前回の竜真が半分ほど拷問してたので、今回はしっかり戦ってもらいました。……ええ、戦ってもらいました。
とりあえず、本編をどうぞ。
竜真side
パンッ!
部室に乾いた音が響く。リアスさんがイッセーの頬をひっぱたいた音だ。
なぜまたこんな現状になっているかというと、イッセーがあのシスターに偶然町中で会ったらしい。そしてしばらくの間行動を共にしたとか。
それだけなら別に問題はない。だが、イッセーはシスターの過去を聞いて必要以上に絆を深めてしまった。そしてそこに現れたのが天野――いや、レイナーレというらしいな。
イッセーはシスターを渡すまいと立ち向かったが、結果は惨敗。しかも、助けようとしたシスターは逆にイッセーを助けるためにレイナーレの元に戻った。
……相当悔しかったんだろうな。それで、リアスさんにシスターを助けに行かせてくださいと言って聞かないのだ。それでリアスさんが思わず叩いたのだ。
「何度も言わせないで。あのシスターを助けに行くことは許可できないわ」
「それなら、俺一人で行きます。儀式ってのがどうしても気になるんです。あの堕天使がやる儀式なんてロクなものじゃないに決まってます。アーシアが危険に晒されます」
「あなたは本当にバカなの? あなた一人で行けば確実に殺されるわ。既に転生したあなたが死ねば、もう生き返れないのよ? わかっているの?」
今のリアスさんはいつものように冷静だが、イッセーを諭そうとする必死さは伝わってくる。
「あなたの勝手な行動が私や他の部員にも影響を及ぼすのよ! あなたはグレモリー眷属の悪魔なの!それを自覚しなさい!」
「それなら俺を卷属から外してください。俺個人の問題なら皆にも迷惑はかけません」
「そんなことができるはずないでしょう! どうしてわかってくれないの!?」
………このバカが。俺はイッセーに向かって歩いて行く。
「俺はアーシア・アルジェントと友だちになりました。アーシアは大事な友だちなんです。俺は友だちを見捨てれませ――」
「イッセー」
イッセーの言葉の途中で背中から声をかける。
「なんだよ竜m――」
ドガッ!
そしてイッセーがこっちに振り返るタイミングに合わせて頬を殴る。イッセーはそのままその場に倒れる。
「竜真!? 何をして――」
リアスさんが咎めようとするが、俺は待つように手で合図する。
「いきなり何すんだよ!?」
イッセーは当然怒鳴ってくるが、俺はそれに冷徹な視線で応える。
「逆に聞くが、お前はいきなり何を言った?」
イッセーは俺のプレッシャーで少し怯む。それに構わず言葉を続ける。
「お前があのシスターと友だちだということはよくわかった。そして、救いたいという気持ちもな」
そう言うとイッセーの表情が明るくなる。協力してくれると思ってるんだろう。
「――って言うと思ったか?」
それは大きな間違いだ。その一言でイッセーは険しい表情になる。
「なぜ本来は敵対関係にあるシスターを助ける必要がある? 優しい子だからか? 辛い過去があるからか? 友だちだからか? そんなの俺の知ったことじゃねぇ」
「っ! 竜真!!」
我慢できなかったのか、イッセーは俺に殴りかかってくる。俺はその拳を容易く避け、逆に腹に拳を叩き込む。
「がっ…!?」
その一発で、再びイッセーは倒れる。
「別によイッセー、お前に充分な力があるなら止めはしないんだぜ。だが、現状を見てみろ。悪魔になっても俺の拳だけでダウンしてるお前が、どうやって堕天使とエクソシストに勝つっていうんだ?」
「………」
イッセーは何も言い返さない。更に畳み掛ける。
「いいかイッセー。お前は兵藤一誠である前に、リアスさんの下僕だ。俺たちはリアスさんに命を救われたんだ。だったらその恩を一生かけてでも返す義務がある。眷属を抜けたら迷惑をかけない? とんだ勘違いだバカ。今更抜けたところで、既にリアスさんと関わりを持ってるんだ。そのお前が問題を起こして、リアスさんに迷惑がかからないと本当に思うのか?」
イッセーは顔を伏せたままで上げようとはしない。
「第一、眷属を抜けてなんになる? この間のバイサーみたいなはぐれにでもなるつもりか? この前会ったばかりのシスターのために? お前はそんなつまらないことで死ぬ奴なのか? ハーレム王の夢をこんなことのために捨てるのか?」
イッセーはようやく立ち上がって俺を見る。
「……別に死ぬつもりはねぇし、ハーレム王の夢を諦めるつもりもねぇよ。俺はただ、友だちを助けたいだけだ!」
「だからそういうことは、実力を身につけてから言えって言ってんだよ!」
互いに怒鳴り、睨み合う。だが俺はすぐに後ろに踵を返して歩く。
「こんだけ言っても諦めないバカなら勝手にしろ。だが、これだけは言っておく。俺はお前に協力するつもりは一切ない」
そう言い残して、俺は部室から出る。
竜真side out
リアスside
イッセーと竜真があんな口論をするなんて…。
少なくとも、今までの二人を見てた中であれ程本気で怒鳴合いをしてたのは初めて見たから驚いた。
「とにかくイッセー。竜真の言う通りよ。あのシスターは神側の人間。私たちとは相容れない存在なの。堕天使のもとへ下ったとしても、私たち悪魔と敵対関係にあることに変わりはないわ」
「アーシアは敵じゃないです!」
「そうだとしても、私にとっては関係のない存在だわ。彼女のことは忘れなさい」
イッセーはまだ何か言いたそうにしている。だけど、聞き入れる気はないわ。
そうしてると、朱乃が私の近くに来て耳打ちをした。なるほどね…。
「急用ができたわ。私と朱乃は少し外に出るわね」
「ぶ、部長! まだ話は終わって――」
「イッセー。あなたに少し話すことがあるわ。まず、あなたは<兵士>を弱い駒だと思っているわね?」
イッセーの言葉を遮るかたちで問いかける。
イッセーは静かに頷いて肯定した。やっぱり……。
「それは大きな間違いよ。<兵士>にも特殊な力があるわ。それが<プロモーション>。実際のチェスと同様に、<兵士>は私が敵の陣地と認めた場所の最も重要な所に足を踏み入れれば、<王>以外の全ての駒に変化できるの。悪魔になって日が浅いあなたには、まだ<女王>へのプロモーションはできないでしょうけどね」
私の説明を聞いてイッセーは驚愕の表情になる。
まったく…。チェスと同じと言った時点で気づいてほしかったのだけれどね。
竜真は自分で能力について予想をして、少し前に私に話した。あの子は頭の回転が早いわね…。
「それと、神器についてね。神器は想いの力で動くの。――想いなさいイッセー。そうすれば、必ず神器は応えてくれるわ。最後にもう一つ。<兵士>でも<王>は取れる。これはチェスの基本よ。それは<悪魔の駒>でも変わらないわ。――イッセー、あなたは強くなれるわ」
そうイッセーに伝えて、私と朱乃は一旦部室を出る。
「あら、竜真? さっき出て行ったんじゃなかったの?」
朱乃が扉を閉めたのを確認して廊下を歩き出そうと前に目を向けると、そこには腕を組んで壁に寄りかかっている竜真がいた。
「別に部室を出たからって、旧校舎から出たとは限りませんよ。――それより、お二人について行ってもいいですか? ちょっとイライラするんでカラス狩りをしたくなりました」
……そういうことね。素直じゃないんだから。
「…ふふっ。ええ、いいわよ。そのかわり、無茶をしちゃダメよ?」
「わかってます」
「それじゃあ、行くわよ。朱乃」
「はい、部長」
朱乃は転移用の魔方陣を出す。そして、私たち三人の体は紅い光に包まれる。
リアスside out
竜真side
視界から光が消えると、俺たちは森の中に出た。
「此処は?」
「此処は教会の裏手にある小さな森よ。あそこに教会が見えるでしょう?」
リアスさんの指差す方に目を向けると、確かに教会の屋根が見えた。
「これはこれは。悪魔の皆さん。私、ひと呼んで堕天使のミッテルトと申します」
ついでに、木の上にいたゴスロリの服を着た金髪の女も。
地面に下りて無駄に礼儀正しく自己紹介をする女。やっぱり堕天使だったか。
「あらあら。ご丁寧にどうも」
「見え透いた社交辞令ですがね…」
「ごきげんよう。一応私たちには警戒していたのね」
「別に。ただ大切な儀式を悪魔さんに邪魔されたらちょっと困るってだけ」
口調が素になったな。俺の嫌いなチャラいタイプか。
「あらあら、申し訳ありません。既にうちの若い子たちが向かいましたわ」
「げっ、本当!? やだ、マジですかー!?」
「ちなみに正面から堂々と行きましたよ」
「しまった! 裏からこっそり出てくると予想してたのにー! ……まあでも、三下が何人来ようがモーマンタイじゃね? うん決めた、問題なし! なんせ本当に邪魔になりそうなのは、あなた方お二人だけですから。ふふっ、わざわざ来てくれてあっざ~す」
「えっ? そんなに評価してもらってるんですか? 照れるな~」
「あんたじゃねぇし!」
知ってる。ボケただけだろ。
「それは無用なことだわ。私は一緒に行かないもの」
「ふ~ん? 見捨てるってわけ?」
「あなたに我が主の偉大なお考えは理解できないでしょう? ならそういう認識でいいんじゃないですか?」
「……あんた、バカにしてる?」
どうだろうなー(棒)。
「まあ、とにかくあれよ。主であるあんたさえ始末すれば、他の下僕っちはおしまいなわけだし? ――出でよ!カラワーナ、ドーナシーク!」
「何を偉そうに言っている」
「また会ったな、小僧」
女がそう言うと、俺たちの後ろから新たに二人の堕天使が現れた。
片方の女性は初見だが、もう一人の男の方は覚えている。
「おやおや。誰かと思えば、ドーナッツ・シイタケさんじゃないですか~」
「だ、誰がドーナッツ・シイタケだ!?」
うん。自分で言っておいてあれだが、凄いマズそう。
「では、俺も一応名乗っておきましょう。俺の名前は昆布豆豆太郎です」
「そんなふざけた名前の奴がいるか!」
「おやおやドーナッツさん。あなたは世界中の昆布豆さんと豆太郎さんをバカにするんですか?」
「少なくとも貴様は豆太郎ではないだろう!」
チッ、バレたか。
「とにかく、貴様らに我々の計画を邪魔する意図があるのは明白!」
「死をもって購うがいい!」
そう言うとドーナッツ――もういいや。ドーナシークと――カラワーナだったか? その二人が翼を出して飛び上がる。
「あちらも殺る気満々ですが、どうしますリアスさん?」
「まずは動きを制限するわ。朱乃!」
「はい、部長。……はっ!」
朱乃さんが上に向けて手をかざすと、此処にいる全員を囲うようにドーム状の魔力ができた。
「これは、結界!?」
「なんかヤバくね!?」
「これで此処からは逃げられませんわ。うふふ」
妖艶な笑みを浮かべてる朱乃さん。……もうSっ気出てませんか?
「貴様ら、最初からこれが目的か!」
「ええ。あなたたちをお掃除するために来ましたの。ごめんあそばせ」
「ウチらはゴミかい!」
「おとなしく消えなさい」
リアスさんは余裕な態度でそう言うが、堕天使たちは全く動揺していない。というか向こうも余裕そうだ。
「まあいい。儀式さえ終われば、あの方は貴様ですら敵う存在ではなくなるのだ」
「あの方? レイナーレのことですか? ずいぶんあの女を敬っているようですね?」
「下級悪魔があの方の名を気安く呼ぶな!」
ドーナシークは俺に向けて光の槍を投げてくる。俺はそれを蹴りで弾く。あの時と同じヘマはしない。
「それで? あなた方が先程から言っている儀式とはどういったものなんです? よっぽど大切なものなんですか?」
「ふん、いいだろう。死ぬ前に教えてやろう」
おお、こいつはラッキー。俺たちのことを殺せると思ってるからあっさり吐いてくれた。
「我らがする儀式は、神器を所有者から取り出すものだ」
「なんですって!?」
カラワーナの発言にリアスさんは驚いた。そんなにヤバいことなのか?
「そして、取り出した神器をレイナーレ様が自分のものとする。これが我々の計画だ」
「なるほど…。イッセーの話しによればあのシスターの持つ神器は<
ヒーリングってことは回復系か? って、そんなことより確認しなきゃいけないことが!
「リアスさん。仮に神器の所有者が神器を抜かれるとどうなるんですか?」
俺の問いにリアスさんは苦い表情で答える。
「死ぬわ」
やっぱりそういうオチなのか…!
イッセー。あんだけリアスさんに歯向かってまで行ったんだ。絶対に救えよ!
「ずいぶんとエグいことしますねぇ…」
「あのシスターも教会から追放された身。特に誰かが咎めるわけでもない」
俺の親友が激怒してるんだが…。
「まあ、このことを知ったところで、これから死ぬ貴様らにはどうすることもできんがな!」
三人は同時に光の槍を放ってくる。
俺は最初の蹴りで一個を弾き、もう一本の方に当てて相殺させる。
最後の一個は全力で奴らに向けて弾き返す! 結構なスピードで行ったが、直撃する前に消されてしまう。チッ、こっちも何か遠距離で使える武器があれば…!
「あらあら。中々芸達者ですわね竜真くん」
「いや、今までこれの三、四倍の量の鉄パイプを蹴り飛ばしたことがあるので結構楽勝です」
「……竜真って、元から人間を止めていたんじゃないかと思う時があるわ」
ちょっ!? その認識は酷くないですかリアスさん!
「しかし、その程度の防御法でいつまでもつかな?」
「貴様らが張った結界が仇となったな」
「あ! それともこの結界解いて逃がしてくれる? ノンノン。ウチらがあんたら逃がさねぇっつーの。あんたの下僕も今ごろボロカスにされてんじゃないの? 特にレイナーレ姉様にゾッコンだったあのエロガキ。あいつなんてもうとっくに――」
「イッセーを甘く見ないことね。あの子は私の最強の<兵士>だもの」
「……リアスさん。俺は?」
「…あ! も、もちろん竜真もよ!?」
お気遣いありがとうございます! 余計心に傷ができました!
「ああ。そういえばあんたらって下僕をチェスの駒に見立ててるんだっけ?」
「<兵士>。要するに捨て駒か」
「あらあら。部長は捨て駒なんてしませんわよ?」
そりゃそうだ。もし<兵士>を捨て駒にしてるんなら、イッセーをあんなに止めることはしない。
むしろ、突撃させて囮にし、その隙に敵を殲滅するだろう。
「まあそれ以前に、あの小僧はレイナーレ様には勝てんだろうがな!」
「だって元カノだものね! レイナーレお姉様にあいつの話を聞いたら本当におかしかったわ!」
「ククク! 言うなミッテルト! 腹が捩れてしまいそうだ!」
「まあ、酒の肴にはなったがな!」
堕天使たちは口々にそう言うと、光の槍を放ってきた。その方向にはリアスさんがいる。
普通ならここで槍が突き刺さっておしまいだろう。
ゴオッ!
「何!?」
「弾き返しただと!?」
だが、リアスさんから膨大な魔力が出て、それは槍を簡単に弾き返した。
「笑ったわね? 私の下僕を、笑ったわね?」
その口から出た声は今まで聞いたことがないほど怒りに満ちていた。
「あらあら。怒らせる相手を間違えましたわね、おバカさん」
リアスさんは腕をかざし、あの紅黒い魔力を放とうとしている。
「消し飛べ――っ!?」
だが、リアスさんは途中で止め、こちらに顔を向ける。隣にいた朱乃さんも俺を驚いた顔で見ている。ああ、こんだけ近いとやっぱり気づいちゃうか。
――外見こそいつも通りだが、今の俺からはバイサーにキレた時以上のプレッシャーが放たれていることに。
「リアスさん。大変失礼だと思いますが、あいつらは俺に殺らせてください」
「……え、ええ。わかったわ」
そう言ってリアスさんは魔力を引っ込めて後ろに下がってくれた。本当にいい主だ。
「あれ? 何あんた? 私たちを庇ってくれたの?」
「まさか。…ところで、一つ聞きたいんですが………今誰を笑った?」
「「「!?」」」
俺の発言に堕天使はようやく俺の雰囲気が変わってるのに気がついたようだ。
「確かにあいつはどうしようもないスケベだ。それに、自分に一目惚れしたと言ってきた女を微塵も疑わないバカだ。だけどな、あいつの心はどんな時でもまっすぐなんだよ。それこそ覗きをするにしても、戦うにしてもな。そして俺は、そんなあいつの心に救われたんだ」
一旦言葉を区切り、目を閉じる。
『や~い、怪物!』
『あの子のご両親、あの子が殺したらしいわよ』
『お前は生きていてはいけないんだ! この化け物め!』
思い出されるものは、過去の記憶。怪物、化け物と呼ばれて周りから嫌われ、俺も周りを拒絶していた時の記憶。
今思い出しても、自分が嫌に思えてしまう忌まわしい記憶。
『俺はお前の友だちだ!』
そこに唯一ある、俺に向けられた無邪気な笑顔。俺を救った幼なじみの言葉。
そう、あいつは俺の最初の命の恩人。だから――
「――あいつをバカにする輩は、俺がぶっ飛ばす!」
目を開けてその言葉を言った瞬間、左腕に強烈な熱を感じる。驚いて目を向けると、左腕が炎に包まれていた。だが、更に驚くことがあった。
炎の熱は感じる。なのに痛みが全くない。どうなってるんだ?
そうしてしばらく様子を見てると、炎は何かの形を形成していく。
――それは籠手だった。だがイッセーの神器とは違い、黄色と橙色が中心でなにより人の顔のようなものがついているそれは不気味なデザインだった。
ていうかこれなんなんだ?俺には神器は宿っていないはずなのに…。
「バカな!? 奴も神器を持っていたのか!?」
「いや、レイナーレ様の話では奴は普通の人間だったはずだ!」
「じゃあなんなのよあれ!?」
堕天使たちも突然出現した籠手に軽いパニックを起こしていた。
「カァカァうるせぇぞカラス共。今相手してやるからちょっと待ってろ」
それに対して、俺はこの状況にすぐに慣れた。というか、この籠手が出た時から体に変化が起きた。
――体の奥底から力が溢れる。今の俺は間違いなく先程よりも身体能力が上がっている。
流石に三人同時はキツイと思っていたが、これなら問題ないな。
……さてと。
「カラス狩り開始だ」
竜真side out
no side
竜真がそう言った瞬間に、戦況は動いた。
「「「「「なっ!?」」」」」
敵味方問わずに驚愕の声が出る。
それもそのはず。先程まで自分たちの視界にいた竜真が消えたのだから。
(祐斗と同じで速すぎて見えないということ!? だとしても、急にこんな動きができるなんて――)
「ぐああぁぁぁぁぁ!?」
しかし、ドーナシークの叫び声により、リアスの思考は中断される。
そちらに目を向けると、背中の二ヶ所から血を出して地面に落ちているドーナシークの姿があった。
「いつぞやの宣言通り、もぎ取らせてもらったぜ」
そしてその後ろには、その手に黒い翼を持っている竜真の姿があった。
そう。竜真は堕天使たちの後ろに回り込み、その翼を引き抜いたのだ。
「にしても、見れば見るほどカラスの羽だな」
竜真は自分の左手に持ち変えた翼を見ながらそう口にした。
「竜真。それぞれの羽を一枚ずつ取っておいて。あとで使うことになると思うから。翼の方は処分していいわ」
「いや、処分していいと言われても――」
どうやって処分しろと?と言葉を続ける直前。
ボオッ!
「うおっ!?」
竜真が持っていた翼が突然燃え出した。
いや、よく見ると籠手が発火していて、その火が翼に燃え移っているようだ。
「へぇ…。そういうことか」
竜真は何か理解したようにそう言う頃には、翼は完全に燃えてなくなっていた。
「き、貴様あぁぁぁぁ!!」
ドーナシークは激怒しながら竜真に突っ込む。その手には光の槍が既に握られていた。
「だから――カアカアうるせぇんだよ!」
ドーナシークの槍の間合いに入る前に、竜真は先程のように猛スピードでドーナシークに接近する。
そしてその勢いのまま顔を鷲掴みにし、地面に叩きつける。
グシャアァァ!!
すると、ドーナシークの頭はいとも簡単に潰れ、その場に赤い鮮血を撒き散らす。
いくら堕天使であろうと、頭を失えば絶命は免れない。頭を失った体は何回か痙攣した後、全く動かなくなった。
(わお……。全力でやったとはいえ、こんなになるとはな…。自分で少し引いた)
殺った本人は意外といつも通りだった。
「貴様、よくもっ!」
そこにカラワーナが槍を投げてきた。竜真は特に慌てることなく、むしろ当たり前のことのように槍を蹴り返す。
――先程と比べものにならないスピードで。
「がっ!?」
槍はカラワーナの体などまるで障害物にならないと言わんばかりに、一瞬で貫いた。そのまま槍は後ろの木々をいくつも貫通し、八本目でようやく止まった。
「ちゃんと反応できなきゃ消せないようだな」
「くっ…! 貴様――があ!?」
カラワーナが前に視線を向けた時には、竜真は既に目の前にいて、左腕を傷口に容赦なく突き刺していた。
「わめくなよ。――今終わらせてやる」
そう言った瞬間、籠手から膨大な量の炎が出て、カラワーナの体はあっという間に燃え上がる。
「あああああぁぁぁぁ………」
カラワーナの叫びはドンドン小さくなり、五秒後には完全に燃え尽きた。
竜真はもう動かないことを確認して、一枚の黒い羽を懐にしまう。いつの間にかカラワーナの翼から抜いていたようだ。
「さてと……」
「ひっ!?」
竜真は残ったミッテルトに目を向ける。ミッテルトは恐怖で後ろに下がる。
無理はない。目の前で仲間が二人もあっさり殺されたのだから。
「あとはお前だけだが…。どうする?」
一歩ずつ近づく竜真。
ミッテルトは更に後ろに下がるが、結界が張られているためすぐに逃げ道がなくなってしまった。
「ま、待って! レイナーレ姉様――レイナーレとはもう縁を切るわ! あんたらにも危害は加えない! だ、だから助けて!」
「ふむ…」
半分泣きながら命乞いをするミッテルトを見て、竜真は顎に手を当てて少し思案する。
「……まあ、確かに。泣いている女の願いを聞いて、考えないわけにはいかないな」
竜真のその言葉を聞いて、ミッテルトは喜んで顔を上げる。
「――却下だ」
しかし、目の前には籠手に炎を纏い、無表情の竜真の姿が。
「ま、待っ――」
今度は命乞いを聞くこともなく、竜真は炎を纏い、高熱を帯びている籠手でミッテルトの顔を掴む。
掴んだ瞬間に、ミッテルトの頭はあまりの熱に耐え切れず、まるで泥のように溶けて抉れた。
そのままミッテルトの体はその場に倒れる。
「……ふん。殺すのもつまらねぇ奴らだったな」
心の底からつまらなそうに言いつつも、竜真は無表情だった。
今さっき人(堕天使)を殺した者がする顔ではない。
「………」
それを見たリアスは、表にこそ出さないが竜真に恐怖を覚えた。
え? なんですか? 戦ったってほとんど一方的じゃないかって? ……どういう風に戦うかは行った覚えはないですよ?
冗談です、すいません!
いえ、チートではないです。覚醒した竜真にとってあのカラスどもでは役不足だったんです!
ところで、竜真が覚醒した力が何かわかりますか? GOD EATERに出るあるアラガミの力なのですが、わかるでしょうか?
竜真の過去のようなものも少し出てきましたね。その内詳しく書くことになります。
それでは、この辺で。さいなら!