黒崎一護は救世主を待ち望んでいた 作:朱音
繋ぎ回
オリ主には自分を時々卑下する性質があります
「おおー、これが空座町の景色・・・・・・うん、なんというかかもなく不可もないって感じ」
「それは同意、この町ホントに何にもないわね」
俺と毒ヶ峰さんは裏山のてっぺんに来ていた。
ウキウキとした気分の俺が買ったドーナッツを二人で食べようとしていたのだが、ふとどうせなら景色のいいところで食べたいと思ったのだ。
幸い俺にはそれが出来る、
「でも驚いたわよ、いきなり剣なんて取り出して。普通もうちょっと能力は隠すものじゃない?」
「普通って言っても完現術者にあったの毒ヶ峰さんが初めてだし、別に殺し合いをしてるわけじゃないんだし、まぁいいかなぁ〜って」
人間としての普通、学生としての普通、日本人としての普通、一般常識のようなものは学んできた。
だが完現術者の常識なんて生まれてこの方誰にも習っていない。
そりゃ相手が敵なら隠すが、今横にいるのは友達の毒ヶ峰さんだ、隠す理由がない。
「楽観的すぎよあんた」
「そうかなぁ。まぁいいや、ドーナッツ食べようよ」
呆れ顔の毒ヶ峰さんを尻目に、持ってきた紙袋の中から紙に包まれたドーナッツを取り出す。
俺はカスタードクリームが好きだ、エンゼルフレンチもいいがやはり中にクリームが入っていないとどうも味気ない。
たっぷりのカスタードを包む砂糖がまぶされた甘いパン、噛んだ瞬間にざらざらとしたザラメがいいアクセントとなってもう最高だ。
「あたしエンゼルフレンチ」
「オッケーチョコ付き?チョコなし?」
「もちろんチョコ付き」
丁度引っ越し祝いに家族へナニカ買っていくつもりだった、どうせだからドーナッツにしようと思い、毒ヶ峰さんと一緒に食べる分を含めて十個以上買ったのだ。
その中から毒ヶ峰さんと俺が好きなのを食べて、それ以外を家に帰ってから両親と食べる。
母さんと父さんが好きなドーナッツは抑えてあるし、それに手をつけなければ後はなに食べても大丈夫だろう。
「あ、そうだ。銀城にあんたのこと伝えるけど構わないわよね?」
「ギンジョウ?誰それ」
銀城空吾、死神に裏切られし完現術者にして初代死神代行。
俺は彼のことを知っている、しかし今日転校してきた少女そんなこと知っているというのは不自然だ。
だから知らないふり、嫌われたくないから無知を気取る。
なんと滑稽で醜いことか。
「そこから?・・・・・・そういえば説明してなかったわ・・・・・・まぁいいわ教えてあげる。いい?あたしたち完現術者は社会の異端よ。少数派の強者たち。そんな完現術者の溜まり場が存在するの」
ドーナッツを受け取った毒ヶ峰さんが解説を開始する。
「その名もXCUTION、綴りは・・・・・・ちょっと忘れたわ」
「俺にそのエクスキューションに入れって?」
「そうは言ってないわよ。ただ銀城からは『新しい完現術者か滅却師が現れたら連絡くれ』って言われてるし」
さて、もし銀城空吾に俺の情報が渡ってとしてなにが起こるのだろうか。
もしも俺を殺そうってことなら、雑魚で小市民な自分になす術はない。
そんなことはないだろうが。
先程俺は黒崎一護に対する思考を放棄した、自分のキャパシティを超えた題材だからだ。
しかしこれは自分の生死に関わること、真剣に考えなければいけない。
「まぁ別にいいよ、その人も完現術者なんでしょ。なら俺会ってみたいな」
ケ・セラ・セラ、なるようになれ。
どうせあれこれ考えたってなにも変わりはしないんだから、なんて考えさっきの自分の『真剣に考える』という決意を放棄した。
結局人生なんてその場のノリだ、友達に嫌われなければ俺はなんでも構わない。
そんなことを考えながら毒ヶ峰さんの方を見ると、一つのドーナッツを食べ終わっていた。
「早!」
「そう?普通よこれくらい。あんたも早く食べたら?」
「言われなくてもそうするよ」
『銀城には後で電話しとくから』そう付け加えて毒ヶ峰さんはもう一つドーナッツを紙袋から取り出した。
こうしちゃいられない、そう思い僕もカスタードクリームのドーナッツに噛み付く。
「甘くて美味しい〜」
程よいなんて段階を既に通り過ぎた致死量の砂糖を頬張る、美味しい。
きっと今日も明日もその次も、こんな平和な日常は続くだろう。
黒崎一護がこの街にいないのを知らないのに、俺はそんな楽観的な思考を垂れ流していた。
「・・・・・・よく見るとあんた可愛いわね、見た感じすっぴんなのに」
「え、毒ヶ峰さんの方が可愛いよ?」
「はいはい、無理なお世辞は傷つくだけよ」
なんで俺なんかの方が可愛いと思うのだろう、確かに俺は見た目はいいとは思ってるが毒ヶ峰さんの方が断然可愛いのに(彼は友情フィルターを通してるため現実より毒ヶ峰リルカが可愛く見えているのだ)
そんな他愛もない話をしていたその時、それは現れた。
予測不能、理解不能、何故と問うても答えは返ってこないだろう。
「ふむ、楽しそうな茶会だな」
「「は?」
「突然失礼せめて自己紹介をしておこう。ドルドーニ、ドルドーニ・アレッサンドロ・デル・ソカッチオだ。
僕と毒ヶ峰さんの声がシンクロする。
何故ここに?そんな言葉が脳内を駆け巡る。
それは髭面の男。
それは虚。
それはこの場に似つかわしくない虚、かつて十刃の称号を与えられそれを剥奪された者。
十刃落ちが俺らの目の前に立っていた。
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