黒崎一護は救世主を待ち望んでいた   作:朱音

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この作品では星十字騎士団は大暴れします


対話 前編

 「第0十刃・・・・・・第0十刃・・・・・・」

 

 十刃、彼らは体のどこかに与えられた称号が刻まれている。

 その称号は数字、殺傷能力の高い順に刻まれた1から10の数字だ。

 実際のところは0から9であったと記憶しているが、脳裏に思い起こされる第0十刃はヤミー・リカルゴ。

 決して黒崎一護ではない。

 

 「そう、僕はゼロだ。数ある破面の中でも最大の殺傷能力を保持していると藍染に認められたってこと。あ、ついでに僕はXCUTIONの一員だぜ」

 

 「・・・・・・完現術って便利だなぁ」

 

 「現実逃避を始めたか。それともまだ眠い?」

 

 完現術により黒崎一護の口に運ばれていくオレンジジュースを死んだ目で眺めながら、俺はのんびりした声音で呟いた。

 今日の出来事は少しばかり濃すぎる、まだ脳内で消化しきれてない上に追加で更なる爆弾情報が降ってくるときた、鈍くて楽観的な俺でも流石に正気じゃ受け止められない。

 

 「おーい正気に戻れー」

 

 黒崎一護が僕の頭に触れると、途端に脳が活性化した。

 寝起きで鈍っていた脳みそが一瞬にしてはっきりし、現実逃避していた思考は現実に引き戻された。

 

 「はっ!」

 

 「脳みそを活性化させる回道を使った、かなり難易度は高いんだぜ?」

 

 ピンと指を立ててドヤ顔で自慢してくる黒崎、多分詠唱破棄であることも含めてドヤ顔しているだろう。

 いや、回道に詠唱は必要なかったか?曖昧な知識を思い出しながら思考を整理する。

 

 目の前の少年は黒崎一護であり第0十刃だそうだ、そしてここは虚圏。

 見ず知らずの人間の言葉を簡単に信じるのもどうかと思うが、確かにここは実家より霊子濃度が濃い。

 更に『BLEACH』に『久保帯人』、これらの単語を知っていて転生者でないことなんてありえないだろう。

 他に転生者がいて言伝に聞いたという可能性も否定はできないが。

 その上XCUTIONの一員であるらしい、このことから導き出されるこれからの俺の最善の行動は・・・・・・

 

 「辞めた」

 

 「何を?」

 

 「ごちゃごちゃ考えるのをやめた、なるようになれだ。ということで早速本題に入ろうよ黒崎さん。何か目的があって俺を呼んだんでしょ?あ、俺もオレンジジュース飲むから貰っていい?」

 

 ここは黒崎のホーム、未熟で愚鈍で雑魚な俺が何をしようが意味はないだろう。

 そもそもここには他の十刃もいる、つまり俺の生きて帰れる道は()()()()()()()()()()()()()()()()()()、それだけだ。

 下手に最善策を考えてドツボにハマるよりは気楽に行った方がいいような気がしたのだ、幸い今のところ敵意は感じられないし。

 ケ・セラ・セラということだ、意味は間違ってるかもしれないけど。

 それに加えて、『なんとかなるだろ』という楽観から未だに俺は抜け出せてない。

 

 「豪胆なんだか考えなしなんだか、けど怯えられるよりは百倍いいぜ。オレンジジュースなら瓶が冷蔵庫に入ってるからコップに入れてくれ」

 

 「勿論毒は入ってないよ」と付け足しながら黒崎さんは立ち上がる。

 

 「さてと、それじゃあ僕もホワイトボードでも持ってくるか。現状説明が必要だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 「それで、君は本当にそれを肯定するのか?」

 

 永遠に明けない夜の元、一つの契りが結ばれる。

 履行される保証はなく、ただ絶対的実力の差のみで成立する契約。

 

 「肯定と否定について議論するにはこの場所は不適切すぎるぜ」

 

 虚圏の砂漠の何処かに存在する王宮、名を虚夜宮。

 その天蓋の上で二人の異分子は語り合い、測り合う。

 一人はこの世界に生まれる筈ではなかった少年、もう一人は比類なき頭脳と才を持って生まれた死神。

  

「私を斃すために、斃すべき相手である私の教えを乞おうというのか?」

 

 ほんの少し、少しだけ楽しそうに微笑を浮かべる死神。

 それに対して一切怯むことなくイレギュラーは返答する。

 

 「ああ、躊躇う理由は何処にも無い。だって─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

 

 

 「これよりこの世界の現状について授業を始める!僕のことは黒崎先生と呼ぶこと!」

 

ホワイトボードの前に立って黒いマーカーを握っている黒崎さん、そして俺はその正面でソファに座っていた。

 

 「せんせー、なんでそんなテンション高いんですか?」

 

 オレンジジュースを啜りながら俺は問いかける、何故だか知らないが妙にテンションが高い。

 

 「同郷だぜ?初めて僕以外の転生者に出会ったんだ、そりゃ嬉しいよ。しかもBLEACH読んでるってことは最低限ジャンプの漫画はいくつか読んでただろ?懐かしい漫画の話とか出来そうでワクワクしてるってのもある」

 

 「たしかにこの世界前世の漫画と同じものは一つとして存在しないしなぁ」

 

 週刊少年ジャンプという雑誌は存在するものの、連載されている漫画はどれも前世で見たことのないようなものばかりだ。

 そういう意味ではこれからの黒崎さんとの会話が楽しみになってきた、懐かしい思い出に浸れるかもしれない。

 

 「さて、与太話はこれくらいにして本領に入ろう。来栖朱音、君は滅却師についてどこまで知ってる?」

 

 「何処までと言われても原作で描写されてたことくらいかなぁ、強いて言うなら『見えざる帝国』とか『ユーハバッハ』あとは『現世の滅却師は石田雨竜と石田竜弦しかいない』とか?」

 

 これまでBLEACHという物語に全くと言っていいほど関わっていない、そのため原作知識以上のものを知らないのだ。

 だがこんな質問をしてくるということは、恐らく黒崎さんはその先を知っている。

 俺の知らないナニカを知っている。

 

 「そう、大体合ってる。でも今の言葉で一つ事実と異なる点があるんだ」

 

 ホワイトボードに黒い線が引かれていく、気づけば数人の名前と共に二つの黒い円が描かれていた。

 片方は『純血統滅却師』もう片方は『混血統滅却師』という括りのようだ。

 

 「ここで問題、原作において黒崎真咲の死の間接的原因となりユーハバッハが力を取り戻すキッカケになった出来事の名は?」

 

 「聖別(アウスヴェーレン)

 

 「正解だ、300黒崎ポイント」

 

 クロサキポイントってなんだよ、と思いつつノリノリで教師ムーブをしてくる黒崎さんの後ろのホワイトボードを眺めつつオレンジジュースを飲む。

 これ多分果汁100%のやつだ、果肉が入ってるやつだ、めっちゃ美味しいやつだ。

 

 「原作において黒崎真咲の死の間接的要因となった聖別、その対象は『混血統滅却師』のみだった。黒崎真咲は純血統なんだけど、恐らく体内に入り込んだ虚のせいで混血判定を食らったんじゃないかってのが僕の考え・・・・・・気づいた?そのオレンジジュースは糖度高めのオレンジを贅沢に絞った沖縄土産だぜ」

 

 「後で一本貰っていい?瓶で」

 

 「勿論いいぜ、ついでにどこで買ったか教えてやるよ」

 

 「自分の金で買うほどじゃないかな」

 

 本当に美味しいオレンジジュースのせいで黒崎さんの話から意識が逸れてしまった。

 

 「話を戻そう、今話したのはあくまで原作での話。実はこの世界では黒崎真咲も片桐叶絵も生きている、生きているんだ」

 

 「聖別で全ての力を奪われておいて生きてるって?」

 

 「違う、そもそもこの世界において聖別は行われなかったんだ。あの雨の日、六月十七日。黒崎真咲は華麗にグランドフィッシャーの脳天に穴を開けた」

 

 キュッキュという音と共にマーカーの線が白いホワイトボードを彩っていく。

 

 「これが何故だか僕にはわからない、一応の検討はつくけど。見えざる帝国にアクションを仕掛けようとした時もあったけど、あいつらガードが硬すぎてまともに接触すら出来ない。けど理由はなんでも構わないんだ、あの日聖別が行われなかった。それだけで僕に勝機が生まれる」

 

 「まぁたしかに、奪う力の持ち主が与えてばかりで奪わなかったら本人は弱いまま。そういうことでしょ?」

 

 「その通り、星十字騎士団の実力がどれほど乖離しているかはわからないけどユーハバッハさえ押さえればあとは黒崎一護の才能には敵わない有象無象ばかり。リジェとジェラルドがちょっと危険ってくらいかな」

 

 「・・・・・・そもそもどうして聖別は行われなかったんだ?一瞬見えざる帝国に俺らのような転生者がいるとおもったけど、それだと少しおかしい。いやまぁ俺の思考がその転生者に及んでないだけかもしれないけど」

 

 「へぇ、どうしておかしいと思うんだ?とりあえず話してみて」

 

 初めは転生者の仕業かと思った、でもそれだと辻褄が合わない点がいくつかある。

 そもそも見えざる帝国に転生者が存在したとして、聖別を阻止するにはユーハバッハがその者の提言を聞き入れる必要がある。

 つまりは転生者はそれなりの地位にいて、ユーハバッハからそれなりの信用を勝ち取っていないといけないのだ。

 その時点でちょっと無理がある、原作を見る限り誰かの言葉を聞きいれるような性格じゃ無いでしょユーハバッハは。

 

 「色々あるけど・・・・・・そんなことする意味が見当たらないのが一番かな」

 

 「いいね、僕も同じことを考えてたんだ。ユーハバッハ無くして滅却師が死神との戦争に勝つことは不可能。そして聖別なしのユーハバッハはそこまで強いわけではない」

 

 「わざわざ自らの主君の力を弱体化させる意味がないと」

 

 「そう、意味も理由もない。結局のところユーハバッハは和尚を倒せないと霊王を吸収出来ないんだからね。他にも色々仮説を考えてみたけどどうも納得がいかない」

 

 ホワイトボードには『転生者一人を聖別しただけで地上に住む全ての混血統滅却師と同等の力が手に入ったから』『そもそも見えさる帝国の転生者はユーハバッハの敵』『転生者は内部からユーハバッハを殺そうとしている』『転生者は人道主義』などなどの可能性が記されていた。

 

 「どれも納得がいかないものばかり。どう考えても見えざる帝国に転生者がいるなら、もうとっくに僕に接触してきてるはずだという結論に辿り着く。だからまぁ、僕は転生者はいないと思ってるよ」

 

 「でも聖別が行われなかったってことは何かが起こってるはず」

 

 少なくとも原作で聖別があった以上、この世界でそれがないとなると何かしらの異常が起こったとみるべきだ。

 俺の考えは浅慮だしなにか聖別を行わないことによる得があるのかもしれない。

 黒崎さんがの考えがどこまで正しいのかはわからないけど。

 

 「ま、そこら辺は深く考えてないぜ。そもそもこの世界がBLEACHの世界だっていう保証はない。よく似た異世界かもしれない。それにもし見えざる帝国に転生者がいようと、僕の完現術相手には無力だろうさ」

 

 ニヤリと笑って黒崎はこの話を締めた。

 しかしまだ対話は終わらない、むしろこれからが本題だ。

 

 

 

 

 

 

 

彼はまだ知らない、見えざる帝国には本当に転生者は存在しなかったということを。

 

彼はまだ知らない、ルキアが現世に訪れた日がいつなのかを。

 

そして今日この日、現世にて新たなる死神代行が誕生する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回のまとめ
・黒崎一護は見えざる帝国には転生者がいないと考えている
・黒崎一護はまだナニカ隠してる
・オリ主は寛ぎすぎ
・オリ主はポカも多いけどそこそこ勘がいい
・黒崎はBLEACHの世界とか言ってるけどこの世界を現実として見れてると思いましたね。逆にオリ主の方が怪しい

黒崎一護はユーハバッハが転生者である可能性を早期にナシと判断しました
それについては次回
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