黒崎一護は救世主を待ち望んでいた 作:朱音
そろそろ転生者の影響で変わった勢力図とかまとめて一話毎にあらすじに載せた方がいい気がする
「歴史にifはない、どっかの高名な学者の言葉だ。僕としてはそんな当たり前の短文が名言扱いされてることに物申したいんだけどまぁそれはさておいて」
部屋の中で少年は口を開く。
広いわけではない、しかし4畳半アパート程狭くはない、真白の部屋にて完現術者は独り言を口ずさむ。
「これはifだ。BLEACHという完成された物語に二つのイレギュラーが迷い込んだ」
少年は薄気味悪い笑みを浮かべて虚空を眺めている。
どうやら彼には何かが見えているらしい。
いや、もしかしたら何も見えていないのかもしれない。
「もうここから先はユーハバッハすらも見通せない、前人未到の領域に彼女は足を踏み入れる可能性がある」
くつくつと笑いながら彼は立ち上がる、銀城空吾と出会ったあの日のように。
「あぁ、全く楽しみだぜ」
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主よ、我々は
孔雀を見るような目つきで
あなたを見る
それは期待と、渇仰と
恐怖に似た底知れぬものに
縁取られているのだ
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パチリと目を開く、最初に視界に飛び込んできたのは真っ白い天井だった。
どうやら自分は横になっているようだ。
はて、何故俺は横たわっている?記憶はドルドーニと出くわしたところで途切れている。
「あ、起きた?」
声がした、何処かで聞いたことのある声だ。
起き上がって声の方向に視線を向ける、そこにいたのはオレンジ色の髪をした背の高い少年だった。
ボサボサの長い髪は肩の下まで伸びている、後ろから見れば男だとは思わないだろう。
動きやすそうなゆったりとした服を着ていて、手には雑誌を持っていた。
よく見ればそこには『週刊少年ジャンプ』と書かれていた、全国で大人気の漫画雑誌だ。
「君は気絶してしまったんだよ、ドルドーニの霊圧に気圧されてね・・・・・・あぁリルカちゃんのことなら心配無用だぜ?今頃学校で紅茶でも飲んでる筈だ」
頭が上手く回らない、寝起きなのだから仕方がないと自分を納得させようとした瞬間気づく
ちょっと待て、ドルドーニのことを知っているなんてこいつはいったい何者だ?
「うーんまだ状況を飲み込めない?なら水でも飲むか?幸い蓋の空いてないペットボトルが冷蔵庫にある」
そういうとオレンジ髪の少年は冷蔵庫の方に向かっていった。
グルリと部屋を見渡す、マンションのリビングルームくらいの広さだ。
俺はソファに横たわっていて、毛布が一枚かけられていた。
正面には大きなモニター、真っ白な壁に埋め込まれている。
後ろにはいくつかの本棚、綺麗に整頓された漫画本は置かれている。
本棚の隣には大きめの冷蔵庫が置かれていた、この前TVのCMで見た最新式だ。
ドルドーニという虚の前で気絶したのに、見知らぬ場所に連れてこられたのに、いまいち危機感が感じられない。
いつも通りの楽観的思考で『まぁなんとかなるだろ』と考えていると少年の口から思いもよらぬ言葉が発せられた。
「─────『BLEACH』著者久保帯人」
「なっ!なんでそれを⁉︎」
思わず驚きの声は出てきてしまった。
BLEACH、それじゃかつて週刊少年ジャンプにて連載されていた少年漫画。
ある日死神と出会った黒崎一護が、死神代行として戦う話。
作者の名は久保帯人。
それは知ってるそこまでは知ってる、わからないのは何故少年がそれを知っているかということだけだ。
「やっぱり、君は僕と同類なんだね」
冷蔵庫からペットボトルを取り出した少年は、それをこっちに投げて寄越した。
受け取りながら俺は思考する、『同類』それが意味するものは一つしかない。
「・・・・・・あんたも転生者ってこと?」
「半分正解、ちょっぴり違うけどだいたい合ってるよ。にしても君は危機感ってものがないのか?ここは敵地だぜ?」
「ここがどこか俺知らないし、それに慌てふためいたってどうにもなんないし流れに身を任せるだけ。ケ・セラ・セラ」
「ケセラセラ、なるようになると和訳されるアメリカ映画の主題歌を発祥とする言葉だな。あれ?発祥はスペインだっけ?まぁいいや、なんにせよ意外と肝座ってるじゃん」
「何も考えてないだけさ・・・・・・敵地?」
敵地とはどういうことなのだろうか、俺は別にどっかの軍隊に所属しているわけでもないし何かの勢力と戦っているわけでもない。
「あぁ、まだ気づいてなかったんだ。なら教えよっか」
起き上がって横長のソファに寄りかかってる俺、その隣に座った少年はオレンジ色の液体は入ったグラスを持っていた。
恐らくはオレンジジュースだろう、それを一口飲んだ後彼は口を開いた。
「一面に広がる砂漠、開けることのない夜、現世より遥かに高い霊子濃度。ようこそ虚圏へ、僕の名前は黒崎一護。俗な言葉で言ってしまえば憑依転生者ってやつだ」
「ゴメンちょっと待って情報が飲み込めない」
いきなりのカミングアウトに混乱していると、次なる黒崎の言葉で更なる情報の濁流が押し寄せてきた。
「虚、滅却師、死神、完現術者、僕を指し示す言葉は数多くあるけどこれが最も適切かな。僕に与えられた称号は0
──────第0十刃 黒崎一護だ」
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それは喜ぶ、自らに与えられた力を
それは嘯く、自らの生まれを。
それは騙る、真偽不明の友情や愛情を。
俺の目の前でそれは口を開き名乗りを上げた。
『お前はいったいなんなんだ?』俺の問いかけにそれは応えた。
それ/彼は、
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銀城空吾がその知らせを聞いたのは、カレーうどんを食べていた時だった。
彼は雪緒・ハンス・フォラルルベルナが経営するゲーム会社、『ワイエンス・エンタープライズ』への用事で東京に来ていた。
用事自体は簡単で、数十分も有れば終わったのだがせっかく東京に来たというのにすぐに帰っちゃ勿体ない。
何か美味しいものでも食べようかと辺りを散策していたのだが、なかなか決められない。
ならばもうカレーうどんでもいいかという思考が頭をよぎり、近くのうどん屋に入ったのだ。
携帯電話が鳴り、鞄から取り出して見てみるとそこに表示されていたのは毒ヶ峰リルカの六文字。
「珍しいな、お前が連絡してくるなんて」
『何よあたしが電話しちゃダメってわけ?』
「そうは言ってねぇよ」
いつも通りの面倒臭さだと思いながら席を立ちトイレに向かう。
流石にここで電話していたら迷惑だろう。
狭い店内には銀城の他にたった一人しかいないが、それでも迷惑なことには変わりない。
『面倒臭いから要点だけ言うわよ。
あたしのクラスに来た転校生が完現術者で虚のこと知ってるっぽい。
ドルドーニとかいうやつの殺気で気絶しちゃった。
山の上にいた時に一護の使いがきて連れ去っていった。
別にそれだけ、大した用じゃないわ」
「どう考えても大した要件だろ」
リルカのクラスにやってきた転校生が完現術者で、黒崎の使いが連れていった?
なんだそれは、空座高校何人異能持ちがいるんだ。
ただでさえ井上織姫が霊王の欠片持ちなんだ、その上新たな完現術者なんて偶然で片付けられる段階はとっくに超えている。
それこそ何かしらの陰謀を疑ってしまうレベルだ。
それにわざわざ黒崎一護が何故十刃落ちを遣わせる。
「あ、悪いけどもう切るわよ。石田の奴が呼んでるみたい」
「ちょっと待て!そいつの特徴とか色々教え─────プツッ────」
相変わらずのわがままマイペースに少しイラつきながらもこれが毒ヶ峰リルカだなと自分を納得させる。
聞き分けが良くて優しくて気配りが出来るリルカなんてリルカじゃない。
アイドルへの解釈違いで苦悩する厄介ファンのような思考をしながらトイレを出る。
「こうなったら俺が行くしかねぇな・・・・・・さっさとうどん喰うか」
再び席についた銀城はカレーうどんをものの数分で啜り終わると、代金の800円を払って店を出た。後に残された一人の滅却師に気づかずに。
「あの外見であの霊圧・・・・・・あれが初代死神代行銀城空吾。随分と早食いですねぇ」
スッカラカンの店内で特徴的な丸いメガネをかけたスーツ姿の男が言葉を吐いた。
「いやはやまさかこんなところで出会うことになるとは。人生というものは
彼の名はキルゲ・オピー。
こことは異なる次元において、見えざる帝国「星十字騎士団」の一員にして虚圏狩猟部隊の統括狩猟隊長を任されるはずだった男の名だ。
「虚に近い力を持つ彼の力が我々滅却師に対してどう作用するのか、これまた興味が湧いてきますねぇ」
微笑を浮かべつつカレーうどんを啜る彼が忠誠を誓っているのはただ一人。
見えざる帝国の皇帝であるユーハバッハだけ。
そんな彼が何故今日この日現世にてうどん屋にいたのか、それを知るものはいないだろう。
ただ一人の皇帝を除いて。
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