寧ろ、希望を持ってます。まさか、召喚士としての旅で、このような気持ちになれるとは思ってもいませんでしたので」
「………ああ。私も同感だ。この命賭して、ナギ節をこのスピラに齎す気概と覚悟を持って始めた旅だったのだが、全てが変わってしまった。―――良い変化だと、私は思っている」
スピラの空を、このミヘン街道から眺める。
穏やかで心地良く、暖かな光に包まれている。
それに、チョコボたちも天敵であるチョコボイーターが討伐されて、嬉しそうに群れを成して鳴き声を上げている。
死が身近にあり、死の螺旋と呼ばれているスピラとは思えないのどかだ。
「おーい、アーロン。取り合えず、この酔っ払いをザナルカンドに返品するまで我慢して。放置すると近隣住民の皆さんに迷惑が掛かりそうだ」
「むぅ……、それは致し方ないか……」
「誰がだコラぁ!! ひとを危険物扱いすんじゃねぇ! それにもう酔ってねぇよ!」
傍から見ていて良いトリオだ、と笑うのはブラスカ。
「アーロンも口ではああ言っていても、随分と楽しそうに感じる。……きっと、気のせいではないのだろうな」
「……彼にも、色々あったそうですからね。全てが変わるかもしれない、と希望を持ち、それに心に余裕が生まれて。……それでも風紀を大事するのも良いかと。……ですが、少々堅物な所があるのはタマに傷だと思いますが」
「ふふふ。ジェクトもそうだ。彼は人一倍明るく、気さくに、誰とでも分け隔てなく接する事が出来る性格だが……やはり、故郷が恋しく、家族も心配ともなれば、心の何処かでは孤独を感じていた筈。……それを本当の意味で取り除いてしまったのは、彼のおかげだろうね」
「……はい。己惚れかもしれませんが、紛れもなく。私の誇りです」
そうこうしている内に、騒ぎが収まったとミヘン街道旅行公司に避難していた人達が次々と出てきた。
その中には、経営者であり、チョコボイーター討伐の依頼者でもあるアルベド族のリンの姿もある。発端は、ジェクトが勢いで皆が困ってるのなら退治しないか? だったが、それをリンが聞いていて、正式に討伐依頼と言う形になったのだ。
「さて、私は解決した事を告げに向かうとします。貴女は彼らを見ていてくれませんか?」
「はい。勿論です。……ふふ。少々大きなコが3人になった、と思っておくことにしますよ」
「それは良い」
ブラスカは大きく笑うと歩き始めた。
因みに、その時の3人はと言うと―――。
「あ~。アーロン? そろそろ俺の事シーモア
「いえ。俺も今はブラスカ様のガードでも元は僧兵。立場と言うモノがありますので」
「このカタブツにそんな事願っても無駄だ無駄。いい加減お前さんも解ってきたんじゃねーのか?」
まだ色々とやってた。
今度はアーロンとシーモアが中心だ。
初めて会った時から、出生など色々と明かしている。グアドの未来を担う存在であり架け橋ともなる存在であるシーモアに対して、如何に願われても応えられない、と言うのがアーロンの心情。これからもきっと無理だろう。
更に付き合いの時間が長いブラスカに対してもいつまでたっても、様付けを止めないのがその証拠だ。
「ああ、勿論。ジェクトとアーロンの事ならと~~~~っくの昔に知ってるつもりだよ。……まぁ、浮気性だって知ったのは結構最近だけどな」
「だぁぁぁ!! 浮気なんざしねぇし、した事ねぇ!!」
色んな意味で、とシーモアは言う。
当然だ。3人の事は知っている。
自分自身の母親については殆ど知らなかったが、この20年でよく知った。
だが、彼らは云わば生まれる前から知っているのだから、色んな意味で感慨深い気持ちになるが、ジェクトに関しては少々認識を改まってる感は否めない。
「そっかぁ? ブリッツの有名選手だったんだろ? ほれ。女性ファンにいろいろと~~、って簡単に想像できるんだが? ジェクト様シュート3号! でメロメロにするとか? ……ぷ、ぷぷぷっ、じぇくと、さま……ぶはっっ!!」
「だぁぁぁぁ!! 笑うな!! つーか、そのスフィア消せよ! 絶対に消せよ!!」
「それってフリ? そうだよなぁ、息子さんのお土産にすんだろ? 消せないよなぁ。俺も賛成だったし、ユウナちゃんの土産にもなるんだし、大賛成。その後に待ってる特大な修羅場は、まぁ酒の肴にするわ」
「よーし、そのケンカ買った!! てめぇ、歯ぁ喰いしばりやがれ!」
再び起こるケンカ。
それを止めたのは、当然ながら。
「止めなさい」
母の一撃だった。