Muv-Luv modeler warfare   作:ガンオタ

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投稿が遅くなり申し訳ありません。
ついにアメリカ側が動き出します!


第10話 Operation Great Discovery (偉大なる発見作戦)

第10話 Operation Great Discovery(偉大なる発見作戦)

 

<1995年4月25日 アメリカ国防総省>

 

 国家安全保障担当補佐官のジェイク・カールッチという男は、アメリカ中西部の北、カナダと国境を接するミネソタ州で弁護士事務所を経営する両親のもとに生まれた。大学では政治学の学位を取得、卒業後はロー・スクールに入り、弁護士に必要な資格を取得する。そして地元へ戻り、新人弁護士として活動していた頃、政治資金を得る為、たまたミネソタを訪れていたジョン・レーガンの政治資金パーティーに参加した。

 パーティーの参加者達に、シャンパンを手に若い弁護士ながらも国内外の情勢、BETA戦におけるアメリカ外交などを熱く語っていたジェイク。そんな彼は、すぐさまレーガンの目に留まった。そして少しばかり今後の世界情勢の展望を聞いたレーガンは、彼を自身の政治顧問とした。

 こうして、ジェイクは政治の世界に足を踏み入れ、今では歴代政権の中で一番若い国家安全保障担当補佐官の地位に就いている。

 

 そんな彼は、『極秘資料』が入った黒のブリーフケースを手に、バージニア州にあるアメリカ国防総省の綺麗に磨かれた廊下を歩いていた。

 通称“ペンタゴン“と呼ばれる国防総省はエンパイア・ステイトビルの実に三倍の床面積があるにもかかわらず、特徴的な五角形の構造のおかげで移動そのものは短くすむ。いくつもの厳重な保安ゲートを抜け、ジェイクは会議室が集中しているエリアに入った。それぞれの会議室のドアのプレートには、様々な委員会の名が掲げられている。

 

ーー『ルワンダ問題介入準備会』

ーー『中南米安定化委員会』

ーー『極東情勢分析委員会』

ーー『難民問題検討委員会』

ーー『対BETA戦術策定委員会』

 

 BETA大戦、それによって発生した各種問題など、現在世界が直面する問題が、ここペンタゴンの会議室が集中するこのエリアで話し合われ、問題に対する高度に政治的、軍事的な対応を含むあらゆる解決策が日々決められている。

 

 アフリカの主権国に『介入』するなど、常識的に考えたら完全な内政干渉、大きな迷惑というやつだ。だが、ここにはそんな外交的『倫理』など初めから存在していない。

 それらエリアのなかにひとつだけ、単に『立入禁止』とだけ表示された会議室の扉の前で、ジェイクは足を止めた。そして中に入るため、扉をノックしようとしたが、そのまま振り返り他の会議室の扉を見渡す。

 

「(『立入禁止』ーー他と比べてずいぶんシュールな話題だ……)」

 

 世界の立入禁止の問題を処理するのは、この国の義務だからな、と肩をすくめる。そして扉をノックすると、室内から男の声がした。

 

「カードをかざしたまえ、デバイスは扉についてる」

 

 トランプカードぐらいの黒色の読み取りデバイスに、入館時係員から手渡されたカードをかざす。ロックが解除された事を確認し、ドアノブを回し、扉を奥に開く。

 

ーー真っ黒にした部屋で、男達がポルノビデオを観ている。

 

 というのが、ジェイクが部屋に入った時に感じた第一印象だった。壁面スクリーンに映っているのは、東洋人の男達で、壮年の男達が見入っていたが、扉の開閉音に気づき全員の視線がジェイクの方を向く。暗闇に目が少し慣れてきたおかげで、座っている男達の顔がぼんやりと見えた。

 

「大統領補佐官、遅かったじゃないか?」

 

「申し訳ありません、国防次官。『注文主』……いえ、“大統領“の作戦許可を得るのに手間取りまして」

 

 スーツを着たDIA(国防情報局)の次官を務める男の言葉に対し、ジェイクは苦笑いしながら弁解する。そして最後に手に持っていた黒のブリーフケースから、大統領のサインが記載された作戦計画書の束を取り出す。

 テーブルに置かれた作戦計画書の束を見たDIA次官は、中身を確認する事はなく、代わりに「そうか。許可を貰えたか。では、早速始めよう」と告げた。

 

 空いている椅子に座ったジェイクは、テーブルについている男達を確認する。皆いずれもそれなりの年齢で、ここではジェイクが一番の若造だ。そしてテーブルに着席しているのは、CIA、NSAなどアメリカの情報コミニティを構成する各機関の次官級、上院情報活動監視委員会の議員数名、それと制服を着た軍人達だ。

 

 まず初めに情報担当のCIA局員が説明を始めた。

 

「スクリーンに映るこの男達は、日本帝国最大の国粋主義団体『皇国の旅団』の構成員で、今回の『シルトクレーテ島侵攻作戦』における。米軍介入の口実を作るため、最初に島に上陸する“日本人形達“です」

 

 “日本人形“という言葉を聞いたDIA次官は笑い声を上げる。

 

「ハッハッハッ。“日本人形“とは、……“捨て駒“の間違いじゃないのかね?」

 

「そういう表現もできますね。実際、旅団の役割は、島に上陸し、レイブンズロックに攻撃を仕掛け、島を混乱状態に陥れる。つまり“米国が軍事介入しなければならない状況を意図的に作りだす事“です」

 

 CIA局員は、DIA次官の問いにそのように答える。だが説明を聞いていた陸軍大佐が疑問の声を上げる。

 

「しかし軍事介入の決定まで、コイツらは戦えるのか?」

 

 軍人である大佐からすれば、いかに皇国の旅団の連中が、自分達の事を『旅団』と名乗ったところで、実際は一般の日本人より愛国心が強い日本人でしかない。いわば戦闘の素人だ。

 そんな連中で果たして戦闘が行えるのか、と心配する。

 

「皇国の旅団の創設者である男は、貿易業で成功した裕福な帝国"外様武家"の者でして、事業で築いた財力を使い、帝国軍や斯衛軍の上層部と個人的繋がりをかねてより構築していました。それを利用し、今回参加する構成員達には事前に軍事訓練を施しています。ですので、軍事介入までは戦えれるかと……。もちろん、戦闘が継続できるよう大量の物資と共に送り込みます。持ち込む武器は、全て帝国軍が保有する物です」

 

「帝国軍の武器、だと? 武器庫から装備品が消えたとなれば、日本政府に気づかれてるのではないか?」

 

 CIA局員の説明を聞いた陸軍大佐は目を大きく見開きながら、そう問い返す。

 軍の武器庫から装備品が消えたとなれば、当局による捜査が行われるはずだ。もしそうなれば日本政府に、今回の作戦情報が漏れているのでは、と心配する。

 だがそんな懸念は、最初から想定済みとばかりに、CIA局員は顔に笑みを浮かべながら答える。

 

「大佐、ご心配には及びません。あの国は先の大戦終結後に、我々CIAが作り上げた“人工国家“みたいな存在です。軍部、情報機関、行政機関、民間企業などの至る所に我々の協力者がおり、我々の諜報活動に必要なあらゆる物が詰まった。いわば“おもちゃ箱“ですよ。今回使用する軍事品も、フィリピンに疎開した日本メーカーの製造工場から直接入手しました。もちろん、管理記録などにも残っていません」

 

「83年のグアテマラ軍事クーデターが成功したのも、あの国のおかげだ」と議員の一人が言った。その声を聞いたCIA局員は頷く。

 

「ええ、仰るとおりです。1983年に我々CIAがグアテマラで実行した『Harvest Program<収穫作戦>』の際には、右派の準軍事組織AUG(グアテマラ自衛軍連合)、グアテマラ国軍が使用した軍事品は、第三国である日本帝国で製造、それを我々のダミー会社がグアテマラへ輸送しました。当時、下院議員だったアーサー・トランブル氏が草案を作り、成立させた『グアテマラ人道支援法』による事実上の武器禁輸で、アメリカからグアテマラへの直接的な武器支援ができなかったからです。しかし、皮肉でしょうか。当時の下院議員が、今は“下院議長“ですよ」

 

 推定約7万人にも及ぶ、死者・行方不明者を発生させた原因を作った組織に所属する男は、まるで新入社員時代の苦労話をするかのような軽い感じで語った。そして議員は、腕を胸の前で組み、鼻息荒く、当時のアメリカ政府が選択したグアテマラ政策を平然と擁護した。

 

「あの時、我々が介入していなければ、グアテマラを手始めに、ドミノの倒しと同じくホンジャラス、エルサドバドル、ニカラグアなどの国々は共産主義化していただろう。そうなれば最後、世界の対BETA戦略は大きく後退していたはずだ」

 

 それを黙って聞いていたジェイクは、話が脱線しかけていたため、両手をパチパチと叩き、話の主題を元に戻す。そして笑みを浮かべる。

 

「皆さん。グアテマラでの出来事を振り返るのは、そこまでにしてください。今度の敵は『コミニュスト』ではなく、『異世界人』なんですから」

 

 そのジョークを聞いた男達は笑い声を漏らす。

 

「それと、その下院議長は今、我らが大統領と共にシチュエーションルームにいます。つまり作戦開始時には、すべてを目撃する事になるのです。トランブル下院議長は軍部や情報機関に対して、とても厳しい姿勢であるのは、皆さんご存知でしょう?」

 

 ジェイクのその言葉を聞いた男達は、忌々しいとばかりに顔を顰めたり、不満とばかりに手で顔を覆う。そんな彼らの姿を見たジェイクは笑みを浮かべると、席から立ち上がり、ゆっくりと歩き出す。

 

 

「BETAの地球襲来は、人類史上最大の悲劇でした。

 

 しかし、地政学的見知に立てば、『アメリカ史上』これほど素晴らしい条件はありません!

 

 BETAがユーラシアを蹂躙した事で、核大国であったソビエト連邦、最大の人口大国である中国とインド、そして東欧の共産国家群は地図から完全に消失。もはや跡形もありません。

 

 泥沼と化したBETA大戦にユーラシア諸国が苦しんでいる間、合衆国の経済は飛躍的発展を遂げました。軍事・科学技術の面でも同じくです。

 

 だが、長引くBETA大戦による自然環境の激変、資源の枯渇、増え続ける難民。そして各地で多発するテロによって、世界はますます本来あるべき姿を見失いかけています。

 

 この世界に必要なのは、新たな世界規範と秩序。そして、それらを担保する事ができる『力』を持った存在。

 

 そう。ーーアメリカだけがBETA大戦に勝利する事ができるし、大戦終結後の新世界を創造する権利を持つ」

 

 

 ジェイクは会議室内をゆっくりと歩きながら、BETA大戦勃発後の世界情勢と人類が直面する課題、そしてそれらを解決する事ができるのは、アメリカだけなのだと、言葉の強弱をつけながら、彼らに語り続ける。まるで、その光景は、宗教家が信徒達に説法を説いてるかのようだ。

 

「突如として、太平洋に出現した未知の島『シルトクレーテ島』、この世界とは異なる技術概念で製造された戦術機を保有する武装組織『レイブンズロック』。この二つは今後、世界の運命を大きく変化させるでしょう」

 

 ついに壁面のスクリーンまで到達したジェイク。タイミングよく画像はシルトクレーテ島と、その島に存在する未知の戦術機を映し出す。それらの画像をバックに、両手を大きく広げる。まるで舞台役者のように。

 

「これらを手に入れる事で、アメリカは更なる発展と繁栄を遂げるでしょう」

 

 その瞬間、会議室は拍手喝采に包まれた。そしてジェイクは高らかに宣言する。

 

「オペレーション:Great Discover(偉大なる発見)を開始するッ!」

 

 これから行われる作戦名を聞いた男達は立ち上がり、会議室は更なる歓声と歓喜の渦に包まれる。ジェイクはゆっくりと振り返ると、レインブズロックの紋章である漆黒のカラスを見つめて、小さく呟いた。

 

ーー新世界へようこそ、と。

 

 

 

 

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