ハイスクールD×D 荒ぶる神を宿す者   作:初代凡人

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最近筆が進まない……。それ以上に現実が忙しくて書く暇がないのが本当なんですが、相変わらずの不定期で申し訳ないです。他のやつも完成させなきゃ…。

今回から、五巻に突入します。ええ、ようやくかよと思ってる方がほとんどでしょう。その通りです本当にすいませんm(_ _)m

最初と最後、大体の流れはすでに頭にあるのに、その途中経過でどうしても筆がストップしてしまう……。文才のない輩が調子のって書くとこうなるんだと痛感してます。

それはともかく、本編をどうぞ。


冥界合宿のヘルキャット
第三十四話 里帰り? 黄泉帰り?


竜真side

 

ある日の朝。俺はいつも通りに起きて、着替えようとベッドから出て起き上がる。

 

「…………此処はどこだ?」

 

だが、目の前に見覚えのない光景が広がっていた。いや、正確に言えば、見覚えのあるものはある。基本的な家具とかにはなんの異常もない。

 

――部屋の異様な広さ以外は。

 

俺の部屋は普通の部屋と変わらない広さのはずだ。なのに、目の前の部屋はリビング以上の広さがある。一体何畳分あるんだこれ?

 

疑問に思いつつ、棚に入れてある服(種類こそ変わらないが、洗いたてのように綺麗になっていた)に着替え、警戒しながら部屋の扉を開ける。そこに広がる光景を見て、絶句した。

 

どこかの豪邸のように広い廊下があり、更に階段が下だけでなく上にまで続いている。……なんだ? 此処は本当に兵藤宅か? 何かの魔法で別の場所に拉致られたんじゃ――

 

 

 

 

 

「なんじゃこりゃああああぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

 

そんな時、外から聞き覚えのある声が響いてきた。………どうやら、兵藤宅で間違いないようだ。

 

 

 

――――――――――

 

あのあとリビング(やはりバカみたいに広くなっていた)に行き皆と朝食を食べながら何があったのか聞いたところ、なんでもグレモリー卿が建設業の仕事をやっており(もちろん嘘)、モデルハウスの一環として無料でリフォームをしてくれたそうだ。

 

……寝てる間にどうやってリフォームしたのかとか、それに関してはおじさんとおばさんは気にならないらしい。やはりイッセーの鈍さはお二人からの遺伝なのだろうか?

 

なお、俺が一番疑問に思ったのは、どうやって俺の周囲の模様替えをしたのかということだ。寝ていたとしても、近くに気配があればすぐに対応できるようにしてるんだがな……。そう思ってたら、リアスさんがどうやったのか教えてくれた。

 

「竜真の周囲に近づいたらすぐに気づかれるから、竜真の周囲二メートルを結界で覆ったのよ」

 

それを聞いて納得いった。結界は世界から隔離するものだ。いくらなんでも世界越しの気配はわからないからな。

 

しかし、結界なぁ……。少し対抗策を考えた方がいいか? 味方が使うならいいが、敵に使われて近寄られたら対応が遅れちまう。それが戦闘においては命取りになるからな。

 

「竜真? 聞いてる?」

 

――と、いい加減思考をやめるか。対策方法は今度考えればいいし、今は目の前のことに意識を向けよう。

 

「ああ、すいませんリアスさん。もう一回言ってくれませんか?」

 

「……私は夏休みに冥界に帰るけど、眷属悪魔も一緒に来る必要があるわ。他の皆は大丈夫らしいけど、あなたは大丈夫?」

 

冥界に帰る…。ああ、以前言ってた若手悪魔の集いか。

 

まあ、夏休みは特に用事はなかったはずだ。ただ……。

 

「用事はありませんが、麗華さんの護衛が――」

 

「それなら、もう事情を話して許可をとったわ」

 

「なら大丈夫です」

 

迅速な対応に感服しますよ、本当。即答した俺だが、そこにイッセーがこんな質問をしてきた。

 

「お前、夏休み何も予定なかったのか? それなら、松田と元浜と海に行く話にものってよかっただろ?」

 

「そうだな。ナンパするなんて夢物語しか頭にない連中じゃなきゃ一緒に行ってたな」

 

「…………ナンノコトデスカ?」

 

なんでいきなり片言に――ああ、リアスさんたちがいるからか。ならば、俺も空気を読んでやろう。

 

「イッセー。無理に誤魔化さなくていいんだぞ? 今年の夏こそ童貞卒業って目標を高らかに宣言してたじゃないか」

 

「この鬼、外道!!」

 

涙目になりながら怒鳴ってくるが、本当に誤魔化す必要はないと思うがな。

 

「あらあら。イッセーくんはそんな願望を持っていたのですわね。それでしたら、言ってくださればいつでも卒業させてあげますのに」

 

ほら、むしろ朱乃さんがチャンスとばかりにアピールしてきたし。

 

「マ、マジで――」

 

「ダメよ。イッセーの貞操は私の管理下にあるの。勝手に奪うのは許さないわよ、朱乃」

 

まあ、それをリアスさんが許すわけないが。そのまま二人は睨み合いを始める。

 

「ケチな主様ですわ。男女の問題にいちいち口を出すような主は嫌われますわよ?」

 

「あなたこそ。下僕のくせに主にたてつくなんて、お仕置きされたいのかしら?」

 

「そうやってすぐに武力でどうこう言わせるような方に、私のイッセーくんはあげれませんわ」

 

()()? いつからイッセーがあなたの所有物になったのかしら? イッセーは私のものよ」

 

予想以上にヒートアップしてるな。このままだとこの場で争い始めそうだし、そろそろ止めておこう。

 

「まあまあ、お二人とも。その辺でやめにしてください。それより、リアスさん。そこの人は冥界に行くのかどうか聞いた方がいいのでは?」

 

俺がそう言っても、皆何を言ってるのかという顔をする。ああ、やっぱり気づいてないか。

 

「というわけで、どうするんだアザゼル? 領地が違うとはいえ冥界の住人だろ?」

 

「ああ。当然お前らの付き添いとして行くぜ。それに、会談にも出なきゃいかんしな」

 

俺とアザゼルは普通に会話するが、皆はアザゼルを見て心底驚いてる。

 

「……アザゼル。いつからそこにいたの?」

 

「さっき普通に扉を開けて入ってきたぞ。やっぱり、竜真以外は気配察知に関してはまだまだ甘いな。――まあ、安心しろ。俺が責任を持ってお前らを鍛えてやる」

 

アザゼルが堂々と言った。まあ、仮にも堕天使の総督なんだ。期待していいだろう。

 

そういや、冥界に行ったら修行するのか? 冥界で鍛えるなんて滅多にない経験だろうし、気合いを入れておこう。

 

 

 

――――――――――

 

「――で、集合場所が普通の駅ってのはなんでだろうな、イッセー?」

 

「俺に聞かないでくれよ」

 

あっという間に夏休みになり、初日に部員が集合したのは近くの駅だった。こんなに人目がつく場所から、冥界に行けるのか?

 

そう思いつつ、先導するリアスさんたちについて行く。そして、あるものの前で立ち止まった。

 

「それじゃあ、初めてのメンバーは私と一緒に乗ってちょうだい。慣れてる朱乃たちはあとから――」

 

「あの、リアスさん」

 

「何、竜真?」

 

「………これ、エレベーターですよね?」

 

「そうよ」

 

そう。俺たちの目の前にあるのは、駅にある普通のエレベーターだった。まさか、これで冥界に行けるとでも言うのだろうか? 

 

だが、記憶が正しければこのエレベーターは乗れて五人で、行き先も乗り場がある二階か俺たちが今いる一階しかない。

 

とても信じらいないという顔をしてる俺を見て、リアスさんは苦笑いを浮かべる。

 

「信じられないでしょうけど、これで間違いなく冥界に続く場所に行けるわ。だから、おとなしく乗ってくれないかしら?」

 

「……騙されたと思って乗ってみます」

 

完全には信じられてないが、リアスさんがそう言うなら少なくとも危険はないと判断し、エレベーターに乗る。

 

メンバーは俺を始め、イッセー、アーシアさん、ゼノヴィアの正規ルートで冥界に行くのが初めてのメンバーと、リアスさんの五人。やっぱり狭いな…。

 

そう思っていると、リアスさんがスカートのポケットからカードを取り出し、機械に読み込ませる。すると、エレベーターが動き出した。

 

――下に向けて。

 

これより下は何もないはずなのに、存在しないはずの地下へとエレベーターは確実に下りていく。このことに、普段使うことがある俺とイッセー、アーシアさんは驚愕した。ゼノヴィアはよくわからないのか、首を傾げている。

 

「ふふっ。驚くのも無理ないわ。これは悪魔しか知らないことだもの。だけど、これ以外にもこの町には悪魔専用の経路が色々あるのよ」

 

「マジですか……。此処は人間が知らない内に悪魔の巣窟となっていたわけですね」

 

「もう少し言い方を選んでちょうだい。悪行はしてないわ」

 

悪行は、ね……。まあ、魔王があの人だからあまり心配してないが。

 

そんなやり取りをしてる内にエレベーターが止まる。どうやら降りるべき場所に着いたようだ。

 

エレベーターから降りると、眼前に広い空間が広がっていた。凄いな。こんなに広い空間が地下にあるのに、よく気づかれないなと感心する。………まさか、国自体が悪魔の手に堕ちてたりしないよな?

 

笑えない冗談を考えつつ、俺たちのあとに降りてきたメンバーと一緒に歩き出す。そのまま歩き続けると、一つの電車が見えてきた。

 

だが、俺たちの知ってる電車よりも車両の数が多く、デザインも独特なものがある。何よりも、車両の所々についている見覚えのある紋章が、普通の人が知る電車とは違うということをわからせてくれた。

 

「これ、グレモリー家の電車ですよね?」

 

「ええ、そうよ。冥界に行くには異次元を通らなきゃいけないから、これに乗って向かうわ」

 

金持ちは凄いねぇ、まったく…。そう思いつつ電車に乗ろうとする。

 

「あ、竜真。ちょっと待ってちょうだい」

 

が、なぜか俺だけリアスさんに呼び止められる。俺はリアスさんの元へ行き、他の皆も何事かとこちらを見ている。

 

「なんですか?」

 

「えっとね…………その、私もこんなことはしたくないの。とても心苦しいのだけど……………両手を出して」

 

「? はぁ……?」

 

リアスさんの言ってることはよくわからないが、おとなしく両手を前に出す。

 

 

 

 

 

――ガチャン!

 

 

 

 

 

そんな音と共に、俺の手にある物がつけられた。

 

「…………は?」

 

申し訳なさそうにしながら俺の手にリアスさんがつけた物。――それは、いかにも頑丈そうな手枷だった。……俺、何かしたっけ?

 

 

 

――――――――――

 

「………………」

 

「た、竜真。私もこんなことしたくなかったのよ。だけど、お兄様からの指示だから、私も逆らえなくて……」

 

「いえいえ。大丈夫ですよ、リアスさん。こんなこと一々気にしませんから。……ええ。全然気にしませんとも…!!」

 

「ごめんなさい。本当にごめんなさい」

 

あのあとひと悶着あったが、特別俺の体に害はないようなので、皆を説得して電車に乗った。

 

今この車両にいるのは、向かい合って座る俺とリアスさんだけだ。他の皆は後ろの車両に乗っている。というのも、こういうものは主が前の車両に、眷属が後ろの車両に乗るというルールがあるためだ。

 

じゃあ、なぜ俺はこの車両に乗ってるのか? それに答えるには、まずこの両手についてる手枷について説明しなきゃいけない。

 

この手枷だが、どうやらというかやはりというかただの手枷ではなく、つけた者の魔力や力を無理やり抑える物らしい。それは本当のようで、今はうまく魔力が出せない上に、いつもより力が入らない。

 

まあ、リアスさん曰く、これはそういう類いの物の中ではまだ優しい部類らしい。強力な物だと自力で立つことすら厳しくなると言っていた。

 

で、なんでこんな物をリアスさんが俺につけたのか。それはさっき言ったように、サーゼクスさんからそう命令されたからだ。――正確には、政治面の老がi――お偉いさん方からそう指示されたようだ。

 

先日の三勢力会談により、各勢力の権力がある奴らは荒神の存在を改めて知ることになった。当然、俺の中のハンニバルも例外じゃない。……いや、ハンニバルだからだろうな。

 

「まあ、リアスさんやサーゼクスさんが進んでこういうことをする人じゃないのは充分わかってますよ。どうせ、上の連中がハンニバルのことが怖くて命令したんでしょう?」

 

「……ええ。当然、お兄様はそれに真っ向から反対したわ。けど、上の方々はなんでもいいからあなたを拘束できる理由を探せと聞かなかった。このままじゃ、あなたへ危害を加えかねないとお兄様は判断して、やむなくもう解決した罪状であなたを拘束することになったの」

 

「解決した罪状?」

 

俺、冥界で何かしたか? 行ったのだって、今回を除けばリアスさんの婚約パーティーしか――

 

「…………まさか、不法入国の件ですか?」

 

「そうよ。覚えのない罪で捕らえられるのもあれだけど、だからってこんな罪であなたを拘束しなきゃいけないと聞いた時は違う意味で嫌だったわ……」

 

「その……すみませんでした」

 

ん? つい謝ったが、それに関しては朱乃さんや小猫に原因があるのでは? ………まあ、今さら掘り返すのも面倒だしいいか。

 

「ちなみにですが、これはどこでなら外してもOKなんですか?」

 

「グレモリー家の領土にある本邸、あとは修行中に外していいと言われたわ。けど、それ以外で外すことがあった場合は更に罪を重ねたということで、より強力な物をつけられることになるわ。それはつけてる者の魔力を常に感知しているから、外したらすぐにバレるわよ」

 

無理やり壊して外そうかと思ったが、そうもいかないってことか。あぁ、面倒くせぇ……。

 

「……まあ、皆に迷惑をかけるわけにもいかないし、今回はおとなしくしています」

 

「……ごめんなさい。いきなりこんな不快な思いになることをしてしまって――」

 

「いいですって。第一、不法入国の件は(俺のせいじゃないけど)本当のことですし、此処は甘んじて罰を受けますよ。男は潔くいかないと」

 

「最近チェスや将棋で無駄に待ったをかけるのは誰かしら?」

 

「記憶にございません」

 

だってリアスさんが強すぎるんですもの。ほんの四、五回くらいは許してもらっていいはずだ。

 

「やっぱり潔くないじゃない。お仕置きよ」

 

そう言ったリアスさんが軽く指で小突いてきた。まったく痛くはないが、つい頭を大きく揺らしてしまう。

 

 

 

 

 

『もう――――ダ――ない、たつ――』

 

 

 

 

 

「――ぐっ!?」

 

が、突然頭の中でノイズが入った声が響き、それと同時に激しい頭痛が起きた。

 

「竜真!?」

 

リアスさんが俺の異常に気づき、こちらに寄り添ってくる。

 

「っだ、大丈夫です……! 治まりました…」

 

「……()()あの頭痛がしたのね?」

 

俺は肯定の意思として首を縦に振る。

 

また、という言葉の通り、この頭痛はリアスさんにはもうバレてしまっている。そんなにしょっちゅうあるわけでもないし、あまり心配をかけないよう皆には黙っていたのだが、この頭痛は決まってリアスさんが近くにいる時に起きる。

 

さすがに何回も俺の様子が変なことをリアスさんから質問され、誤魔化しきれずに話すことになった。だが、リアスさんもこちらの考えをわかってくれたため、他の皆にはまだ知らせず黙ってくれている。

 

その代わりではないが、こうやって頭痛が起きた時は素直に看病されることになった。まあ、一時的なものだから大丈夫だけどな。

 

「やっぱり、他の皆にも言った方が――少なくとも、アザゼルに相談くらいはした方がいいんじゃない?」

 

「……まあ、夏休みが終わっても続くようならそうします。それに、以前から堕天使の施設で身体検査を受けるように勧められていたので、行くことになったらついでに異常がないか看てもらいます」

 

「…あなたがそういうならいいけど、無理だけはしないで。いいわね?」

 

「承知しております、我が主」

 

少し冗談混じりに返事をすると、呆れたような感じの笑みを浮かべられた。実際、ヤバそうならすぐにでも行くから心配はいらないんだが………。

 

「――あ。そういえば、リアスさん。俺と話してくれるのは嬉しいんですけど、イッセーの様子を見に行かなくてもいいんですか?」

 

「イッセーの? どういう意味?」

 

「いや、管理者であるリアスさんがいないんですよ? アーシアさんは大丈夫でしょうけど、このチャンスを朱乃さんやゼノヴィアが見逃すとは――」

 

「そういえば、皆と話さなきゃいけないことがあったわ。私たちも後ろの車両に行くわよ」

 

言うが早いか、リアスさんはその場から立ち上がり、皆がいる車両に向けて歩いていった。イッセーのことになると本当に扱いやすいな。戦いとかではなるべく抑えてほしいが………まあ、そこまで心配はいらないか。

 

俺も立ち上がるが、手枷の重みでバランスを崩して倒れそうになる。

 

「おっ、と! 危ねぇ…。改めて感じたが、結構重いな。いや、力がうまく入ってないだけか?」

 

気を抜くと手枷に体が引っ張られそうになる。俺はなるべく気をつけながら、皆のいるところへ歩いていった。幸い、この列車にほとんど揺れがなかったおかげで、バランスをとるのは楽だった。

 

 

 

 

 

「主から奪うというのも燃えますわね。うふふ」

 

「あ、朱乃、あなたね……!」

 

 

 

 

 

あーあ、予想通りか。朱乃さんとリアスさんが睨み合っている。朱乃さんはイッセーの膝上にまたがっている。アプローチの激しい人だ…。

 

少し距離をおいたところから見ていると、涙目になっているアーシアさんがこっちに気づいた。多分、朱乃さんがイッセーを誘惑して困っていたんだろうな。

 

「竜真さん。お体は大丈夫ですか?」

 

この状態を見て、第一に体の心配をしてくれるとは、やっぱり優しい人だ。

 

「あら、竜真くん。……改めて見ると、なかなかそそる姿ですわ」

 

………本当、アーシアさん()優しい人だ。

 

「あら? 今変なことを考えましたか?」

 

「滅相もありません」

 

向けられた微笑みに寒気を覚えたため、即座に頭を下げる。なんでこの人は俺の心の中を見透かしているのか?

 

そんなことを考えていると、後ろから誰かが近づいてきてるのに気づいた。

 

「ホッホッホッ。愉快な眷属をお持ちになりましたな、リアス様」

 

振り返ってみると、そこには初老の男性が立っていた。服装からして、この列車の車掌さんだろう。

 

「レイナルド!」

 

「いやはや、あの小さなお嬢様が異性のことでもめるようになるまで成長なさるとは……。歳はとってみるものですな」

 

車掌――レイナルドさんがリアスさんに若干のからかいを入れてそう言うと、本人は恥ずかしそうに俯き、顔を赤くしていた。こんなことを言えるということは、この人はリアスさんが小さい時からのつき合いなのだろう。

 

俺はそう解釈すると同時に、レイナルドさんへ頭を下げる。

 

「初めまして、鬼城竜真と申します。リアス様の〈兵士〉の一人として、眷属になりました。以後、お見知りおきを」

 

「お、俺は兵藤一誠です! リアス様の〈兵士〉です!」

 

「ア、アーシア・アルジェントです! 〈僧侶〉です!」

 

「ゼノヴィア。〈騎士〉をやらせてもらっている」

 

俺の自己紹介に続き、初対面の三人も挨拶をする。レイナルドさんはそれを聞いて笑う。

 

「ホッホッ、礼儀正しい方々ですな。こちらこそ、リアスお嬢様のこと、どうかよろしくお願いいたします。――さて、それはそれとして、皆様には検査を受けていただきます」

 

そう言うとレイナルドさんは、見慣れない機械を取り出した。なんだあれ?

 

「これは皆様の中にある〈悪魔の駒〉を読み取る機能を持っています。皆様のデータは事前にいただいておりますので、それと照らし合わせて皆様が本人かどうかを確認させていただくのです」

 

「なるほど。ある意味、これが入国検査のようなものになっているんですね?」

 

「さようです。読み取ると同時に入国検査も済む仕組みになっております」

 

これなら、思った以上に早く終わりそうだ。もっと厳しい検査があると思ってたが、面倒にならずに済むな。

 

そんなことを考えてる内に、アーシアさん、ゼノヴィア、イッセーの順にピコーンという音が鳴って終了し、俺の番となった。レイナルドさんが機械をこちらに向ける。まあ、特におかしな機能もないみたいだし、すぐに終わる――

 

 

 

 

 

ビーッ!! ビーッ!!

 

 

 

 

 

…………はい?

 

余裕を見せていた俺は、面食らってしまい反応が遅れたが、何が起きたかはすぐ理解できた。

 

――機械がさっきまでとは違うエラー音を出したのだ。

 

この事態に、俺だけではなくこの場にいる(爆睡してるアザゼルを除く)全員が驚いていた。

 

「………ワンモアタイム」

 

なるべく冷静さを保ちながら、レイナルドさんにもう一度機械を使ってもらった。

 

 

 

 

 

ビーッ!! ビーッ!!

 

 

 

 

 

しかし、現実は変わらず、先程と同じエラー音が車両内に響く。……えっと、これは確か、俺たちの駒の情報を照らし合わせて本人かどうか確認してるんだよな? それでエラーということは…。

 

「うがっ――!?」

 

頭の中で現状を整理している内に、突然床に押さえつけられた。首を横に向けてなんとか上を見ると、そこにいたのは祐斗だった。

 

「偽者だとは気づかなかったよ。見た目だけじゃなく喋り方まで同じとは、結構手慣れているんだね」

 

「いやいや、ちょっと待て祐斗! 俺は偽者じゃねぇって!」

 

なんとか振りほどこうとするが、動かすこともできない。祐斗に力負けするなんて、この手枷はどんだけ力を封じてるんだ!?

 

「ほ、本当に竜真さんじゃないんですか?」

 

「……少なくとも、私にはいつもの竜真先輩にしか思えませんが」

 

「何から何まで本人と変わらないのに、偽者とはね……。そういう魔法の類いか?」

 

「心の中まで一緒とは、敵ながらお見事ですわ」

 

「そういや、俺とはまったく話そうとしてなかったよな? まさか、俺と喋ったら些細な違いに気づかれると思ったのか?」

 

「ヒイイィィィ!! 怖さまで一緒だなんて恐ろしいですぅぅぅぅ!!」

 

各々がそれぞれの意見を言う。とりあえず、朱乃さんは心を見透かしておきながら俺を偽者と疑わないのか………。あと、イッセー。お前に気づかれるとは偽者だろうと微塵も思わないと思うぞ。ギャスパーはあとでしばく。

 

にしても、味方が一人もいないのは辛いな。さっきまで話してたリアスさんは悩んでこそいるが、こちら側につくというわけでもないようだし……。

 

――あ、そうだ。この騒動に関わってない奴が一人いた。

 

「おい、アザゼル! いつまで寝てるんだ、起きろ! 教え子のピンチだぞ!」

 

俺は未だに寝んね状態のアザゼルに向けて怒鳴る。よく考えたら、この前まで敵だった悪魔の車内でよく眠れるな。

 

「………あー? なんだよ? 人が気持ちよく寝てる時に…」

 

「それについては悪いと思ってるよ! とりあえず、この状況をどうにかしてくれ!」

 

「この状況って――なんだこの状況?」

 

まだ寝ぼけ気味のアザゼルだったが、俺たちの現状を見て目を丸くして驚いた。まあ、味方が味方を押さえつけてりゃ当たり前か。

 

そこに、リアスさんがこうなった経緯を伝える。すると、アザゼルはこんな質問をした。

 

「リアス。その駒のデータ、いつのやつだ?」

 

「え? 竜真が転生してから一ヶ月くらい経った時のだけど…」

 

「あー、なるほどな。それじゃあ、エラーも出るさ」

 

アザゼルは当たり前のようにそう言った。

 

「アザゼル。あんた、原因がわかるのか?」

 

「なに、簡単なことだ。お前の中にある駒が、ハンニバルの影響で変化しちまったのさ」

 

それを聞いて、俺たちは全員衝撃を受けた。〈悪魔の駒〉に変化って……。

 

「そんなこと、起こりうるものなのか?」

 

「さぁな。俺は〈悪魔の駒〉について詳しいわけじゃないしな。だが、別にあり得ないわけじゃないさ。――アラガミってのは、そういう存在だ」

 

………マジかよ。って、驚いてる場合じゃない。

 

「アザゼル。結果、俺だと証明する方法は?」

 

「――頑張れ♪」

 

「ざっけんな、コラァ!!」

 

現状を打破できる証拠がほしいってのに、この堕総督! その笑顔やめろ、腹立つ!

 

「………竜真。それじゃあ、今からする質問に答えてちょうだい。これに答えれたら、あなたが本人だという証拠になるはずよ」

 

リアスさんがそう持ちかけてきた。

 

「別にいいですけど、どんな質問ですか?」

 

質問に答えるだけでいいのなら先に言ってほしかったが、余計なことは言わないでおこう。

 

「――イッセーのお気に入りの本の隠し場所は?」

 

「部長!? それって竜真に聞く質問なんですか!? というか、なんの意味が――」

 

「勉強机の引き出しの一つに二重底になってるやつがあり、そこにA4ファイルが山積みになっていて、上から七つ目のファイルの中にエロ本が挟まっていました」

 

「お前も何言ってるんだ!? というか寸分の狂いもなく当たってる!?」

 

「やっぱり、この竜真は本人よ。間違いないわ」

 

「ええ。それを完璧に把握しているのは、兵藤家にいる私たちしか知らないはずですから」

 

「よかったです……」

 

「うん。偽者だろうと、ここまで完璧には言えないだろうからね」

 

「え? ちょっと待って。まさか、俺ん家にいる人は皆周知の事実なのか!?」

 

「安心しろ、イッセー。おじさんは知らないから」

 

「ほっ、よか――母さんは?」

 

「言ったろ? おじさん()ってな」

 

「ノォォォォオオオ!!」

 

イッセーがその場で頭を抱えて喚く。まあ、俺はおばさんに教えられただけだが、女子勢も皆知ってるのかよ。

 

「とりあえず、これで俺が本人だということは証明されたわけだ。だから、祐斗。いい加減放してくれないか?」

 

「えっと……」

 

祐斗はもの凄く複雑な顔をしている。こんなので本人と決めていいのかと思っているんだろう。大丈夫だ、祐斗。俺もお前の立場ならそういうリアクションをしてるから。

 

「大丈夫よ、祐斗。私たちを信じなさい」

 

「……はい。竜真くん、ごめんね。怪我はないかい?」

 

「ああ。心以外は一切怪我はないぞ」

 

「意地悪だね…」

 

「冗談だよ。――まあ、それはそれとして…」

 

俺は近くでビクビクしてたギャスパーを捕まえる。

 

「誰が怖いって、ギャスパーくん?」

 

「ヒィィィィイイ!! お許しくださいぃぃぃ!」

 

「やだね。お仕置きとして、グリグリの刑に処す」

 

「イヤァァァアア!?」

 

とりあえずいつもより力は出ないが、祐斗より下、ギャスパーより上だということはわかった。




すでに済んだことで変な手枷をつけられた竜真。悪魔の老害どもならこれくらいするだろうと思い、つけさせました。まあ、外せる所では外せるようにしますので、冥界にいる間はずっとつけてる、なんてことにはなりません。第一、それじゃあ修行できないですからね。

竜真の中にある駒に変化があることがわかりましたね。まあ、二回も暴走してるから仕方ないね。ほら、某人形決戦兵器も二回目で乗ってる人に影響与えましたし。

グリゴリの本部には、一応行く予定です。ただ、冒頭に書くか、何があったかを書くだけになる可能性が高く、短編として書く可能性はかなり低いので、あまり期待しない方がいいです。一番の目的は、堕天使の幹部と関わりを持たせることなので。

次回は少しだけ飛んで、グレモリー家に入った辺りからスタートすると思います。いえ、領土関係の描写を書くのが面倒だったわけではありません、決して。

それでは、この辺で。
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