Muv-Luv modeler warfare   作:ガンオタ

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オリジナルキャラクターと他作品キャラクターが登場します。


第2話 そうだ、名前をつけよう。

第2話 そうだ、名前をつけよう。

 

 

 早朝。

 西から出てきた朝日が、深い緑に覆われた山々をオレンジ色に染める。木々の隙間から差し込んだ光は、森の中で停車していた1台のキャンピングカーを照らす。

 

「……ッ……フワァ〜、朝か……」

 

 カーテンの隙間から差し込む日の光と心地よい暖かさを感じとったタクミは、そう言って起床すると、大きく伸びをする。ベッドから下りて、備え付けの洗面台で顔を洗う。

 

「冷てえ……『トントンッ』ん?」

 

 水の冷たさに驚きの声をあげながら、タオルで顔を拭いていると、扉をノックする音が聞こえたので、タクミは扉の方へ歩いていく。

 

「おはよう。“バトレー“、今日も朝早くからありがとう」

 

 扉を開けたタクミはそこに立っていた一人の男に朝の挨拶をする。

 “バトレー“と呼ばれた男は、タクミの挨拶に笑顔で答える。

 

「おはようございます。タクミ様。朝食のご用意ができております」

 

「了解、今日のメニューは何かな? バトレー」

 

 タクミはステップを下りながら、自らの専属執事に問いかける。

 皺ひとつない黒い燕尾服を着用した執事バトレーはタクミが製作し実体化させたフィギュアだ。容姿は髪の色は黒色だが、特徴的なのは瞳が血のように真っ赤であるところだ。 

 まるで少女漫画に登場するようなイケメン執事は、自らの主人の問いかけにイケボで答える。

 

「はい。本日の朝食のメニューは、ポーチドサーモンとミントサラダをご用意致しました。付け合わせはトーストスコーンとカンパーニュが焼けておりますが、どれになさいますか?」

 

「(聞いたことない名前ばっかだ!よくわかんないんだけど)う〜ん、スコーンでお願い」

 

「かしこまりました。では、こちらへ」

 

 バトレーはそう言って、タクミを朝食が用意されている所まで案内する。

 二人が歩き出すと“完全武装した兵士たち“がどこからともなく出てきた。彼らは、タクミが護衛用に製作し、実体化させた1/35アメリカ海兵隊の模型兵士たちだ。

 格好はウッドランドパターンの海兵隊迷彩服を着用、その上にプレートキャリアを付けている。被っているヘルメットはLWHだ。兵士たちは手にしているM16A4やM249SAW(分隊支援火器)でタクミを守れるよう、周囲を警戒する。

 

 護衛の兵士たちに守られながら森のなかを歩いているタクミは、一歩うしろを歩いているバトレーに問いかける。

 

「兵士たちに異常はない?」

 

「ええ。召喚された兵士たちに異常はありません。基本、私たちは食事や睡眠などは不要ですので」

 

 バトレーはにこやかにそう答える。

 タクミが召喚した兵士たちは、もとがプラスチックの模型だったためか、人間と同じように行動しながらも生命維持に必要な食事や睡眠などが不要なのだ。疲れ知らずの兵士たちである。

 

「(はぁ……サボらず働いてくれるのはいいけど、心配だな……)だけど、何かあったらすぐに報告しなよ」

 

 いくら最強の兵士たちでも、作業中に怪我や病気になってしまうかもしれないため、タクミはバトレーにそう伝える。

 

「なんと、お優しい」

 

「へ?」

 

 バトレーの言葉を聞いたタクミは素っ頓狂な声を出し、うしろに振り返る。すると目にしたのは、臣下の礼をとる自分の執事だった。

 

「ちょ、ちょっと! 何してんの!?」

 

「我らの創造主であるタクミ様は、なんと慈悲深いお方なのでしょう。我らを創造するだけではなく、大いなる愛を持って接してくださるとは……我ら一度、あなた様に更なる忠誠を捧げます」

 

 専属執事の忠誠発言になんと答えていいか分からず、タクミは慌てて周囲を見る。

 護衛の海兵たちが、何事かと騒ぐ。

 

「え、あ……うん。その頑張ってね」

 

「はい! 誠心誠意頑張らせていただきます」

 

「(なんだろうか……今、一瞬犬の尻尾みたいなのが見えたような?)」

 

 元気よく答えたバトレーのお尻から犬の尻尾のようなブンブン揺れていたのが見えたタクミであった。

 

 そんなこんなで、ようやく朝食が用意された場所に到着した。

 そこには綺麗なテーブルと椅子が設置してあり、傍には数人のメイドが待機していた

 

「キャンピングカーで、別いいのに」

 

 タクミは椅子に座りながらそう呟く。するとタクミの背後に立ち、椅子を引いていたバトレーが小さく首を横に振りながら答える。

 

「それはなりません。我らの主人であるタクミ様がキャンピングカーで食事など……朝食は1日の行動に必要な栄養を摂取する大切なものです。だからこそ朝食を摂る場所もとても大切。このように周囲を自然に囲まれ、鳥の囀りを聞きながら食事をすることで、心の平穏も一緒に得られるのです。まさに一石二鳥。それに“貴族“たるもの品位が大切なのですよ」

 

「確かに自然の中で食事をするってなかなかできる事じゃないね。あと、僕って貴族なの」

 

「はい」

 

 いつの間にか貴族という扱いになっていることに驚くタクミだったが、並べられた朝食をあらためて見ると感嘆の息をもらす。

 

「いやぁ、でもすごいね。どれもこれも美味しそうだよ」

 

「お褒め頂き恐悦至極でございます」

 

 食材はすべてタクミの携帯から召喚したものだ。そして調理したのはジオラマを製作する時に使用する一般人ミニチュアのなかにあったコックが、キッチンカーを使って料理した。

 召喚して驚いたのが新鮮な食材はもちろん酒や調味料などの料理に必要なものだけでなく、お菓子やタバコ、高級ワインなどの嗜好品。その他には洋服、燃料や弾薬、医薬品などを制限なく召喚することができたことた。

 

「ほんと、チート様様だね。うんじゃ、頂きます」

 

 チートを授けてくれた神様への感謝の言葉を口にしながら、タクミは手を合わせる。そして、朝食を食べ始めるのだった。

 

 

ーー朝食終了後。

 

 美味しい朝食を終えたタクミは食後の口直しの紅茶を飲んでいた。

 紅茶の香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。

 

「う〜ん♪ 美味しいねぇ〜、これぞ至福のひと時」

 

 白磁の美しいティーカップを手に持ちながら、タクミはそう感想を述べる。

 彼の周りでは、ファッションモデルの表紙を飾るような美しい容姿のメイドたちがせっせと食器を片付けていた。

 

「ん?」

 

 ふと、一人のメイドに視線がとまるたタクミ。

 視線の先には綺麗な長い金色の髪を持った綺麗なメイドがいた。

 

「(キレイだなぁ。……まぁ、あの子も僕が製作したんだけどね)」

 

 金色の髪がクラウンハーフアップなのは、製作時のモデルに前世で読んだラノベキャラを利用したからだ。

 

「(うん。やっぱり可愛いな〜、メイド服とあわさって、清楚感がさらに増してる)」

 

 自分が製作したフィギュアを眺め感慨に耽りながら、紅茶を口にする。

 

「あの者を“ご所望“ですか? タクミ様」

 

「『ブハッー』ケホッ……ケホッ……な、なんだい突然」

 

 突然、耳元でバトレーが囁いた言葉に驚いたタクミは紅茶を盛大に吹き出した。そして、呼吸を整えると隣に立つバトレーに問いかける。

 

「おや、違いましたか? なにぶん先程から熱い視線を彼女に向けていたので、もしやと思いまして」

 

「そ、そんなことはない! 自分が作った者が意思を持って行動していることに、感慨を覚えただけさ」

 

 恥ずかしさを隠すため、まるで顔をトマトのように赤くしながら、バトレーに反論するタクミ。

 タクミの慌てぶりを目に気をよくしたバトレーは続けてこう言った。

 

「もし、その気になられましら、いつでもご命令ください」

 

「(え! まじか! そんなことできんの、どこぞの将軍様みたいじゃん)」

 

 前世のテレビニュースでよく登場した北の将軍様の顔を思い浮かべながら、心のなかでそう呟くタクミ。だが、タクミは将軍様みたいな外道ではないので、彼女らを無理やり手篭めにしようなどとは考えていないが。

 

「ち・な・み・にだ。彼女の名前はなんていうの?」

 

 吹きこぼした紅茶を、バトレーから渡されたハンカチで拭き取りながら、そう質問するタクミ。

 

「彼女……いえ、彼女たちに名前はありません」

 

「え?」

 

 名前がないという言葉を聞き驚くタクミ。

 それをよそに、バトレーは言葉を続ける。

 

「タクミ様に名前をつけてもらったのは、私と数名だけです」

 

 そういえば、そうだったな、とタクミは思い返した。

 召喚した兵士やメイドたちをまとめるために、何人かのフィギュアには名前をつけていたのだ。

 

「そんな……君たちで名前をつけられないの?」

 

「はい。残念ながら、我々では名前をつけることはできません」

 

 そう言ったバトレーの瞳は少し悲しそうであった。

 

「(ーーこれは僕が悪いな。もう前の世界じゃない、作って終わりじゃないんだ。僕にとって彼ら彼女らは、大切な仲間であり、家族だ)」

 

 タクミは周囲にいるメイドや兵士を眺めながら、自らの意識の低さを痛感し反省した。そして「よし」と一言呟くと、バトレーの顔

を見る。

 

「バトレー、みんなををここに呼んで」

 

「え、畏まりました」

 

 主人の言葉に一瞬驚くバトレーだったが、すぐに周囲にいる者たちを集合させた。

 自分たちの創造主であるタクミが呼んでいるという言葉を聞いた兵士やメイドはすぐに集合した。

 

「自分で召喚しといてなんだけど、やっぱすごいね」

 

 目の前で綺麗に整列している兵士やメイドを見ながら、タクミは感嘆の声をもらす。自分が製作した模型やフィギュアが意思を持ち、普通の人間と同じように行動しているのだ。感動せずにいられるだろうか。

 

「これも閣下のおかげですな」

 

 タクミは声の主の方へ向く。

 視線の先にいたのは、ウッドランドパターンのMARPAT(米海兵隊迷彩戦闘服)を着用したアメリカ軍人が立っていた。もとはタクミが製作したフィギュアの一人だが、目の前にいるのは、まさに叩き上げの軍人と言っても過言ではなかった。

 軍服の襟に縫ってある星が一つなので、米海兵隊の階級では“准将“だ。

 

「申し訳ありません、“ハメル准将“。突然集合掛けたりして」

 

「お気になさらず。閣下。お呼びとあれば、我々はいつでもどこへでも駆け付けます」

 

 フランク・ハメル海兵隊准将はそう言って笑みを浮かべる。

 ハメル准将は1996年公開のアメリカのアクション映画『ザ・ロック』に登場したエド・ハリスが演じたキャラクターである。映画のなかでの彼の武勲は凄まじい。地獄のベトナム戦争で最高の指揮官と称えられ、名誉勲章を生きて受賞した数少ない人物で、作中では敵でありながらも、人格者として観客の共感を得た。ベトナム戦争終結後、カンボジア内戦や湾岸戦争の他、非合法の軍事作戦の指揮を多数経験。しかし、兵の命と名誉を蔑ろにする政府に反旗を翻し、猛毒のVXガスを強奪。アルカトラズ刑務所を占拠したものの、最後は部下の裏切りで非業の死を遂げた。

 米海兵隊武装偵察部隊通称フォースリーコン出身。

 

「(いや〜、ネット通販の安売りで購入したけど、やっぱ迫力ありすぎだろ)」

 

 タクミは内心ヒヤヒヤしながら、ハメル准将と会話を続ける。いくら自分が製作したフィギュアとはいえ、発しているオーラはまさに歴戦の軍人である。なので基本丁寧語で話す。

 

「だけど、大丈夫ですか?」

 

「ん? 何がですか?」

 

「いえ、召喚した兵士たちを纏めたりするの? いろんな国籍の兵士たちなんで」

 

 目の前に整列しているのは、全てタクミが製作し、実体化したフュギュアたちだ。

 

「いえいえ、閣下に召喚された者たちは皆、優秀で助かってますよ」

 

「そうですか。それはよかったです」

 

 そんなことを話していると、二人のもとにバトレーが歩いてきた。

 バトレーがタクミに集合完了を報告する。そして、タクミがお立ち台に上がり、ハメル准将が大声で「気おつけっ!」と号令をかける。『カツッ!』と踵を合わせる音が響く。

 

 タクミは、皆の視線が自分に向けられていることに緊張するが、緊張をほぐすために咳払いをする。

 

「みんな、突然の集合の呼びかけに集まってくれてありがとう。集まってもらったのは、皆に“名前“を授けたいと思ったからだ」

 

 その言葉を聞き、兵士やメイドたちが「オオー!」という喜びの声を上げた。

 名前をつけて貰えることがよほど嬉しいようだ。

 

「ではさっそく、名前をつけていこうと思う」

 

 タクミがそう言い終えると、バトレーが順番に番号を呼んでいく。

 一番最初にやってきたのは、タクミが気になっていたメイドだった。

 

「(う〜ん、どんな名前がいいかな)」

 

 メイドの顔をじっと見つめながら、タクミは考える。

 顔を見つめられていることが恥ずかしいのか、メイドは頬を紅くする。

 

「よし! 君の名前は“カリーノ“ だ。これからよろしく、カリーノ」

 

「はい! ありがとうございます。主人様!」

 

 カリーノ<イタリア語:かわいい>と名付けられたメイドは喜びの声を上げる。名前をつけられたことがよほど嬉しいのか、カリーノの瞳は潤んでいた。

 タクミは右手を差し出す。

 

「え? あ、あの……!」

 

 自分の主人から突然差し出された右手を見ながら、カリーノは戸惑いの声を上げる。

 

「握手だよ」

 

「はい! ありがとうございます」

 

 そう言って、カリーノはタクミの右手を両手で掴み握手をする。そして手を離すと掴んだ両手を胸元でギュッと握り締めた。

 彼女の今の姿はまるで、大好きなアイドルをまじかで見た熱烈なファンのようであった。

 

「(え! ただ握手しただけよ。僕……)」

 

 カリーノのそんな姿に、これまで女子と交流したことがないタクミはドギマギする。

 その後も次々に兵士やメイドに名前をつけていくが、名前をつけてもらうたびに、彼らは大喜びするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございました。

・キャラクター情報

氏名 バトレー(?歳 男性)
容姿 黒髪赤目 175センチ (参考容姿 ユーリ・ブライア<スパイファミリー>)
趣味 主人であるタクミの為に働くこと。
特徴 もとガレージキットのフュギュアで、タクミの転生特典で実体化した。服装は黒の燕尾服で、タクミの執事兼秘書として常に控えている。 
  自身の主人であるタクミのことを、神の如く熱狂的に崇拝しており、彼の命を脅かす相手に対しては一切の容赦をしない。必要であれば加害者の殺害すら厭わない苛烈な行動をとる。

氏名 カリーノ(?歳 女性)
容姿 栗色の長髪、瞳の色は榛色。 162センチ (参考容姿 結城明日奈<SAO>)
趣味 ?
特徴 タクミ専属メイドの一人。栗色の髪をクラウンハーフアップで纏めている美少女で、同じく名前をつけてもらった。カリーノとは、イタリア語で「かわいい」を意味する言葉で、この名をタクミから付けて貰ったことで、元から忠誠心が高かった彼女は、バトレーと同じく熱狂的なタクミ崇拝者になる。
その他 スリーサイズは上から、B80/W59/H82


氏名 フランシス・X・ハメル准将(?歳 男性)
容姿 深い皺と彫が特徴的な白人男性 175センチ (参考容姿 エド・ハリス<米俳優>)
趣味 戦術及び部下を訓練すること。
特徴 もとはタクミがネット通販で購入していたフュギュアで実体化後は兵士たちの司令官として、戦術策定や軍事訓練などを行う。それと併せてタクミの軍事顧問も務める。

   
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