ハイスクールD×D 荒ぶる神を宿す者   作:初代凡人

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海斗さんの口調が……。口調がぁぁぁぁ…!! 再現できずに、苦悩してたらだいぶ遅れてしまいました。申し訳ありません。

でも、暁の護衛を知ってる人ならわかるとは思うのですが、海斗さんは本当におもしろいんです。それを喋りだけで表現するのが自分にはかなり難易度が高く、結果自分でも微妙な感じになってしまいました……。どなたか、こうしたらいいんじゃないという方がいれば、アドバイスをお願いします(泣)

とりあえず、本編に行きましょう。


第三十五話 若手悪魔、集合

竜真side

 

あのあと、特にトラブルもなく冥界に着いた。

 

アザゼルは会談があるらしいので別れたが、俺たちが駅に降りるとたくさんの人――じゃなくて悪魔たちに出迎えられた。全員、グレモリー家の従者だそうだ。

 

それ以外にも、所有してる領土の大きさ(本州と同じくらい)だとか、住んでる城の数とか、貸してもらった部屋の広さだとか、色々とスケールが違いすぎて終始驚いていた。これにはさすがの麗華さんたちも驚くんじゃないか?

 

あと、リアスさんの母親であるヴェネラナ・グレモリー様と、サーゼクスさんのご子息であるミリキャス様に会った。リアスさんと外見がほとんど変わらないヴェネラナさんには驚いたな。だが、ある程度生きた悪魔なら外見を変えることもできるらしいから、納得した。

 

……つまり、結構なお歳なんじゃないかと気づいた瞬間、とてつもない寒気がヴェネラナさんから放たれたので思考を緊急停止させた。あと数瞬遅れていたら、俺の命はなかっただろう。

 

まあ、そのあとはさっきも言ったように部屋に案内され、適当に時間を潰した。

 

ああ、そうそう。あの鬱陶しい手枷だが、城に入った際に外してもらえた。完全にグレモリーの管轄になっている場合は、外すことが許されるそうだ。……まあ、それ以外の場所ではまたつけられるらしいが。

 

とりあえず、その話は置いておこう。今は、皆広間に集まっていて、長いテーブルが中央にあり、そこで食事をとっている。

 

……だが、どうにも空気が固い。いや、喋りながら食うのは貴族だからあまりしないのかもしれないが、だとしても皆黙々と食っているだけだと居心地が悪い。あ、一つ訂正しておこう。皆と言ったが、一部の奴はあまり食が進んでいない。

 

イッセーはこういうのを食べ慣れてないから食い方がわからないようだ。俺? 俺は二階堂家で充分学んだから問題ない。

 

ギャスパーは周りに使用人がたくさんいるのが怖いようで、ビクビクしながら少しずつ食ってる。本当、あいつのビビり癖はどうにかしたいなぁ…。

 

とまあ、この二人は理由がわかるんだが、もう一人――小猫がわからん。いつもなら結構な量を食うはずなのに、今は食事にほとんど手をつけていない。電車の中でも少しボーッとしてたし、体調が悪いのか? にしては何も言ってこないし…………俺たちに言えない悩み事か?

 

「ふむ、眷属の皆さん。そう固くならず、此処を我が家と思ってくれていい。何か足りない物があれば、メイドや執事たちに言ってくれたまえ」

 

グレモリー卿がそう言ってくれた。まあ、それでも我が家のように思うのは無理だろうが………メイドさんたちは遠慮なく使わせてもらおう。

 

「あの、すいません」

 

俺は後ろを向いて、一番近くにいたメイドさんを呼ぶ。メイドさんはすぐにこちらに来てくれた。

 

「はい。何かご用でしょうか?」

 

「いや、俺じゃないんですけど…………あそこにいる茶髪の奴なんですけど、この料理の食べ方がよくわからないようなので教えてあげてくれませんか? できるだけ然り気無く」

 

「かしこまりました」

 

メイドさんは一礼してから後ろに下がり、遠回りにイッセーの所へ行ってくれた。……あいつ、鼻の下伸ばしてやがるな? 何を想像してるんだあのバカ。

 

「ところで、兵藤一誠くん。ああ、食べながらで構わないよ。それに、代わりに答えれる者もいるのだから。鬼城竜真くん。兵藤くんのご両親は元気かな?」

 

一旦イッセーから視線を外して、グレモリー卿は俺に質問をしてきた。なるほど。それなら俺でも答えれる。

 

「はい。変わりなく元気です。今回の里帰りの話を聞いて、お土産をせがむくらいですからね」

 

「土産か。ふむ……」

 

俺の言葉を聞いたグレモリー卿は、少し思案顔になったと思うと手元にある呼び鈴を鳴らして執事の一人を呼ぶ。

 

「お呼びでしょうか、旦那様」

 

「うむ。兵藤夫妻に、城を一つ手配してくれ」

 

飲んでいた水を吹き出しそうになった。

 

「かしこまりました。洋式と和式、どちらに致しましょうか?」

 

「悩み所だな」

 

「ゲホッ! ちょ、ちょっとお待ちください、グレモリー卿。兵藤家はごく一般的な家庭なんです。城なんて大層な物、いただけません」

 

お土産で城をもらいました、なんて言ったらあのお二人なら気絶しかねない。

 

「む、そうか。では、他に何か……」

 

「お父様。あまり大規模な物だと、イッセーのご両親に返って迷惑をかけてしまいます。それに、お二人ともそこまで欲が強いとは言えない人です。次に帰ってくる際、何か欲しいものがないか聞いておきますので、今回は我慢なさってください」

 

ナイスです、リアスさん。グレモリー卿も納得してくれたようだ。

 

それからは、ヴェネラナ様が中心で話が進んだのだが、グレモリー卿もヴェネラナ様ご両人はイッセーをリアスさんの婿にする気満々のようだ。ヴェネラナ様から合宿中に冥界についての知識、ならびに紳士的な振る舞いを身につけてもらうと言われたし。

 

だが、あまりに一方的かつ本人たちの意思を無視した態度に腹が立ったようで、珍しくリアスさんが怒ったのだが、逆にヴェネラナ様に一蹴されてしまった。

 

というのも、前にあったライザーとの破談について、周りから色々と言われていたようなのだ。面倒なことに、リアスさんはグレモリー家の令嬢である以上に、サーゼクスさんの妹として見られているようで、あの一件について一部では「魔王の妹がドラゴンを使って破談にまで持ち込んだ」なんて噂も立ったんだとか。

 

いくら本人たちにその気がなくても、世論はそうとは思ってくれない。今回ばかりはヴェネラナ様の言い分が正しいだろう。

 

ちなみに、こんだけのことを目の前で言われてるのも関わらず、自分がどういう立ち位置にいるのかわかってないバカが一人いる。イッセー、鈍いというレベルじゃないぞ……。

 

「それから、鬼城竜真くん。イッセーさんよりは大丈夫だとは思いますが、あなたにも一緒に学んでもらいますよ」

 

ヤバい。自分の立ち位置がわからなくなった。

 

これには俺だけではなく、オカルト研究部の全員が驚いている。いや、まるで意味がわからないんですけど。

 

「えっと………イッセーはともかく、俺が受ける意味はあるのでしょうか?」

 

俺がそう質問をするが、グレモリー卿もヴェネラナ様も何も答えない。

 

――ただ、お二人が俺を悲しそうな目で見ていたのを見逃すことはなかった。

 

 

 

――――――――――

 

「――皆、もう一度確認しておくわね。これから会うのは、将来私たちのライバルになるであろう悪魔たち。無様な姿は見せられないわ。だから、何があっても手を出さないこと。いいわね? 特に竜真」

 

「善処します」

 

「竜真…」

 

「大丈夫ですって。余程のことがない限り、こっちから手を出すことはないですよ。手を出したくても力のほとんど封じられてますし」

 

「頼んだわよ?」

 

冥界に来た翌日。午前中はイッセーとミリキャス様と一緒に冥界の知識を学んでいた。といっても、俺が新しく学んだことといえばグレモリー家の歴代当主の名前とその歴史くらいだ。いつか必要になると思ってたから、基本的なことや悪魔文字はリアスさんたちから教えてもらっていたからな。

 

ちなみに、他の皆はグレモリー領での城巡りだったそうだ。……羨ましいね、まったく。

 

まあ、午前中はそんな感じで別行動だったが、今は全員で冥界(正確には悪魔界)の首都リリスへ来ている。その中にあるそれなりにデカい建物の中にいるのだが、これから此処で若手悪魔の集まりがあるのだ。

 

正直に言おう。今すぐ帰りたい。

 

リアスさんはともかく、他の悪魔も情に深いとは限らないからな。いや、正確には転生悪魔を見下している、か。

 

そんな奴らに会って、俺はともかく他の皆をバカにされたりして、我慢できるか? ――結論、無理。

 

だが、そんな煽りで手を上げるような奴の格はたかが知れている。それは、そいつを眷属に選んだ主の目利きについても同じだ。だから無闇に手出しはできないんだが………ああ、帰りたい。

 

軽く憂鬱になりながら廊下を歩いていくと、部屋が見えてきた。だが、その少し前にこちらと同じような集団が立っていた。その内の一人であるガタイのいい男性がこちらに気づく。

 

……強いな、この人。静かなのに、なんて濃厚な気配だ。それに、周りにいる眷属の方々もかなりの実力者だな。今の俺たちじゃ、敵わないだろうな。

 

「サイラオーグ!」

 

「リアスか。久しいな」

 

ん? リアスさんはこの人と知り合いだったのか?

 

「皆、紹介するわね。彼はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主で、私の母方の従兄弟でもあるの」

 

へぇ、家は違うが親族にあたるのか。バアルといえば、大王にあたる家系だったな。そんな人とも親しいとは、リアスさんは運命力も強いようだ。

 

「初めて見る顔もいるな。だが、兵藤一誠と鬼城竜真には一度会ってみたかった」

 

あら? 随分と好印象だな。

 

「え、えっと、俺たちってそんなに気になりますか?」

 

「ライザー・フェニックスとのレーティングゲームを見る機会があってな。初めてにも関わらず、見事な戦いぶりだった。加えて、先日のコカビエル撃退ならびに和平会談での活躍だ。意識するのは当然だろう」

 

レーティングゲームはともかく、コカビエルも〈禍の団〉の撃退も、俺は暴走で終わった気が…………いかん、悲しくなってきた。

 

「ところで、バアル様はなぜこんな所に? もう中には入れるんですよね?」

 

悲しい気持ちを紛らわすために疑問に思っていたことを聞く。まさか、若手全員が来るまで入れないなんてこもないよな?

 

「ああ。下らないので出てきた。アガレスもアスタロトも来ている。あげく、ゼファードルだ。来て早々、ゼファードルとアガレスがやり合い始めてな」

 

バアル様が呆れたようにそう言ってると、部屋の方から爆発音が響いてきた。……本当にやり合い始めてるようだ。

 

正直、これ以上面倒事が起きるのは嫌だし、止めに行くか。

 

「あ、ちょっと竜真!」

 

リアスさんの声が聞こえてきたが、俺はそのまま部屋に入る。

 

すると、二つの集団が睨み合いをしている光景が目に入った。一つだけ机に座ったまま無干渉の姿勢でいる集団もいることから、あれがアスタロトの次期当主とその眷属で、睨み合っている奴らがゼファードルとアガレスの次期当主と眷属だろう。

 

ゼファードルとアガレスの両陣営とも、凄まじい殺気を放っている。特に、アガレスの眼鏡をかけた長髪の女性は、ゼファードルのチャラついた格好をした男へ鋭い殺気を向けている。本当に殺し合いを始めてしまいかねない勢いだ。

 

「ハイハイ、ストップですよご両人!」

 

俺はそれに臆することなく、間に割って入り止めようとする。当然、両陣営の殺気に満ちた視線を浴びることになるが、これくらいどうってことない。

 

「あぁ? 誰だテメェ!?」

 

「申し訳ないけど、部外者は口を挟まないでくれる?」

 

おーおー、辛辣な対応だ。けどまあ、アガレスの人は少しは温厚な人のようだ。この人くらいならまだ話を聞いてくれるかも。

 

「本当に部外者ならそうしているんですがね……。あ、申し遅れました。自分はリアス・グレモリーの〈兵士〉の一人、鬼城竜真と申します。以後、お見知り置きを」

 

丁寧に一度頭を下げて挨拶をし、再び顔を上げる。

 

「さて、と。そんなわけで、我が主は既にこの部屋の外まで来られています。しかし、中でこんな殺し合いをされていては、危険が及ぶ可能性があります。できれば、今すぐご両人ともに闘志を抑え、争いをやめていただきたいのです。――どうか、お願い致します」

 

その場で土下座をし、頼み込む。手枷のせいで少々不恰好だが、これで誠意が伝わってくれればいいが……。

 

すると、こちらに歩み寄ってくる気配が一つ。この方向はゼファードルか? しかし、素直に聞いてくれるとは――

 

ドガッ!

 

「おいおい! ちゃんと頭を地面に着けろよ!」

 

……やっぱりか。予想通りといえば予想通りだが、思いっ切り踏みつけられた。

 

「やめなさい、ゼファードル! それ以上私の下僕に手を出すのなら、容赦はしないわ!」

 

たくさんの気配が部屋に入ると同時に、リアスさんの声が聞こえてきた。これくらい耐えれるのにな……。

 

「あぁ? 容赦しないだ? 相変わらずグレモリー様は眷属を大切にするようだな。――けっ、下らねぇな!」

 

ゼファードルは挑発のためか、更に力を入れて踏んでくる。あ、でこが切れたか? 濡れた感触がする。

 

「そんなにこいつを返してほしけりゃ、愛すべき下僕のために裸で土下座なりしろよ。それとも、俺の奴隷として買われるか――」

 

 

 

 

 

「――身のほどを弁えろ」

 

 

 

 

 

ゼファードルの言い分が頭にきた俺は、顔を横にずらして上を向きゼファードルを睨む。

 

「テメェごときがリアスさんを奴隷にだぁ? 思い上がりも大概にしておけよ? さもなきゃ――喰い殺すぞ」

 

特大の殺気を放ってやると、ゼファードルは足を離して後退した。こんなのでビビるようじゃ、程度が知れてるな。

 

俺は立ち上がってでこを触ってみると、手には血がついていた。やっぱり切れてたか。すぐに治るとは思うが、一応アーシアさんに治療してもらおうかな。

 

「ま、待ちやがれぇ!!」

 

俺が歩き出そうとした瞬間、後ろにいたゼファードルが殴りかかってきた。しつこい奴だ。

 

リアスさんに言われてるから我慢してたが、この手のタイプは付け上がるだけ付け上がっちまう。……ここらで本気の殺気でもぶつけてやろうか?

 

「――そこまでだ、ゼファードル」

 

だが、間に割って入る存在がいた。バアル様だ。

 

一応は威力がありそうな拳を掌で簡単に受け止めている。本当に見かけだけなのか、それとも……。

 

「これ以上暴れるようなら、容赦はしないぞ。従姉妹であるリアスと、その眷属である者たちにまで危害が及ぶのを黙って見てるわけにはいかないからな」

 

バアル様はそう言いながらプレッシャーを放つ。それに動揺しながらも、ゼファードルは手を振りほどいて魔力を放とうとする。

 

「チッ! バアル家の無能風情が――」

 

その言葉の続きを聞くことはなかった。なぜなら、ゼファードルは次の瞬間、壁に叩きつけられていたからだ。

 

誰が何をしたのか、言うまでもない。だが、予想以上の威力と速度の拳を目の前で見て、驚きを隠せないのも事実だ。……この人、どれだけ強いんだ?

 

「容赦はしないと言ったはずだが?」

 

バアル様はそう言って拳を収める。ここでようやくゼファードルの眷属たちが動き出した。離れていたとはいえ、なんて遅い対応だ…。

 

「おのれ!」

 

「バアル家め!」

 

しかも、バアル様に敵対心を向けるのか。そんなことより、真っ先にやるべきことがあるだろうに。

 

「俺に挑む暇があるなら、主の介抱をしろ。大事な式典で気絶していては、面子があるまい」

 

あ、バアル様が俺の思ってたことを代弁してくれた。そう言われてようやく、ゼファードルの眷属たちは主を連れてこの部屋をあとにした。それに続いてアガレスの方も、化粧直しのために部屋を出ていった。

 

「竜真さん、大丈夫ですか?」

 

「ええ。この程度なら、アーシアさんに治療してもらっていればすぐに治りますよ。お手数おかけするのは申し訳ないですが………」

 

「いいえ。これくらいでよければ、いくらでも言ってください」

 

アーシアさんはそう言って微笑んでくれた。優しすぎて、悪魔なのに天使の羽が生えてるようにすら見える。

 

「もう、竜真。こんなことはやめてちょうだい。何かあればあなただけでなく、私の責任にもなるんだから」

 

アーシアさんを見て癒されていると、リアスさんが注意してきた。だが、その表情と声色からして、怒っているというよりは心配してくれていたところが大きいみたいだ。

 

とはいえ、俺に非があることに変わりはないので、ここは素直に謝っておこう。

 

「すいません、リアスさん。今後は気をつけ――」

 

「まあ、そう言うなリアス。俺はその男を評価するぞ」

 

謝っていると、バアルさんが間に入ってそんなことを言った。まさかのお言葉に俺だけでなくリアスさんも驚いている。

 

「サイラオーグ?」

 

「確かに問題を起こすのは主のためにならんが、あのような輩に主を侮辱されるよりはマシだ。それに、その男はお前が侮辱されるまで一切反抗していなかったぞ? 主のためなら自らが傷つくこともいとわないが、主への侮辱は許さない。いい眷属じゃないか」

 

………なんか、今までにないくらい褒められた。ここまで言われると照れるというか、なんというか……。

 

「……それでも、主たる私に心配をかけさせたんだから、少しは反省してちょうだい。いいわね?」

 

「ふぁ、ふぁい(は、はい)」

 

リアスさんに頬を引っ張られる。こりゃあ、あとで更に叱られるかもな……。

 

「リアス? 何かあったのですか?」

 

後ろから聞き覚えのある声が聞こえたため振り向いてみると、そこにはシトリーさんたちがいた。と、その中の匙が俺に声をかけてきた。

 

「鬼城、お前………そういう趣味が――」

 

その台詞を聞いた瞬間、蹴りを入れた俺は悪くない。

 

 

 

竜真side out

 

 

 

一誠side

 

竜真が一騒動を起こしたあと、俺たち若手悪魔とその眷属は使用人に別の部屋へと案内された。

 

そこには、高い場所から俺たちを見下ろすお偉いさん方の姿があり、その更に上にはサイラオーグさんやセラフォルー様を含む四人の悪魔がいた。あれが現四大魔王の方々か……。よく見たら、隣には柊先生と朝霧さんが立っている。

 

それで、若手悪魔の方々が自分の将来の目標を言っていたんだが…………ソーナ会長が下級悪魔や転生悪魔のためのレーティングゲームの学校を造ると言った途端、お偉いさん方が一斉に笑い始めたんだ。

 

後ろにいた木場が教えてくれたが、まだ悪魔の社会では下級悪魔や転生悪魔に対する差別が残ってるみたいで、特にああいう感じの古株の悪魔はそういう考えの奴が多いらしい。だからって、他人の夢をこんなにあざ笑っていいのかよ…!?

 

ソーナ会長のことが好きな匙が黙っていられるはずもなく反論したが、生徒会長の言葉に口を閉ざしてしまった。……それを見て、俺も黙っていられなくなりそうだったけど、前にいる奴を見てやめた。

 

「……………」

 

前には竜真がいるわけだが、右肩が若干揺れていた。ヤバい。多分、今竜真は指を膝上でトントンと突いてるんだろう。あれは竜真の昔からの癖で、イライラが限界に近い証拠だ。少し刺激したら爆発する爆弾と同義だ…!

 

頼むぜ、お偉いさん方! これ以上余計なことは言わないでくれよ……!

 

「ソーナ・シトリー殿。見られましたかな? 今の彼こそが、転生悪魔がレーティングゲームの学校に通えない理由の一つですぞ。気品のある上級悪魔とは違い、粗暴で野蛮な者たちだ。そんな者たちを群れさせればどうなるか――」

 

 

 

 

 

「もっと本音を言ったらどうだ?」

 

 

 

 

 

竜真の突然の発言に、周りの視線が竜真に集中する。当人は、後ろからでもわかるほどの強烈なプレッシャーを放っている。完全にぶちギレてらっしゃる……!

 

「あんたらが下級悪魔や転生悪魔をひたすら差別してるのは、それを世論として当たり前のことにするためだろ? ――そりゃそうだ。元が下級だろうが転生だろうが、優秀な奴はいくらでもいるからな。学校を造れば、そこで自分の才能を見つけ出す子どもも増えるだろう。そうなれば、将来的にはあんたらの地位が危うくなる可能性も高くなるもんな? そりゃあ、一般向けの学校を造るなんて夢、今から諦めさせないとな?」

 

竜真は威圧的な声音でお偉いさん方に言葉を投げかける。こんなに怒りのままに喋る竜真はいつ以来だろう……。正直、当事者でもないのにチビりそうです!

 

だが、そんな発言にお偉いさんが黙っているはずもなく、一人が立ち上がる。

 

「な、なんたる口の利き方だ! リアス・グレモリー殿! 下僕の躾はどうなって――」

 

「そうやって主の方に逃げるのはやめたらどうだ?」

 

次の瞬間、竜真は目の前から消えて、お偉いさん方がいる段の前にしゃがみこんでいた。え、嘘だろ? 全然見えなかったぞ!? あいつ、今は手枷で弱体化してるはずなのに、いつもより速くなかったか!?

 

「悪魔界の常識を知らない野蛮な転生悪魔は自分たちの言うことを聞かないから、地位を気にする主を責めるんだろ? そんなの力で黙らせりゃいいのに、それをしないなんて…………あんたら権力に頼るだけの雑魚じゃねぇのか?」

 

「き、貴様……!」

 

「聞き捨てならんぞ、その言葉!」

 

今の言葉でお偉いさん方が全員殺気立つ。うわ、マジでヤバいだろこれ!?

 

 

 

 

 

「いいぜ、来いよ。――俺を化け物とビビってる古株共に、負けるつもりはねぇけどな」

 

 

 

 

 

――けど、その殺気は竜真が放ったそれ以上の殺気に呑み込まれた。此処からでもわかる程の竜真の殺気。一瞬、俺が殺されると錯覚しちまった……!

 

お偉いさん方も、今の殺気で腰を抜かして完全に戦意喪失したみたいだ。けど、竜真は殺気を抑えない。本当に殺しにかかりそうで見てるこっちが怖いぞ!

 

「――そこまでだ、竜真」

 

そんな竜真の前に、朝霧さんが立った。あの人、瞬間移動したようにしか見えなかったぞ。上の段から一瞬で下りてきやがったのか……?

 

「俺は今回、魔王だけじゃなくこいつらの護衛役にもなっていてな。危害を加えるなら、見過ごすわけにはいかなくなる」

 

「…………海斗さん。それ、俺が暴れる理由が一つ増えただけですよ」

 

竜真は朝霧さんの忠告を聞いて止まるどころか、さっきよりも殺気を強くした。え、なんで!?

 

「そうでなくても、こういう連中は大嫌いなんです。止めるなら、実力行使でお願いします」

 

「――わかった」

 

次の瞬間には、竜真がとてつもないスピードでこっちへ吹っ飛ばされてきた。なんだ!? 何が起きたんだ!? いや、とにかく竜真が無事か確認しないと!

 

「竜真くん!」

 

「竜真!」

 

後ろにいた木場と俺が竜真の元に駆け寄る。気を失っているだけで、呼吸はしてるみたいだ。よかった…。

 

「早く警備の者を呼べ! そこにいる野蛮な化け物を捕らえさせよ!」

 

「お待ちを。彼は海斗から制裁を受けました。これ以上、彼に罰を与える必要はないでしょう」

 

お偉いさんの一人が殺気を当てられてないからか調子を取り戻して怒鳴り散らしたが、サーゼクスさんが止めに入った。

 

「しかしサーゼクス殿、あの者は危険すぎる! ご覧になったでしょう! 我々に襲いかかろうとしてきたのですぞ!? この重要な会合で暴れるなど、言語道断! 然るべき処置をせねば、我々の気が収まりません!」

 

「然るべき処置? おかしなことを言うな。お前ら、元々この集まりは若手悪魔たちにお互いをライバルと認識させ、精進してもらうためとか言ってなかったか? それに、そのためなら多少の暴動は許容するとも言ってたような気がするが…………俺の聞き間違いか、サーゼクス?」

 

「いいや、それで正しいよ海斗。にも関わらず、彼だけを罰したとなれば、マスコミなどは放ってはおかないでしょう。――そのことについて納得のいく説明ができるのであれば、私は止めません」

 

その言葉にお偉いさん方は口を閉ざす。

 

そういえば、アラガミの存在はまだ一部の者にしか知られてない存在とか、アザゼル先生が言ってた。今回の竜真が手枷をつけられてる件も、主な原因は竜真の中にいるアラガミらしいから、それを隠しつつ説明するのは無理がある。

 

………サーゼクス様はともかく、朝霧さんがあんなに話しがうまい人だったんだな。竜真もいつも負かされてたし、口では勝てる気がしないぜ……。

 

 

 

――――――――――

 

あのあと話は早めに終わった。というのも、部長とソーナ会長でレーティングゲームの対戦が決まって終了したんだ。

 

セラフォルー様がソーナ会長をバカにされたと怒ったんだけど、サーゼクス様が部長とソーナ会長に戦ってみたらどうだと言われたんだ。それをお二人とも同意して、若手悪魔同士のレーティングゲームの初戦をすることになった。日取りは約二十日後らしい。

 

それで、今は俺と木場の二人で気絶した竜真を医務室へつれていってるところだ。もちろん部活の皆もちゃんといる。

 

「にしても、朝霧さんはあの時何をしたんでしょうか?」

 

「さあ……。ちょうど死角だったからね。でも、やっぱりパンチをしたんじゃないかな? それにしたって、容赦なかったけどね…」

 

「仕方ないわよ。彼にも立場があるんだから」

 

「彼が立場を気にしてるかどうかは微妙なところですけどね……」

 

 

 

 

 

「気にしてるわけないですよ。あの海斗さんだから」

 

 

 

 

 

………え? 隣から聞き覚えのある声がしたんだが…………気絶してるのにそんなわけ――

 

「ありがとな、イッセー、祐斗。もう一人で歩けるから大丈夫だ」

 

そう言って、竜真は俺たちの腕から離れる。

 

「竜真!? もう目を覚ましたのか!?」

 

「ああ。にしても、久々に海斗さんから一発もらったぜ。――まあ、かなり加減されたが」

 

え、加減? あれで? サイラオーグさんがヤンキー悪魔を殴り飛ばした時と同じくらいの勢いだったのに?

 

「あれは加減の内に入るのか? 飛ぶスピードからしてかなりの一撃だったと思うが…」

 

「何言ってんだよ、ゼノヴィア。海斗さんはあれでも魔王の護衛役を務めてるんだぞ。あれが全力だとすれば、その辺の最上級悪魔で事足りるだろ」

 

「……竜真くんは随分と朝霧さんの実力を信じているのですね。ですが、いくら彼でもそれほどの実力を持っているとは思えないのですが…」

 

うん。正直、俺も朝霧さんの実力を見たことがないから、竜真が過大評価をしてるように思えてならない。でも、竜真はため息をついた。

 

「それほどの実力を持ってなきゃ、俺がギリギリ見切れる速さと――」

 

そう言いながら竜真は腕を上げて振り下ろし――

 

 

 

 

 

バギャンッ!!

 

 

 

 

 

「ギリギリ手枷が壊れないようにしたパンチは打てませんよ」

 

膝蹴りで手枷を砕いてええぇぇぇぇぇぇええええええ!? う、嘘だろ!? 手枷がそれだけ壊れ安くなってたのか!?

 

「ッカー!! 自由になった! せっかくの休みだっつーのに、いつもより行動が制限されてる感じで嫌だったんだ! これでようやく冥界ライフをエンジョイできるぜ!」

 

「た、竜真ちょっと待ちなさい! その手枷を壊したらダメって言ったでしょう!? 更に罪が重くなって――」

 

「大丈夫ですよ、リアスさん。これを壊しにかかったのは海斗さんなんですから。俺は、歩いてたらたまたま手枷が壊れてしまっただけで、俺自身が積極的に壊したわけじゃないって言えばいいんですよ」

 

「そ、それは………けれど、そんな屁理屈が通るとは思えないわ」

 

「大丈夫ですって。――海斗さんがなんの策もなくこういうことをする人じゃないのは俺が一番わかってるし、万が一があっても別の方法でなんとかします。心配することないですよ」

 

そう言って竜真は先に歩き出してしまい、俺たちもあとを追う。………あの人、そんなに凄いのか?

 

 

 

一誠side out

 

 

 

no side

 

此処は先程の部屋からそう遠くないところにある会議室。この部屋では、海斗を中心に竜真の逆鱗に触れた上級悪魔の面々がいた。

 

「――で、他に何か言うことはないか?」

 

そして、海斗の質問に対して部屋の悪魔たちは無言で重苦しい空気を纏っている。というのも、さっきまで此処でしていた話題は、案の定竜真の手枷についてだった。壊れたことは既に知られていたのだ。

 

「それじゃあ、竜真については無罪放免、手枷もなしと。はい、それじゃあお疲れさん」

 

しかし、それについての話は既に終わり、海斗が部屋を出ていく。すると、部屋の前にはサーゼクスが立っていた。

 

「まったく。君は無茶なことをするな、海斗」

 

「なんのことだ?」

 

「ああ、勘違いしないでくれ。盗み聞きはしていない。だが、君がどういったことをしたのかは検討がつく。大方、彼らの弱味を利用したんじゃないかい?」

 

「そう思い込むのは勝手だ。俺は何も言わねぇぞ」

 

「本代を倍にしよう」

 

「気配を消してあいつらを尾行し、不祥事を発見してそれをネタに黙らせた」

 

海斗は気配遮断能力は高いというレベルを逸脱している。そのため、今回のようなこともできたというわけだ。

 

長いこと上の位に立つ上級悪魔であれば、一つや二つくらい誰にもバレたくない不祥事も持つだろう。更に海斗は観察力に長けているため、それを見つけることなど呼吸をするのと同じくらい簡単だ。

 

「言ったんだから、ちゃんと本代倍にしてくれよ」

 

「ははは、わかってるよ。言ってくれた以上は私も約束を守ろう」

 

「じゃあ竜真の件も解決したことだし、俺はいつも通りに自由行動させてもらうぜ」

 

そう言って海斗はその場を離れていく。サーゼクスは引き留めずにその背中を見送った。

 

(ありがとう、海斗。君が黙らせてくれてなければ、私が力で脅すことになっていただろう)

 

サーゼクスは心の中で密かに感謝した。己の立場が危うくなるのは理解しているが、竜真のためならある程度のリスクは覚悟している。とはいえ、自分以外にも大勢に迷惑をかけることになるのは確実なため、避けれるのなら避けたいというのがサーゼクスの本音だ。

 

(さて、これで竜真くんに不自由なく過ごせてもらえるだろう。あとは――修行相手か)

 

実は数日前に連絡をとっていたが、既に海斗から聞いていたとのことでその者は快く引き受けた。

 

(まあ、彼ならそんなに無茶なことはさせないだろうし、何よりアラガミについては一番理解している。彼と一緒に修行すれば、竜真くんは必ず強くなれる)

 

「頼んだよ――アキハ」

 

サーゼクスはそう呟き、廊下を歩いていった。




手枷なんてめんどくせぇ! リアスさんと二人きりの時間を増やすという役目は終わった。安らかに眠るがいい。まあ、手枷してるのにあの時はいつも以上の動きができたというのは、一応伏線です。ゴッドイーターやったことある人ならわかると思います。

まだ明確な戦闘描写がないのであれですが、海斗さんは肉弾戦オンリーです。仮にも魔王の護衛役をやるくらいなので、強さはかなり上の方です。念のために言っておくと、サイラオーグよりも強いです。竜真の憧れは遥か高みにおられるなぁ……。

アキハについては次回登場するはずなので、そこでフルネームと設定を書こうと思います。

それでは、この辺で。サヨナラ!
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