黒崎一護は救世主を待ち望んでいた 作:朱音
「めっちゃ疲れたー」
屋上に出ると僕はため息を吐きながら呟いた。
『北海道から来た来栖朱音です、一年間よろしくお願いします』というザ・テンプレートな挨拶を終えた僕に待っていたのは大量の質問だった。
『北海道ってやっぱり寒いの?』『雪合戦したことある?』『背が高くない?』「そのキーホルダー何?』などなどなど、転校生が物珍しいのか色んな人から質問攻めにあったのだ。
色々答えてく内に疲れ果てて屋上に来たと言うわけだ。
でもキーホルダーについてだけは答えられなかった、
「フフフ・・・・・・今すぐにでも家に帰ってベッドにダイブしたい気分だ・・・・・・」
「ちょっと!そこはあたしの場所でしょ!」
屋上の角っこの日陰の場所で寛いでいると、突然横から声がした。
そう、出席簿を見た時俺は驚いたんだ。
このクラスに在籍している中で僕が知っているのは数人だけ。
井上織姫、茶渡泰虎、有沢たつき、浅野啓吾、本匠千鶴。そして毒ヶ峰リルカ。
この現実が物語通り進むとは思ってはいなかったけど、まさか毒ヶ峰リルカがここにいるなんて全く思ってもいなかった。
黒崎一護もいなかったし。
しかしその場合死神代行消失編はどうなるのだろうか、そもそもこの世界は本当にBLEACH世界と同一のものなのか、似て非なる何かじゃないのか、世界はこれからどうなるのか。
思考の渦にハマっていく。
「ははっ」
「何笑ってんのよ」
「いやさ、本当に毒ヶ峰さんなんだなって思うとなんだか嬉しくなっちゃって・・・・・・ねぇ、俺と友達になってくれない?」
「はぁ!?」
「一目見た時から気になってましたどうか俺と友達になって下さい」
「なに告白みたいにしてんのよ!言っとくけどあたしはノーマルだからね!」
「わかってるって冗談だよ、でも俺はそのくらい毒ヶ峰さんと友達になりたいんだ」
そこまで思考して自嘲する。
愚図で間抜けで阿呆な俺が何考えたって無駄なこと、ならばせいぜいかつて紙面の上で焦がれ憧れた彼らとお近づきになろう、そうなりたいんだ。
かつて紙面の上から眺めている時好きだったから、俺はそんな不純な動機を抱えている。
毒ヶ峰さん、こんな屑とどうか友達になってはくれませんか?
「なんであたしがあんたなんかと─────ちょっと待って、何その霊圧。どこからどう見ても完現術者の霊圧じゃない」
「あ、バレた?まぁ別にバレても問題ないけどさ」
自分以外の完現術者には会ったことはない、死神にも滅却師にもだ。
だから他者の霊圧をそこまで気にしたことがなかった。
故に隠す術などまるで知らなかったし、隠すつもりもなかった。
あわよくば完現術者という接点を利用して毒ヶ峰さんと仲良くなれたらいいなぁなんて思ってたわけだ。
本当に隠さなかればいけないのは転生者関連、それだけは隠さないといけない。
バレたら『あたしのことキャラクターとして見てたの?』とか軽蔑されちゃうかもしれない。
それは嫌だ。
だから俺はこの秘密を墓まで、いや流魂街まで持っていく。
「ちょっとこのクラス完現術者多過ぎない?
あんたに茶渡に井上にあたし、合わせて合計四人もいるなんておかしいでしょ・・・・・・まぁいいわ、同じ完現術者のよしみであたしが友達になってあげる。
見たところ霊圧の扱い方も知らなそうだし教えてあげるわ。
感謝しなさい、そして感謝の気持ちの表れにあたしにドーナッツ奢りなさい!」
なんとも傲慢な笑みを浮かべて毒ヶ峰さん言い放った。
ピンと指を立てて俺を指差しながら。
そんなこんなで俺と毒ヶ峰さんの歪な友人関係が幕を開けた。
なんでかはわからないけど、きっと毒ヶ峰さんとなら親友になれるだろうなんて楽観的な思考が頭をよぎったんだ。
────────
△月○日□時
流魂街にて
完現術者、それは人と虚の狭間より生まれ出でた者たち。
一般的に、とはいってもこのことすら知るものは多くないのだが、完現術者は両親を虚に襲われたことで能力が発現する。
自ら力を追い求めたわけでもなく、ただ理不尽に力を与えられた存在であるというのが通常の完現術者の認識。
だが真実は違う、因果関係が逆なのだ。
虚に襲われたことによって能力が発現したのではない、彼らの内に宿る物を狙って虚は母胎である母親を攻撃したのだ。
霊王宮の中心に四肢を捥がれた男が存在する、四肢だけでなく内臓も何もかもが剥ぎ取られている。
それは巨大な水晶のような物の中に閉じ込められており、自由などどこにもない。
男は霊王という、王とは名ばかりの生贄でしかないが。
そんな霊王から奪い去られたものは霊王の欠片と呼ばれ、世界各地に散らばっている。
爪は松本乱菊に、そして藍染惣右介に奪い去られ。
静止を司る右腕は浮竹十四郎に。
鎖結は道羽根アウラに。
前進を司る左腕はペルニダ・パルンカジャスという名を持ち。
心臓はジェラルドと名乗った。
他にも欠片は数多く存在する。
井上織姫、銀城空吾、月島秀九郎・・・・・・その他大勢。
そして黒崎一護、彼もまた霊王の欠片をその身に宿す完現術者である。
そう、全ての完現術者は霊王の欠片という名の才能が自らの中に存在するのだ。
完現術には固有能力というものが存在する。
その力は凄まじい。
例えば月島秀九郎は他者に己を挟み込むことによって過去改変を実現させた。
床に挟み込めばかつてその場所に来たことになりいくらでも罠を仕掛けられる。
若木に挟み込めば樹齢1000年を超える大木を生み出すことができる。
井上織姫は事象を否定する。
どんな大怪我だろうと拒絶すれば元通り。
まさに神業、完現術とはこの世の理に干渉する力なのである。
通常の場合、完現術者は愛着が湧いた物を媒介として固有能力を発動する。
だがもしも、何にも愛着が湧かない完現術者が存在していたとしたどうなる?
それはいったいどのような能力を生み出す?
「その答えをこの身で体感するために僕はここに来たのさ、流魂街の一角にね。さぁ見せてくれよ君のその完現術を、超常の力を。道羽根アウラの人生を」
黒崎一護は不敵に笑い、今ここに二人の完現術者が相対した。
「あぁ、君の雇い主のことなら心配しなくていいぜ?どうせ四大貴族は皆殺しにする予定だからね・・・・・・その表情を見ればわかるよ、出来るわけがないと思ってるんだろ?」
アウラは分析する、目の前の男には油断も隙もない、いつ攻撃してもその瞬間手痛いカウンターを喰らうことになるだろう。辺りに張り巡らされた鬼道の罠がそれを証明している。
「安心しなよ、たしかに僕は雑魚だがこの体と魂は黒崎一護の物。たかだか数日の研鑽で卍解を習得するまでに至った少年漫画の主人公、舐めてかかると破滅するぜ?」
巫山戯た調子のトーンで言葉を吐きながら黒崎は剣を抜く。卍の鍔がついたそれは細身の片手剣だ。
「おいおい何かリアクションをしてくれよ、一人で喋ってる僕が馬鹿みたいじゃないか・・・・・・まぁいいや」
未だ沈黙を貫くアウラに対して黒崎一護は切り札を切る。ギアを全開にしなければ勝てない相手だと理解しているのだ。
「─────卍解 天鎖斬月」
修正しました