オレは絶対にアサギジムを突破できない   作:ゲリラ

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興が乗って書いてしまった後悔はしていない。
ほぼほぼ一発ネタ。




 アサギシティ。

 ジョウト地方西部、潮風香る港町。

 その町にあるポケモンジム――アサギジムで今日、バッジを賭けたポケモン勝負『ジムチャレンジ』が行われていた。

 

「いけ、マグマラシ!」

「おねがい、ハガネール!」

 

 チャンピオンを目指すために八つのジムを制覇せんとする少年と、それを阻む一人の少女――ジムリーダー。

 少年にとってこのジムは通過点だった。

 いや、通過点でなくてはいけなかった。

 

「マグマラシ、かえんほうしゃ!」

「ハガネール、がんせきふうじ!」

 

 勝敗は割と早く決した。

 要因は単純にレベルの差であった。

 少年のポケモン、マグマラシがハガネールの技で倒れてしまった。

 

「……くッ、オレの負けだ」

「とてもいい勝負でした。また挑戦しにきてください」

 

 少年は帽子を深く被り、マグマラシをボールに入れる。その際に労わる言葉を掛けることを忘れない。

 しかし、負けた悔しさは無くならない。

 

「今回のバトル、あなたのマグマラシはわたしのハガネールに相性では有利でした。しかし、ハガネールは炎タイプに有効な岩タイプと地面タイプの技を覚えることができます。相性で勝っても油断はしないようにしてください」

「……っ!」

 

 ジムリーダーとして少女――ミカンは、少年にアドバイスをする。

 ミカンと同年代ぐらいのこの少年はまだまだ未熟だが、類い稀な素質がある。彼とバトルをする中で、将来少年がチャンピオンになっている姿が想像できた。

 今回のポケモンバトルはレベルの差で勝利したものの、指示の巧みさや技の応用では完全に負けていたからだ。

 

 しかし、まぁ、それはおいといて。

 ミカンは少年に一つ聞きたいことがあった。

 

「ところで、あなたの名前を教えてくれませんか?」

「…………」

 

 ミカンは少年の名前を知らなかった。基本的にジムバトル前に名前を聞くのだが、少年は教えてくれなかったのだ。

  ミカンの言葉を受けて、少年は帽子をさらに深く被る。悔しさを隠しているのだろうか……それとも。

 少年はすくっと立ち上がると。

 

「次は絶対お前に勝つ! 覚えていろ、ミカン!」

 

 少年はジムから飛び出してしまった。

 

「あの、名前を……教えて…………」

 

 ミカンは呆然と告げ掛けた言葉を誰もいない空間でポツリと呟くのであった。

 

 

***

 

 

 次の日、少年はまたやってきた。

 

「ミカン! 今日こそはお前に勝つ!」

「いいですよ。……ですがその前に、あなたの名前を」

「俺の名前なんてどうでもいい! 勝負だ勝負!」

「……わたしが勝ったら教えてくださいね」

「いいだろう、だが今日の俺は一味違う! ――いけっ、ダグトリオ!」

「お願い、レアコイル」

 

「ダグトリオ、じしんだ!」

「レアコイル、でんじふゆう」

 

 

「――さぁ、あなたの名前を」

「くそッ、次は負けない! じゃあな!」

 

 少年は名前を言わずに立ち去ってしまった。

 

 

***

 

 

 翌日、アサギジムにて。

 

「なぜ昨日は名前を教えてくれなかったのですか?」

「……。そんなことはどうでもいい、俺とバトルしろっ! さっさとオレにバッジを渡せ!」

「ところでわたし、あなたの顔を見たことがあるんですよね。昔、“デンリュウ(あかりちゃん)”がメリープだった頃、わたしと一緒にお世話をしていた――」

「ええい、うるさい! そんなアサギの灯台のことなんて覚えてない! メリープがタマゴから孵った瞬間を茶髪の少女と一緒になんて見てない!」

「誰もそこまで言ってないのですが」

「っ!……さぁ、バトルだ!」

「いいですよ、名前教えてくれるまで絶対に負けませんから」

 

「いけ、バクフーン!」

「おねがい、ハガネール――……メガシンカ」

「!?」

 

 

***

 

 

 一週間後。

 

「今日はいい天気ですね、あなた(・・・)。ふふ、こういう呼び方をしてしまうと夫婦だと勘違いされてしまうかもしれませんね。――なので、名前を教えてください」

「断る! さぁ、バトルだ!」

 

「いけっ、カイリキー!」

「おねがい、メタグロス!」

「は?」

 

 

***

 

 

 一ヶ月後。

 

「お久しぶりですね。あなたがずっとジムに挑戦にこないので心配していました。何をしていたのですか?」

「……お前が勝たせてくれないから、他のジムを先に制覇してたんだよ。お陰でもう7個ゲットしたぜ」

 

「――あ、そうなんですね。じゃあ『対戦相手のバッジの個数によりポケモンを変える――なお7個獲得の者にはジムリーダーの裁量に任せる』の規定通りにわたしも本気出していいんですね」

 

「えっ」

 

「ハガネール出てきて」

「えっ」

 

「今日は本気で戦っていいからね! イバンの実も使っていいから!」

「えっ」

 

 

***

 

 

 一年後。

 

「どうしてこの半年間会いに来てくれなかったんですか?」

「お前に勝てないから、四天王とチャンピオンに野良バトル仕掛けてたんだよ!」

「そうなんですね。で、結果はどうだったんですか?」

「勝ったよ! 最初は負けが多かったけど、最近は負けなしだよ!」

「それはおめでとうございます。実力だけ(・・・・)はチャンピオンですね」

「うるせー! 今日こそお前の天下は終わりだ! ジムバッジを貰い受ける!」

 

「いけっ、リザードン。――メガシンカだ!」

「おねがい、ディアルガ!」

 

「おい」

 

 

***

 

 

 結局のところ少年は三年かけても一度もミカンに勝利することができなかった。

 他地方で数多のジムを制覇し、四天王とチャンピオンを撃破しても少年は満足できなかった。

 少年はジムリーダーや四天王、チャンピオンの就任推薦を全て蹴っていた。

 当然だ。地元のジムも制覇できていないというのに、何がジムリーダーだ、四天王だ、チャンピオンだ!

 ふざけるな! オレはジョウトで最強の存在になる!

 少年は夢だったチャンピオンになることを捨てて、たった一人のトレーナーを超えることに全力をかけていた。

 そして、今日も――少年は茶髪の悪魔に挑む。

 

「オレは絶対ミカンなんかに負けないっ!」

 

 

 

 

 

 

 

「ミカンには勝てなかったよ……」

 

 ――なお、結果はお察しである。




ミカンちゃんはあはあ
ミカンちゃんぺろぺろ
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