まあ、今の竜真たちでは勝てるわけがないんです。……そういう設定だから仕方ないね。←メメタァ
それでは、本編大☆喝☆采! (そんなわけない)
竜真side
『Boost!!』
「――きた!」
イッセーが倍加を始めてから数分後のブーストの音声が響く。すると、イッセーの籠手の宝玉が輝く。限界まで強化できたってことか。
「それで、誰に譲渡する?」
コカビエルが楽しそうに問う。律儀なことに、こいつはイッセーが倍加している間、何もしてこなかった。
逆にこっちには時間の余裕がないから攻撃したかったが、全く隙がなかったためにそれは叶わなかった。
譲渡するとなると、さっきコカビエルに僅かながらダメージを与える兆しが見えた、
「イッセー! 私がやるわ!」
――リアスさんが無難だな。
「わかりました! いきます!」
『Transfer!!』
イッセーが蓄えた力がリアスさんに譲渡する。その瞬間、リアスさんの体からは強大な魔力の波動が漏れる。
凄い! 溢れてる魔力の余波でこのプレッシャーか!
「ハハハハ! いいぞ! 貴様から感じる力の波動は最上級悪魔のそれだ! あと少しで魔王クラスに届いているだろう! 貴様も兄に負けず劣らずの才に恵まれているようだな、リアス・グレモリー!」
今のリアスさんを見ても、コカビエルは笑っている。余裕とかじゃないんだろうな。――あいつは、強者との戦いを喜んでるだけだ。
「消し飛びなさい!!」
リアスさんが腕を突き出し、今までにない大きさと威力の滅びの魔力を放つ。まともにくらえばいくらコカビエルでもただでは済まない。
――だが、奴はそれを正面から受け止める。よく見れば、両手に光を纏わせている。あれで威力を緩和しているのか。
「おもしろいぞ! 魔王の妹! サーゼクスの妹!」
笑いながらドンドン滅びの魔力を小さくしていくコカビエル。だが、その手からは血が吹き出ている。流石に無傷というわけにはいかないようだ。
それでも、奴は魔力を完全に打ち消してしまった。強化されたリアスさんの全力であれかよ……。
「雷よ!」
いつの間にか朱乃さんが空に飛び上がり、コカビエルに雷を放っている。
コカビエルは十枚の翼を壁にして防いぐ。
「バラキエルの力を宿す者が、俺の邪魔をするか」
「……私を、あの者と一緒にするな!!」
どうしたんだ、朱乃さん。珍しくキレてがむしゃらに雷を放っている。
バラキエルはコカビエルと同じ堕天使の幹部だ。その力を宿す? ………まさか。
「はぁ……はぁ………!」
朱乃さんは魔力を使いすぎたのか、肩で息をしている。
「ハハハハ! まったく愉快な眷属を持っているな、リアス・グレモリー。赤龍帝、聖剣計画のなれの果て、そしてバラキエルの娘。お前も兄と同じくゲテモノ好きのようだな」
っ! やっぱりそうなのか! 朱乃さんがバラキエルの娘とは…。
「兄の、私たちの王への侮辱は許さない! 何より私の下僕を侮辱することは、万死に値するわ!」
リアスさんが激怒すると、コカビエルは地上に降り立った。
「ならば滅ぼしてみろ! 魔王の妹、赤龍帝の飼い主、紅髪の滅殺姫よ! 貴様の相手は悪魔にとって古くからの宿敵なのだぞ! これを好機と見なければ貴様の器が知れるというものだ!」
好機、ね……。まあ、超ポジティブに考えればそうだろうけどな…。
さて、どうするか……。そう考えていると、祐斗とゼノヴィアがコカビエルに突っ込んでいた。なんか声かけてくれよ!
小猫も続いて駆け出す。……しょうがない、俺も行くか!
「イッセー! 俺たちが時間を稼ぐから、できるだけパワーを溜めておけ!」
イッセーにそう言い、俺もコカビエルに突っ込む。
祐斗とゼノヴィアは聖魔剣とデュランダルをコカビエルに叩きつける。コカビエルは光の剣を出してそれを受け止める。
相当な攻撃力のはずだが、流石は歴戦の堕天使。余裕で受け止めている。
「聖剣と聖魔剣の同時攻撃か! おもしろい!」
おもしろがるのは勝手だが――俺たちを忘れるな!
俺は<騎士>のフルスピードで正面から、小猫は上空から攻撃をしかける。
「――甘い!!」
コカビエルは十枚の翼を広げる。羽の一枚一枚が鋼鉄の刃のようになり、小猫を斬り刻む。アーシアさんが治療しに行ったから、命は助かるだろう。
祐斗とゼノヴィアはいくつかは剣で受け止めたが、何回かくらい吹き飛ばされてしまう。
最後に俺にも襲いかかってくる。フルスピードで突っ込んでる以上、もう避けれない。――なら!
<戦車>にプロモーションして防御力を上げ、襲いくる翼を集中して見る。そして、できるだけ体を動かす。
翼は容赦なく肌を斬り、痛みが走る。――だが、致命傷ではない!
<戦車>になったのはできるだけ傷を浅くするため。体を動かしたのは、受けても致命傷を避けて、最小限のダメージで済むようにするためだ!
「ほう……」
それに気づいたのか、コカビエルは感心したような声を上げるが、そんなの気にしてられない。
俺はそのまま両拳に炎を纏い、炎の形状を変えて剣の刃の形にし、コカビエルに叩きつける。コカビエルは落ち着いて光の剣で受け止める。<戦車>のパワーでもダメか…!
「筋はいいが――実力はまだまだ足りんな!」
炎の剣を弾かれ、俺は隙だらけになる。そこに容赦なく光の剣を叩き込まれる。
「――吹っ飛べ!」
――前に口から劫火球を吐き、コカビエルに当てて爆発を起こし、その爆風で距離をとる。
しばらくして爆発で起きた煙も晴れ、コカビエルが姿を見せる。……案の定無傷かよ。
祐斗とゼノヴィアはさっきの攻撃でだいぶ疲弊してる。
「くっ……! まだだ!」
それでも祐斗は立ち上がり、コカビエルを睨みつける。
「まだ来るか? いいぞ、来い!」
「――<魔剣創造>!!」
祐斗は禁手ではなくいつもの能力を使い、コカビエルの周りの地面から剣を出す。しかし、現れた剣は魔剣ではなく聖魔剣だった。
剣はコカビエルの方を向き、一斉に飛び出す。だが、コカビエルは再び翼を出して剣を受け止め、容易に砕く。
「この程度か? くだらん」
祐斗はその間にコカビエルに接近し、聖魔剣で斬りかかる。
コカビエルはそれを人指し指と中指の間で挟んで止める。それだけで剣はピクリとも動かなくなった。
祐斗は聖魔剣を両手で持つのを止め、自由になった片手にもう一つ聖魔剣を出して振り下ろす。コカビエルはそれも人指し指と中指の間に挟んで止める。
両手も塞がり、普通ならここで終わりだが、祐斗は口のところに聖魔剣を出して喰わえる。おお、三刀流!
祐斗はそのまま頭を横に振り、その勢いでコカビエルの顔を斬る。
流石に虚を突かれたのか、コカビエルの頬に浅くだが斬り傷ができた。ダメージは与えれたが、あれだけか……。
町が消し飛ぶまでもう十分もないだろう。どうするか……。
「しかし仕えるべき者を無くしてまで、お前たち悪魔と教会の信者はよく戦うな」
突然コカビエルが不可解なことを言う。
「……どういうこと?」
リアスさんも疑問の声を上げる。
仕えるべき者? 俺たちにとっては魔王だろうが、先代の魔王は死んだと聞いてる。それなら確かに仕えるべき者をなくしたと言える。
だが、教会の信者が仕える者? …………まさか!?
俺がある結論に至ると、コカビエルはおかしそうに笑う。
「ククク……。クハハハハハハ!! そうだ、そうだったな! 貴様らが知るはずがなかった! どうせこれから戦争を始めるのだ。隠していても仕方ないか。――では、教えてやろう。先の戦争で四大魔王だけではなく、神も死んだのだ!!」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
コカビエルの発言に全員が驚愕する。やっぱりか……!
「神が………死んでいた? そんな話聞いたことも……」
リアスさんですら驚きを隠せないでいるようだ。
「知らなくて当然だ。神が死んだなど言えるはずがない。これを知ってるのは各勢力のトップと、一部の者だけだ。もし下手に話して、外に漏れたら大変だからな。まあ、バルパーはさっき気づいたようだが」
さっき気づいたのはこのことだったのか。まあ、あのジジイが神がいないと嘆くわけないだろうがな。
「先の戦争で各勢力は種族の大半を失った。天使は神を失い、純粋な天使はもはや産まれることもできなくなった。悪魔も魔王と上級悪魔の大半を失い、純血種が希少になっただろ? 堕天使も幹部以外はほとんど死んでしまった。どこの勢力も疲弊状態どころじゃない。人間に頼らなければ種の存続ができないほどにまで落ちぶれた」
「嘘だ…。嘘だ……」
ゼノヴィアがその場で項垂れてしまった。無理もないな。神に仕えることが使命の現役の信仰者が神がいないと言われれば、生きてきた意味を否定されたのと同じだ。
「だが、そんなことはどうでもいい。俺が気に入らないのは、争いの大元である神と魔王が死んだ以上は戦争をする必要はないと判断したことだ! アザゼルもシェムハザも『二度と戦争はしない』と言うしまつだ! ――耐えがたいんだよ! 一度振り上げた拳を収めるだと!? ふざけるな!!」
コカビエルは語っていく内に、その顔を怒りで歪める。………そこまで戦争がしたいのか、こいつは。
「……主がいないのですか? それでは、私たちに与えられる愛は……?」
小猫の治療をしていたアーシアさんが疑問を口にすると、コカビエルはおかしそうに答える。
「ミカエルはよくやってるよ。神の代わりに天使と人間をまとめているのだからな。神が使用していた<システム>は一応は機能しているから、ある程度の神への祈りと祝福、悪魔祓いはできる。ただ神がいた頃より、切り捨てられる信徒の数は増えたがな。聖と魔のパワーバランスを司る神と魔王がいないため、そこの小僧の聖魔剣のような特殊なものが生まれることもある」
コカビエルの話を聞いたアーシアさんは、気を失って倒れる。治療が済んだ小猫がその体を支えた。
「――俺は戦争を始める!! 俺だけでも、あの時の続きをしてやる!」
コカビエルは上に拳をかざして宣言する。はた迷惑な野郎だ……! そんなのは他所でやれよ!
だが、この状況はマズい。さっきのコカビエルの発言でこっちのテンションが完全に落ちた。
回復要員のアーシアさんは意識を失い、オフェンスのゼノヴィアは心が壊れた。他の皆もコカビエルの圧倒的な力に、戦意を失いかけている。
どうにかしねぇと……!
しかし、そんな状況でも全く諦めてない奴が一人。
「――おい、テメェ!! 黙って聞いてりゃ言いたい放題言いやがって! そんなことのために、俺の大切な家族を! 仲間を! 消されてたまるかってんだ!」
コカビエルに怒鳴るイッセー。………そうだったな。お前はそういう奴だよな。
「それにな、俺はハーレム王になるんだ! お前なんかに俺の計画の邪魔をされちゃ困るんだよ!!」
……………そうだよな。お前はそういう奴だ――って言うかアホ! こんな時にまで何言ってんだお前は!?
「ハーレム王? ハハハハ! 赤龍帝はそれがお望みか! なら、俺と来るか? そうすればすぐにハーレム王になれるぞ。行く先々で美女を見繕ってやる。あとは好きなだけ抱けばいい」
コカビエルは笑いながら言ってくる。いや、いくらイッセーでもそれは――
「………………………そ、そんな言葉で惑わされねぇぞ!」
おい、今の不自然すぎる間はなんだコラ?
「イッセー!! もう、どうしてあなたはこんな時にまで!」
流石のリアスさんもお怒りのようだ。……いや、この場合はイッセーが他の女を抱くことが許せなかったのか?
「す、すいません! どうもハーレムって言葉に弱くて…」
「そんなに女の子がいいなら、ここから生きて帰ったら――私が色々してあげるわ!」
オイィィ!? 何言っちゃってんのリアスさん!?
「………い、色々って。た、例えば……おっぱいを、す、吸ったりとかも…?」
お前も注文してんじゃねぇ!!
「ええ。それで勝てるなら安いものだわ」
カアアアァァァァァァァァァァァ!!
「うお!?」
突如、<赤龍帝の籠手>から今までにない輝きが放たれる。
「……吸う。吸えるんだ! 今の俺は神すら殴り飛ばせるぜ――あ、神様いないんだったなハッハッハッ! ――おっしゃああぁぁぁぁ!!」
神器は所有者の想いに応えるんだっけ? イッセーのエロ根性に呼応したってことか……。それでいいんですか伝説のドラゴンさん!?
「やられてもらうぜコカビエル!! 部長の乳首を吸うために!」
それだけの理由でそんな力を上げれるお前はある意味最強だよ…。
「女の乳を吸うためだけでこれほどの力を出す赤龍帝とはな……。お前はなんだ? どこの誰だ?」
コカビエルも苦笑しながら質問する。だよな。わけわからんもんな。
「よく覚えておけコカビエル! 俺は兵藤一誠! リアス・グレモリーの<兵士>で、エロと熱血で生きる男だ!!」
お前なりにかっこつけてるんだろうが、果てしなくダメだな。
……まあ、絶望ムードは打ち消せたからいいがな。さっきまで諦めてた皆の目に戦意が戻った。
――とはいえ。
「イッセーくん」
「ん? なんだよ竜m――」
イッセーの肩に手を置き、こちらを向かせる。振り向いたイッセーの表情からは、さっきまでの余裕は消えていた。まあ、当然だ。
――俺は相当威圧感のある笑みを浮かべているからな。
「……な、なんでございましょうか、竜真様…」
汗を滝のように流しながら敬語で聞いてくるイッセー。
「いや、お前がそういうどうしようもない色情狂だってことはわかってるんだ。……わかってるんだが――だからといって、俺がそんなこと許すわけがねぇだろ?」
「ヒィ!?」
殺気を出すとイッセーは涙目になり、情けない悲鳴を上げる。周りの皆も殺気を感じて少し後ずさりしている。
俺は気にせず、イッセーの前に出る。
「イッセー。死にたくないよな?」
「はい! まだ死にたくないです!」
「そうだよな。そんなお前の気持ちを考えて、あることをしてくれたら許してやろう」
「なんでもさせていただきます!」
一々敬礼しながら答えるイッセー。そんなに怖いか…。
「固くなるなよ。簡単なことだからな」
俺はイッセーの籠手を指差す。
「――そのバカみたいな理由で上げたパワー、俺に譲渡しろ」
「「「「「「っ!?」」」」」」
俺の言葉を聞いて皆が驚いた顔をする。
「譲渡しろってお前…!」
「なんだイッセー? そんなに俺に全てを託すのが不安か? 少なくとも、お前よりは強くなれると思うが?」
「いや、そうじゃなくて!」
尚も食い下がるイッセー。はあ、聞き分けがないなぁ……。
「イッセー。俺が負けると思うのか?」
不敵に笑いながら言ってやる。それを見て、イッセーも笑う。
「……そうだよな! お前はいつだって勝ってきた。 ――頼んだぜ竜真!」
「言われるまでもねぇ!」
イッセーは籠手で俺の籠手に触れる。
「<赤龍帝の贈り物>!!」
『Transfer!!』
イッセーが触れた籠手から力が流れてくるのを感じた次の瞬間、俺の体から凄まじい魔力のオーラが漏れる。リアスさんほどではないが。
……これが赤龍帝の力によるパワーアップか。使用者がイッセーだからまだしも、実力者が使ったらマジでチートだな。
「フハハハハ!! いいぞ小僧! 今の貴様からは最上級ではないにしろ、上級を凌駕する力を感じるぞ!」
「…あんたが言うならその通りなんだろうな。――それじゃあ、覚悟してもらおう」
竜真side out
no side
「皆、ちょっと離れていてくれ。なにせ、強化された自分の力がどれくらいのものか俺もわからないからな。――うまく加減できない」
竜真は言い終わると同時に消える。ほとんどの者は見失ったが、コカビエルは目で追っていた。その視線と同じ方を向いてイッセーたちは竜真がどこにいるか認識する。
竜真は<騎士>のスピードで一気に上空に飛び上がっていた。その背中から悪魔の翼を出して宙に浮き、コカビエルを見下ろしている。
「さっきはかき消されたが、今度はくらってもらおう」
竜真は一旦<女王>にプロモーションし、両手にいつもよりサイズが大きい劫火球を出して、一つに合わせる。
「劫火……」
そして大きく息を吸い、口に炎を蓄え――
「――鳳玉球!!」
劫火球を吐き出し、両手に出した劫火球と合わせて放つ。
放たれた火球は、さっきのものとはサイズが全然違った。直径三十メートルはある火球は、まるで太陽のよう。まともにくらえばシャレにならないダメージを負うだろう。
「ハハハハ! いいぞ!! 迎え討ってやろう!」
それでもコカビエルは笑いながら光の槍を作る。そしてそれを火球に向けて投擲する。
――だが、それを予想できない竜真ではない。
「何!?」
コカビエルの放った槍は火球にぶつかる前に、炎の槍とぶつかり砕け散った。火球によって死角となった向こう側から、竜真が全力で投げたのだ。
「ならば受け止めるまでだ!」
コカビエルは手に光を纏い、受け止める態勢に入る。
――しかし、それは中断せざるを得なくなった。
「――はああぁぁぁぁ!!」
「な――!?」
あろうことか、火球の中から竜真が飛び出してきたのだ。
竜真は自分で出した炎によるダメージは受けない。それを利用し、不意を突いた一撃を叩き込むことを考えついたのだ。
竜真は両腕に作っていた炎の剣を叩きつける。コカビエルはギリギリで光の剣を作って防ぐ。
(狙い通りだ!)
竜真は思わず笑みを浮かべる。最初からこの奇襲がうまくいくなんて思っていなかった。これは布石でしかない。コカビエルは竜真の笑みを見て狙いに気づいたが、もう遅い。
火球はすぐそこまで迫っており、逃げる暇も与えず二人を呑み込み、大爆発を起こした。その爆風だけでイッセーたちは危うく倒れそうになる。
爆煙の中から竜真が飛び出してくる。服が破けたり汚れたりしてるようだが、本人にダメージはない。
爆煙が晴れると、翼で体を覆っているコカビエルがいた。爆発をくらう直前に出してダメージを軽減していたのだ。コカビエルは翼をしまい、冷や汗をかきながら笑みを浮かべる。
「今のは焦ったぞ。あんな攻撃をしかけてくるとはな」
(やっぱ簡単にはいかないか…)
あれだけ手を尽くしても防がれてしまった。似たような戦法もおそらく警戒されて効かないだろう。
だが、竜真もそれくらいはわかっている。だてに何千回も喧嘩をしてきたわけではない。その場での判断力と発想力は戦士にも劣らない。
竜真は両手に炎の剣を纏い、コカビエルに突っ込む。コカビエルも光の剣を出して迎え討つ。
<女王>になっている竜真は総合的に強くなっているため、素早くも重みのある斬撃でコカビエルを手こずらせている。
「これはどうだ!?」
コカビエルは再び翼を出し、竜真を斬り刻もうとする。
さっきはくらっていたが、あれは体がついていかなかっただけ。今の竜真は充分すぎるスピードを出せる。見切れていた攻撃が避けれないわけがない。
竜真は冷静に十枚の翼と光の剣による斬撃を避け、右腕で反撃の一閃を放つ。その瞬間に<騎士>にプロモーションし、一気にスピードを上げる。
いきなりスピードが上がった剣を避け切れず、コカビエルの上半身に横一文字の傷が生まれる。
(ちっ、浅いか…!)
「――隙ありだ」
せっかくのチャンスを活かせなかった僅かな動揺。それは普通の者なら見逃すほど小さかったが、コカビエルは見逃さず光の剣を振るう。
竜真は後退しようとするが断念する。コカビエルが竜真の後ろに翼で壁を作って下がれなくしたためだ。突っ込めば容赦なく斬り刻まれる。後退できないなら、もう逃げ場はない。――ならば、やるべきことは限られる。
竜真は籠手で受け止める構えをとり、<戦車>にプロモーションする。だがギリギリ間に合わず、腕の半分ほどまで斬られる。斬られた痛みで一瞬怯む。
(――ん?)
が、それと同時に竜真は違和感を覚える。
――光による痛みがない。
竜真が以前戦った堕天使――ドーナシークとの最初の戦いで、触れただけでも焼けるような激痛が襲った。
今回はドーナシークよりもずっと格上の相手。その相手が出す光に触れてただで済むはずがない。
頭に疑問が浮かぶが、竜真はそれを振り払う。むしろ好都合だと考えた。
カウンターで右腕の炎の剣を振り下ろす。コカビエルはもう片方の光の剣で防ぐが、竜真の計画通り。
竜真は炎を剣の形状から戻して拳に纏う。さっきまで押し返していたものがなくなって変な方向に力が行き、コカビエルはバランスを崩す。
「劫火球!!」
竜真は拳の炎を劫火球に変え、ほぼゼロ距離からコカビエルの顔面に向けて放つ。
コカビエルは吹っ飛び、竜真も爆風で後ろに飛んで着地する。
まともなクリーンヒットが入ったとはいえ、竜真も結構なダメージを受けてしまった。籠手からは血が出ている。
イッセーはともかく、リアスたちは、目の前の光景を驚愕したまま見ていた。だが、それも仕方ないことだ。
力を譲渡されたとはいえ、この間まで人間だった下級悪魔が堕天使の幹部と互角にわたり合っている。こんなことはそうそうないのだから。
竜真は吹っ飛んでいったコカビエルに目を向ける。倒れたままだが、死んではいないだろう。
少しして、コカビエルは起き上がる。
「………ク、ククク…! クハハハハハハ!!」
そして、笑い始めた。その顔に少し火傷ができているにも関わらず、尚もコカビエルは笑う。
「――これだ! 俺がやりたかったのは!! 互いに傷つきながら、己の力と知恵を駆使して、相手の命を奪い合う! これこそが戦い! これこそが――俺が欲していたものだ!!」
竜真という自分と張り合える敵に対して、狂喜している。それほどに、コカビエルにとって戦いは楽しいものだった。
だが、次に見せた表情は、少し寂しそうなものだった。
「しかし残念だ。この楽しい時間も、もうすぐ終わりになるのだからな」
「終わりだと? ……この町は消させねぇ。俺があんたを倒して――」
竜真が言い返そうとするが、コカビエルは不適に笑って首を横に振る。
「違うな。俺が言っているのはそのことじゃない。――貴様の体だ」
「……なんのことだ?」
「気づいてるんだろう? 赤龍帝から譲渡された力が、もう無くなりかけていることに」
「………」
竜真は僅かに顔を歪める。ポーカーフェイスはうまい方だが、今回はバレたことがことだけに思わず歪ませてしまう。
「俺と戦う前に魔力を使いすぎたのは選択ミスだったな。それに、さっきの火球に全力を出したせいでかなり魔力を使っただろ? 傷はすぐに治って、体力もそこそこ回復しているようだが、魔力はそうはいくまい」
「………魔力がないからなんだ?」
竜真はコカビエルを睨む。その目には、強い意志が宿っていた。
「俺は元々魔力とは縁のない人間だったんだ。そいつが魔力を失ったところでなんの問題があるんだ? ――それにな、俺には超えたい人がいるんだよ。あの人は魔力なんざ持ってねぇただの人間なのに、自分の体一つでありえない強さをほこってる。なのに光に頼るお前に勝てないようじゃ、あの人を超えるなんてできねぇ。――だから、お前には絶対負けない!」
コカビエルを指差してそう宣言する竜真。
「貴様がそこまで言う人間か……。どんな奴か詳しく聞きたいが、もう町が消えるまで五分もないだろうからな。――終わらせてやろう」
コカビエルは翼を出して飛び上がり、最初に体育館を消し飛ばしたのと同じサイズの光の槍を出す。
「チッ。今の状態じゃ、劫火鳳玉球で撃ち返せるかどうかも微妙だな」
「おいおい。誰がお前を狙うと言った?」
コカビエルは不適に笑う。竜真はその言葉に疑問を覚えるが、答えはすぐにわかった。
「まさか――」
竜真が答えを出したと同時にコカビエルは槍を放つ。
――イッセーたちに向かって。
「クソッ!」
竜真は<女王>にプロモーションし、翼を出して飛び上がりイッセーたちの前に出る。
両手にできる限りの魔力を集めて光の槍を受け止める。
「ぐうぅぅぅぅ!!」
その威力は凄まじく、竜真の体は何か所か傷つき、光による激痛も容赦なく襲ってくる。
「「「「「竜真(くん)(先輩)!!」」」」」
イッセーたちはその姿を見て思わず悲鳴に近い形で竜真の名前を呼ぶ。今、竜真の後ろにいるのは、守りたい大切な仲間だ。
『そんなに失いたくないなら、守れるように力をつけろ』
竜真の頭の中に残る、目標とした人からの言葉。
これ以上大切な人を失わないために、竜真は負けられない。
「……これくらい…!」
体のあちこちから血を出しながらも、竜真は力を振り絞り――
「オオオォォォォォォ!!」
光の槍を砕いた。だが、傷だらけでダメージもかなり負った。何より――
「力を使い果たしたな」
「――っ!?」
竜真は横から聞こえたコカビエルの声に驚く。
コカビエルの言う通り、竜真は今のでイッセーから譲渡してもらった力と自分の元からあった魔力も全て使ってしまった。
実際、今のコカビエルの動きも、さっきまでの竜真なら余裕で捉えることができた。
竜真は反射的に右手で裏拳を叩き込む。それはコカビエルの顔面に直撃する。
「……効かんな」
だが、満身創痍の竜真の拳はコカビエルには全く効かず、逆に腹に拳を叩き込まれる。
「がぁ!?」
そのまま吹き飛ばされた竜真は、地面に激突する。イッセーたちが助けに向かおうとするが、その前に竜真が自力で起き上がる。
(負けねぇ…! 皆を守るために! ――あの人を超えるために!!)
体はボロボロでも、心はまだ折れてはいなかった。
竜真はコカビエルのいる方向に顔を向け――
ドシュ!!
視界に一瞬光るものが入ったと思った次の瞬間、竜真の体に衝撃が走り、力が抜けていく。
いきなりのことで、竜真は何が起こったかわからなかった。だが、少し違和感を感じている。――やけに胸の辺りが軽くなった感じがするのだ。
気になって胸に手を伸ばす竜真。しかし、その手が胸に触れることはない。それは当然のこと。
――竜真の胸には、風穴が空いているのだから。
竜真は後ろを向く。後ろの地面には、光の槍が刺さっていた。
(……ああ。俺、あの槍で胸を貫かれて――)
なぜか頭の中と表面上は非常に冷静に現状を把握する。しかし、体は正直だ。
竜真の胸からは大量の血が出て、口からも血を吐く。
とうとう立っていられず、後ろに倒れていく。意識が薄れる中、竜真は最後に自分に駆け寄る仲間たちの姿を見た。
(…なんつー顔してんだ皆。大丈夫さ。俺があいつを――)
イッセーたちが駆け寄る中、竜真は地面に大量の血を流して倒れ、意識を失った。
た、竜真がーーー!! 主人公が死んじゃったーーー! これからどうなるんだーーー!?
………すいません。謝るのでリンチは止めてください。
今回は大分竜真も奮戦したのですが、やはりうまくいきませんでした。まあ、相手が開いてだししょうがないですね。
次回は、私が一番待ち望んでいたものが書けます! ぐへへへ。今から楽しみでヨダレが止まらねぇ…!
おっと、失敬。それでは、ここら辺でおいとましますね。
さよな――
「待て、凡骨が!」
え? か、かかかか海○社長!? どうしてここに!?
「散々ネタにしておいてどの口が言う。まあ、いいだろう。貴様の期待に応えて、本物を見せてやろう」
本物? ま、まさか!?
「出でよ! ブルーアイ○・ホワイトドラゴン!!」
ギャアアァァァァァァ!? 逃げろおぉぉぉぉ!!
「滅びのバース○ストリーム!!」
アアアァァァァァァァ!? 次回までには復活してやるうぅぅぅぅ……。
「フハハハハハ!! 強靭! 無敵! 最強!」