ハイスクールD×D 荒ぶる神を宿す者   作:初代凡人

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やっと書けた!

さっさと本編へ突進!


第十四話 バカの覚悟と本気

竜真side

 

リアスさんと別れて広場に戻ってからしばらく。奥の方でライザーが魔方陣から出てくるのが見えた。

 

「冥界に名だたる悪魔の皆々様! この度は、フェニックス家とグレモリー家が結ばれる歴史的瞬間を皆様と分かち合えることを喜びたいと思います!」

 

イッセーが来る気配はまだない。そういや、イッセーが必ずしもこのパーティが終わる前に目が覚めるとは限らないな。

 

……もし間に合わないなら、俺が行くしかない。

 

一応、皆にも確認はとったが、イッセーが来たら全力でサポートしてくれるらしい。

 

「それでは、ご紹介しましょう! 我が妃、リアス・グレモリー!」

 

魔方陣からリアスさんが出てくる。…チッ、これ以上は待てない。

 

俺は籠手を出そうとする。

 

 

 

 

 

バンッ!!

 

 

 

 

 

だが、その直前で扉が大きな音を立てて開いた。

 

……冷や冷やさせやがって。しかもなんつーおいしいタイミングで登場してんだよ。

 

 

 

 

 

「部長!!」

 

 

 

 

 

――イッセー!

 

イッセーが来たのを確認した俺たちはイッセーに向けて走り出す。

 

こんな突然の侵入者に、警備兵が黙っているはずないからな。だから、俺たちが足止めをする!

 

「おい、貴様! 此処が何処だと思って――」

 

「俺は駒王学園二年、オカルト研究所属の兵藤一誠! 部長、リアス・グレモリー様の処女は俺のもんだ!!」

 

ライザーの言葉を途中で遮り、叫ぶイッセー。なんつーこと言ってんだあのアホ!?

 

そんな中、イッセーの前に警備兵が立ち塞がる。

 

「貴様、一体何処から――ぐあ!?」

 

「やっと来たね、イッセーくん!」

 

「……遅いです」

 

「あらあら、皆で待ってましたわ」

 

その警備兵たちを祐斗が斬り、小猫が殴り、朱乃さんが感電させる。フルボッコだドン!

 

「イッセー!」

 

「っ!? 竜真!」

 

俺も皆に続いてイッセーを呼びながら跳び蹴りを決める。

 

「――ホォアタァァァァァ!!」

 

「げばっ!?」

 

――イッセーに対して。

 

もろに腹にくらい、ダウンしたイッセーの頭を掴み持ち上げる。

 

「おいコラ、イッセー。助けに来たのはよしとしても、さっきのセクハラ発言はなんだおい? 此処にはリアスさんの親族もいるんだぞ? 死にたいか? そんなに死にたいのか?」

 

「い、いや、そんなつもりは……!」

 

「ない、とは言わせねぇぞ! せっかく見直してやったのにマイナスに戻ったわ!」

 

「ちょっと待て! それって俺の評価が元からマイナスだったってことか!?」

 

「当たり前だボケ!!」

 

逆にプラス評価だったら俺は相当甘いぞ。……いや、甘くてもプラスにできないかも。

 

「貴様ら! これ以上好き勝手は――」

 

「うるせぇ!!」

 

「「「「「「「「ぎゃあああぁぁぁぁぁ!?」」」」」」」」

 

イッセーを解放して、後ろに振り向きながら劫火球を放つ。それをくらって警備兵たちは吹っ飛ぶ。

 

「おいイッセー。リアスさんは今、暗闇の中にいる。明日の自由も見えない暗闇の中にな。そしてリアスさんは、光を求めている。その暗闇を晴らしてくれる救いという名の光を。お前にその役目を果たせるのか?」

 

イッセーに背を向けたまま問う。まあ答えはわかってるが、これで少しでも畏縮した様子を見せるなら俺が代わりに行く。

 

「当たり前だ! 俺は部長を救うために来たんだ! その暗闇の原因であるあの焼き鳥をぶっ飛ばしてやる!」

 

背中越しでも伝わってくるイッセーの想い。……そうだな。それでこそイッセーだ!

 

「なら行け! お前のチンケな灯火、俺たちが守り通す! 囚われの姫を救ってこい!」

 

そう言うと同時に警備兵たちに突撃する。

 

「おう!! サンキュー、皆!」

 

「ま、待て――ぐはっ!?」

 

イッセーを止めようとする警備兵を容赦なく殴り飛ばす。

 

「悪いが、あいつのことは追わせない。どうしても追いたいんなら――俺を倒しな」

 

ネクタイを外し、上着を脱いで警備兵たちの前に立ちはだかる。

 

他の三人のところは既に終わっていた。終わったなら手伝ってくれよ……。

 

「く、調子に乗るな! 行くぞ!!」

 

「「「「「「「「おおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」」」」

 

警備兵全員が俺に向かってくる。

 

……さて。悪魔になってから初めての(圧倒的人数差の)多対一だ。

 

「――楽しませてくれよ!!」

 

 

 

――――――――――

 

「イッセーくん、ライザーに勝てるかな?」

 

「とりあえず、この間のままじゃ最大まで倍加しても勝てないだろうな。――で、なんで俺だけ拘束されてるんだ?」

 

「……イッセー先輩、勝算があるのでしょうか?」

 

「さあな。考えなしにあそこまで啖呵を切るとは思えないが……。――で、なんで俺だけ拘束されてるんだ?」

 

「竜真くんは、イッセーくんが負けると思うんですか?」

 

「まあ、なんやかんやでやる時はやる奴ですから、勝ってくれると思います。――で、なんで俺だけ拘束されてるんだ?」

 

「「「………」」」

 

「いい加減こっち見ろや!!」

 

あれからしばらく警備兵とガチ戦闘を繰り広げてる内に、イッセーがライザーと決闘をすることになった。

 

驚くことに、これを提案したのは魔王サーゼクス・ルシファー様。……つまり、リアスさんのお兄さんだ。

 

この決闘――余興のためにイッセーを招き入れたのもルシファー様らしい。それを聞いた俺は疑問を覚えたが、まあそれはあとにしよう。

 

それでイッセーとライザーの決闘のために即興のステージが作られ、空にも映像が出てきたので俺たちも暴れるのを止めたのだが……。

 

 

 

 

 

警備兵をボコるのを止める→なんかメイドに取り囲まれる→イスに座らせられる→そのまま恐ろしいスピードで拘束される→そのまま皆と観賞(今ここ)

 

 

 

 

 

………わけがわからない。

 

いや、全員仲良く拘束ならまだわかる。しかし、拘束されたのはなぜか俺だけで皆は普通に立っている。

 

何? これがこっちでのVIP待遇なのか? だとしたら今すぐ解放しろ、俺はVIPでもなんでもないから!

 

「竜真様。どうかおとなしくなさってください」

 

ちなみに、俺のすぐ近くにグレイフィアさんがいるので下手に動けない。

 

「おとなしくって……。いきなりこんな状態にされたら誰だって不快に思いますよ」

 

「それは竜真様が暴れすぎたからです。しかし、それ以外にも理由はあります」

 

「理由?」

 

なんだ? 心当たりがない。……あれか? チキンお嬢様の首を締め上げたからか?

 

「竜真様は魔方陣を通って来られたのでしたね。しかし、竜真様は今回が最初の冥界への入国ですので、本来ならちゃんとした申請をしなければ入国できないのです。つまり、今の竜真様は不法入国の罪人ということになります」

 

「…………と言ってるんですが、お二方」

 

「「………」」

 

朱乃さんと小猫に視線を向けるが、向こうはこちらを見ようともしない。汗をかいてるように見えるのは気のせいじゃないだろうな。

 

というか、ふざけんじゃねぇよ! 二人とも何も言わなかっただろ!?

 

「あ、そろそろ始まるよ」

 

祐斗のその言葉を聞いて、映像に目を向ける。

 

イッセーとライザーは既に戦闘体制に入っていた。

 

『部長、十秒でケリをつけます』

 

『十秒だと? はっ! なら俺はその減らず口を五秒で黙らせてやろう!』

 

ライザー相手に十秒? 確かに、相手が不死なら時間が経てば経つほど自分の体力だけが減って不利になるが、大丈夫なのか?

 

『部長、プロモーションの許可を!』

 

イッセーはリアスさんからプロモーションの許可をもらい、<女王>になる。さあ、どうやってライザーを倒す気か見せてもらおう。

 

『部長!! 俺は木場みたいな剣の才能があるわけじゃありません! 朱乃さんみたいに魔力の扱いに長けてるわけでもないし、小猫ちゃんみたいな馬鹿力もありません! アーシアみたいな凄い治癒の力があるわけでも、竜真みたいに格闘センスがあるわけでもありません! それでも俺は、最強の<兵士>になってみせます! 神様だって倒してみせます! ――輝きやがれ!! オーバーブーストォォォォ!!』

 

Welsh(ウェルシュ) Dragon(ドラゴン) over(オーバー) booster(ブースター)!!』

 

イッセーがそう叫ぶと同時に、<赤龍帝の籠手>が凄まじい光を放つ。

 

更に、イッセーの体が赤い鎧に包まれていく。その鎧はドラゴンをモチーフにしたデザインだった。

 

『これが禁手(バランスブレイカー)、<赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)>!! 俺を倒すなら本気で来いよ、フェニックス! なんせ、<禁じられし忌々しい外法>らしいからな!』

 

あれがイッセーの切り札……。

 

挑発的なことを言っていたが、その言葉は大げさでもなんでもない。あれを身につけた瞬間、イッセーの力の波動がバカみたいに膨れ上がった。

 

(テン)

 

籠手からそんな音声が発せられるのが聞こえた。なるほど。十秒ってのはあの鎧を発動できる時間だったのか。

 

イッセーは鎧の背についたブースターから魔力を噴出して飛び上がる。そして手から魔力を出してライザーに向けて放つ。

 

すると、魔力は映像越しでもその威力が伝わってくるほど強力なものとなった。おそらく山を吹き飛ばした時のものより威力は上だろう。

 

ライザーはその威力を感じたのか、受け止めるのをやめて避ける。

 

(ナイン)

 

イッセーはその隙に凄まじいスピードでライザーに突撃する。しかしライザーは冷静に避ける。スピードがつきすぎたのか、イッセーはそのまま壁に激突した。

 

鎧をつけてるお陰でダメージはないみたいだが、あのパワーとスピードは凄いな……。イッセーですらあれだけの力を得るとは、まさに禁じ手ということか。

 

(エイト)

 

『赤龍帝のガキ、今の貴様はただの化け物だ! 火の鳥と鳳凰! 不死鳥フェニックスと称えられた我が一族の業火! その身で受けて燃え尽きろ!!』

 

ライザーが火の鳥を連想させる炎を出す。まともにくらえばひとたまりもないだろう。

 

『テメェのチンケな炎で、俺が消えるわけねぇだろ!!』

 

だがイッセーは怯むことなく、正面から突っ込み拳を叩き込む。

 

しかし、流石に威力は向こうの方が上だったようで、イッセーは床に叩きつけられる。

 

『怖いか!? 俺が怖いか!? 貴様は<赤龍帝の籠手>が無ければ何もできんただのクズだ!』

 

『ああ、そうだよ! それでも俺はお前に勝つ! そして、部長を取り返す!』

 

(セブン)

 

イッセーは再び飛び上がって、ライザーに突撃しながら拳を構える。ライザーも手に業火を纏う。今度は避ける気はないらしい。

 

そのままお互いの拳がクロスカウンターの形で相手の顔に直撃する。イッセーも今のは効いたのか、顔から血が出ていた。

 

『ふん、この程度――がは!?』

 

平気そうにしていたライザーだったが、次の瞬間口から血を吐いた。

 

どう見ても打撃のダメージとは違う反応だ。イッセーの奴、何をしたんだ?

 

イッセーの左手をよく見てみると、手に何かを持っているのが見えた。って、おいあれは!?

 

『何!? 十字架だと!?』

 

そう。イッセーが持っていたのは悪魔が苦手とする十字架だった。

 

(シックス)

 

『いくら不死身でも、聖なるパワーを高めた一撃はそう簡単に回復できねぇだろ?』

 

……そうか! よく考えれば同じフェニックスでも、普通のフェニックスとは違ってライザーは悪魔。それなら悪魔の弱点もそのまま奴に通用する。

 

ただの十字架なら効果は薄いだろうが、赤龍帝の力で高めた聖なる力なら確実にダメージを与えれる。

 

『バ、バカな! いくら龍の鎧を身につけているとはいえ、聖なる力を高めた十字架に触れてる貴様もただでは――』

 

そこまで言ってライザーは黙った。何かに驚いてるみたいだが……。

 

『貴様…! まさか、自分の左腕を籠手に宿るドラゴンに差し出したのか!?』

 

何!?

 

俺は籠手を出して視力を強化し、改めてイッセーの<赤龍帝の籠手>を見る。すると、血管のようなものが微かに浮かび、脈を打っているのがわかった。

 

……そうか。あの力も、腕を対価として赤龍帝にやって得た力なのか…。

 

『そうさ! 俺はこの力を一時的に使えるようにするために、ドラゴンに左腕をくれてやった! この腕は本物のドラゴンの腕だ! 十字架なんて効かない!』

 

『そんなことをすれば、二度と元には戻らないのだぞ!?』

 

(ファイブ)

 

『それがどうした! 俺みたいな奴が腕一本支払うだけで部長を取り返せるんだ! こんなにいい契約は他にねぇだろ?』

 

イッセーは、自分の腕を失ってでも部長を取り返せす気か……。

 

……本当、バカが本気になったら、これ以上に怖いものはないな。――あんたもそう思ってるんだろ? ライザー。

 

『……イカれてるな。そこまでしてリアスを取り返したいのか!?』

 

『当たり前だ! 部長は綺麗で、強くて、優しい人で、俺たちのオカルト研究部に欠かせない存在なんだ! そんな人をお前なんかに渡してたまるかぁぁぁぁ!!』

 

(フォー)

 

イッセーはブースターから魔力を噴出して、ライザーに突っ込む。

 

――だがその時、イッセーの鎧が突然バラバラになり霧散してしまった。勢いを失ったイッセーはそのまま倒れてしまう。

 

「イッセーくん!? どうして鎧が!?」

 

「……まだ時間は残っていたはずなのに」

 

祐斗と小猫は突然の事態に疑問を口にする。

 

「…………いや。よく考えると、別に驚くことでもないな」

 

「どうしてですか?」

 

俺の言葉に朱乃さんが質問をする。

 

「簡単な話ですよ。今のところ素の力では悪魔でも下のレベルのイッセーの体が、いきなり上級悪魔以上のレベルの力に耐えられると思いますか?」

 

そう言うと全員納得した表情になる。更に、グレイフィアさんが続いて説明してくれる。

 

「竜真様の言う通りです。あの力を使える制限時間は十秒だとしても、彼の体はそれについていけるとは限らない。あの力を使うには、まだ今の彼では力量不足だったのです」

 

そう。RPGで例えると、レベル一で最強の呪文を覚えていても、MPが足りないから使えないという感じだ。

 

再び映像を見ると、ライザーがイッセーを持ち上げていた。

 

『さて、そろそろ終わらせようか。安心しろ、殺しはしない。少し気絶してもらうだけだ。目が覚める頃には式も終わっているだろう』

 

そう言うとライザーは手から炎を出した。

 

――イッセー! 俺が言ったことを思い出せ!

 

さっき鎧が消えると同時に、籠手に力の波動が移ったのを感じた。

 

今回のイッセーは、さっきの十字架のように対悪魔用の物をアーシアさんからもらってきてるんだろう。それならまだ()()があるはずだ。

 

籠手に移った力と、持ってきてるであろう()()をうまく使えばまだ勝機はある!

 

『まだ、だ…! 火を消すには……、水だよな…!』

 

イッセーが水の入った小瓶を取り出した。その中身は――聖水。

 

そうだ、それだイッセー!

 

前にリアスさんから聞いた話だと、上級悪魔レベルになると聖水とかはあまり脅威にはならないらしい。

 

――だが、<赤龍帝の籠手>で強化された聖水でもそんなことが言えるか?

 

『ブーステッド・ギア・ギフト!!』

 

『Transfer!!』

 

イッセーは小瓶の蓋を開けて聖水をライザーにかける直前に力を譲渡する。

 

『ぐあああぁぁぁぁぁぁ!?』

 

それがかかったライザーの肌は、ジュウゥゥゥ!! と音を発てて焼ける。その傷痕はいつものように炎が出て癒えることはなかった。

 

ライザーが背中に出していた翼の形をした炎も大きくなったり小さくなったりを繰り返す。あれなら精神も疲弊して再生能力も衰えてるはずだ。

 

――畳み掛けるなら今だイッセー!

 

『アーシアが言っていた。十字架と聖水が悪魔の弱点だって。それを同時に高めて攻撃すれば、悪魔には相当なダメージだよな!?』

 

ライザーは最後の抵抗で火球をイッセーに向けて放つ。イッセーはそれを大きくジャンプしてかわす。

 

『木場が言っていた。視野を広げて相手の周囲を見ろと!』

 

イッセーは着地すると同時に、小瓶に残っていた聖水を十字架を持っている左腕にかける。

 

『Transfer!!』

 

『朱乃さんが言っていた。魔力は体を覆うオーラから流れるように集める。意思を集中して、魔力の波動を感じればいいと!』

 

十字架と聖水の聖なる力、更にイッセーの魔力が加わり、それらを赤龍帝の力で強化したイッセーの左腕は七色の輝きを放つ。

 

『小猫ちゃんが言っていた。打撃は体の中心線を狙って、的確かつ抉りこむように撃つんだと!』

 

イッセーは左腕をライザーに向ける。いつでも打撃を撃ち込める体勢だ。

 

『竜真が言っていた。周囲の状況を把握し、それを最大限に利用して勝利を掴めと!』

 

そうだイッセー。今のお前の状態なら、そいつにも勝てる!

 

『ま、待て! わかっているのか!? これは悪魔の未来にとって、大事なことなんだぞ! お前のような何も知らないガキがどうこうしていいようなことじゃないんだ!』

 

『ああ、細かいことはよくわかんねぇよ。でもな、気を失う前、うっすらと覚えていることがある。――部長が泣いてたんだよ! 俺がお前を殴る理由は、それだけで充分だああぁぁぁぁ!!』

 

イッセーの左拳がライザーの腹に深く突き刺さる。ライザーはそのままその場に倒れる。

 

と、そこへ乱入する者がいた。チキンお嬢様だ。ライザーを庇うようにイッセーの前に立つ。

 

『文句があるなら俺のところへ来い! いつでも相手になってやる!』

 

イッセーは拳を顔すれすれに近づけてそう言った。……ありゃ、チキンお嬢様惚れたか?

 

と、戦いが終わったからかフィールドが崩れ始めた。ヤバい! あいつ飛べねぇのに!

 

他の三人は既に翼を出して飛んで行った。俺も行きたいけどこの状態じゃ……って、あれ? いつの間にか拘束が解けていた。

 

「竜真様。もう行っていただいて結構です。元々この戦いの最中に変な行動をさせないためのものでしたので」

 

「そういうことですか…。ありがとうございます!」

 

俺も翼を出して三人のあとを追う。修行中に飛べるように練習していたので、今では自由に飛べる。

 

少しして四人が見えてきた。

 

「イッセー!」

 

「竜真! って、ちょ、小猫ちゃあぁぁぁん!?」

 

小猫がイッセーを持っていたが、俺の方に投げてくる。……俺の後ろからこっちに近づいてくる気配がする。よく知ってる気配だ。

 

「た、竜真! 避け――いや、やっぱり止めてくれ!」

 

「シュウゥゥゥゥト!!」

 

「ごべ!?」

 

俺は後ろから近づいて来た気配に向けてイッセーを蹴り飛ばす。

 

「――イッセー!」

 

気配の正体は、リアスさんだった。リアスさんはイッセーをしっかりと抱き止めた。

 

「ぶ、部長…」

 

「ありがとうイッセー…。私の、イッセー……!」

 

イッセーの名前を何度も呼ぶリアスさん。こりゃあ、リアスさんもイッセーに惚れたか? どんどんアーシアさんのライバルが本人の知らないところでできてるんですが……。

 

とりあえずこのまま飛んでても仕方ないので、皆で一旦庭に下りた。

 

すると、イッセーが魔方陣が両面に書いてある紙を取り出した。裏側の魔方陣を上に向けると、魔方陣から何かが出てきた。

 

それはライオンの体とワシの顔、翼、足を持つ生き物だった。

 

「これグリフォンか!? ヤバい、超乗りたい!」

 

「知ってるのかよ竜真……。流石は幻獣マニア」

 

「あらあら、竜真くん。今回は我慢してください。イッセーくん。せっかくですから部長を乗せて行ってあげてはどうです?」

 

「えぇ!? 俺がですか!?」

 

当たり前だ。お前以外に誰がいる。

 

「そうね。お願いできる?」

 

「は、はい! 俺なんかでよければ!」

 

そしてイッセーとリアスさんはグリフォンの背に乗る。それを確認したグリフォンは雄叫びを上げて飛び発つ。

 

「先に部室で待ってるからな!」

 

イッセーがそう言い残したが、あっという間に見えなくなった。

 

「さて、じゃあ俺たちも帰りますか」

 

「そうだね」

 

「……はい」

 

「うふふ。では行きましょうか」

 

俺たちはそのまま建物から出ようとする。

 

「――お待ちください」

 

だが、後ろから聞こえたその声に止められる。

 

「グレイフィアさん? 僕らに何か用ですか?」

 

「いえ、皆様はお帰りいただいて構いません。ですが、竜真様は私と一緒に来てください」

 

「? 俺だけですか?」

 

俺の質問にグレイフィアさんは頷く。

そして、こう言った。

 

「我が主、サーゼクス・ルシファー様があなたとお会いしたいとのことです」

 

 

 

――――――――――

 

俺は今最大の危機を前にして、かつてない恐怖を感じている。死刑執行前の囚人のような気分だ。

 

なんだ? なんで俺だけが魔王様に会うことになってるんだ? お叱りか? 魔王様直々のお叱りなのか? だとしたら何が原因だ? 会場で暴れたから? いや、それなら他の三人も呼ばれるはず。(ちなみに三人は「さーて、もう遅いし帰ろう!」と言いながら振り返った時には既にいなくなっていた。薄情者!)

 

ならあれか、不法入国か? いや、だってあれは朱乃さんと小猫が教えてくれなかったのが原因で俺は悪くな――

 

「竜真様」

 

「はいぃ!?」

 

思考の海に溺れていると、いつの間にかグレイフィアさんが俺の目の前に顔を近づけて呼んでいた。ちょ、近いですって!

 

「どうかなされましたか?」

 

「い、いえ、なんでもないです。はははハハハHAHAHA」

 

無理やり笑顔を作って誤魔化す。あなたの主に会うのが怖いなんて言えるわけがない。

 

そんな俺を見て、グレイフィアさんは微笑んだ。あ、この人の笑った顔は初めて見た。やっぱり綺麗だ。

 

「ご安心ください。我が主はただ単にあなたに会ってみたいから呼んだだけです。特に他意はありません」

 

「……不安になってるのバレました?」

 

「ええ。凄くわかりやすいですね」

 

そう言ってクスクスと笑うグレイフィアさん。……ああ、恥ずかしい。

 

「それはともかく、着きました。こちらにサーゼクス様がいらっしゃいます」

 

そう言って前にある部屋の扉を開けるグレイフィアさん。ああ、この場合俺が先に入るのか。

 

入ってみると結構な広さの部屋で、真ん中には部屋には不釣り合いな小さい机が置いてある。その対面には、ルシファー様が座っていた。

 

「お初にお目にかかります、サーゼクス・ルシファー様。リアス・グレモリーに仕える<兵士>の鬼城竜真です」

 

俺はすぐに跪いて自己紹介をする。それに対してルシファー様は爽やかな笑みを浮かべた。流石リアスさんのお兄さん。凄いイケメン…。

 

「初めまして。私が魔王サーゼクス・ルシファーだ。――とまあ、堅苦しいのはここまでで構わないよ。私自身も堅苦しすぎるのは苦手でね」

 

「いえ、しかし……」

 

「おや? 君は魔王に逆らうのかい?」

 

その使い方はズルい…。俺は跪くのを止めて立ち上がる。

 

「……わかりました。でも、俺は元々敬うべき人には敬語で話すので、さっきより堅くない敬語にするということでいいですか?」

 

「ああ、それで構わないよ。さあ、座ってくれ」

 

そう言われたので、俺はルシファー様の対面の席に座る。グレイフィアさんはルシファー様の斜め後ろに立つ。

 

「え~と……、ルシファー様。俺に会ってみたいとのことでしたが、なんでですか?」

 

「おっと、その前にそのルシファー様という呼び方は止めてくれないかい? 名前で呼んでくれて構わないよ」

 

魔王様ってこんなフレンドリーなのか……。

 

「……わかりました、サーゼクスさん」

 

「よろしい。さて、君の質問だが、そのままの意味さ。レーティングゲームでの活躍と、リアスの話を聞いて会ってみたくなったんだ」

 

「リアスさんの話?」

 

「ああ。赤龍帝と一緒にかなりの素質を持つ<兵士>が下僕になったと嬉しそうに言っていたよ」

 

うわっ、マジか……。自分の知らないところでそういう話があったと思うと恥ずかしい…。

 

「実際レーティングゲームでの活躍は相当なものだったよ。敵の駒十五人の内六人を倒し、多対一の状況でも見事に戦い抜き、更に咄嗟の判断で二度もリタイアを免れた。言葉で言うのは簡単だが、まだ悪魔になったばかりの君がここまでの結果を残したのには皆驚いたよ」

 

「あはは……。まあ、ああいうのには馴れてるんで」

 

「そういえばリアスから聞いたところ、君は人間の頃からかなり喧嘩をしていたとのことだったが、本当かい?」

 

「はい。自分から喧嘩を売ったりはしないんですが、この目のせいでどうしても厄介ごとが起きるんですよね……」

 

生まれつき持つこの赤い両目。ほとんどの切っ掛けはこの目をバカにした奴らを殴ることから始まる。化け物って呼ばれるし、災いしか呼ばない。

 

「……すまない。竜真くん、でいいかな呼び方は?」

 

「あ、はい」

 

「そうか。では、竜真くん。君の持つあの籠手を見せてくれないかな?」

 

「? ええ、いいですよ」

 

俺は籠手を出してサーゼクスさんに見せる。すると、サーゼクスさんはさっきの穏和な表情とは違い、やけに真剣な表情で籠手を見ている。え、どうしたんですか?

 

「……リアスからも聞いたが、念のため確認させてほしい。これは君の神器ではないんだね?」

 

「はい。調べてもらいましたがこれに神器の反応はなかったですし、他の籠手型の神器にもこんな形のものはないみたいです」

 

「………」

 

それを聞くと黙って籠手とにらめっこを始めてしまった。本当になんなんだ?

 

しばらくすると、ようやく穏和な表情に戻ってくれた。

 

「……ありがとう。すまないね、不愉快にさせてしまったかい?」

 

「いえ。これくらい別に大丈夫ですよ」

 

「リアスの言う通り、君は優しいのだね。……さて、あまり長居させるのもあれだ。そろそろ帰らないと、他のメンバーが待ってるんじゃないかい?」

 

「あ、そうですね。それでは、この辺で失礼させてもらいます」

 

「ああ。グレイフィア、彼を送ってあげてくれ」

 

「わかりました」

 

俺が席から立ち上がると、グレイフィアさんが先導してくれた。入った時と同じようにグレイフィアさんが扉を開けてくれる。

 

「竜真くん」

 

そこを通ろうとしたタイミングでサーゼクスさんが声をかけてきたので、振り返る。

 

「――リアスをよろしく頼む」

 

その真剣な言葉と顔を見て、魔王としてではなく、一人の兄としての言葉だとわかった。

 

「任せてください。今度こそ、リアスさんを守り抜きます」

 

だから俺は笑顔で返事をした。それを見て、サーゼクスさんも安心したのか笑ってくれた。

 

俺は頭を下げて、今度こそ部屋を出た。

 

 

 

竜真side out

 

 

 

no side

 

竜真とグレイフィアが出て行った部屋で、サーゼクスは窓際に移動した。

 

「……竜真くんか。君にそっくりだったな」

 

サーゼクスは懐から一枚の写真を取り出して微笑んだ。それには今より少し若いサーゼクスとグレイフィア、更に黒髪長髪の女性の姿が写っていた。

 

「君の息子は立派に育っているようだよ。頼りにできる仲間も増えたみたいだ。これで少しは安心できたかい?」

 

サーゼクスは写真に写る黒髪の女性に語りかけるように話す。その微笑みは先程竜真にしていたものよりも穏和だった。

 

だが、次の瞬間には苦い表情となった。

 

「だけど、残念ながら、リアスたちとの出会いが竜真くんの中に眠る何かを起こしてしまったみたいだ。あの男が盗んだ()()でなければいいのだが……」

 

サーゼクスはそう言って遠い目をして空を見る。いや、その目は空を見ていない。おそらく、自分の思い出を見ているのだろう。

 

()()には籠手はなかった。だが、竜真くんが使っていたあの炎は()()と似たものを感じた。……万が一、竜真くんの中にいるのが()()だとしたら、願うしかない…」

 

サーゼクスは目を閉じる。そして、その脳裏に映ったのは、先の戦争の中を暴れ回った一体の竜――いや、竜の姿をした化け物。

 

そしてサーゼクスは再び目を開き…。

 

「――彼が、世界の敵にならないことを」

 

心の底から願いながら、そう呟いた。




写真に写った女性の正体はもうちょっとあとです。まあ、大体の予想はできますねwww。

時間ないのでこの辺で。さいなら!
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