ハイスクールD×D 荒ぶる神を宿す者   作:初代凡人

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最近忙しくて中々更新できませんが、どうか気長にお待ちください。

では、本編か。感動的だな。――だが、無意味だ。


第二十六話 会談――ではなく戦闘開始

no side

 

『――何、アザゼルが?』

 

「ええ。兵藤くんたちに接触をはかってきました。幸い、襲ってくるようなことはありませんでしたので、事なきを得ましたが………どうしましょうか? 会談で追及した方がよろしいのでは?」

 

『……いや、アザゼルはそういう男だから、追及しても仕方ない。この件に関しては何も被害がなかったことだし、不問としよう。――それより、神器の方はどうだい?』

 

「はい! ちゃんと力を溜めているので絶好調です! ――何かトラブルがあっても、最高の力で対処できます」

 

『そうか。……君にはいつも苦労をかけるね。ただでさえ教師の仕事で忙しいのに、私たちの護衛も頼むことになって、本当に申し訳なく思うよ』

 

「いえいえ。これが私の――<魔王の守護者(サタン・ガーディアン)>の役目ですから」

 

『ありがとう。それじゃあ、ここで失礼するよ。――よろしく頼むよ、朱美』

 

「はい、もちろんです、サーゼクス様。それでは。…………あなたに会うのも楽しみだわ。ねえ、朝霧くん?」

 

 

 

――――――――――

 

「――ヴァーリ。今のところ、何か動きはあるか?」

 

「動きとなると、アザゼルがリアス・グレモリーの眷属と接触をしたことくらいか。だが、悪魔側の護衛に止められたようだ。このままいけば、会談は予定通り行われるだろう」

 

「魔王が短気で、すぐさま戦争ってなれば楽だと思うけど?」

 

「そんなに短気なら、この前のコカビエルの襲撃でもうふっかけてるだろ? ――それに、三勢力全てに宣戦布告できてこそ意味があるんだ。むしろ、やってくれなきゃ俺らがこの上なく困るぜ」

 

「確かに、俺も世界の猛者たちに宣戦布告できないのは困るな」

 

「あんたたちは戦い好きなだけでしょう? 私みたいな平和主義者はいい迷惑よ」

 

「平和主義者? はっ、どの口が――ごぶぉ!?」

 

「余計なこと言ったら寿命が縮むわよ、バルザー?」

 

「お、おい、アレシ――ばはっ!? お前の――げはっ!? 毒鱗粉はシャレに――ぐふっ!?」

 

「アレシー、そこまでにしてやってくれ。吐血の量がマズいぞ」

 

「――っと、そうね。ついついやりすぎちゃった」

 

「ぐふっ……。と、とにかくだ。ヴァーリ、予定通り、カテレアが出てきてしばらくしたら行動を起こせ。――それまではくれぐれも、三勢力にバレないようにしてくれよ」

 

「ああ、わかってる。――そっちのメンバーで参加するのは、バルザーだけなんだな?」

 

「ああ、アレシーは今回、結界の外から全体を監視するだけだ。――あの半端野郎にこの上なく同情しちまってるみたいだからな。計画に支障が出るかもしれん」

 

「……そこら辺の切り替えはしっかりできるって言ってるに、信用されてないわね…」

 

「いいや、この上なく信用してるさ。――してるからこそ、お前はこういうのに弱いのはわかるんだよ。だから、あの半端野郎とは俺が戦う」

 

「………」

 

「二人とも。その相手は鬼城竜真のことか?」

 

「ん? そうだが、どうかしたのか?」

 

「いや、できれば彼と先に戦わせてほしいんだ。バルザー、君は半端と言っているが、彼は戦いのセンスは充分あると俺は思う。――一度、本気で戦いたいんだ」

 

「……はあ、戦闘狂だな。――わかった。じゃあ、行動を起こす時に襲いかかってくれ。別に俺と戦わせることは考えなくていいから、そのまま倒してしまっても構わない」

 

「ありがとう、バルザー。じゃあ、遠慮なくやらせてもらうよ」

 

「おう、思う存分やってくれ。それに、俺たちの最強格が白龍皇相手にどれだけ喰らいつけるか興味が沸いてきた。――せいぜい頑張ってくれよ? 鬼城竜真」

 

 

 

――――――――――

 

<ギャスパー二度目の引きこもり事件>からまたしばらく平和な日々が続いていた。

しかし、今日はついに三勢力会談の日。時刻は深夜、今日は休日なので一般の教員も誰もいない。

 

俺たちオカルト研究部メンバーは会談の場所となる職員会議室に向かっている。

 

ちなみに、ギャスパーは部室に置いてきた。何かの拍子に神器が発動してトップの誰かを停めた、なんてことになったらヤバいからな。……主に、外にいる奴らがだが。

 

今、駒王学園は強力な結界で覆われており、その周りには大勢の悪魔、天使、堕天使が待機している。

 

様子を見てきた祐斗は一触即発の空気だったと言っていた。まあ、今も敵対関係にある者同士がこんなにたくさん集まって、いがみ合うなという方が無理な話だ。

 

「失礼します」

 

と、どうやら着いたようだ。リアスさんがノックして扉を開ける。

 

部屋の中央にある円形のテーブルに各勢力のトップが座っている。

 

悪魔側の人物はサーゼクスさんとレヴィアタン様。その後ろには給仕係をしているグレイフィアさん、護衛としてかは知らないが、海斗さんが立っている。

 

――だが、その隣に立っているもう一人の人物に、俺だけではなくイッセーにアーシアさん、ゼノヴィアも驚いた。

 

「「「ひ、柊先生!?」」」

 

「はーい、皆。こうして対面するのは初めてかしら?」

 

そこには、俺たちの担任教師である柊先生がいた。………つーか、ちょっと待て。そこに立っているってことはまさか――

 

「柊先生も、悪魔なんですか?」

 

「ええ、そうよ。――悪いけど、詳しいことは今度にしましょう。今から大切な会談が始まるんだし、ね?」

 

そうだった。これから重要な会談なんだ。

 

柊先生が悪魔だったのは驚きだが、今はそれより大切なことがある。追及するのは今度にしよう。

 

今度は天使側に目を向ける。座っているのは金色の翼を十二枚も持ち、頭の上に輪っかを浮かべている祐斗と同じ爽やかなイケメンの男性。多分、イッセーがこの前会ったというミカエル様だろう。その後ろには、普通の白い翼を持つ女性天使がいる。

 

続いて堕天使側。十二枚の黒い翼を出して座っているアザゼル。その後ろにある壁に寄りかかる形でヴァーリがいる。

 

「私の妹と、その眷属たちだ」

 

サーゼクスさんがそう言ったあと、俺たちは壁際に立って待機する。

 

………しかし、こうして見ると悪魔側だけ人数多いな。俺たちは全員悪魔だし、すでに来ていたシトリーさんと真羅さんも含めると他の勢力より四倍も人数がいる。万が一のための警戒は必要だとは思うが、これだと逆に何か起こるんじゃないか?

 

「さて、全員揃ったところで、会談を始めよう。まず、この会談への参加条件として、この場にいる者は全員神の不在を知っている」

 

全体に向けてサーゼクスさんが確認をとるが、驚いた反応をする人は一人もいない。ってことは、シトリーさんと真羅さんはレヴィアタン様から聞いたのか? 結界の外にいた二人にはコカビエルの声は届いてないだろうし。

 

そんなことを考えてる内に、話し合いが始まった。だが、ここで予想外のことが。

 

 

 

 

 

――眠い。

 

マズい。今日に限って異様に眠い。

 

普段から徹夜とかしないタイプだし、悪魔稼業をしてる時も実は辛い時があったりするが、今日の睡魔はヤバい。……まあ、俺が関わる話は最後の方だろうから、少し寝させてもらうとしよう。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

……ゾクッ

 

 

 

 

 

「――っ!?」

 

少し寝ていると、突然背後から強い殺気を感じ、俺は飛び起きて炎の槍を出し、殺気を放ってきたであろう人物に突きつけ――突き刺す!

 

「うおっ!? 危ねぇな、おい。何すんだよ竜真?」

 

しかし、加減なしで突き刺しにいった槍を、後ろにいた人物――海斗さんは素手で掴んで簡単に止めた。

 

「……寝ている奴に殺気を飛ばしてきておいて、何すんだはねぇだろ海斗さん?」

 

「だからって、容赦なく槍を突き刺しにくるか? 俺じゃなかったらどうしたんだよ?」

 

「ああ、その点に関しては何も問題ないです。最初はちゃんと寸止めでしたから。――まあ、海斗さんだと気づいた瞬間全力でいったんですけどね」

 

「いい度胸だな、あぁ? 鼻に指突っ込んで穴広げてやろうか?」

 

「上等ですよ。じゃあ俺は耳に親指捻込んでやる」

 

互いに笑顔だが、敵意むき出しで睨み合う。その間も海斗さんは炎の槍を掴んでいるんだが………微塵も顔色を変えない。相変わらずだな。

 

そんな俺たちを見かねたのか、サーゼクスさんが声をかけてくる。

 

「二人とも、そこまでにしてくれ。これ以上するというのなら、見逃すわけにはいかない。――私が止めに入ることになるが、構わないかい?」

 

……その言葉にプレッシャーは一切感じないが、サーゼクスさんを怒らせればどうなるかは容易に想像できた。普段優しい人ほど、怒ると怖いしな。

 

俺は槍を消してサーゼクスさんに頭を下げる。

 

「すいません、サーゼクスさん。場をわきまえずに勝手な行動をしてしまいました」

 

「いや、わかってくれたらいいんだ。頭を上げてくれ、竜真くん」

 

言われた通り顔を上げてサーゼクスさんの顔を見るが、いつものように笑みを浮かべ、咎めるようなことは一切してこない。……優しい魔王様だな、本当。

 

「いいか、竜真。これに懲りたらもう二度とするなよ?」

 

「自然に割り込んだ上に俺だけの責任みたいに言ってますが、あんたにも責任があるんだぞ海斗さん」

 

若干上から目線なのが腹立つ。

 

「海斗。自分が起こすというから任せたのは私だが、殺気で起こすのはどうなんだい?」

 

「おいおい、サーゼクス。まさかこの俺がお遊びだけでこんな起こし方をしたと思うのか?」

 

「ああ」

 

「……信用ねぇな」

 

「日頃の行いでしょうが。第一、海斗さんは神に誓ったとしても簡単に裏切るから、余計信用されないんですよ。まあ、神はいないけど」

 

ちなみに、神がいたとしても裏切りそうだということをつけ加える。

 

そんなやり取りをしてると、アザゼルがわざとらしく大きく咳払いする。

 

「あー、そこの三人。そろそろ話を再開したいんだが……」

 

「おっと。すまない、アザゼル。竜真くん、海斗。雑談はここまでにしておこう」

 

サーゼクスさんにそう言われ、海斗さんはおとなしく自分の立ち位置に戻る。

 

「(あー、朱乃さん。話どこまで進んだか教えてもらってもいいですか?)」

 

「(あらあら、しょうがないですわね。結論から言いますと、三勢力は和平を結ぶことになりましたわ)」

 

おお、凄く簡単に言ってくれた。にしてもそうか、和平か。少なくとも、一番心配していたこの場での戦いは避けれそうで安心した。

 

そう考えてる内に、アザゼルが再び話し始める。

 

「それじゃあ、俺たち以外にも世界に影響を及ぼしそうな二天龍の意見を聞こうぜ。――まずは、ヴァーリ。お前は世界をどうしたい?」

 

この場にいる全員の視線がヴァーリに集まる。

 

「俺は強い奴と戦えればそれでいい」

 

ヴァーリは臆することもなくそう言い切る。……和平を結ぶってのに、ずいぶん物騒な意見だな。

 

ん? あいつ一瞬こっちを見た気が…………気のせいか?

 

「じゃあ、次は赤龍帝。お前はどうだ?」

 

今度はイッセーに視線か集まる。流石にこういうのには慣れていないようで、イッセーは少しビビってるようだ。

 

「え、え~と………正直言ってわかりません。さっきまでの話もいまいち理解できてないし……」

 

ある程度は予想していたが、やっぱり理解できてなかったか…。

 

「では、赤龍帝。恐ろしいほど噛み砕いて説明してやろう。もし戦争が始まったら、リアス・グレモリーを抱けないぞ?」

 

………………は?

 

「和平を結べば戦争はなし。そうなれば、種の存続と繁栄のために、毎日子作りし放題。戦争なら子作りはなしだ。じゃあ、改めて聞くぞ。――お前はどうしたい?」

 

「和平でお願いします! やっぱり平和が一番ですよね! 部長とエッチがしt――」

 

「煩悩滅殺!!」

 

「ごべぁ!?」

 

すぐさまイッセーの前に行き、その頭に拳骨を振り下ろす。イッセーは蛙の潰れたような声を出して床に突っ伏す。

 

俺は倒れ伏したバカの頭を掴んで上を向かせる。

 

「おいイッセー。テメェ、リアスさんのお兄さんであるサーゼクスさんもいるのに何言ってやがんだ、ゴラァ? お前の脳みそはスッカスカか? この頭を叩き割って確認した方がいいのか?」

 

頭を掴んだ手に力を入れる。

 

「イテテテテ! だ、だって、部長とエッチしたいじゃねぇか! それができないんなら、戦争なんて起こさない方がいいじゃねぇか!」

 

「オッケー、やっぱり頭かち割って脳みそ抉り出す」

 

更に力を入れると、イッセーの頭からミシミシと危険な音が鳴り始める。

 

「グヌオォォォォォ!? 嘘です! すんませんした!!」

 

「よろしい」

 

こんなことにあまり時間をかけてもいられないので、イッセーを解放してやる。イッセーは頭を抱えてその場で転がる。

 

念のためサーゼクスさんがどういう反応をしたか見てみるが、いつものように笑っていてくれた。ほっ、寛大な人でよかった……。

 

「それでは、二天龍である二人の意見を聞いたところで、もう一人我々に聞きたいことがある者がいる。いいだろうか? セラフォルー、アザゼル、ミカエル」

 

サーゼクスさんがそう切り出した。……とうとう話す時が来たか。

 

「私はいいわよ☆」

 

「私も構いませんが、誰なのですか?」

 

レヴィアタン様は普通にオッケーを出し、ミカエル様も一応許可をくれた。ここまではいい。あとは…。

 

「すぐにわかるさ。――アザゼル、君はどうだ?」

 

一番心配なのはあの堕天使総督だ。話す前に余計なことを――

 

「別にいいぜ。……元々、俺はこの会談で本人に確認させてもらおうと思ってたからな。――なあ、鬼城竜真?」

 

言いやがったよ、この野郎!

 

アザゼルの発言でこの場にいる全員の視線が俺に来る。その大半は驚いたものだ。

 

「はぁ…。なんで本人が話そうと意気込んでいる時にそうやってバラすかねぇ。楽しいのか?」

 

「ああ、楽しいな」

 

「海斗さん、アザゼルの声真似して割り込まないでくれません?」

 

「断る」

 

悪い笑みを浮かべて言ってくれんな、この人は……。以前も形はどうあれ邪魔してきたし、いい加減にしてほしいところだ。

 

「……まあ、さっきサーゼクスさんが言ったように、皆さんに聞いてほしい……いや、見てほしいものがあるんです。――特に、トップの皆さんに」

 

俺は「ちょっと失礼します」と言ってワイシャツとシャツを脱ぎ、上半身裸になる。……さあ、いよいよだ。覚悟を決めろ。

 

――どんな答えが返ってこようと、俺の運命が大きく動くことになるのだから。

 

一つ大きな深呼吸をし、気分を落ち着ける。そして籠手と腕、宝玉を出す。

 

「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」

 

これを見たことのあるサーゼクスさんとグレイフィアさん以外の全員が驚いた表情になる。――いや、海斗さんと柊先生は普通だな。多分、サーゼクスさんから既に聞いていたんだろう。

 

アザゼルは驚くというより「やっぱりか」みたいな顔をしている。……ヴァーリはむしろ喜んでいるように見える。

 

「……竜真。その腕と宝玉、いつから…?」

 

「コカビエルとの戦いが終わったあと、腕と胸に時々激痛が走ることがあったんです。多分、あの時から異変が起きてたんでしょう。……気づけば、こんな風になってました。――それで、どうです? あなた方は、これに見覚えがあるんじゃないですか?」

 

リアスさんからの質問に答えつつ、トップの方々に問いかける。

 

「私は既に確認しているが、皆はどう思うだろうか?」

 

「……籠手はともかく、腕と宝玉は瓜二つですね」

 

「信じ難いけど、()()のものにしか思えないわ!」

 

「まあ、間違いないだろうな。……で、なんでこいつが表に出てるんだよ? こいつの封印の管理はお前ら悪魔の役割だっただろう?」

 

「それは――」

 

「はい、ストップ」

 

トップの四人で討論を始まったが、俺はすかさず止めに入る。

 

「すいませんが、そちらだけで話を進めないでください。瓜二つだの、封印の管理だの、俺はそんな難しいことを聞いた覚えはないですよ? ――これがなんなのか、それだけを言ってくれれば充分です。余計な話はしないで頂きたい」

 

こちとら何日も前からずっと心の隅っこで気にしてストレスが溜まってきてたんだ。これ以上答えが引き延ばされるのは我慢できない。早く結論を教えてもらわねぇとな。

 

俺の発言を聞いて、サーゼクスさんは他の方々に目線を送り、覚悟をしたような顔でこちらを向く。

 

「わかった、教えよう。……竜真くん。君の中にいるのは――」

 

サーゼクスさんが答えを言ってくれようとした、その瞬間だった。

 

 

 

 

 

――ギャスパーの神器と同じ感覚が襲ってきた。

 

 

 

 

 

「……ギャスパー?」

 

そう言いながら周りを見ると、少したけ異変があった。

 

各勢力のトップ、グレイフィアさん、海斗さん、柊先生、リアスさん、祐斗、ゼノヴィア、ヴァーリ。このメンバー以外のこの場にいる全員が停まっているのだ。

 

腕時計を見てみるが、やはりその針は停まっていた。

 

思わず旧校舎の方に目を向けるが、ここの窓からはよく見えない。向こうがどうなってるかはわからないな……。

 

「……今のは、ギャスパーの神器? でも、遮蔽物越しにまで停止能力が働くなんて、今までなかったことだわ…」

 

「……リアス、どうやら遮蔽物とかは関係なく、此処と結界の周辺は停止してるようだ」

 

サーゼクスさんが手元の魔方陣で出した映像を見せる。

 

それは、この学園を覆う結界の周りにいる悪魔、天使、堕天使を映したものだ。――だが、映像の中で動く者は一人もいない。

 

おいおい、いくら力が高まってるからって、これはただの暴走にしては規模がデカすぎるだろ? どうなってんだ?

 

「おい、なんか客人が来たみたいだぞ?」

 

海斗さんが窓からグラウンドを見下ろしながらそう言った。見てみると、グラウンド中にいくつもの魔方陣が出ていた。

 

悪魔のものとは形が違うみたいだが、おそらくあれは転移用! 次の瞬間、一つ一つの魔方陣からローブに身を包んだ者たちが現れた。

 

「おーおー、団体様のご到着ってか?」

 

「あれは……魔法使い」

 

アザゼルとミカエル様がそう言っていると、魔法使いらしき奴らは手をこちらに向け、魔方陣を展開する。攻撃してくる気か!?

 

魔法による攻撃が校舎に直撃する。――だが、こちらへのダメージは全くなかった。

 

「この校舎は、私とアザゼルとミカエルで防御結界を張っている。余程のことがない限り大丈夫だ」

 

なんだ、そういうことは初めから言ってください、サーゼクスさん。

 

「――あ、あれ? どうなってんだ?」

 

「お、赤龍帝のお目覚めだ」

 

ん、どうやらイッセーは復活したようだ。仮にも赤龍帝を宿してるからか? ……それともただの慣れか?

 

「おはよう、イッセー。よかったな。ずっと停まってたら吹き飛ばしてやろうかと思ってたぜ」

 

「さらっと怖いこと言うなよ!? っていうか、今どうなってんだ?」

 

「テロだ。――ほら、窓の外見てみろ」

 

窓の方を指差して見るように言う。イッセーは素直に窓に近づき、魔法使いが放った攻撃にビビっていた。

 

「な、なんで急にこんなことに!?」

 

「まあ、ある程度予想はしてたさ。俺たちのように平和を望まない奴らがいるってことはな。――あのヴァンパイアの神器を利用してくるとは思わなかったが」

 

アザゼルがそう言った。それが問題なんだよな…。ギャスパーを利用されたのはマズかった。

 

幸いトップは誰も停まってないが、戦力がだいぶ削られた。イッセーはともかく、残りのメンバーが自然と動けるようになるとは思えない。

 

「眷属で動けるのは、私とイッセーと竜真、祐斗とゼノヴィアだけのようね祐斗は禁手によって聖と魔が合わさったイレギュラーな力のおかげで助かったのかしら? ゼノヴィアはデュランダルの力で能力を防いだようね」

 

リアスさんの言うように、ゼノヴィアはデュランダルを出していた。……とりあえず、早くそれを閉まってくれゼノヴィア。誤って誰かを消滅させたらシャレにならん。

 

「ギャスパーの特訓をしている間に、停められる感覚は体で覚えた。デュランダルの力で防げないか試してみたけど、成功したようだね」

 

ゼノヴィアは空間に穴を開けて、そこにデュランダルを閉まいながら言った。体で覚えたって、こいつもバトルセンス高いな…。

 

「よりにもよって、私のカワイイ下僕を利用するなんて……! 許せないわ!」

 

おお、リアスさんがお怒りだ。そりゃそうか。あの人は自分の下僕を凄く大切にするから、こういうことは耐え難いんだろう。

 

「ところで、利用したとはいえ、どうやってギャスパーの力をここまで上げたんでしょうか? 遮蔽物越しに停めるなんて、いくら<停止世界の邪眼>でもできないのでは?」

 

俺がそう疑問を口にすると、アザゼルが答えた。

 

「いや、できる可能性はあるぜ。――もし、あのヴァンパイアが禁手に至ったとしたらどうだ? まあ、タイミング的に強制的に至らされたんだろうが」

 

――っ、そうか! ギャスパーは力が高まっていずれ禁手になると言われていた程だ。強制的にやろうとしても、簡単にできるだろう。

 

「まったく。お前のところの眷属は優秀だな、リアス・グレモリー?」

 

アザゼルがリアスさんの肩に手を置くが、リアスさんは容赦なくその手を払う。アザゼルはため息をついて、そのまま手をグラウンドに向け、振り下ろす。

 

すると、光の槍が雨のように降り、魔法使いたちを一瞬で全滅させてしまった。防御障壁を張った者もいたが、まったく意味をなしてなかった。

 

……流石は堕天使の総督か。最初の出会いが出会いだけに印象はあれだったが、実力は本物のようだ。

 

――だが、魔法使いたちの死体が横たわるグラウンドに再び大量の魔方陣が出て、新たな魔法使いたちが現れる。

 

「あの様子だと、ストックはまだまだありそうだな……。これじゃあジリ貧になるぞ」

 

海斗さんの言う通りだ。あれだけの数が一瞬でやられたにも関わらず、再び送り込んでくるなんて余程の人員がいるか、ただのバカだけだ。

 

「とりあえず、敵に利用されているで

あろうヴラディくんを解放するのが先決ではないでしょうか? また能力を使われて、誰かが停められでもしたらマズいですし」

 

柊先生が意見を出す。確かに、強制的な禁手の能力を使うのは、ギャスパーに相当な負担がかかるだろうが、奴らはそんなの気にせずに力を使うだろう。それに、力を更に増幅させて放つ可能性もある。

 

一刻も早く救ってやらなきゃ、俺たちもギャスパーも危ない。

 

「そうだな……。どうにかして、旧校舎に行ければいいのだが、あの敵の数では近づくのも厳しいだろう。何かいい方法は――」

 

「お兄様。旧校舎には私の<戦車>の駒があります。それを使ってキャスリングをすれば、なんとか敵の懐に潜り込めると思います」

 

「キャスリングか……。敵の不意をつけるだろうし、それでいこう」

 

キャスリングっていうのは、<戦車>の能力の一つで自分と<王>の位置を瞬時に入れ替えることができるものだ。これなら敵の拠点に殴り込みをしかけれる。

 

「でも、リアスさん一人じゃ流石に危険ですよ。あともう一人くらい一緒に移動させるのはできないんですか?」

 

いくらリアスさんとはいえ、一人で行くのは無謀だ。グラウンドに出てきている敵だけでも、中級悪魔並の攻撃力を持っている。いくつもまともにくらえば、いくらリアスさんでも大ダメージだ。

 

「それもそうだね…。グレイフィア、私の魔力方式を使ってあと何人か転移させられないか?」

 

「可能ですが、転移できるのは一人までです。この部屋だと広さが足りないので…」

 

一応、一人は転移できるんだな。さて、誰を転移させるか……。

 

――と、悩む必要もなかったか。そんなにやる気のある顔してる奴を行かせないわけにはいかないな。

 

「お、俺が行きます! ギャスパーは俺の大切な後輩なんです! 行かせてください!」

 

――なあ、イッセー?俺が行こうかと思っていたが、今回はこいつに花を持たせてやろう。

 

何より、こいつの方がギャスパーといる時間が長い。こいつが助けに行った方がギャスパーも安心できるだろうしな。

 

「適任だと思いますよ。万が一の時は、ギャスパーにイッセーの血でも飲ませれば形勢逆転できるでしょうし。――それに、ダメと言ってもこいつは聞きませんしね」

 

「わ、悪かったな!」

 

バカにされてると思ったのか、イッセーは怒鳴ってくる。それに対して、俺は首を横に振る。

 

「イッセー、俺はバカにしてる気はないぜ? 確かに言うことを聞かないってのは短所ではあるが、自分の意見を貫き通せるっていう長所でもある。――ギャスパーを助けたいっていう一心で、お前がそう言ってるのなら、俺はその意見を尊重して後押しするだけさ」

 

「お、おう……」

 

微笑みながらそう言ってやると、イッセーは戸惑った顔をする。

 

「……おホモだちか?」

 

「オッケー、海斗さんぶっ飛ばす」

 

いらない横槍を入れてきた人物に殴りかかろうとする。

 

「――ストーップ!」

 

だが、その前に柊先生が間に入ってきた。

 

「こんな時に身内で争うのは不毛よ。――それに、この襲撃のタイミングからして、このメンバーに裏切り者がいるのは確実。そんな中で暴れたら、真っ先に疑われるわよ?」

 

……確かに、柊先生の言う通りだ。

 

このテロのタイミングはもちろんだが、ギャスパーを利用してきたことが一番大きい。ギャスパーがこちらのメンバーにいることを向こうが知ってるだけならまだいいが、その正確な位置まではわかるはずがない。

 

――今此処にギャスパーがいないと知っていなければ、旧校舎に行くはずがない。このことを知るためには、この場に内通者を送り込む以外の方法はそうそうないだろう。よって、この中に裏切り者がいるのは確実。

 

一番疑わしいのは堕天使側だが、こんなことをアザゼルがするとはあまり思えない。となると残りは――

 

「ヴァーリ、お前は外に出てあいつらの相手をしてやれ。白龍皇が出てきたら、奴らも動きを見せるかもしれん」

 

ん、また長考してる間にいつの間にか話が進んでいたようだ。アザゼルがヴァーリに外の魔法使いを迎撃するように言っていた。

 

「俺がいることは向こうも承知なんじゃないか?」

 

「だとしても、白龍皇が前に出てくれば嫌でも敵はお前を警戒する。旧校舎のヴァンパイアを救出する間、敵の注意の大多数をお前に向けさせれるだろう?」

 

「俺は旧校舎ごと、そのヴァンパイアを吹っ飛ばした方が早いと思うが?」

 

……こいつは、和平を結ぶっていうのに、なんつー危ない発言してんだよ。さっき、強者と戦えればいい、なんて言ってたし、根っからの戦闘狂か…。

 

アザゼルはヴァーリの発言にため息をついていた。

 

「和平を結ぼうって矢先にそういのはよせ。もちろんそれも手だが、あくまで最終手段だ。悪魔側に貸しも造れるし、無事助けるにこしたことはない」

 

「了解」

 

ヴァーリはため息を出しながらも、背中から光の翼を出す。あれが<白龍皇の光翼>か…。

 

「――禁手化(バランス・ブレイク)

 

Vanishing(バニシング) Dragon(ドラゴン) Balance(バランス) Breaker(ブレイカー)!!』

 

その音声と同時に、ヴァーリの体が白銀の鎧に包まれていく。…話には聞いていたが、本当にイッセーの鎧とそっくりだな。

 

ヴァーリは天井に穴を開けて飛び出していった。……なぜ壊した?

 

外にいる魔法使いたちはヴァーリを確認すると一斉に攻撃をしかけるが、ヴァーリはそれを避け、あるいは拳で弾き返す。ヴァーリは波動を放って魔法使いたちを数十単位で吹き飛ばす。

 

……こんなに強いとはな。あれがイッセーの宿敵になるんだろ? ……大丈夫だろうか?

 

だが、ヴァーリがいくら吹き飛ばしても、また魔方陣が現れて新たに増援が来る。本当に切りがない。大元を叩いた方が早い気がしてきた。

 

「ところでアザゼル。なぜ君はここ数年間、神器所有者を集めていたんだ? ……<神滅具>所有者も数人いると聞いた」

 

「私たちはてっきり、戦争の準備をしているものだと思っていましたが、あなたはいつまでもしかけてくることはなかった。……何が目的だったのです?」

 

サーゼクスさんとミカエル様がアザゼルにそう質問した。そんなことしてたのか…。しかも、ヴァーリのような<神滅具>所有者が数人いる…。そりゃ警戒もするわな。

 

「戦争をするつもりはねぇさ。――ただ、備えていただけだ」

 

「備えていた? 一体何に対して?」

 

俺は割り込んでそう質問する。

 

「――<禍の団(カオス・ブリゲード)>。組織名と背景が判明したのは最近だが、存在自体は以前から確認されていて、うちの副総督のシェムハザが目をつけていたのさ。それからの調査の結果、そいつらは各勢力の危険因子が集まった連中だということがわかった。禁手に至った神器所有者もいて、<神滅具>を持つ者も数人確認している」

 

「カオス・ブリゲード…。そんなに危険な者たちがいたとは……。その者たちの目的は?」

 

ミカエル様がそう訊くと、アザゼルはため息をついて答える。

 

「破壊と混乱。単純だろ? 世界平和ってのが嫌いなのさ。――テロリストだ。しかも最大級に性質が悪い。そして組織の頭は、<赤い龍>と<白い龍>よりも強力で凶悪なドラゴンだ」

 

「「「「「「「「――っ!?」」」」」」」」

 

アザゼルのその言葉を聞いて、全員が驚いた顔になる。……俺から言わせてもらえば、世界に喧嘩を売った<赤い龍>と<白い龍>よりも強いドラゴンがいる時点で驚きなんだが…。

 

「……そうか。彼が動いたのか。――<無限の龍(ウロボロス・ドラゴン)>オーフィス。神が恐れたドラゴン。この世界ができあがった時から最強の座に君臨し続けている者」

 

ウロボロス? それって、あの自分の尾を食っている蛇のことか? あれはいろんな象徴になっているが、そのどれもが凄いものばかりだった覚えがある。

 

『――そう。オーフィスが私たちのトップです』

 

突然、この場の誰のものでもない声が聞こえてきた。すると、部屋に転移魔方陣が出現する。

 

「――っ! そうか、そういうことか! 今回の主犯は…!」

 

サーゼクスさんが珍しく動揺している。この声に聞き覚えでもあるのか?

 

「グレイフィア! リアスとイッセーくんを転移させるんだ!」

 

「わかりました! ――お二人とも、ご武運を」

 

「ちょ、ちょっと、グレイフィア!?」

 

リアスさんが動揺してもお構いなしでグレイフィアさんはイッセーとリアスさんを魔方陣で転移させる。

 

あ、一つ忘れてたことが。

 

「リアスさん! プロモーションの許可くれますかぁ!?」

 

俺の声を聞いてリアスさんはこっちを見て頷く。そのままイッセーとリアスさんは消える。

 

――その代わりに、その場に<戦車>の駒が落ちていた。

 

これがキャスリングか……。本当に入れ替わりなんだな。というか、あれで一応プロモーションの許可はもらえたんだよな?

 

とりあえず、このまま駒を放置しておくのもあれだし、俺が持っておくか。駒を拾ってシャツの内側にあるポケットに入れる。これならそうそう落ちないだろう。

 

改めて魔方陣の方に目を向けると、紋様がハッキリと浮かんできた。

 

「――レヴィアタンの紋様」

 

サーゼクスさんがそう呟く。レヴィアタンの? でも、レヴィアタン様は此処にいるし……。

 

「旧約聖書で見たことがある。――あれは、旧レヴィアタンの紋様だ」

 

ゼノヴィアがそう呟いた。()だと? ってことは、まさか?

 

魔方陣から、一人の女性が現れる。気配から悪魔だということはわかる。

 

「ごきげんよう、サーゼクス。――忌まわしき偽りの魔王」

 

「先代レヴィアタンの血を引く者――カテレア・レヴィアタン。これはどういうことだ?」

 

……やっぱり、そういうことなのか。こいつは、サーゼクスさんたちが魔王の称号を受け継ぐ以前の――前魔王の血族。

 

「宣戦布告しに来たのです。――我々旧魔王派のほとんどは、<禍の団>に協力することにしました」

 

まあ、このタイミングで此処に出てくるってことはそうだろうな…。

 

「新旧魔王の確執が本格的になったわけだな。悪魔も大変なこった」

 

アザゼル、この野郎……! 他人事のように……………他人事か。

 

「カテレア………なぜなんだ?」

 

「簡単な話です、サーゼクス。我々はこの会談とは逆の結論に至りました。――神と先代魔王がいないのなら、私たちの手でこの世界を変革すべきだと」

 

……いるもんだな。自分の好きなように世界を動かしたくてしょうがない奴は。

 

「やれやれ。オーフィスの奴はそこまで未来を見ていんのか? そうとは思えねぇがな」

 

「彼は力の象徴として、私たちのトップとなっているだけです。彼の力を借りて、一度世界を滅ぼし、もう一度構築します。――新世界を私たちが取り仕切るのです」

 

アザゼルの疑問に、そう答えるカテレア。

 

その言葉を聞いて、サーゼクスさんも皮肉げに笑う。

 

「……三勢力の反逆者が集まって、自分たちだけの世界、自分たちが支配する地球を欲したということか。そのまとめ役が、オーフィス」

 

世界最強の存在がテロリストのトップんて、なんとも厄介だな……。

 

レヴィアタン様はカテレアに悲しそうに叫ぶ。

 

「カテレアちゃん、どうしてこんな!」

 

「セラフォルー……! 私から魔王の座を奪っておいて、よくもぬけぬけと! ――しかし、安心なさい。今日私があなたを殺し、私がレヴィアタンを名乗ります」

 

カテレアはレヴィアタン様を睨みながらそう言った。更にカテレアは続ける。

 

「オーフィスには新世界の神になってもらいます。しかし、彼はあくまで象徴。あとのシステムと法、理念は私たちが構築する。ミカエル、アザゼル、サーゼクス、あなたたちの時代は――」

 

 

 

 

 

「うるせぇ」

 

 

 

 

 

俺はカテレアの言葉が終わる前に割り込んだ。それによって、この場の全員の視線がこっちに集まる。

 

「さっきから黙って聞いてりゃ、世界を滅ぼすだの、自分たちが新世界を取り仕切るだの、勝手なことばかり長々と言いやがって。――いい加減イライラがマックスなんだよ、俺は」

 

俺はカテレアを思い切り睨みつける。まあ、怯みもしてないが。むしろ、向こうはゴミを見るかのような目で俺を見てきてる。

 

「下級悪魔風情が、この私にそのような言葉を言うとは……。ですが、今はあなた程度に構っている暇は――」

 

「構っている暇だぁ? そっちにそんなのあろうがなかろうが関係ねぇな。……俺はな、今日この会談をずっと待ち続けてきたんだよ。それも何十日も前からな」

 

俺は異形の左腕に触れる。

 

「――()()が一体なんなのか。このことだけを気になりながら、それでも仲間にはバレないようにしながら、今日までずっと頑張ってきた。そして、とうとう答えがわかるってところで――テメェらが割り込んできたんだよ!」

 

カテレアを指差し、俺は続ける。

 

「もうさ、一刻でも早くこの呪縛から解き放たれたいんだよ。なのにまあ、テメェらテロリストどもは空気も読まずに襲撃してきやがって……! ――そういうわけだから、ちょっと殴らせろ」

 

俺はカテレアに対して殺気を放つ。しかし、カテレアは呆れたようにため息をつく。

 

「下級な上に汚らわしい転生悪魔が、この私を殴る? 不可能ですね。そんなことがあなた程度に――」

 

 

 

 

 

「――なら試してみるか?」

 

 

 

 

 

俺は<騎士>にプロモーションすると同時にカテレアに全速力で突っ込み、その勢いでラリアットをくらわせる。

 

普通だったら無理だろうが、完全に油断していたカテレアは防御もできていない。俺はカテレアを地面に叩きつける。

 

俺はそのまま右足を軸に回転し、左足でカテレアの腹を踏みつける。

 

「かっ――!?」

 

「おい、まだ殴ってねぇぞ?」

 

両拳を構え、拳骨のラッシュを叩き込む。<騎士>になった今の俺なら、一秒で三十は叩き込める。これなら魔王クラスでも――

 

「――調子に乗るな!!」

 

っと! 普通に反撃してきた!

 

俺はすぐに後退し、カテレアが放ってきた魔力を避ける。

 

カテレアはすぐに立ち上がる。その体には痣ができていて、ダメージが見受けられる。

 

――どうやら、今の俺ではこれが限界のようだ。だが、コカビエルと戦った時に比べれば、俺の力が上がっている証拠ってことか。

 

……やっぱ、()()のせいか?

 

「下級悪魔風情がよくも…! よくもこの私を!」

 

カテレアは相当頭に来てるようで、体から凄い質の魔力のオーラを出している。俺はそれを見て、わざとらしく両手をあげる。

 

「おお、怖い怖い。――じゃあ、あとは任せたぜ総督」

 

俺は隣にいたアザゼルの肩に手を置いてそう告げる。アザゼルはため息をついてこっちを見る。

 

「最初から倒す気なかったのかよ……。でもって、なんでヒートアップさせた奴の相手を俺に押しつけるんだよ?」

 

「倒す気はあったさ。全力でやった。――ただ、俺の実力が足りなかったんだ。そこは素直に認めないとな」

 

俺はそのまま窓の方へ歩いていく。

 

「サーゼクスさん。俺も外の白龍皇と一緒に掃除してきますが、いいですかね?」

 

「ああ、別に構わないよ」

 

「どうも。あ、それとアザゼル。あんたにそいつの相手を押しつける理由は簡単だ。――俺とイッセーをからかった、その代償だとでも思ってくれ。――じゃ」

 

俺は窓を開けようと手を伸ばす。

 

「逃がしません! 私に傷をつけた罪、その命で支払いなさい!」

 

だが、カテレアが魔力を飛ばしてくる。普通に手で開けてちゃ間に合わないな。――つーわけで。

 

「お断りだよクソアマ!」

 

両腕を前で交差させ、<騎士>のスピードで窓を突き破って外に出る。これぞ奥義、ダイナミックログアウト。……修理代は後で払うので許してください。

 

窓から飛び出した先では、ヴァーリが魔法使いたちを吹っ飛ばしてる光景が目に入った。派手にやってんな。――じゃあ、俺も!

 

窓が割れた音で近くにいた魔法使いたちがこっちに気づき、魔法を放ってきた。俺は翼を出してそれらを回避しながら、<僧侶>にプロモーションする。全てかわし切ったあと左拳に炎を纏わせ、魔法使いたちの中心へと突っ込んでいく。向こうは防御障壁を張るが、俺の狙いは魔法使い本人じゃない。

 

俺は拳を――グラウンドに叩きつける。

 

火槌(かづち)!!」

 

拳を叩きつけた瞬間、炎が爆ぜて地面と魔法使いたちを吹き飛ばす。

 

爆炎が晴れると、多くの魔法使いたちがこっちに注目していた。俺は人差し指を上に立て、こちらに曲げて挑発する。

 

「さあ来い、マジシャンズ。――全員捻り潰してやるよ」




火槌は炎を纏った拳を叩きつけて爆発を起こす技です。<僧侶>にプロモーションしたのは爆発範囲を広げて威力を上げるためです。

次回から本格的戦闘に入ります! しかし、イッセーの戦闘に関して書くかどうか迷ってます…。書くと長いし、原作とほとんど変わんないだろうし……。

まあ、多分重要なところを書くか全カットかのどちらかになりますね。次回に書くかどうかは別ですが。

今更ですが、アザゼルはコカビエルに比べてどのくらい強いのかとか、ヴァーリはコカビエルと同等くらいと考えていいのかなど、結構難しい点がありますね。なるべく違和感のないようにやりたいと思います。

それではこの辺で。ダイナミックログアウト!

パリーン! ヒュウゥゥゥゥゥゥゥ……(注:此処は二十階)
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