こいのうた   作:グラスワンダー担当

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こいのうた 4番

 

最強激突

 

 

中山の地に向かう道中に有馬記念のポスターが多く張られている。彼女とライバルが写ったポスターだ。

 

「いや〜、楽しみですな〜」

 

るんるん気分で私が運転する車で競馬場まで向かう。

 

「ふふ、珍しいじゃないか。君がそこまで良い感情を見せるなんて」

 

「だって、ライバルが私を追いかけて来てくれたんだから!こりゃぁ応えないといけないでしょ!」

 

そう言い終わると、ウイニングライブで歌う予定の曲を口ずさむ。

 

あららー

 

まったく、もう勝った気分でいるな!

 

大丈夫?ハチミー飲むと落ち着くよ?

 

後部座席に座る先輩達から心配の声が聞こえるが、正直言うと何も心配が要らない。

 

それ程までに完成されてきたからだ。

 

有馬記念の次はURAファイナルズが待っている。

歴代の優駿、現役最強。

世代問わず得意距離での最強を決めるレース。

 

そこに向けて弾みを付けたい。

 

「楽しみだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今年も名勝負が数多く繰り広げられました」

 

「なかでもこの二人は外せません」

 

「今日、ここ中山で最強が決まります」

 

「有馬記念、出走です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

危なかった、ゲートが開く前に何となく自分の足が置かれている芝をグリグリと踏むとずるっと滑る。

このままスタートしていればバランスを崩してゲートに当たっていただろう。

せっかく彼女との勝負なのに、そんなことで台無しにならなくて本当に良かった。

 

彼女には本当に感謝している。

ダービーまでは、特になにも思わなかったが、ケガで出れなかった菊花賞を現地で見ていたときに目を奪われた。

 

勝ちたい

 

一度彼女には勝っているが関係ない。

どうしても勝ちたいのだ。

 

有馬記念での強さを見たときにその想いは更に増えていた。

だから、彼女がケガを再発したと聞いたときは、落ち込んだ。天皇賞(春)で闘えるた思っていたからだ。

でも、それはしょうがない、僕もケガをして菊花賞を走れなかったし。

それよりも、彼女と闘かう前にG1を何個か取って僕の方が凄いって思わせないとね。

そう思って挑んだ天皇賞(春)で完敗しちゃって、また骨折しちゃった。

何やってるんだろうって。

僕は無敵の筈なのに無敗じゃなくなって。

こんな僕じゃ彼女のライバルなんて言えないよね。

 

それを見抜かれた。

 

「ねぇ?何の為に走ってるの?」

 

彼女に天皇賞(秋)で聞かれた時に僕は答えられなかった。

その時の彼女の悔しそうな、寂しそうな、泣きそうな顔は…ちょっと思い出したくないなぁ。

 

レースで勝った後も全然嬉しそうじゃなくてさ、寮に戻った後、ベッドで寝るはずなのに寝れなくて。

 

部屋を抜け出して少しだけ散歩しているときに気付いたんだ。

あぁ、僕が彼女から喜びを奪っちゃったんだって。

僕があれだけ好きで、あれさえあれば他は何も要らないってくらい大切な物を僕は…

 

レースで負けた時は泣かなかったのに、それに気付いたら止まらなかった。

彼女は僕を見ていてくれたのに。

僕に勝つことを楽しみにしてくれたのに。

もう彼女は僕を見ていない。

 

三女神を過ぎるとき思わず神様に聞いちゃったもん。

 

 

教えください、神様。

あの人は誰を見てる?

 

 

当然答えなんて返ってこないもんね。

その日は一日寝れなかったんだ。

 

 

その後は大変だったな、チームの皆に心配されて色々気分転換したりなんだり。

悩んだけど、結局僕はレースに勝ちたいんだ。

僕が1番強いって皆に自慢したいんだ。

僕を見て欲しいんだ。

君に勝ちたいんだ。

 

ふふ、僕って案外単純だったのかもね!

 

だから君が、ジャパンカップを見に来てくれたときは本当に嬉しかったんだ。

また、僕を見てくれるんだって。

しかも、レース中に大きな声で応援までしてくれてさ。

 

君に会えたから。

 

君と走れたから。

 

僕はもう一度走れるようになったんだ。

 

さあ、楽しいレースだ。

 

どっちが強いか勝負だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシャン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「淀みないスタートで始まりました!第37回有馬記念!有終の美を飾るのはどの娘か!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へへーん!どーだ!見たか!」

 

「ぐぬぬぅ…大丈夫まだ、URAファイナルズが残ってるから」

 

「そっちも僕が勝っちゃうもんね!」

 

 

掲示板にハナ差と表示されているのをぴょんぴょんと飛び跳ねながら指差し、ライバルを挑発するウマ娘がテレビ画面に映し出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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