本編、玉☆砕! (嘘です)
竜真side
あれから学園に着くと、連絡を受けて来た生徒会とオカ研の残りのメンバーが校門の前にいた。……やはり祐斗は来ていない。無事だよな?
ちなみに、イリナは医療設備が整っているシトリーさんの家で治療してもらっている。アーシアさんが傷の治療をしたおかげで、命に別状はないそうだ。
生徒会が学園全体を結界で覆ったおかげで被害は最小限に抑えることはできそうだが、今の俺たちではコカビエルに勝つのは絶望的だろう。
寝ている時に感じたあのプレッシャーは奴のものだろう。――それだけで奴との実力差がわかってしまった。
そのため、朱乃さんが魔王に――サーゼクスさんに応援を求めてくれた。リアスさんは最初こそ非難したが、今回は起きてることが起きてることだから仕方がないと、一応の納得はしてくれた。
サーゼクスさんの援軍は大体一時間でこちらに来るらしい。……それまで、俺たちオカ研が時間を稼ぐのが今回の目的。
幸い、ああいう奴は自分の力に絶対的な自信を持つ。そういうタイプは格下の相手を一瞬で殺さず、遊ぶことが多いから時間は稼ぎ易いだろう。
そんな感じで、俺たちは学園のグラウンドに来た。中央では、バルパーが四つのエクスカリバーを魔方陣の上に浮かべて妙な儀式をしていた。
「何してるんだ?」
「――四本のエクスカリバーを一つにするそうだ。あの男の悲願らしくてな」
イッセーの疑問に答える声が上空から聞こえてきた。上を見ると、コカビエルが宙に浮かぶ巨大なイスに座っていた。……余裕そうだな。
「それで、誰が来るんだ? サーゼクスか? それともセラフォルーか?」
「お兄様とセラフォルー様の代わりに私たちが――」
リアスさんがそう言ってる最中にコカビエルは光の槍を出し、体育館に向けて投げた。
次の瞬間、強烈な爆発が起きた。爆風が止んで目を開けると、体育館が消し飛んでいた。代わりにあったのは、柱と思わせるほどの巨大な光の槍と、それによって生まれたクレーターだった。
あんな無造作に投げたものであの威力かよ……。やっぱり俺たちじゃ勝てそうにないな。
「つまらんな……。まあいい。余興にはなるだろう。――まずは、地獄から連れてきた俺のペットと遊んでもらおうか!」
巨大なイスの下から光が出て、地面に大穴を開ける。
すると、そこから十メートルはある巨体を誇る生物が出てきた。その生物は一見犬のように見えるが、頭が三つあり、その口からは炎が漏れていた。
地獄、犬、三つ首。この三つのキーワードから連想される生物は一つ。
「ケルベロスか……!」
「ウオォォォォォン!!」
雄叫びを上げるケルベロス。俺たちを敵と認識したようだ。
「ケルベロス?」
「地獄の番犬だ! それくらいはわかれイッセー!」
番犬を戦場に持ち出すかね、普通!
穴から出てきたのは三匹。仮にも地獄の番犬なんだ。下手な魔物よりは強いだろう。
「とにかくやるしかないわ! イッセーは作戦通り力を溜めて! 朱乃、小猫、竜真! 私たちでケルベロスを相手するわよ!」
「「はい、部長!」」
「了解です!」
さっきリアスさんが言ってた作戦だが、この前イッセーが手に入れた新しい力、<赤龍帝の贈り物>で皆を強化することだ。ただし、倍加中は力が不安定らしく、ダメージを受けたり攻撃したりすると倍加の効果が消えるかもしれないので、今回のイッセーの役割は俺たちメインで戦う者のサポートということになる。
まあ、これくらいしないと勝ち目がないから仕方ない。イッセーには今回おとなしくしていてもらおう。
――その分俺が暴れてやるよ!
俺は籠手を出して一体のケルベロスに突っ込む。向こうはその巨大な前足についてる鋭利な鉤爪を振り下ろしてくる。
俺はそれを横に避ける。すると頭の一つが口から炎を吐き出してきた。
「劫火球!」
俺は右手から劫火球を放って炎を止める。だが、それを見た他の首も炎を吐き出してくる。流石に三つ分は耐え切れず、劫火球は消えてしまう。
「面白れぇ! 火力勝負といこうか!」
俺は両手を構えて、その間に炎を集める。
「――
そして腕を前に突き出すのと同時に炎を太い熱線のように放つ。ケルベロスの出した炎とぶつかると、徐々にこちらが押し始める。
「おい、竜真!」
イッセーが突然叫んでくる。
「わかってる!」
俺は火流羅を止めて大きくジャンプする。一秒前まで俺がいた場所には、
後ろからもう一体ケルベロスが来ていたのだ。気配でわかっていたが。
ケルベロスたちは上空で無防備な俺に再び炎を吐き出してくる。俺は背中から翼を出してそれを避け、<騎士>にプロモーションして前にいるケルベロスの懐に潜り込む。
そしてその腹に全力の拳を叩き込む。
その威力にケルベロスの巨体が少し浮くが、予想以上に飛ばないな。全力で叩き込んだんだが……。
どうやら咄嗟に踏ん張ったようだな。――だが、まだ終わらねぇ。
「おまけだ!」
俺は叩き込んだ右手をそのまま開き、劫火球を撃ち込む。ケルベロスは腹から血を噴き出して吹き飛ぶ。――が、しっかりと着地した。
「へえ、番犬だけあってタフだな。ダメージはちゃんとあるみたいだが……」
こりゃあ、さっさと倒さないとコカビエルと戦う前に体力を消耗しちまうな。
周りを見ると、リアスさんと朱乃さんは残りの一体と戦っていた。二人の魔力と雷をくらったのか、体は焦げて横腹からは血が出ている。
ちなみに後ろにいた一匹は小猫が相手をしてくれている。
イッセー、まだ力が溜まり切らな――ヤベェ!
「イッセー、アーシアさん! 伏せろ!」
イッセーとアーシアさんの後ろからもう一匹のケルベロスが近づいてきていた。俺は反射的に劫火球を放つ。それに気づいたケルベロスは後ろに跳んで回避した。
これで四体目。地獄の番犬何匹いるんだよ!
今イッセーの倍加が止まるのはマズい。自分の強化に使っても同じだ。……こうなりゃ、俺が二体とも引きつけるか。
片方は手負いとはいえ、まだ動けるだろうから結構キツいが、やるしかねぇか!
そう決意を固めてイッセーたちを襲うケルベロスに向かって突っ込もうとする。
――が、突然ケルベロスの真ん中の首が宙を舞った。斬撃!?
「――加勢に来たぞ!」
ケルベロスの首をはね飛ばした人物はゼノヴィアだった。どうやら、特に怪我もしてないようだな。
ゼノヴィアは首を斬られ絶叫しているケルベロスの胴体を割る。すると、斬られたケルベロスの体は消滅した。
なるほど。聖剣は魔のものに強大なダメージを与える。ケルベロスも例外じゃなかったようだ。
「竜真、後ろ!」
イッセーがまた叫ぶ。わかってるつーの!
俺は<戦車>にプロモーションして後ろに振り返りながら回し蹴りを繰り出す。蹴りは後ろから噛みつこうとしてたケルベロスの頬に直撃し、<戦車>の怪力のおかげで勢いよく吹き飛んでいく。
「火流羅!!」
すかさず火流羅で追撃する。変に加減したら余計に体力を消耗するのはわかった。なので先程と違い、今度のはフルパワーで放つ。
熱線に呑まれたケルベロスは、跡形もなく消し飛んでいた。これで残るは二体。
「部長! 力が溜まりました!」
イッセーが叫んだ。ようやくか。
だが、俺は気になったことを質問する。
「おい、イッセー! お前チキン野郎と戦った時に聖水と十字架を同時に強化してたよな!? なら、リアスさんと朱乃さんを同時に強化できるんじゃねぇか!?」
イッセーは籠手の方を見てしばらく黙っていた。おそらく、籠手の中にいる赤龍帝と話しているのだろう。
「ああ、できるみたいだ! でも、そうした場合は譲渡できる力は本来の力の七、八割になるらしい!」
「そんだけあればお二人には充分だ! 足止めしておくから譲渡しろ!」
俺はリアスさんと朱乃さんが戦っていたケルベロスに炎の槍を投げる。向こうはギリギリでかわし、ターゲットを俺に変更してこっちに走ってくる。
確実なとどめはリアスさんと朱乃さんがさしてくれる。だから今回は無理に戦わず、<騎士>のスピードを活かして攻撃の回避に専念する。そうして戦っていると、リアスさんの声が聞こえた。
「ありがとう、竜真! 離れていてちょうだい! ――朱乃!」
「はい。――天雷よ、鳴り響け!!」
朱乃さんが空に手をかざして魔方陣を出す。そこから感じる魔力は、今までの中で確実にトップのものだった。あれから放たれる雷は相当な威力になるだろう。
俺がそう思っていると、ケルベロスは俺から離れた。逃げた――わけじゃなさそうだな!
ケルベロスが走っていく先には、アーシアさんがいる。一人でも葬ろうという考えか。もちろん見逃すわけもなく、俺は右手に炎の槍を持ち猛スピードで突撃する。
――だが俺の槍が刺さる直前に、ケルベロスの足元からたくさんの剣が生えて突き刺さり、動きを封じた。驚いたが、勢いは止まらず炎の槍がケルベロスの胴体を貫く。
あの剣は魔剣だ。あんな攻撃ができるのは、俺の知る奴では一人しかいない。
「ようやく来たか、イケメン王子」
アーシアさんを守るように、前に祐斗が立っていた。真打は遅れて登場するとかのパターンは期待してなかったが、来てくれたんだな。
「竜真くん、離れてください!」
叫んだ朱乃さんを見ると、雷を纏った手をこちらに向けていた。ヤバイ!
俺はケルベロスから急いで離れる。次の瞬間、とてつもない威力の雷がケルベロスに落ち、跡形もなく消し飛ばした。これで残るは一体。
まあ、その一体が俺の後ろさら噛みつきに来てるんだが。
俺は逃げはせず、逆にケルベロスに突っ込む。その際に、炎の槍を出してケルベロスの左と右の頭をはね飛ばした。
痛みで叫んでいるケルベロスの口に入り、腕と足で顎を固定して閉じれないようにする。ケルベロスは閉じれないとわかり、俺をこのまま焼き尽くそうとしているのか、喉の奥から炎が上がってきているのが視界に映った。
「――奇遇だな」
俺も口に炎を溜め、劫火球を放つ。劫火球はケルベロスの炎を押し切り、そのまま喉の奥へと行く。
俺がケルベロスの口から脱出した直後に、劫火球がケルベロスの体を内側から吹き飛ばした。周りにはケルベロスの血と肉片が飛び散る。………他の倒し方の方がよかったか? 結構グロい。
「なかなかの見せ物だったぞ」
イスに座るコカビエルが偉そうに言ってくる。見せ物とか言うなら見物料を払ってほしいな。
「くらえ、コカビエル!」
リアスさんが強化された力で滅びの魔力の塊をコカビエルめがけて撃ち出す。その大きさは、普段のものの数倍はあった。
――が、コカビエルは片手で簡単に受け止め、軌道を逸らした。魔力が当たった場所は、削り取られたように消えていた。
威力は充分あった。だが、それを軽々と防ぐ力をあいつは持っている。一応受け止めた手から煙が上がっているが、大したダメージはないだろう。
コカビエルは煙が上がる自分の手を見て笑っていた。
「なるほど。赤龍帝の力を使えば、ここまで力が引き上がるか……。――面白い。これは酷く面白いぞ」
こっちは何も面白くないけどな。コカビエルとの差を改めて思い知らされた。
「――完成だ」
バルパーの声が聞こえてきた。目を向けると、四つのエクスカリバーが一つになっていた。
ヤバい! ケルベロスに気を取られすぎていた! あっちをなんとかしとけばよかった!
一つになったエクスカリバーは強い輝きを放つ。すると、それに呼応するかのようにグラウンドに巨大な術式が浮かび上がる。なんだ!?
「エクスカリバーの光によって、大地崩壊の術式を起動させたのだ。あと二十分もしない内にこの町は消し飛ぶだろう」
っ!? バルパーが言った内容に俺たちは驚愕する。
失敗した! 最初からこれが狙いだったのか!
しかも制限時間は二十分もない。サーゼクスさんの援軍なんて、とてもじゃないが待ってる余裕はない!
――俺たちで、なんとかするしかない!
「解除するには、俺を倒すしかない。さあ、どうする? ――リアス・グレモリー!」
コカビエルはイスを消し、十枚の黒い翼を広げて宙に浮かぶ。……本格的に戦闘するということだろう。
「知れたこと!」
リアスさんはそう言って飛び上がり、コカビエルに向けて再び魔力を放つ。
しかし、コカビエルはまたしても容易に魔力を受け止めると、球状にした。
「はあぁぁぁぁ!」
そこに朱乃さんも加勢し、大出力の雷を放つ。
しかし、コカビエルはそれも受け止めて球状にする。
そこまで見て、俺はコカビエルがしようとしてることに気づく。それはヤバい!
俺は<女王>にプロモーションし、リアスさんと朱乃さんの元に向かって飛び上がる。その間に両手に劫火球を出す。
「ほら、返すぞ!」
コカビエルは予想通り滅びの魔力と雷を合わせて二人に向けて投げ返す。パワーアップした二人の力が合わさった攻撃。くらえばシャレにならない!
俺は二人の元に着き、前に出る。そして両手の劫火球を合わせて大きくし、更に口から劫火球を放つ。これが今の俺の最強の技!
「――
口から放った劫火球も加わり、劫火球は通常のサイズの五倍ほどになって飛んでいく。威力は劫火球三つ分ではすまない。
強化されたリアスさんと朱乃さんの魔力の塊に当たり、少しの間は押し合っていたが俺の火球が消されてしまい、魔力の塊はそのまま飛んでくる。やっぱりダメか!
最後の悪あがきで炎の壁を作るが障害物にもならず、魔力が俺たちに襲いかかった。
「がああぁぁぁぁぁぁ!?」
「「あああぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
雷が混ざっているせいか、滅びの力は弱まってるみたいだが、それでも高魔力と雷の合わさった攻撃は相当効いた。
後ろでは朱乃さんがリアスさんの前に出て防御壁を張ったが、一瞬で壊れて二人もダメージをくらった。リアスさんの壁になった分、朱乃さんの方がダメージが大きいようで、そのまま落ちていく。
「朱乃さ――ぐっ!?」
「竜真!? しっかり!」
助けに行こうとしたが、今のダメージで体に激痛が走り怯んでしまった。リアスさんが支えてくれるが、朱乃さんに目を向けると地面まであと二メートル。間に合わねぇ!
「――朱乃さぁぁぁぁん!!」
と思ったが、イッセーがなんとかキャッチした。……なんとかなったか。
俺はリアスさんと一緒にゆっくり地上に下りる。アーシアさんがすぐに駆けつけて、リアスさんと朱乃さんと俺の傷を癒してくれる。
「サーゼクス様の援軍が来るまでもちそうにありませんわね……」
「それ以前に、タイムリミットもあと二十分もありませんしね。……なんとかしてあいつを倒さねぇと、この町が消し飛びます」
「そうね……。どうにかしないと」
だが、状況は最悪の一歩手前だ。イッセーの譲渡で力を高めればダメージを与えれる可能性はあるが、致命傷にできるかは微妙だ。
「さて、最後の余興だ。――フリード!」
「はいな、ボス!」
コカビエルに呼ばれてどこからともなくフリードが現れる。どっから出てきた!?
「陣のエクスカリバーを使え。四本のエクスカリバーが一つになった力がどれほどのものか試してみろ」
「へいへい。まーったく、ウチのボスは人使いが荒いねぇ。まあ、俺っちもよりハイパーにパワーアップしたエクスなカリバーちゃんを使えるからいいですがね! ――さぁて、誰からチョッパーしてやりましょうかね?」
フリードはエクスカリバーを持ち、値踏みするように俺たち全員を見る。俺は立ち上がってフリードの元に向かおうとする。
「竜真さんダメです! まだ傷がちゃんと治ってません!」
アーシアさんが俺を止める。だが、俺は頭に手を置いて微笑む。
「大丈夫ですよアーシアさん。これくらいなら、その内回復します。それに…」
俺はそこまで言ってフリードの方を見て、挑発的な笑みを浮かべる。
「あいつへのハンデにはちょうどいいです」
わざと聞こえるように言った俺の声を聞いたフリードはこちらを見て狂気の笑みを浮かべた。
「はぁ? 今なんて言いました竜真くん? ハンデにはちょうどいい? そんなダメージ負いまくった体で俺様と戦ったら死んじゃいますぜ? まあ、僕ちんはあんたさんを殺せればいいんですが……………なめられるのは好きじゃないんだよねぇ!!」
フリードは一気に憤怒の表情を浮かべ、俺に向かって突っ込んでくる。
そのスピードはかなりのもの。ラピッドリィのスピードだな。
俺もその場から駆け出し、炎の槍を出す。三人を巻き込むわけにはいかないからな。
俺とフリードの距離は一気に縮まり、エクスカリバーと槍がぶつかる。……こんだけ近くだと、聖なるオーラを嫌というほど肌に感じるな。
「ヒャハハハ!! どうだい、生まれ変わったエクスカリバーちゃんの聖なるパワーは!? ビリビリするでしょ!? だけど、これだけじゃ終わらないんだよね!」
突然エクスカリバーの先の方が割れてこちらに向かって伸びてくる。今度はミミックか。ラピッドリィの速さもあるようで、凄いスピードで迫ってくる。
――だが、俺にとっては遅いな。
俺はエクスカリバーを弾き返し、その隙に<騎士>にプロモーションして全速力で移動する。
リアスさんに頼んで、プロモーションしながらの特訓をしてる時に気づいたことだが、俺は攻撃力と防御力、速さ、魔力を一つだけ上げるなら、<女王>になるよりそれぞれの駒になった方がパワーアップできることがわかった。もちろん総合的な強さでは<女王>が一番いいが。
特に俺は<騎士>への適性が高かったようで、<騎士>にプロモーションすれば祐斗にも負けない。更に全速力なら、こちらが完全に上だ。
そのスピードをこいつが見切れるわけが――
「うぉ、っと!」
一瞬で後ろに回り込んで背中に槍を突き刺そうとしたが、フリードは背中に刃を伸ばして受け止めた。
俺は驚愕した。こいつは見えてないのに反応した。なぜ?
そう思っていると、フリードは嫌な笑みを浮かべて振り返る。
「なんで見えてないのに受け止めれたか不思議ですか~? 簡単簡単。あんたさんの殺気が凄く強いおかげで僕ちゃんにも手に取るようにわかっちゃいますのよ!」
………どうやら、自分でも気づかない内に殺気が漏れていたようだ。それだけイリナを傷つけたこいつが許せないということだが……。
俺は目を閉じて深呼吸をする。一旦気を落ち着けよう。
「はあ? 何敵の眼前で落ち着こうとしてんだよ!」
お構いなしにフリードが斬りかかってくる気配がする。俺は殺気を感知して受け止める。
そうだ。俺は殺気は必要最低限しか出さないようにしてるんだ。感情に任せて殺気を出してたら――あの人には一生勝てないからな!
「殺気がわかりやすいって言ったよな? そっくりそのまま返すぜ、クソ野郎」
「調子こいてんじゃねぇよ!」
突然フリードの姿が消える。だが、次の瞬間には姿を現した。
――その数は十人。おそらく、ナイトメアによる幻影だろう。
<ヒャハハハハ! 更にこんなのはどうですかい!>
フリードの声が直接脳内に響いてくる。これもナイトメアの能力か?
そう考えてる内に、フリードに新たな変化が起きる。フリードの持つエクスカリバーの刀身が消えた。
いや、トランスペアレンシーの能力で透明にしたんだろうな。
にしても、意外と厄介だな。ミミックの能力がある以上、さっきみたいに刀身が形を変えていても透明だからわからないぞ。
<さぁて、問題の時間でございます! 俺様のエクスカリバーちゃんは今どんな形をしてるでしょうか? 答えは斬られたらわかりまっせ!>
そう言うと、フリードたちは次々に斬りかかってくる。……確かに、普通の奴ならダメだったかもしれないが――
「言っただろ? お前の殺気もわかりやすいってな!」
俺はフリードの殺気と、エクスカリバーから放たれる聖なるオーラを感じとって攻撃を避ける。幻影全部から殺気を感じるのは、ラピッドリイのスピードで幻影と場所を入れかえてるんだろう。
<っ!? クソが!!>
「マジックショーはそろそろしまいだ!」
フルスピードでフリードの幻影全てに炎の槍を突き刺す。槍をくらった幻影は消えていった。――が、幻影の中に本物はいなかった。
「………きっちり下がってやがったか。ずいぶんヘタレだな」
俺が目を向けた方には悔しそうにこちらを睨むフリードがいた。
「……なんなんだテメェは! なんでエクスカリバーの能力にことごとく対応できやがる!?」
「おいおい、名前教えてやったばかりだろ? 俺の名は鬼城竜真。――化け物だよ」
そう、俺は化け物。化け物は忌み嫌われ、恐れられる存在。
フリードも俺という化け物に恐怖を抱き始めている。こうなればこちらのペースだ。
あとはいつも通り、圧倒的な力で押し勝つだけ。
「――張り切っているところ悪いが、こいつは私の獲物だ」
横から首にエクスカリバーを突きつけられる。突きつけてきた人物はゼノヴィアだった。
「……獲物ってお前な。第一、こいつを先に相手してたのは俺だぜ。割って入るなよ」
「私はあの聖剣を破壊しなければならない。――あれはもはや異形の剣だ。一旦破壊して再構築した方がいい。邪魔をするなら君も斬るぞ」
ゼノヴィアの言うことは本当だろう。少しでも妨害すれば俺ごと斬り捨てるだろう。
だが、それだけじゃ俺は引かない。
「俺だって大切な幼なじみが傷つけられてるんだよ。黙ってられるか」
「それはイリナのことだろう? 私も一時的とはいえ、パートナーだった者を傷つけられて怒っているのは同じだ。これでこちらの目的は二つでそちらは一つだが、まだ何かあるか?」
……どうあっても譲る気はないか。
まあ、こいつもイリナのことで怒ってるのは同じか。
「わかった。そういうことならここは譲る。――だが、とどめは俺にくれよ? あいつに全力の一発を叩き込まないと気が済まない」
「わかった。出番が残っていたらとどめはそちらに任せる」
それは俺の出番を残さない気か?
追求するよりも先にゼノヴィアはフリードに突っ込んでいった。
そういえば、あのバルパーとかいうじいさんはどうなった?
目を向けると、傷ついた祐斗がふらつきながらもバルパーに近づいていた。コカビエルの攻撃をくらったのか?
「バルパー=ガリレイ…! 僕は聖剣計画の生き残りだ…!」
「ほう、あの計画の生存者か。確かに、あの時処分した子どもの数が一人足りないと聞いていたが、まさかこんな極東の地で生き延びていたとはな。しかも悪魔になっているとは、なんとも奇妙な運命だな。ククク……」
……祐斗のあの異様な憎悪に、あのバルパーの口振りからすると、あいつは関係者ってレベルじゃないのか?
「おい、あのバルパーってじいさんは何者なんだ?」
俺は皆のところに行き、イッセーにそう質問した。
するとイッセーは苦い表情をしながらも口を開いた。
「あのじいさんは――バルパーは聖剣計画の責任者だった奴だ」
「…なるほどな。そりゃあ、恨むわけだな」
にしても、まさか責任者だとは思わなかった。
「私は聖剣が好きなのだ。幼い頃からエクスカリバーの伝記を見て心を踊らせていた。だが、私には聖剣使いの適性がなかったのだ。だからこそ使える者に強い憧れを抱き、人工的に聖剣使いを創る研究に没頭した」
バルパーが語り始める。それが非人道的なものじゃなければよかっただろうに……。この人はどこで道を間違えたんだろうな。
「そして研究していく中で、聖剣を使うのに必要な因子があることに気づいたのだ。被験者だった子どもたちに因子はあったものの、エクスカリバーを使うためには不充分だった。そこで私は一つの結論に至った。因子だけを抽出し、集めればいいのだとな」
「……その因子を抽出するために、同士たちを殺したのか!?」
祐斗が怒鳴って聞くが、バルパーは首を横に振る。
「いや、因子だけを抽出することもできた。実際、今の教会に私の研究は引き継がれ、生かしたまま因子を抽出しているるうだしな。――だが、私たちがやっていた研究は君が知るように、非人道的なものばかりだ。そんなことを外に漏らされたりしたら終わりだ。だから殺したのだよ。まあ、実験し終えたものを廃棄するのは自然なことだろう?」
「……僕らは、毎日行われる辛い実験も、いつかは報われると信じて…! 主のお役に立てると信じて耐えていた……! それを実験し終えたから、廃棄……?」
祐斗の顔は絶望に染まっていた。いつか必ず終わると信じていた自分たちをゴミのように捨てたと聞けば、ショックもデカイだろうな……。
……あのじじいの話を聞くと、嫌な奴を思い出す。俺がこの世で一番嫌いだったクソ野郎を…!
バルパーは懐から青い結晶を取り出す。それからは聖なるオーラが放たれている。
「これがその時抽出した因子の結晶だ。他にもいくつかあったが、全てフリードに使ってしまってね。これは最後の一個だ」
「ヒャハハハ! 俺以外の奴は途中で因子に体が耐えられなくて死んじまったんだぜ! やっぱり俺様って最強!!」
ゼノヴィアと斬り合っていたフリードがそう言ってくる。憎まれっ子世に憚るとは言うが、あいつが聖なる力を扱える時点で色々間違ってると思う。
斬撃を避けたゼノヴィアが近くに来た。
「見覚えがあるとは思ったが、あれは聖剣使いが祝福の儀で体に入れられるものと同じだ。イリナも入れられていたから間違いない」
「なるほどな……。研究が引き継がれてるのは本当のようだな」
「ふん、ミカエルめ。私をあれだけ裁いておきながら、研究だけは利用するとは。まあ、あの天使のことだ。私のように被験者を殺したりはしないだろう。それを考えると、私より人道的だと言えるな」
よく自分でそんなこと言えるな。
祐斗が怒りに震えながらもバルパーに声をかける。
「バルパー・ガリレイ…。あなたは自分の欲望のために、一体どれだけの命を弄んだんだ……!?」
「そこまで言うのなら、これは貴様にくれてやる。既に同じものを量産できる段階まで研究は進んでいるからな」
バルパーは結晶を祐斗の前に投げ捨てる。
「皆……」
祐斗は結晶を持ち、大切そうに握りしめた。
すると、祐斗の周りに青色の淡い光が現れる。光をよく見ると、それは人だった。
年齢に多少の差はあるが少年と少女がたくさん現れた。あの子たちは、まさか……。
「結晶に入っていた魂が、この場にあるあらゆる力によって解き放たれたのです」
朱乃さんがそう説明する。ってことは、やっぱりあれは聖剣計画で殺された祐斗の仲間たちか。
「皆……! 僕は……僕は…っ!」
祐斗はかつての仲間たちを見て涙を流していた。
「ずっと、思ってたんだ……! 僕だけが生きていていいのかって……! 僕より生きたいと思っていた子がいた……! 僕より夢を持っていた子がいた……! 僕だけが平和な暮らしをしていていいのかって……!」
泣きながら今まで溜まっていたものを吐き出すように言う祐斗。ふと、一人の少年が祐斗に笑いかけ、口を動かす。
「「自分たちのことはもういい。君だけでも生きてくれ」」
俺と一緒に朱乃さんも声を出す。朱乃さんも読唇術を使えるみたいだな。
祐斗も言ってることが伝わったのか、更に涙を流す。
そんな中、少年少女たちは揃って口を動かし始めた。これは、歌か? 聞いたことがない歌だが、イメージ的には……。
「――聖歌」
アーシアさんがそう呟いた。やっぱりそうか。
祐斗も一緒に歌い出す。すると、少年少女たちが青く輝き出して祐斗の周りを飛び交う。
<僕らは一人ではダメだった>
<私たちは聖剣を扱える因子が足りなかった。けど――>
<皆が集まれば、きっと大丈夫>
彼らの声が、頭に直接響いてくる。だがさっきのフリードとは違い、嫌悪感は一切ない。むしろ、心が落ち着く。
<聖剣を受け入れるんだ>
<怖くなんてない>
<たとえ、神がいなくても>
<神が見ていなくても>
<僕たちの心はいつだって>
「――一つだ」
少年少女たちの魂は光を放ったまま天へと昇っていき、神々しい光となり、祐斗の元に降りた。
「……皆は、僕に復讐なんて願ってなかった。忘れてよかったんだ。今の僕には、支えてくれる仲間がいるから。――だけど、まだ全部が終わったわけじゃない。バルパー=ガリレイ。あなたがいる限り、第二、第三の僕らが生まれてしまう。そんなことはさせない。僕が、ここで終わらせる!」
祐斗は覚悟を決めた目でバルパーを睨みつけ、歩き出す。
「フリード!」
「はいな!」
バルパーに呼ばれ、フリードがバルパーを守る形で二人の間に入る。構わず、祐斗は歩いていく。
「木場ぁぁぁぁぁぁ!! フリードとエクスカリバーをぶっ叩け! あいつらの想いと魂を無駄にするな!」
「やりなさい、祐斗。あなたはこのリアス・グレモリーの眷属。私の<騎士>は、エクスカリバーごときに負けはしないわ!」
「祐斗くん! 信じてますわ!」
「……ファイトです!」
「木場さん…!」
イッセー、リアスさん、朱乃さん、小猫、アーシアさんが祐斗に声援を贈る。ここは俺も贈った方がいいか…。
「行け、祐斗! お前の剣で、その負の連鎖を断ち切れ! それが、かつての同士たちのためにできる最善のことだ!」
「イッセーくん、部長、皆……」
「だ~、もう! 何感動シーンなんて作ってくれちゃってんの!? 俺こういうの基本嫌いだけど、今回のはいつも以上に嫌いだわ!! 幽霊どもと俺様が嫌いな聖歌を歌うわ、仲間の激励で勇気百倍になるわ――もうダメ限界! あんたら全員切り刻んで落ち着くしかこのイライラを解消できねぇよ!」
空気をぶち壊してくれるなクソ神父……。
祐斗はその場で立ち止まり、手を上にかざす。
「――僕は剣になる。仲間を守るための剣に。今こそ、僕の想いに応えてくれ、<魔剣創造>!!」
祐斗の手に一本の剣が現れる。その剣は禍々しいオーラを纏いながらも、聖なる輝きを放っていた。
「禁手、<
聖魔剣!? 聖と魔のオーラを持つのか!?
バルパーはそれを見て動揺していた。
「聖魔剣だと!? ありえない! 相反する力が交わることなど、あるはずがないのだ!」
そういうものなのか? 火炎と氷結の呪文を合わせた究極の破壊呪文があったけどな…。ゲームだからだよな、すまん。
歩く祐斗の隣にゼノヴィアが並んで歩く。
「リアス・グレモリーの<騎士>。もし協同戦線が生きてるのなら、あの聖剣を共に破壊しないか?」
「いいのかい?」
「エクスカリバーの破片さえ回収できればそれでいいさ。奴が使うあれは、もはや聖剣じゃない」
「……わかった」
「おいお前ら。とどめは俺がやるから残しといてくれよ」
「ペトロ、バシオレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」
ゼノヴィアがエクスカリバーを地面に突き立てて、唱えるようにそう口にすると近くの空間が歪んだ。ゼノヴィアはその中に手を入れ、何かを引っ張り出す。
あれは――聖剣だ! 聖なるオーラを纏ってるから間違いない。
ただ、なんなんだこのオーラの濃さは!? フリードが持つエクスカリバーの聖なるオーラが弱く思えるほどだぞ!?
「この刃に宿りしセイントの穏名において、我は解放する。――デュランダル!」
――デュランダル。エクスカリバーと同じ有名な聖剣だ。あんなものを持ってるとは……。
「リアスさん。デュランダルって、どれくらい強力なんですか?」
「斬れ味だけなら聖剣の中では最強と言われているわ」
わお……。マジでとんでもないな。あのオーラの濃さには納得したが。
「バカな! 私の研究では、まだデュランダルを扱える領域まで達していないぞ!?」
バルパーが動揺して言う。ゼノヴィアはそれを見て挑発的な笑みを浮かべていた。
「それはそうだろう。私はそいつやイリナとは違う、天然の聖剣使いだ。エクスカリバーの方も兼任していたにすぎない」
元から聖剣を使えたってことか。
「こいつはなんでも破壊してしまう暴君でね。私の言うこともろくに聞かないんだ。危険極まりないから、普段はさっきの異空間に封じているのさ」
ゼノヴィアはデュランダルを見ながらそう言う。あいつでも扱い切れないほどの破壊力ってことか。
「おいおいおいおい! そんなのありですかー!?」
フリードがエクスカリバーの刀身の先をミミックの効果で枝分かれさせて伸ばし、ゼノヴィアに向けて突っ込ませる。
だが、デュランダルの一振りで簡単に砕け散る。……本当にとんでもない威力だ。さっきまで使ってたディストラクションが可愛く見える。
「ここへきての超展開! そんなの期待してねぇんだよ!」
「――そんなものなんかで!」
激昂するフリードに祐斗が突っ込み、二人の神速の斬り合いが始まる。
だが、フリードは動揺していて余裕がない。そんな奴が――
「僕たちの想いは断てない!!」
今のあいつに勝てるわけがない!
祐斗の会心の一撃がエクスカリバーに当たり、刀身が完全に折られる。祐斗はその勢いのままフリードも斬る。
――もういいな。
俺はフリードにフルスピードで近づき、全力の拳を叩き込む。
「がっ――!?」
「あばよフリード!」
そのままフリードは吹っ飛び、結界に当たってようやく止まる。本来なら何百回も殴ってやるところだが、そのための時間も体力も無駄だから止めておこう。
「――見ててくれたかい? 僕らの力は、エクスカリバーを超えたよ」
祐斗は剣を構えながらそう呟く。これで、一つの目的は達成したってことだな。
「あ、ありえない! 本来は相反する力の聖と魔が交われるなど……!」
あとは、そこで狼狽えてるクソじじいだけだ。祐斗はバルパーを睨みつける。
「バルパー=ガリレイ。覚悟を決めてもらおう!」
だが、バルパーは祐斗の言葉など聞いていないのか喋り続けている。
「そ、そうか! 聖と魔、そのバランスが崩れていれば説明がつく! つまり、魔王だけでなくかm――」
何かに気づいたバルパーだったが、その胸に光の槍が突き刺さり倒れる。
一応近づいて確認したが、やはり死んでいた。投げた奴は、言うまでもないだろ。
「――バルパー、お前は優秀だったよ。そこに思考が至ったのも優れてるがゆえだろう。だがな、俺はお前がいなくても別にいいんだ。――最初から一人でやれる」
バルパーを殺したのは空を飛んでるコカビエル。ああもあっさり殺すとは、余程自分の力に自信があるんだな。
「コカビエル。これはどういうつもりかしら?」
「どうもこうも、見た通りだ。役立たずは必要ない。――さて、赤龍帝の小僧」
リアスさんが怪訝そうに聞くが、コカビエルは笑って答え、イッセーに声をかける。
「なんだよ!」
「限界まで力を高めて誰かに譲渡しろ」
っ!? その言葉に俺たち全員が驚愕した。チャンスをくれるのか?
「……私たちにチャンスを与えようというの? ふざけないで!?」
「ふははははは! ――ふざけてるのは貴様らの方だ。今の力で俺に勝てると思うのか?」
コカビエルはプレッシャーを放つ。それだけで体が震える。
「…イッセー、さっさと倍加を始めろ。そこまで時間も残っていない」
「竜真!? 何を勝手に――」
「今はプライドは捨ててくださいリアスさん。あいつの言う通り、今の俺たちじゃ傷すらつけれない。――これは、またとないチャンスです」
リアスさんが怒ったが、俺は睨みつけて黙らせる。プライドのために命を捨てるのはごめんだ。
「早くしろイッセー」
「わ、わかった!」
『Boost!!』
ようやくイッセーは倍加を始める。さて……。
「全員気を引き締めろ。――ここからが正念場だ」
とうとうコカビエルとの戦いが始まります! どのように戦うか、楽しみにしておいてください!
本編に出てきた火流羅はオリジナルです。イメージ的には、炎のかめ○め波だと思ってください。
それではこの辺で。チャージング、ゴー!!